澄み切った空の下で、ことしも日本選手権20キロ競歩(日本選手権競歩)が行われた。男女共に日本のトップ選手が出場する中、早大からは高橋和生(社3=岩手・花巻北)、高橋雄太(スポ3=千葉・佐原)、溝口友己歩(スポ2=長野東)の三選手が参戦。このうち溝口が5位入賞を果たし、高橋雄は自己ベストを約3分更新する歩きを見せた。
集団で歩いたのは最初の1キロのみ。溝口の5位は、孤独な長旅に打ち勝ってのものだった。先頭集団の1キロの入りは4分32秒。これは、溝口が想定していたものより速いタイムであった。そこで「自分は突っ込まないようにしようと思った」(溝口)と、集団から離れ自分自身のペースを刻んでいく方向に切り替えた。そこから19キロは己との戦いだ。12キロ付近では後続の選手に追い付かれそうになったものの、なんとか振り切る。また折り返しのコーンを回るときには前後の選手の状況を確認するなど、一人旅の最中も周囲の状況の確認を事欠かなかった。溝口はそのまま5位をキープし、ゴール。日本選手権競歩の大舞台で、見事入賞圏内に入った。
給水のボトルを受け取る溝口
男子は、高橋雄が神戸の地で練習の成果を発揮した。昨年10月に行われた全日本50キロ競歩高畠で思うような結果を残せなかったため、あえてここまでレースに出場せずに調整を続け、今大会に照準を合わせてきたという高橋雄。「うまく集団を見つけて歩くことができた」(高橋雄)と本人も語るように、9キロ付近で集団に合流し良いペースで試合を進めていく。ラストは上田俊希(東京学芸大)との競り合いを制し、1時間25分10秒でフィニッシュ。自己記録を約3分縮め、2018年好スタートを切った。一方の高橋和は1時間21分30秒という目標タイムを設定し今大会に挑んだが、「いざ歩いてみると思った以上に足が重かった」(高橋和)と苦しい展開に。レース後半は少人数の集団について歩みを進めたが、最後はそこから脱落してしまう。結果として目標タイムには及ばず1時間24分11秒で日本選手権競歩を終えた。
集団を使いレースを進めた高橋雄。自己ベストを更新した
三者それぞれが、それぞれの結果を残し課題を見付けた今大会。5位入賞という好成績を残した溝口も、「今回自己ベストに届かなかったので、もう一度見直していかないといけない」(溝口)と、今回の結果に十分満足しているようではなかった。今回の結果を反省し、三人は次の大会へと歩み始めているに違いない。2018年早大競歩陣の戦いは、まだまだ始まったばかりだ。
(記事 藤岡小雪、写真 平松史帆)
結果
▽男子20キロ競歩
高橋和生(社3=岩手・花巻北) 1時間24分11秒(21位)
高橋雄太(スポ3=千葉・佐原) 1時間25分10秒(27位)自己新記録
▽女子20キロ競歩
溝口友己歩(スポ2=長野東) 1時間36分36秒(5位)
コメント
高橋和生(社3=岩手・花巻北)
――きょうの目標を教えてください
入賞は現実的に厳しいかなということもあって、1時間21分半というタイムを目標にして歩きました。
――その目標を達成するために、どのようなレースプランを立てて試合に臨みましたか
12月から距離を踏む練習をベースにしてきて、ここ1カ月はスピードをメインにやってきました。プランとしては、1キロ4分5秒ペースを刻んでいこうと思っていました。
――今回の結果はどう受け止めていますか
結構悪いタイムで歩いてしまって。最低でも自己ベストは出るかなと思っていたんですけど、予想以上に疲労が抜けきれていなくて、6キロ地点ぐらいから遅れてきてしまいました。悔しいですね。
――疲労が抜けていないとのことでしたが、調子はあまり良くなかったのでしょうか>
直近の1週間は短い練習が多くて。スピードは結構出ていて疲労は感じていないはずだったんですけど、いざ歩いてみると思った以上に足が重かったです。後半、思った以上に(タイムが)落ちてしまいました。
――きょうのレース展開を全体的に振り返っていただいて良いですか
4分5秒ペースだと序盤は一人で歩くことが多くて。後半(ペースを)上げていきたかったんですけど、後ろに追いつかれてラストは離されてしまったので、そこが悔しいですね。
――やはり、ラストで集団から脱落してしまったのが一番悔しいですか
あの集団に勝っても、タイムとしては自己ベストが出るか出ないかという感じだったんですけど、競り負けたというのは反省すべき点だと思います。
――これから一年間の目標をお願いします
学生生活ラストの年で、出る試合全てが学生最後のレースになると思うので、常に学生3番以内に入っていけるようにしていきたいです。来月も石川県の20キロの大会(全日本競歩能美大会)に出ますし、一番の目標は関カレ(関東学生対校選手権)の表彰台です。まずそこをクリアして、それから秋シーズンに照準を定めていきたいと思います。
高橋雄太(スポ4=千葉・佐原)
――いまの率直な感想を教えてください
去年の高畠(全日本50キロ競歩高畠)で情けないレースをしてしまって、そこからレースに出ずに練習をずっと積んできていました。去年は関カレ(関東学生対校選手権)、全カレ(全日本学生対校選手権)と対校戦に出場させていただいたんですが、全然結果を出せずに悔しい思いばかりしてきたんですけど、今回は練習をしっかり積めてきたという自信があったので結果的に自己記録を3分ほど更新していいかたちで2018年最初のレースを終えられたと思います。
――今大会の目標はどの辺に設定されていたのでしょうか
4分20秒ペースで押していって、1時間26分30秒を切ることを目標にしていたんですが、最初の5キロの入りが設定よりもだいぶ早くて4分10秒ペースで入ったこともあって目標よりも上のペースで歩けていたんですけど、そこからは上手く集団を見つけて歩くことができました。最後の5キロは落ち込んでしまったんですけど、それでもうまくペースダウンを最小限に抑えられたので、25分台で歩けたことは自分の中で収穫になったと思います。
――最後は東京学芸大の選手と2人で歩かれていました
最後はだんだん集団もバラけていて、競ったときに負けないことが長距離ブロックの目標でもあったのでうまくラスト1キロまでは力を溜めておいて離せるところで離すということで競り勝てたので、良かったと思います。
――今後の目標はありますか
また3月に20キロのレースがあるのでそこでもう一度今回のタイムが偶然ではないということを証明した上で4年生で最後の関カレ、全カレで入賞を狙って、得点で早大のトラック優勝に貢献できるように、もう一度体を作り直してレースに臨んでいきたいと思います。
溝口友己歩(スポ2=長野東)
――いまの率直な感想を教えてください
入賞できたのは良かったんですが、思うようなタイムがまだまだ出ないので今回自己ベストにも届かなかったので、もう一度見直していかないといけないと思います。
――今大会の目標はどの辺に設定されていたのでしょうか
1時間34分台は最低でも出したいなと思っていたので1時間36分半もかかってしまったことはとても悔しいです。
――1キロくらいまでは集団でいました
1キロまでは自分にとって早くて、一緒に着いていけたらいいなと思っていた選手が、先頭に着いていったので驚いて。自分は突っ込まないようにしようと思っていました。
――どの辺から、自分のペースに戻ったのでしょうか
1キロ通過して速いと思ったところですね。
――終始、単独走でしたが、そちらはいかがでしたか
中盤から後半にかけてあまり(ペースを)落とさないようにという意識で歩いていたんですが、気持ちではそうだったんですが、実際には落ちてしまって。
――周りの様子というのは気づいていましたか
コーンを回るときに確認していました。やはり逃げようと思って必死でした。
――今後の目標はありますか
来月の3月18日に学生選手権があるので、そこで(1時間)33分台、30分台前半を出せるように頑張りたいと思います。