昨年の関カレ(関東学生対校選手権)では、1万メートル競歩の4位入賞、ハーフマラソンの5、6位入賞、3000メートル障害の8位入賞で終わった男子長距離ブロック。今年は全員入賞を目標に掲げ、絶好調の太田智樹(スポ3=静岡・浜松日体)やルーキーを加えた全13選手がエントリーされた。今回はチームを支える、清水歓太駅伝主将(スポ4=群馬・中央中教校)と井上翔太マネージャー(スポ4=愛知・千種)のお二人に新チーム始動からこれまでを振り返っていただき、目前に迫る関カレへの意気込みを伺った。
※この取材は5月9日に行われたものです。
「雰囲気的には悪くない」(清水)
対談は終始和やかな雰囲気で行われた
――東京箱根間往復駅伝競走(箱根)が終わってからのチームの成績を振り返っていかがですか
清水 チームの成績的に言うと、箱根が終わって新チームになってからあまりこれとしていい成績を残せてはいない気がしているんですけど、個々で見ると、1年生が入ってきて、その1年生が結果出してくれたりとか、太田(智樹、スポ3=静岡・浜松日体)が強いのはわかっていたんですけど、ちゃんと結果を出してくれているので、個々の成長は見られるんですけど、全員足並みそろって結果を出すという感じではないかなと思います。
井上 歓太も言ったようにチームで目指していったのが立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)だったんですけど、そこで思ったような結果が出なかったのと、故障者が多くて、全員足並みそろえて出られなかったというのが一番良くなかったところなのかなと思っています。その中でも1年生も入ってきて、もともと強い選手たちなので、その勢いのままいってくれていますしそれに刺激を受けて上級生もしっかりと練習を積めるようになってきて。1番目立っているのは智樹なんですけど、前回の法政大学記録会とかでも真柄(光佑、スポ3=埼玉・西武文理)が結構いい記録で走ってきたりして、全体として足並みがそろっているというにはまだもうちょっと足りないかなと思うんですけど、少しずつ要素としては出てきているのではないかなと思います。
――最近の部内の雰囲気はいかがですか
清水 最近はケガ人が春先に比べて減ったので、まあAチームとBチームとかで狙うシートは違いますけど、チームごとに、Aチームであれば関カレ(関東学生対校選手権)に向かってみんなで頑張ろうという雰囲気も出てきてはいますし、Bチーム以下も自分たちが記録会でどうやって結果を出すかというのをみんなで切磋琢磨(せっさたくま)してやっているのを見ているので、チーム全体としても故障者があまりいないということも含めていい方向に行っているとは思います。雰囲気的には悪くないです。
井上 もともと明るいチームで、他の大学に比べても相当明るいチームなので、沈み込んでしまうようなチームではもともとないのでどんな状況でも明るくやれていると思っています。その明るさがいい方向に行くか悪い方向に行くかというのは個々の活動によって来ると思うんですけど、今現在としては関東インカレに向けて全員一丸となってやることができているので、チームの雰囲気としては悪くないのではないかなと思います。
――新入生が入ってから少し時間が経ちましたが、様子はいかがですか
清水 本当に強い新入生なので、練習とかでは上級生が結構刺激をもらっているなというのは思っていて。今まで僕らが何年かこの大学にいて常識というかなんとなく感じていたことを、新入生がいろいろいい意味で取っ払ってくれていて、いい新しい風が吹いているなと感じています。主には半澤(黎斗、スポ1=福島・学法石川)と中谷(雄飛、スポ1=長野・佐久長聖)と千明(龍之佑、スポ1=群馬・東農大二)の三人が強いんですけど、他の1年生もその三人がいるから引っ張られているような気がするので、あの三人がいい役割をしてくれているかなと思います。
井上 やっぱりその三人が強いので、たぶん例年に比べても新入生が僕らの輪の中になじむのがすごく早かったのではないかなと思ってます。鴨川合宿から何人か参加していてその段階でもうワセダに染まっていったというかいい感じでチームに合流してくれたなと感じていて、4月から一般入試組もどんどん入ってきたんですけど、先に入っていた新入生の土台があったので、その人たちもうまくチームになじむことができているので新入生としてはいいチームの入り方をしたのではないかなと思います。
――最近の練習内容は
清水 Aチームに関しては関カレまで3週間準備していこうという感じで、B、Cは試合が何個かあるのでその試合に向けてという感じですね。
――主将や駅伝主務になられて自分の中で変わったことはありますか
清水 自分のことだけではなくて周りのことも見なくてはいけないなと、実際に見られているかいないかは別として、そういう気持ちは常にありますね。例えば結果が悪かったとかうまく練習ができていない子とかをどうフォローしてあげようかなというのは常に考えています。僕も下級生のときは練習がうまくいかないときが多かったし、タイムが出なかった時期もかなりあったので、そのときに上級生に声掛けられたら嬉しいなと思ったし声も掛けてもらったので、そういう経験が生きればいいかなと、常にその辺は気を使ってやりたいなと思っています。
井上 最初の方は鈴木皐平さん(平30教卒=愛知・時習館)と中山智裕さん(平30スポ卒=長野・佐久長聖)が一気に抜けて、駅伝関係のことをやるのが僕一人になってしまってすごく大変だったんですけど、それも今ちょっと落ち着いてきて、4月5月くらいからはチームをゆっくり見られる時間が増えたなと感じています。心掛けていることとしては、どうしてもチームを見るときはAチームを見てしまうと思うんですけど、僕自身選手からマネージャーになった身なので、苦しんでいる選手、特にBチームCチームにできるだけ目を向けて、何か声掛けられることがあったら声掛けてあげたいなというところはマネージャーになってからも駅伝主務になってからもずっと意識しています。
「僕らの代は静か」(清水)
笑顔で質問に答える清水
――ご自身の立場から見て各学年のカラーはありますか
清水 僕らの代は静かだよね。
井上 静かだね。おとなしいです。そうじゃないのは僕と歓太くらいですかね(笑)。
清水 あと永山(博基、スポ4=鹿児島実)もね。
井上 そうだ(笑)。まあ全体で見たら相当静かだと思います。去年の先輩とかもわりとおとなしい学年で…。
清水 おとなしいに入るのかな。
井上 おとなしいでしょ。2年前とかを見ているから、平さん(和真、平29スポ卒=現カネボウ)とか本当に…あの代がすごかったから。
清水 僕らはおとなしいです。1個下はうるさいです。
井上 それこそ1個下が平さんたちみたいな雰囲気です。学年関係なくぐいぐい来るので…。常に騒いでいますね。
清水 そっちに引っ張られている感じも僕はしますけど…(笑)。
井上 あ、俺らが?(笑)
清水 うん(笑)。どちらかというとこの二人はそっちに行きかけているというか(笑)。
井上 そっちのほうが合っているというか、楽だから(笑)。でも全体で見たら僕らはやっぱりおとなしいですね。下は騒がしくて。2年は…つかみづらい(笑)。
清水 2年はまだ出せてないです。結構うまくいっていない子が多い、苦しんでいる子が多いというのもあって…今のまま見るんだったらどちらかと言うと僕らと同じような感じで、落ち着いた学年ではあるかなと思いますね。1年生はどうなんだろう。
井上 1年生は…クセが強い。
清水 どっちかというとうるさい方に行きそうな気がします。
井上 半澤がうるさいんですよね(笑)。
一同 (笑)。
井上 いい意味でなんですけど(笑)。まとめてくれているので。
清水 結構フレンドリーで、もちろん同級生の下の子とも全然話したりしているので、すごくつなぎ役をやってくれている気がします。
――一番頭がいい、面白い、マイペース、など特徴のある選手を挙げるとすれば
井上 頭がいいにもいろいろ種類がありますよね。勉強できるのは望(岡田、商4=東京・国学院久我山)だし…。生きていく力があるのは永山だと思うんですよ。うーん、智樹とかじゃない?めっちゃ頭いいと思うあいつ。
清水 確かに。生きる力あるなと思うのは大木(皓太、スポ3=千葉・成田)とか。
井上 大木はもう適当に生きてたら全部うまくいくタイプだと思うので。面白いのは…多聞(三上、商3=東京・早実)。
清水 (笑)。
井上 多聞は別に人間自体が面白いというよりは見てて面白いというか(笑)。変わったことするんですよね、見てて飽きないです。あと誰だろう、大木、真柄、遠藤(宏夢、商3=東京・国学院久我山)じゃない?俺あいつら好きだわ。
清水 それは個人的なアレが入ってるじゃん(笑)。まあそれはわかるけど。でも結構1年生とかでも中谷とかは速いけどいじられキャラで。
井上 不思議ちゃんですね。
清水 千明もマイペースで…みんな変わってますね(笑)。
「僕たちの代から第一歩」(井上)
真剣に質問に答える井上
――では競技の話に戻らせていただきます。清水選手が駅伝主将に決まった経緯を改めて教えていただけますか
清水 最終的には立候補というかたちでした。僕自身も駅伝主将になることによって試合に向けての気持ちが変わったりだとか自分の中で責任を持つことで自分自身も成長できるし変われるのではないかと思ったので(立候補しました)。そんなに大変じゃないわけがないので、生半可な気持ちで受けてはいけないという思いはありましたけど、自分でやると決めてからみんなに聞いて、みんなも薦められると言ってくれたのでそのまま決まったという感じです。
――井上さんから見て清水選手はどんな主将ですか
井上 僕が見てきた高田さん(康暉、平28スポ卒=現住友電工)、平さん、安井さん(平30スポ卒=現トヨタ自動車)の中では一番下からもしゃべりかけやすいというか、もともとオープンな性格なので、いい意味でキャプテンらしくないところが一番キャプテンとしていいところではないかと思っていて。キャプテンとしていろんな相談もたぶん受けていますし、その上でミーティングとかで締めるところは締めて、言わなくてはいけないところは言って、練習メニューも歓太中心で組んでもらっていて、やらなくてはいけないことはしっかりやって、その上でキャプテンだけどちょっと違うよねというところが今の歓太のいいところなのではないかなと思います。
――井上さんは駅伝主務という役割だそうですが
井上 一応、肩書きはないですけど名目上そんな感じです。
――井上さんは部内でどんな存在ですか
清水 結局僕らは選手なので、選手間で見えないところとか言いにくいこととかは絶対にあって、それこそさっき井上が言っていましたけど僕もAチームにいるのでAチームの選手しか見えていなかったりということが結構あるんですけど、井上は井上で違う立場で色んな子とかかわってもらって結構ガツガツ言ってくれるので、僕はあんまりちゃんと怒ることとかしないので、その分ちょっとだらしない選手とかには言ってくれたりしているので、手に負えない部分をやってもらっているなと思っています。あとそういう話とは別に、前の先輩が2人マネージャーがいて、今年1人になってなんでもやっている状況で、本当に大変だと思うんですがそれでも特に何も言わずにやってくれているところがすごくありがたいなと思っています。
――今年のスローガン『自律した個から強い早稲田』というのはどなたが考えたものですか
清水 田村(優主務、スポ4=埼玉・早大本庄)と古谷(拓夢主将、スポ4=神奈川・相洋)で話し合って、ぽっと最初出たらしくて、学年ミーティングでみんなもそれでいこうとなりました。
――初めて聞いたときにどう思われましたか
清水 僕もそういう感じがいいと思っていて、個人個人が強くなって結果的にチームが強くなるのが一番いいなと思っていたので、同じことかなと思いました。
井上 単純にかっこいいなと思いました、目標自体が。
――『学生三大駅伝3位以内』という目標はどなたが考えられたものですか
井上 学年ですね。長距離(ブロック)で話し合って。
――その経緯は
井上 1月3日の夜に慰労会が終わって寮に全員で集まって、食堂で夜遅くまで話していたんですけど、そこで新チームの目標を決めて、そのときですね。
清水 毎年出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)を落としているというか、ミスしているので、個人的にはちゃんと3つ固めた順位を残したいなと思って。何も誰も言わないですけど、なんとなく出雲駅伝を軽視している気がしているので、それはなくしたいというか、まあ時期とかそれまでの状況的にそうなってしまうのはしょうがないような感じではあるんですけど、3つの駅伝は僕は同じ駅伝だと思っているので、最初からいいスタートをしっかり切れればもっといい駅伝シーズンになるかもしれないし、いいに越したことはないので、だから箱根ももちろん頑張りたいし下の選手も上の選手もチーム一丸となって同じ行動をするのは箱根で一番大きいんですけど、でも今年のチームは出雲からしっかり順位狙っていこうというという話でした。あとは現実とのすり合わせで、果たして三冠できるチームなのかといったときに、現状を考えたら三冠は今のままではきついかなと。確実に3番以内を取って、1年生が強いので、来年以降につながるチームにできればいいなと僕らの中では話して決めました。
井上 個人的には三強と呼ばれたくて。今までずっと去年だったら青学大、神奈川大、東海大が三強と呼ばれていてそこに東洋大が全日本(全日本大学駅伝対校選手権)、箱根と食い込んでいって。3位を目指すにしても優勝を目指すにしてもそこの一員に入っていないと、まず下馬評の時点で勝っておかないと、スタートの段階でのチームの立ち位置というのが変わってくると思うので、そういった点から考えても全部の駅伝で3位以内というのは取りたいし取らなくてはいけないのではないかなと思っています。
「(ハーフマラソンで)せめて入賞はしたい」(清水)
昨年の関カレでは清水はハーフマラソン20位と入賞できなかった
――ここから関カレに関していくつかお伺いしたいのですが、まず昨年の関カレを長距離ブロックに関して振り返っていかがでしたか
井上 よくなかったです。ハーフだけだよね優勝したのは。あと大木が8位か。
清水 全体的にいいとは言えないですね。
――今年の目標は
清水 チーム発足したときから、去年関カレが良くなかったことが駅伝につながってしまったのではないかという話が結構出ていて、僕らのチームはそんなに層が厚いわけではないので、関カレに出るような選手、主にAチームが関カレで自分の種目で上位に入れるような選手にならないと結局駅伝でも戦えないのではないかという話で、じゃあ全員が入賞しなくてはいけないよねとなって、目標としては全員入賞を掲げています。
――井上さんにお聞きしたいのですが、関カレで注目してほしい選手を選ぶとすればどなたになりますか
井上 まあみんな注目していると思うんですけど太田智樹、1万(メートル)と5000(メートル)にダブルエントリーになります。去年の夏からずっと調子がいいので、そろそろワセダのエースと呼ばれてもいい頃なのではないかと個人的には思っているので、そこにまず期待しているのと、まあこれもみんな思っていると思うんですけど新入生にももちろん期待していますし、逆に言うならハーフマラソンに今回遠藤と真柄の二人がエントリーされているので、二人とも初エンジになるので、1、2年の頃は結果は少しずつ残してはいるんですけど苦労してきた選手たちなので個人的に思い入れもありますしその二人には頑張ってもらいたいなと思っています。
――清水選手ご自身の目標はありますか
清水 入賞ですね。去年も入賞掲げて全然ダメだったんですけど、今年は立場的にも主将なので、僕が1年生の頃から主将はみんな入賞しているので、ちょっと自分にプレッシャーをかけていますけど(笑)。せめて入賞はしたいなという気持ちはあります。
――ありがとうございました!
(取材・編集 石塚ひなの 写真 鎌田理沙氏 ※関カレハーフマラソンの写真)
早大長距離の首脳の二人。トラックから駅伝まで二人でチームを支えます
◆清水歓太(しみず・かんた)(※写真左)
1996(平8)年5月3日生まれ。168センチ。53キロ。群馬・中央中教校出身。スポーツ科学部4年。自己記録:5000メートル14分08秒97。1万メートル29分24秒33。ハーフマラソン1時間3分08秒。駅伝主将に就任される前から何度か取材させていただいていますが、今回の対談では多くの部員を率いる主将としての表情が色濃くのぞいていました。秋の駅伝シーズンを見据え、まずは関カレでの入賞を目指します!
◆井上翔太(いのうえ・しょうた)(※写真右)
1996(平8)年11月26日生まれ。167センチ。53キロ。愛知・千種高出身。スポーツ科学部4年。駅伝主務として多量の仕事をこなす、言わば長距離ブロックのブレーン。もともとは自身も選手として早大に入部していただけに、苦しんでいる選手に人一倍寄り添えるのかもしれません。『強い早稲田』復活の第一歩へ、清水選手と共にチームをサポートしてくれることでしょう!