【特集】関カレ事前特集『繋』西久保達也主将×太田智樹駅伝主将

陸上競技

 前半シーズンの大一番、関東学生対校選手権(関カレ)が間近に迫っている。昨年は目標としていたトラック優勝には遠く及ばず、4位に終わった早大。チームを立て直すため、今年掲げたテーマは『つながり』だ。その言葉に込められた思い、そして今年の関カレで目指すものとは――。競走部を率いる西久保達也主将(スポ4=埼玉・聖望学園)と太田智樹駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)にお話を伺った。

※この取材は5月15日に行われたものです。

「順調に来ています」(太田智)

穏やかな雰囲気で取材は進行した

――昨シーズンが終わってからのチームの様子はいかがでしょうか

西久保 今年に入ってからは冬の練習もうまくいっていて、いい雰囲気の中でできているのかなと思っています。試合もいくつかあったのですが、それを見る限り自己ベストが出たり、個人個人の成績も悪くないのかなと思っているので、関カレは期待できると思います。

太田 長距離ブロックは冬のロードシーズンや六大学(東京六大学対校大会)前後の春先のシーズンと比べると、今はだいぶ故障者が減っています。記録会などを見ていても自己ベストを更新しているメンバーが多くいて、チームの雰囲気も短距離とともに、冬に比べたらかなりまともになってきたかなと思います。

――ご自身についてはいかがでしょうか

太田 僕はけがをしていたのですが、けががやっと治ってからは3、4月にしっかり走れてここまで順調に来ています。記録会に出てベストも出せたので、この流れで関カレもいい結果が出せればなと思っています。

西久保 冬にしっかり練習を積むことができて、シーズンの初めから調子はいいかなと思っていたのですが、前回の静岡国際(静岡国際大会)でユニバーシアード競技大会(への出場)が決められなかったのが、僕としては残念でした。でもまた日曜日(5月19日)にゴールデングランプリもあるので、そこでいいタイムを出して関カレに流れを持ってこれたらなと思っています。

――最近の部内の雰囲気はいかがですか

西久保 やはり関カレを意識するようになってきていますね。リレーの練習やマイルの練習もしていて、いい雰囲気なのかなと思っています。また、伊東(利来也、スポ3=千葉・成田)がこの前世界リレー(IAAF世界リレー2019横浜大会)に出たのですが、そういった活躍している選手に刺激を受けながら、関カレで勝つことを目標にできているのかなと思っています。

太田 新チームになってから1カ月半経ってチーム全体としても馴染んできて、明るくなってきたと思います。今は関カレという対校戦が近づいてきたので、その明るさの中にも緊張感がありますね。

――関カレに向けて、昨年と比べて変えた取り組みなどはありますか

西久保 そんなにないですかね。練習に関しては、今週から短距離ブロックは個人での練習が多くなってきていて、個人個人が結果を出すために考えてやっています。先週までが追い込む時期だったのですが、そこも結構まとまっていたので、盛り上がりながら練習できていると思います。

太田 長距離ブロックは、関カレに出るメンバーに関してはそんなに変化はないのですが、それ以外のメンバーに関しては今年は6月後半に全日本(全日本大学駅伝対校選手権)の予選会があるので、どちらかというとそれに合わせての練習が増えているかなと思います。

――新しく入部してきた新入生の様子はいかがでしょうか

西久保 1カ月以上経って、ある程度部に慣れてきたのかなと。4月から入ってきた選手たちも、3月の合宿から来ていた選手たちも打ち解けてきていて、チームとしてまとまりが出てきたかなと思っています。合宿組の選手では三浦(励央奈、スポ1=神奈川・法政二)などが活躍していて、引っ張ってくれているので、彼らの爆発力なども借りながらやっていけたらなと思います。

太田 チームに馴染んできて、若さでチーム全体を明るくしてくれているのと、仕事の面でもやっと覚えてきてスムーズになってきたかなと思います。それでもやはりまだできていない部分が多いので、僕らもしっかり指導していかなければいけないと思います。

お互いについては?

質問に答える西久保。105代競走部主将を務める

――お二人が主将になった経緯を教えていただけますか

太田 西久保はもうみんなに説得されてという感じだよね(笑)。「主将は西久保でしょ」みたいな感じがありました。でも本人は最初はあまりやる気がなかったから…。

西久保 うん。最初僕はやっぱり「主将はなかなかキツいな」と。

太田 あまりそういうタイプではなかったしね。

西久保 今でもそういうタイプではないなと思っているんですけど(笑)。でも、みんなに支えてもらいながら何とかやれています。

太田 みんなが「西久保でしょ」となって、最初本人は渋っていましたが、みんなで説得して引き受けてくれました。

西久保 長距離ブロックも、「まあ太田でしょ」みたいな感じだったよね。

太田 「まあ自分でしょ」みたいな感じでした(笑)。

――主将になってから、ご自身にとって変わったことなどはありますか

太田 前に比べたら全体を見るようにはなったかなと。今までは自分のことばかりでしたが、今は4年生としての立場でもありますし、キャプテンとしての立場でもあるので、下の方もしっかり見ながらやるようになりました。だからといって、自分のことも疎かにならないようには気をつけています。

西久保 主将になってというより幹部になったことで、チームを引っ張って、チームの方針を決めていかなくてはならない立場になりました。今までは一人の部員としてチームに貢献したいという考えがあったのですが、今は僕たちの考えや僕たちがやりたいことがそのままチームに表れるという立場になったのですごく責任を感じています。僕たちが主導になって動いているんだという意味で襟を正すというか、幹部としてやらなければならないことに対しても責任を感じるようになりました。

――お互いに対する印象を教えてください

太田 そんなにすごく関わるわけではないですが、あくまで印象として言うならば、キャプテンという立場でしっかりしていそうに見えて意外と抜けている部分が多いです(笑)。そういったところは西久保らしいなと思いますね。競技面に関しては1年生の時からずっと結果を残し続けているので、本当にすごいなと思います。

――抜けているエピソードは何かありますか

太田 最近も食事を取り間違えていましたね。寝坊もちょくちょく…(笑)。

西久保 結構ポンコツで(笑)。

太田 それは1年生の時からなんですけど、相変わらずという感じですね。

西久保 そういうところもあるので、「やっぱり俺、主将じゃないだろ」と(笑)。太田は今までけがをしていた中だったので、駅伝主将として駅伝のチームをまとめる大変さもあると思うのですが、この前記録会で自己ベストを出して箔が付いたのではないかと思います。あとは、もともとビシッと言うことを言うキャラというか、クールというか、そういうイメージですね。幹部で話したりすると僕もビシッと言われてしまうことが多いのですが、それはある意味頼りにしていて、意見を言ってくれるのでありがたいと思っています。

――西久保選手から見た長距離ブロック、太田選手から見た短距離ブロックの印象はいかがでしょうか

西久保 長距離ブロックは最近になってベストを出す選手が多いなと。各学年にエース級がいて、それが学年の中心になっていっていると思います。あとは、これから関カレや予選会があったりして、全体としての記録も上げていかなくてはいけないと思っていると思うので、ここからまた頑張ってもらいたいなと思っています。

太田 短距離ブロックは去年と比べると4年生の人数が多いので、そういった面で今年は4年生が前に立ってチームを引っ張っているなという印象はあります。ただ短距離ブロックと言っても短短、短長、中距離などバラバラでやっていて、正直僕も全部把握しているわけではないので難しいところではありますね。

――ブロックを越えての関わりはあまりないのでしょうか

西久保 そうですね。中距離ブロックだと長距離ブロックの何人かと練習することはあるのですが、やはり短距離、長距離となると完全にメニューも違うので。

太田 全く関わらないよね。中距離、短長くらいまでだったら一緒に流しをしてとかはありますが、短短、跳躍ブロックとなると、あっても補強とか、軽くダウンするくらいしかないですね。

――私生活の面ではいかがですか

太田 人それぞれですね。部屋に短距離ブロックと長距離ブロックがいて、そこが仲がよければというか。

西久保 普通に個人間で短長関係なく行動する者もいますが。

太田 練習上がる時間とかもあって、基本ブロックでまとまっていることが多いです。一緒にご飯に行くとかもあまりしないですね。

――違うブロック同士が同じ寮で暮らしていることは珍しいと思いますが、良さはありますか

西久保 競走部自体が長距離の選手と短距離の選手どちらもがいる部なので。他の学校だと駅伝部があったりして、お互い完全に不干渉な感じのところも多いと思うのですが、それに比べて長距離ブロックが活躍しているところを見て短距離ブロックも「あいつら頑張っているな」と思ったり応援に行ったりとかするので、そういった意味では他の学校に比べて距離が近いのかなと思います。逆に近い分お互いの嫌なところが見えてしまうこともあるのですが(笑)。

太田 今西久保が言ったことに加えて、長距離ブロックにないものを短距離ブロックが持っていたり、短距離ブロックにないものを長距離ブロックが持っている部分は少なからずあると思うので、陸上に関してもそれ以外に関しても、知識の幅は広がると思います。そういった面では良いのかなと。ただ、短距離と長距離が完全に分かれている方を逆に知らないので、あまりわからないですね。

西久保 僕らにとっての普通が、他のところでどうなのかなという感じですね。

――違うブロックの選手と競技についてお話しされることはありますか

太田 練習についてはそんなにないですね。今は短距離ブロックはグランプリ(シリーズ)が多いので、その結果を見て選手に「良かったね」と声をかけることはありますが、それぐらいで。大会結果についての話ぐらいですかね。

西久保 僕は中距離なので、中距離よりの長距離の選手から、「こういう練習とか一緒にどうですか」と言われることはあるのですが、そのくらいですかね。

「お互いの『つながり』をもっと強く」(西久保)

太田は駅伝主将として長距離ブロックをけん引する

――今年の競走部のスローガンが「つながりを深め、強い早稲田の復活へ」ですが、これはどのような経緯で決まったのでしょうか

太田 (スローガンは)「つながり」だけだよね?(笑)

西久保 本当は「つながり」だけで、他はプラスアルファで付けた感じなんですけど(笑)。去年はリレーや駅伝であまりいい結果が残せなかったので、僕らの代でもう一回チームを立て直そうと思った時に、やはり縦の関係や横の関係など、そのようなつながりをもう一回見直して、僕たちのチームについてお互いに確認しあったりすることを大事にしていきたいなと思いました。その時に「つながり」という言葉がしっくりきたので、それをチームの目標として掲げています。各大会ごとの具体的な目標ももちろんあるですが、その目標を達成するために、お互いのつながりをもっと強くしていこうという意味で「つながり」というスローガンを立てています。

――どなたが考えた言葉なのでしょうか

太田 学年で話し合った感じです。

西久保 僕らの学年で、4年生で考えました。

――つながりを深めるための具体的な取り組みはされていますか

西久保 今までブロック間のミーティングはそんなに多くなかったので、短長ブロック、短短ブロック、中距離ブロック、リレーはリレーなど、そのような細かいブロックでまずお互いがどういうふうにやっているのか意見を出し合う環境をつくってみました。あとは学年ごとに目標を考えてもらって、お互いがその目標に向けてできているのかというのを確認してやってもらっています。

――その取り組みの成果は今のところ実感されていますか

西久保 実感しているところもあれば、まだまだこれからだというところもあるかなという感じです。

――昨年の関カレをチームとして振り返っていかがでしょうか

太田 ちょくちょく取りこぼしてしまったかなと。長距離ブロックとしては、複数入賞が3000メートル障害ぐらいしかなかったので、取れるところはもう少しあったかなと全体的には思いました。

西久保 短距離ブロックは、100メートルや200メートルなどの短い距離や4継(4×100メートルリレー)で得点がなくて。早稲田の強みというのはもともとそういうところにあるはずだったので、そこで点を取れなかったというのは問題だったと思っています。でも今年は調子が上がってきているメンバーが多いので、期待できるかなと思います。

――ご自身についてはいかがですか

太田 僕は2種目(1万メートルと5000メートル)あって、1個(5000メートル)しか入賞できなかったので、最低限という感じですね。

西久保 自分は800メートルで優勝することができたのですが、1年生の時に勝って2年生で勝てなかった分、3年生ではもう一回勝たなければはいけないなという思いもあったので、責任が果たせたかなと思います。あと去年はマイルも走っていたのですが、マイルで3位に入れたのは、その時の状態からしてみればすごく良かったのかなと思っています。ただ今年は下級生中心のチームになってきていて、応援する側に回ると思うので全力で応援したいと思います。

――今年の関カレでのチームとしての目標を教えていただけますか

西久保 トラック優勝です。

――女子部の目標を教えていただけますか

西久保 関カレは総合5位です。

――ご自身以外で注目している選手はいらっしゃいますか

太田 僕はハーフ(マラソン)組ですね。彼らは一般入試組なのですが、真柄(光佑、スポ4=埼玉・西武学園文理)は去年入賞しているので去年超えを期待しているし、他の2人(伊澤優人、社4=千葉・東海大浦安、三上多聞、商4=東京・早実)に関しても初めてのエンジとはいえ冬からコンスタントに結果も残しつつあるので、ここで一発やってくれるかなと思っています。

西久保 100メートルで1年生の三浦が短距離ブロックの中では今一番動けているかなと思うので、スプリントが速い早稲田というのを復活させてほしいなと思っています。あとは400メートルの伊東や小久保(友裕、スポ3=愛知・桜丘)ですね。伊東は前回リレーも走っていますし、世界の舞台も経験しているので、それを今回の関カレでも生かしてもらいたいという気持ちがあります。小久保に関しては、なかなか去年まではうまくいっていなかったのですが、最近の動きだけで見れば一番動けているかなと思っていて、本人のやる気も例年以上にすごく上がってきているので、彼がどのくらい順位を取れるのかという部分は期待して見ています。

――最後に、改めてご自身の関カレでの目標を教えてください

西久保 関カレは優勝します。

太田 僕は2種目(1万メートルと5000メートル)に出るので、どちらも入賞することが最低限です。エントリーを見て留学生もわかったのですが、あわよくば表彰台を狙えればなと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 宅森咲子)

『つながり』をテーマに、関カレに挑みます!

◆西久保達也(にしくぼ・たつや)(※写真左)

1997(平9)年9月14日生まれ。176センチ、64キロ。埼玉・聖望学園高出身。スポーツ科学部4年。105代競走部主将。自己記録:800メートル1分48秒13。最近はユーチューブでバイクの動画を見ることにハマっているそうです。そんな西久保選手、昨年の関カレでは800メートルで見事王座奪還を果たしました。満を持して挑む今年も、目指すのはもちろん『優勝』。早大の頼れる主将から目が離せません!

◆太田智樹(おおた・ともき)(※写真右)

1997(平9)年10月17日生まれ。175センチ、59キロ。静岡・浜松日体高出身。スポーツ科学部4年。105代競走部駅伝主将。自己記録:5000メートル13分58秒72。1万メートル28分56秒32。最近は漫画『キングダム』を読んで歴史の勉強をしているそうです。そんな太田選手は、先月の復帰レースで5000メートル13分台に突入。観客の度肝を抜きました。波に乗っている太田選手に期待がかかります!