『箱根0区』。東京箱根間往復大学駅伝(箱根)を2日後に控えた大晦日、箱根のエントリーメンバーから外れた選手が出場する年末の早稲田大学長距離競技会は、そうとも称される。この競技会は『漢祭り』の愛称で親しまれ、部内トップでゴールした選手はことしの『漢』の称号を手にする。小雪が舞う、厳しい寒さの中行われた2017年最後の競技会には、城西大、東京国際大、中大の選手も参加。例年以上に活気が満ちた雰囲気であった。5000メートル、1万メートルの2種目が行われ、早大の選手はそろって1万メートルのレースに挑んだ。
5000メートルに続き、正午にスタートした1万メートルには早大から7名が出場。東京国際大の選手が先頭を走り、レースペースを作った。初めは一塊だった隊列も3000メートル過ぎから縦長に変わったが、尼子風斗(スポ2=神奈川・鎌倉学園)、三上多聞(商2=東京・早実)の2年生コンビは積極的に前方に位置取りをする。1000メートルあたりほぼ3分のラップを刻み続け、順調にレースを進めていった。そのまま5000メートルを15分3秒で通過。ここで目標としていた29分台達成のためには少しペースが遅いと感じた尼子は、徐々に前方に上がっていく。5800メートル地点で先頭に立つと集団を引っ張った。しかし、そのまま引っ張り切ることはできず7000メートル手前、後ろからのペースアップには対応できない。一時先頭に立ったことで体力を使い、残り3000メートルからのラップは、1キロ3分10秒前後で4番手まで順位を下げた。しかし周りからの大きな声援を受け、ラスト1周はしっかりスパート。30分25秒31のタイムで早大トップを守り切り、ことしの『漢』に輝いた。
一時は先頭で集団を引っ張る積極性を見せた尼子
今レースに出場した1年生は、3名とも大学入学後初めての1万メートルであった。その中で積極的な走りを見せたのは本郷諒(商1=岡山城東)。3000メートル過ぎから2つに分かれた集団の第2グループで淡々と走り、6000メートルは18分23秒前後で通過する。その後8000メートル付近では、前方からこぼれてきた三上に6秒差まで迫り、後半の粘り強さを見せた。最後はチーム内3番の30分58秒25でフィニッシュ。来年以降の活躍に期待したい。
後半の走りが光った本郷
「最後まで!」、「まだいけるぞ!」――。年の瀬の静かな早大・織田幹雄記念陸上競技場に大きな声が響いた。箱根のエントリーメンバーやOBたちがトラックを囲み、全力の声援を送る。出場選手はその声援に応え、大舞台に挑む選手たちを鼓舞するべく全力で走る。それが『漢祭り』であり、『箱根0区』たるゆえんだ。「できることはまだあるはず」(尼子)。箱根路に立てなくとも、チームを全力で支えたい。そんな思いはきっとエントリーメンバーにも伝わり、力となっていくだろう。最初のタスキリレーを終え、いざ箱根へ。決戦のときがきた。
(記事 太田萌枝、写真 中村朋子、岡部稜)
結果
▽男子1万メートル
尼子風斗 30分25秒31(4着)
三上多聞 30分45秒49(9着)
本郷諒 30分58秒25(12着)
住吉宙樹 31分13秒10(16着)
平子凜太郎 31分41秒50(19着)
岡田望 31分59秒51(20着)
辻本活哉 33分19秒93(21着)
黒田賢 DNS
武士文哉 DNS
コメント
尼子風斗(スポ2=神奈川・鎌倉学園)
――きょうの目標は
箱根(東京箱根間往復大学駅伝)の16人から漏れてしまった17人目以降のレースということで。タイムとしては29分台、順位としてはまずは早大の中でのトップは当たり前で、なおかつ箱根に出る城西大さんと東京国際大さんの選手が来ていて、その2つの大学さんも同じく17人目以降の選手なので他大の選手にも勝ち切って全体でのトップが目標でした。でもタイムとしても順位としても達成できませんでした。
――レースを振り返っていただけますか
5000くらいまで集団の中にいるときはしっかりと余裕を持って3分ペースということで29分台が見える位置にいたのですが、少し集団のペースが遅いなというところで5000ちょっと前から前に出て引っ張ったところで少しきつくなってしまって。そのあと前に出られたときに対応し切れなかったのが反省です。
――周りからの応援もたくさん聞かれましたが、どういった声をかけられましたか
箱根の16人のメンバーも含めてこの寒い中応援してくれていて、コーチ(駒野亮太コーチ、平20教卒=東京・早実)や監督(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)からも『箱根0区』とか箱根の前哨戦ということも前々から言われていたので、特に応援に来てくれている16人の士気を上げていけるようなレースをしたかったのですがそれができなかったかなと思います。
――今月頭のレースで自己ベストを出されていますが、そこからきょうまでどのような取り組みをしてきましたか
前回のレースは試走とかもある練習の合間に練習の一環として出て、そのときも29分台目標で及ばなかったのですが少し手応えをつかめるレースで。今回はそのあと集中練習に合流して、箱根のメンバーが発表されてからはこの漢祭りに向けて練習していました。
――部員日記に「本流とは違ったかたちで箱根を狙う」と書かれていましたが、それはどういった意味だったのでしょうか
僕は5区の候補ということでみんなが集中練習している中で、試走に行ったり1万メートルのレースに出たり、僕と大木(皓太、スポ2=千葉・成田)は少し違う動きをさせていただきました。
――いま2年生の勢いがあると思いますが、そのあたりはいかがですか
新迫(志希、スポ2=広島・世羅)、太田(智樹、スポ2=静岡・浜松日体)に関しては去年から駅伝で活躍していますし、大木もメンバーに入ったり3000メートル障害でもトラックシーズンで活躍していてスポ推3人がすごく活躍しています。そこに加えて真柄(光佑、スポ2=埼玉・西武文理)、遠藤(宏夢、商2=東京。国学院久我山)という一般組の選手も活躍していて平子(凜太郎、創理2=福島・磐城)が15分台だったところから一気に14分半切ってきたり、伊澤(優人、社2=千葉・東海大浦安)や多聞(三上、商2=東京・早実)も少しタイムを縮めてきたりと学年として勢いがあるのは感じます。その中で自分も負けていられないという気持ちがあるので、学年の中で切磋琢磨(せっさたくま)しながら、負けないでやっていけたらいいなと思っています。
――ことしの『漢』を獲られましたが、箱根に向けてチームをどのように支えていきたいですか
走りで鼓舞するということがし切れなかったので、こうなったらあとはサポート、付き添い、ボード出しや寮での過ごし方であったり選手とのコミュニケーションの取り方であったりとできることはまだあるはずだと思っています。自分のレースはもう終わったので、箱根に向けてできるサポートを精一杯していけたらいいなと思います。