日本グランプリシリーズの延岡大会、ゴールデンゲームズinのべおかが今年も宮崎県延岡市の西階総合運動公園陸上競技場で開催された。トラックの間近で選手を見ることができ、ブリキの看板を叩いて応援するなどユニークな方法が用いられ盛り上がりを見せるこの大会。国内のトップ選手が多く出場し、毎年好記録がマークされることでも知られている。早大からは井川龍人(スポ1=熊本・九州学院)、中谷雄飛(スポ2=長野・佐久長聖)の二人が出場し、強豪選手を相手に果敢に挑んでいった。
5000メートルに出場した井川が鮮烈なデビューを果たした。「組でトップを取り、13分55秒を切ること」を目標にレースに臨んだ井川。序盤から13分台を狙える好ペースで推移したが、「ずっと楽だった」と余裕のある表情のまま、集団の中ほどでレースを展開させる。400メートル68秒前後のペースのまま15人近くの大集団で進んでいったが動きが出たのは4000メートル手前。「前に出たくてうずうずしていた」という井川は一気に2番手付近に位置取りを移すとペースを1周65秒まで上げる。先頭に立った残り300メートルからは持ち味のラストスパートをさく裂させ、1着でフィニッシュ。打ち出した13分54秒59のタイムは、九州学院高2年時の総体でマークした14分00秒46を約2年ぶりに更新するものだ。「しっかりと13分台の壁を突破できてよかったです」。初めての早大のユニホームをまとって臨んだ試合で「憧れのWの文字が着れて走る前からテンションが上がっていた」とわくわくした気持ちも好走を後押しした。狙い通りに組トップと13分55秒切りのタイムを収めた井川。トラックシーズンでの活躍を誓うルーキーから目が離せない。
ラストスパートに備える井川。勝負強さを見せつけた
「走りとしては40点くらい」。中谷は1万メートルのレース後、自身の走りを厳しく評価した。大幅な自己ベストになる28分20秒から30秒を狙っていた中谷はペースメーカーが引っ張る1キロ2分50秒を切るペースに積極的に付いて行く。「動き出しは良かった」(中谷)。集中した目線で集団の中ほどに位置を取り様子を伺った。しかし、5000メートルを14分10秒前後で通過すると「疲れが一気に来てしまった」と徐々に後れを取ってしまう。単独走となってからはペースの落ち込みを1キロ3分を切る程度に抑えたものの、前半のペースを戻すまでには至らず、28分50秒77のタイムでレースを終えた。これまでの自己記録、29分07秒77を大きく更新し、28分台という学生トップランナーの一つの指標を手にした中谷だが、見据えていたのはさらに上。「このタイムは遅い」と全く納得のいかない様子だった。スタミナや一人でペースを維持していくことに足りない点を挙げた中谷。その課題が克服されれば、一皮向けた走りを見せてくれるに違いない。
20秒近く自己記録を更新した中谷だが、自身の走りを厳しく振り返った
井川、中谷共に自己記録を更新した一戦となったが、その捉え方は対照的だった。井川はもちろん、記録には不満の中谷も、自己記録を更新するというかたちで確実に成長していることを示す結果となった。次の大きなトラックレースは来たる5月末に開催される関東学生対校選手権。さらにパワーアップしてエンジのユニホームを着た姿に期待したい。
(記事、写真 岡部稜)
結果
▽男子5000メートルF組
井川龍人(スポ1=熊本・九州学院)13分54秒59(1着)自己新記録
▽男子1万メートル
中谷雄飛(スポ2=長野・佐久長聖)28分50秒77(10位)自己新記録
コメント
相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)
――きょうのレースに井川選手と中谷選手の二人が出場した狙いというのは
記録が狙える試合ですので、チームの中でも状態の良い二人を選んで出場させました。
――井川選手の結果についてはいかがですか
久しぶりのトラックレースでもありましたし、けがをところどころしながらの調整だったので、とりあえずは試合勘を取り戻すことが最優先と考えていました。タイムよりも組の中で良い順位に入ってくるかというところに課題を設定してスタートして、結果的には組トップを取れましたし、タイムも自己ベストで最高のかたちでできたのかと思います。
――監督から見て井川選手を評価すると
本番の集中力ですね。練習でやっている以上のものが出せるというところと、レースを見てて勝負強いですね。勘が鋭いというか、勝負所をよくわかっているなというのをきょう改めて感じました。このあとのインカレといった順位がかかってくるレースでも力が発揮されるのを期待したいなと思います。
――では中谷選手の結果に関してはいかがでしょうか
春から試合を重ねながらやってきて、試合が続いていたので疲労が心配だったんですけど、その中でも積極的に速いペースにチャレンジして、後半は苦しくなりましたけど、しっかりまとめて自己ベストというかたちで終わったので、最低限の走りはしたかと思います。でも目指しているところは本人も私ももっと高いところではあったので、そこに関しては課題が見つかったことが、きょうのレースの中では悔しかったですけど、課題が見つかってまたがんばれるのかなというふうに思います。
――現在の長距離ブロックの状態、雰囲気はいかがですか
春にだいたいみんな2レース走って、自己ベストもたくさん出てきましたし、今主力の故障者がほぼいなくて、ほぼゼロの状態を維持できていますので、チームの雰囲気としては良くなってきています。ただ、インカレや予選会を考えたときには、けがをしないということだけでは先に進めないので、そこからさらにチームの競争が高いレベルで行われることを期待したいと思います。
――駅伝主将の太田智樹選手(スポ4=静岡・浜松日体)は自己ベストを更新しました
井川同様に復帰レースとして試合勘を取り戻す一戦目でいきなり自己ベストで走ったので、さすが勝負強いなと思いました。このあとはけがをしないでインカレのスタートラインに立たせることを目標にして準備したいと思います。
――間近に迫った関東学生対校選手権では長距離ブロックのどんな活躍を考えていますか
去年は入賞者が少なく終わってしまいました。インカレの結果がその後のトラックシーズン全体や駅伝シーズンに響いてくるのは明確なので、特に春、箱根(東京箱根間往復大学駅伝)が終わってからけがでチームがもたついたぶん、ここに来て右肩上がりに来ているのは良い材料ですけど、ここに満足することなく、全員が入賞するくらいのつもりで臨みたいと思います。
中谷雄飛(スポ3=長野・佐久長聖)
――きょうのレースの目標は
ベストをしっかり更新することで、あわよくば28分20秒から30秒と大幅に自己ベストを更新できればよかったと思っていました。
――そのタイムは日本選手権の標準を狙ってということですか
はい。出るからにはそこを狙っていきたいと思っていました。
――調子はいかがでしたか
ちょっとイマイチというか、あまり上がり切らないというか。良い練習はできていたんですけど、どうしても二週間前の日体大(日体大長距離競技会)を終えてから疲労が出てしまいました。なのでこの二週間はしっかりと溜めをつくりながらスピードを戻すというかたちできょうまで合われてきました。
――その疲労は走っているときには感じていましたか
動き出しはすごく良かったので、疲労はそこまでないと感じて、良い感覚で走れていたんですけど、5000メートルを越えてから一気に(疲れが来ました)。今まで入ったことのないペースだったので、きつくなってしまって、そこからなかなか走れませんでした。
――ハイペースは想定していましたか
そうですね。ペースメーカーもいるということだったので、14分10秒、1キロ2分50秒で行くと聞いていたので、そこは念頭に置いて走りました。
――5000メートルの通過は実際のとおり14分10秒くらいでしたが、このあたりまでの走りについては
二週間前の日体大では全力で走って14分07秒で、今回は手元で14分10秒を切るくらいで行けたので、調子は悪くないし、しっかり動けている感じはしたので、もしかしたら行けるかなというのはありました。
――後半は前の選手を徐々に抜かしていきましたが、その走りに関しては
集団が途切れ途切れになってしまって、どうしても前を追う展開ができなくなってしまったので、自分から行こうと思って走りました。疲労はあったんですけど、体自体はきつい中である程度動いていたので、とにかく最後まで諦めずに走りました。
――自己記録を20秒ほど更新するタイムになりました
あんまり、特にピンと来ていないというか。僕自身狙っていたものがもう少し上だったのでこのタイムは遅いかなと思いますし、納得もしていません。走りに点数を付けるとしても40点くらいかなと思います。
――40点ということで、足りなかったものとは
スタミナや体力が箱根(東京箱根間往復大学駅伝)が終わってから落ちている感じがありましたし、一人で押していく力がまだないと感じました。
――今後の予定は
関東インカレ(関東学生対校選手権)になると思うので、ここから短い期間ではあるんですけどしっかり走りたいと思います。
井川龍人(スポ1=熊本・九州学院)
――きょうのレースの目標は
組でトップを取るというのと、インカレのA標準が13分55秒を切るタイムだったので、そのタイムを切るというのが目標でした。
――調子はいかがでしたか
直前に膝を痛めてしまって、ちょっと不安なところもあったんですけど、この一週間は練習量を落として膝も回復してきた状態だったので、良い感じで走れたと思います。
――走っているときのコンディションはいかがでしたか
ずっと楽で、最初からペースが上がっていても付いていけるかなと思えるくらい余裕を持って走れていたので、良いレースができたと思います。
――最後まで余裕という感じでしたか
はい。そうですね。
――終盤の走りに関してはいかがでしょうか
ラスト三周でペースを変えたんですけど、それまでずっとうずうずしていて、出たくて出たくてという感じでした。ラスト三周で出れば体力は持つと思ったので一気に上げて、良い終わり方になって、イメージ通りの走りができたと思います。
――自己記録を更新するタイムでしたね
高2からずっと切れていなかったタイムだったので、しっかりと13分台の壁を突破できたので良かったと思います。
――初めて早大のユニホームを着た試合となりましたが、いかがでしたか
まだ白エンジではあるんですけど、憧れのWの文字を着れたので走る前からテンションが上がってました。すごく良かったです!
――今後の試合に向けて目標をお願いします
関カレ(関東学生対校選手権)も全カレ(日本学生対校選手権)もA標準を切ることができたので、トラックシーズンはしっかりその二つで表彰台に登るというのを目標に向かってがんばりたいと思います。