出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)まであと2日と迫った10月7日、すっかり秋めいた早稲田大学所沢キャンパスでは第2回早稲田大学長距離競技会が行われた。中距離ブロックの5名が800メートル、長距離ブロックの10名が1万メートルに出場。800メートルでは、春先の故障で苦しんできた飯島陸斗(スポ2=茨城・緑岡)が1分49秒64の自己ベストをたたき出し、笑顔を咲かせた。1万メートルでも河合裕哉(スポ4=愛知・時習館)の29分台入りを筆頭に複数選手が自己記録を更新。『出雲0区』の役割を果たした。
先に行われた800メートル。ペースメーカーを務めた齋藤雅英(スポ2=東京・早実)を先頭に400メートルを53秒で通過し、レースは速いペースで進められた。ペースメーカーが抜けてからはブロック長の谷原知己(スポ3=神奈川・希望ヶ丘)が先頭に立ち、後輩たちを引っ張る。ラスト200メートルからは全力のスパート合戦となった。最終コーナーで谷原を捕えトップに躍り出た飯島は、持ち前の大きなストライドで加速すると1着でゴールへ。チームメートから告げられた1分49秒台のタイムに顔をほころばせた。3着でフィニッシュした徳永翼(人2=岡山操山)もおよそ1秒自己ベストを更新。記録を出した当人だけでなく、ブロック全員で抱き合って喜びを分かち合う。そんな姿が非常に印象的だった。故障者も復帰し、ますます層の厚くなってきた中距離ブロック。残りのレース、そして来季の活躍に期待を寄せずにはいられない。
自己記録を更新し、ゴール後喜びを分かち合う徳永(左)と飯島
続いて行われた1万メートルには主に出雲のメンバー入りを逃した選手が出場。レースは8000メートルまでペースメーカーを務めた清水歓太(スポ3=群馬・中央中教高)を先頭に進められた。400メートルあたり71秒前後のペースを刻み続け、5000メートルを14分52秒で通過する。ここまで河合、西田綾(政経3=東京・早大学院)、吉田匠(スポ1=京都・洛南)の3名は余裕を持って足を進めてきた。しかし7000メートル手前で河合、吉田がペースダウン。集団は2つに分かれ、西田が実質単独トップを走り始めた。清水が抜けてからの残り2000メートルを粘りきりたい西田だったが、そこからの1000メートルはラップタイムを落としてしまう。その間に後方を走る吉田、河合との距離は次第に詰まっていき、迎えたラスト1周。残り300メートルで猛烈なスパートをかけた河合が前を行っていた吉田、そして西田までも抜き去り1着でフィニッシュラインへ。自身初の29分台となる29分56秒19をマークし、夏の鍛錬の成果をタイムで示してみせた。終盤まで先頭を走った西田は惜しくも30分切りとはならず、悔しさをにじませたものの同じく自己ベストでゴール。今後につながるレースとなった。
ラスト1周のスパートが光った河合
今回の競技会に参加しているということ。それは長距離ブロックのメンバーにとっては、出雲行きのチケットを手に入れられなかったことを意味する。もちろんこの状況に満足している者は1人もいないだろう。この競技会を経て、各々夏の成果と新たな課題を感じたはずだ。まだまだ駅伝シーズンは始まったばかり。「自分の狙った区間をしっかりつかみ取れるように」(河合)。次こそ、自分が――。そんな個々の思いが、チームを強くする。
(記事 太田萌枝、写真 杉野利恵)
結果
▽男子800メートル
飯島陸斗 1分49秒64(1着) 自己新記録
谷原知己 1分50秒17(2着)
徳永翼 1分51秒64(3着) 自己新記録
齋藤雅英 DNF
川島滉平 DNF
▽男子1万メートル
河合祐哉 29分56秒19(1着) 自己新記録
吉田匠 30分00秒68(2着) 自己新記録
西田稜 30分02秒56(3着) 自己新記録
谷口耕一郎 30分25秒20(4着) 自己新記録
小澤直人 30分34秒38(5着) 自己新記録
尼子風斗 31分40秒93(6着)
渕田拓臣 31分51秒60(7着) 自己新記録
清水歓太 DNF
大木皓太 DNF
真柄光佑 DNF
遠藤宏夢 DNS
コメント
河合祐哉(スポ4=愛知・時習館)
――きょうの目標はどのようなものでしたか
タイムは29分40秒を設定していて、1カ月後に大事な上尾ハーフ(上尾シティマラソン)があるので8000メートルまでは上尾の入りのイメージで余裕を持っていって、残り2000を上げていき、タイムとしては29分40前後を狙っていました。
――状態はいかがでしたか
夏合宿も2カ月間ケガなく良い練習ができていて、特に3次合宿は初めて岩手の選抜合宿に入ってAチームと一緒に良い練習ができていたので、それくらいはいけるかなとは思っていました。
――自己ベストを更新されましたが、タイムは振り返っていかがですか
うーん、やっぱりレースを振り返ってみると特に後半の5000は集団が分かれたときにときに後ろについてしまったり、1年生の吉田(匠、スポ1=京都・洛南)と2人になったときに引っ張らせてしまったりしたので、内容としてもラスト5キロ伸びきらなかった点についても、もう少しいきたかったなというのがあります。
――では悔しさの残る29分台でしょうか
悔しさはあるのですが、具体的な数字として合宿の成果が一つ出たと思っているのでそこはよかったかなと思います。
――ラスト300メートルのスパートがとても印象的でした
自分はいつもラスト300メートルからスパートするというのは決めていて、鐘がなったときに一緒にいる選手よりは速く戻ってこようというのは練習のときから意識してやっているので、今回も吉田だけではなく前にいた西田(稜、政経3=東京・早大学院)も捕えるぞという気持ちでしっかり最後上げていきました。
――あさっての出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)からついに駅伝シーズンが始まります。最後の駅伝シーズンへはどのような思いがありますか
去年までの3年間はメンバーにすら入れていなかったり、チャンスがあるのに逃してきたりというところがあって。ことしの関カレ(関東学生対校選手権)もチャンスをもらっておきながら取り逃しているので、ことしはしっかり記録会や練習からアピールしていってメンバーに入るのは最低限として、入ってからどう走るかというのを考えていかないとチームの目標も達成できないと思うので、具体的な区間だったりタイムを常に思い浮かべて最後のシーズンを過ごしたいと思います。
――次は自分が、という思いはやはり強くありますか
そうですね。出雲に行っている同期の4人はずっと活躍していて、自分は一般入試で入って入学当時は雲の上のような存在でした。でも少しずつ近づいてきているのではないかと思うので、最後は一緒に、本当の意味で肩を並べて走るではないですが、一緒に走って終わりたいなと強く思っています。
――では今後の目標をお願いします
出雲のメンバーに入れなかった時点で僕たちBチームはもう箱根(東京箱根間往復大学駅伝)をどう走るかというところが大切だと思っています。1カ月後に上尾ハーフもありますがそこで63分台前半、きょうのペースでもう10キロいくというのが求められていると思うので、あと1カ月間もう一度練習を積んでいきたいです。箱根は復路を狙っているのですが、最後なので自分の狙った区間をしっかりつかみ取れるように練習も一つ一つの試合も最後だと思ってしっかりやっていきたいです。
西田稜(政経3=東京・早大学院)
――きょうのレースは学内記録会ということでしたが、どんな目標と意気込みで臨まれましたか
監督やコーチもおっしゃっていたように、しっかりお膳立てがある状態でいかに安定した、信頼できるタイムを出せるかというところを一番念頭におきました。その中でも、ベストラップがラスト1000メートルになるようにというのを最後まで意識してやっていましたが、こういうかたちになってしまったのが一番の反省点というか、悔しいところです。そこが間違いなくここから先の一番の課題になるんじゃないかと思います。
――ではレースを振り返って、序盤はペースメーカーにけん引されての走りでした。そこまでは順調でしたか
そうですね、学内記録会は去年も出させていただいたのですが、ラスト5000(メートル)以降落ちてしまうレースが多くて。そこでまず余裕を持って行けたのが、小さな成長ですが、できたところかなと思います。
――8000メートルの通過がおよそ28分50秒で、そのまま行けば30分を切るくらいのペースでした
清水歓太(スポ3=群馬・中央中教高)がしっかり引っ張ってくれて、そこから残り5周の2000メートルという時に「よし行くぞ」という意気込みはあったのですが、心のどこかでは弱い自分がいて、弱気になってしまっていたからこういう結果になってしまったのだと思います。
――では今後の課題は単独走や、終盤のペースということでしょうか
駅伝では1人で走ることも多いのも当然ですし、ラスト競るときにどれだけ走れるかで次の走者の気持ちも違ってくると思いますので、一番大事なところを意識して、この2カ月ないし1カ月で、全日本(全日本大学駅伝対校選手権)や箱根(東京箱根間往復大学駅伝)に向かってやっていきます。
――では今後は全日本や箱根を目指してやっていく中で、記録会は出られますか
まだ分からないのですが、11月にもう一度1万メートルを走る機会があるかもしれません。そこで今回アピールし切れなかったのをチャラにするではないですが、評価をガラッと変える走りができないと学生三大駅伝には絡めないと思うので、まずは直近の試合のそこに向かって頑張っていきたいです。
吉田匠(スポ1=京都・洛南)
――この記録会での目標を教えてください
3年生の先輩の清水歓太さん(スポ3=群馬・中央中教高)に引っ張ってもらってやったレースでした。大体(5000メートルを)14分50秒ぐらいで通過してそこからもイーブンで29分30秒から40秒を出せたらなという気持ちで挑んだレースでした。
――1万メートルは大学に入って初めてだったでしょうか
はい、というか高校でも走ったことがなかったので初めてですね。
――30分00秒68というタイムとしては、どのように思いますか
正直悔しいですし、気持ち的にも出し切れなかったレースというか終わってから悔いの残るレースだったなと。出し切って終わったら実力不足っていう感じなんですけど、ちょっと心残りなレースでした。
――途中河合選手(祐哉、スポ4=愛知・時習館)と一緒に走られていましたか、引っ張っていってもらったという感じでしたか
いや、たまたま僕的には同じペースになってという感じだったので、引っ張っているつもりだとか引っ張ってもらっていると言うより、並走していたという感じでした。
――初めての1万メートルということでしたが、普段のレースと違いを感じたところはありますか
やっぱり長いので、5000メートルの時点でまだ半分で。5000メートルのまではけっこう余裕を持っていけたんですけど、6000メートルぐらいから段々きつくなってきたんで、やっぱりそういうところがまだ1万メートルに対応できてないのかなと思うし、まだ走れる体になっていないのかなとちょっと思います。
――これから駅伝シーズンになりますが、やっていきたいことはありますか
出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)もあるんですけど、全日本(全日本大学駅伝)、箱根(東京箱根間往復大学駅伝)に向けてまだ1万メートルも走れていないようじゃ。全日本とか長い距離になってくるので、そこでしっかりと走れるように長い距離を走れるレース感覚とロードなど駅伝に向けて結果を残せるように頑張っていきたいと思います。