トラック種目で勝ち切れず、悔しい敗北に

陸上競技

 雨が降り続く悪天候の中行われた第93回早慶対抗競技会(早慶戦)。早大は男子対抗400メートルで上位3位を独占し、男子対抗110メートル障害では野本周成(スポ4=愛媛・八幡浜)の大会新記録での優勝で点数を稼ぐなか、力を出し切れないトラック種目も。さらに早大からの出場者が少ないフィールド競技で差をつけられ、総合得点では慶大に大差で敗北するかたちとなった。

 男子対抗400メートルでは伊東利来也(スポ1=千葉・成田)が最後の直線で粘り勝ち、早大は上位を占めるも、伊東は「悪天候の中でももっとタイムを出していけるようにならないといけない」と課題を語り、今後の成長を見据えていた。続く男子対抗110メートル障害では野本が古谷拓夢(スポ3=神奈川・相洋)との競り合いを制し、13秒94の大会新記録で優勝。早大の強さを見せた。

エンジを着ての110メートル障害は今回が最後の野本。大会新記録で優勝と有終の美を飾った

 男子対抗1500メートルは中盤まで縦一列でレースが進む。1000メートル過ぎに中谷浩崇(慶大)がロングスパートをかけ、飯島陸斗(スポ2=茨城・緑岡)もギアを上げ懸命に追ったが、中谷がそのまま逃げ切った。最終種目の男子対抗4×200メートルリレーでは第1走者の南山義輝(スポ1=福岡・小倉東)が前半の加速で慶大を引き離すも、その後差をつめられる。第2走者の野本から第3走者の伊東へのバトンミスが決定打となり、フルメンバーでの出場とはならなかった早大はこの種目の勝利を逃した。

スパートに付いていけず、悔しい敗北となった飯島

 早慶戦は勝利とはならなかったものの、すでに意識は日本選手権リレーに向いている。「日本選手権リレーではしっかり優勝を狙ってやりたい」と石田裕介主将(スポ4=千葉・市船橋)が語るように、きょうの早慶戦や日本学生対校選手権の4×400メートルリレーでの悔しさを晴らし、日本選手権リレーでは連覇を目指す。4年生の最後の舞台を笑顔で終えてほしい。

(記事 加藤千咲、写真 萩原大勝、斉藤俊幸)

結果

◇男子対抗の部

▽100メートル

南山義輝(スポ1=福岡・小倉東)    10秒67(+0.6)(3位)

野本周成(スポ4=愛媛・八幡浜)    10秒71(+0.6)(4位)

徳山黎(スポ4=神奈川・相洋)     11秒58(+0.6)(6位)

▽400メートル

伊東利来也(スポ1=千葉・成田) 48秒21(1位)

村木渉真(スポ1=愛知・千種)  48秒25(2位)

石田裕介(スポ4=千葉・市船橋) 48秒54(3位)

▽1500メートル

飯島陸斗(スポ2=茨城・緑岡)    3分53秒65(2位)

谷原知己(スポ3=神奈川・希望ヶ丘) 3分58秒08(4位)) 自己新記録

森田将平(スポ1=広島・修道)    4分06秒45(5位)

▽110メートル障害

野本周成(スポ4=愛媛・八幡浜) 13秒94(−0.1)(1位) 大会新記録

古谷拓夢(スポ3=神奈川・相洋) 13秒95(−0.1)(1位) 大会記録タイ

金井直(スポ2=神奈川・橘)   15秒01(−0.1)(4位)

▽4×200メートルリレー

早大(南山―野本―伊東―石田裕) 1分25秒84(2位)

▽走幅跳

根岸勇太(スポ3=千葉・成田)  7メートル00(+1.5)(4位)

高内真壮(スポ2=栃木・作新学院)6メートル74(-1.1)(5位)

岡田和茂(スポ2=大阪教育大池田)6メートル69(+1.2)(6位)

▽円盤投

雨宮巧(社2=山梨・巨摩)        34メートル87(4位)

▽やり投

野本周成 44メートル66(4位)

▽対抗得点

1位 慶大 40点

2位 早大 17点

◇男子オープンの部

▽400メートル

小久保友裕(スポ1=愛知・桜丘)  DNS

宮川智安(スポ2=埼玉・早大本庄) DNS

◇女子オープンの部

▽100メートル

石井ちはる(スポ1=早稲田佐賀)  DNS

▽走高跳

大隅愛(人1=香川・高松第一)  DNS

▽走幅跳

漁野理子(スポ1=和歌山・新宮)  5メートル84(+1.9)(1位)

石井ちはる(スポ1=早稲田佐賀) 5分メートル22(+2.2)(2位)

コメント

石田裕介主将(スポ4=千葉・市船橋)

――日本学生対校選手権(全カレ)から1週間開けての大会となりましたが、どのような調整をされて、どのような意気込みで臨まれましたか

(全カレと)種目自体が違ったので、久々の400(メートル)ということで。疲れとかはなかったのでしっかり走ろうと思い、スタート練習だったり普段やらないことをして、ここまできたという感じです。

――普段の練習から変えたところというのは

ハードルだったら1台目までの入りを何歩で行くのかとかを考えてやっていたのですが、400は単純にスプリントなので、最初はどのように入っていくのかなど昔の感覚を思い出しながらやっていました。

――きょうの400メートルは早大が1、2、3位でゴールするなどの収穫もありましたが、振り返ってみていかがでしょうか

タイムからしてあまりいいものではなかったので、そこが一つ反省点かと思います。もちろん3位まで独占できたのはよかったのですが、それぞれがコンディションが悪い中でも自分のパフォーマンスをするというのがあまりできていなかったかと思います。そこはどんなコンディションでもできなきゃいけないので、僕個人もそうですが、考え直す点があるのかなと思います。

――石田選手個人の反省点というのは具体的にどのようなところでしょうか

ひさびさのセパレートレースだったので、前の選手にどこまでついて行って後半の200でどう行くかを考えていました。後半の200で巻き返すというのはヨンパ―(400メートル障害)と変わらないので、そこがラスト固くなってしまったのが、僕個人のポイントなのかなと思います。

――その後出場された4×200メートルリレーでは、難しい位置でバトンが渡ってきたと思います

フルのメンバーが出られなかったというのが、まずチームとして考えなければいけないと思います。僕が出ているから、じゃなくて全員がしっかり走れる状態を作っていかないと、やはり慶応には勝てないかなと思います。本当にチーム力で圧倒的に負けていたと思うので、そこがバトンミスだったりとかで現れたんだと思います。

――もう少しでチームの引退試合である日本選手権リレーがあります

ことし1年は『総力戦』だと思っていたので、一人一人がしっかり自分のパフォーマンスをしっかりしないと周りには勝てないと思っていました。ただそれがいつも大会の前になってかみ合わなくなることが多く、本当にそこが対校戦で勝ち切れない部分だったと思います。残り少ない期間での僕の仕事として、チームをまとめるということは変わらないので、主将としてしっかり後輩につなげることができればいいなと。日本選手権リレーでは全カレのような失態は犯せないので、しっかり優勝を狙ってやりたいです。

野本周成(スポ4=愛媛・八幡浜)

――全カレ(日本学生対校選手権)から1週間経っての試合でしたが、調子はいかがでしたか

全カレではそんなに調子がよくなかったので、調子は変わっていないと思うのですが、個人としては国体(国民体育大会)に合わせてやるつもりで、大きく練習メニューを落としてここに調子を合わせたというわけではなかったです。

――エンジのユニフォームを着て臨む最後の110メートル障害は悪天候のなか、大会記録で優勝しました

去年までは自分なりにいいタイムが出せていて、今年は4年生ということもあって、自分のタイムはもちろんなのですが、古谷(拓夢、スポ3=神奈川・相洋)と金井(直、スポ2=神奈川・橘)をどうやって2番3番に入れられるかということをことしは考えていました。

――自身のレースについてはいかがでしたか

全カレからあまり変えられなかったと思います。踏み切りが浮いてしまうのは今回は大丈夫だったのですが、インターバルが走れなかったです。

――100メートル、やり投といった専門外の種目にも出場されました。

100メートルは点が取れると思ったので、どういうふうに3番をねらっていくか考えたのですが、南山(義輝、スポ1=福岡・小倉東)がしっかり3番に入ってくれたので良かったです。やり投はあわよくばという気持ちでした。

――4×200メートルリレーでは伊東選手(利来也、スポ1=千葉・成田)へのバトンミスがありました。リレーについてはいかがでしたか

あれは僕のミスです。200メートルを走れる走力がなかったということです。ラップタイムはそこまで悪くはなかったので、同じ2走の小池(慶大)にどれだけ食らいつけるかなと思ったのですが、離されてしまったので悔しかったです。今年はスプリント能力も上がっていましたが、まだ甘かったです。

――日本選手権リレーに向けて意気込みを教えてください。

リレーは全カレで悔しい思いをして。早大でのリレーは今回は初めてではないのですが、予選があって決勝という過程を踏んで、とても盛り上がった雰囲気のなかでやるというのは初めてのことでした。今回走ってみて、僕のところでバトンを失敗して、早大でリレーを走るというのがどういうことか、やっとわかっただけに悔しい思いがすごくありました。同じ学年の徳山(黎、スポ4=神奈川・相洋)とも日本選手権リレーでは絶対に勝とうということを話したので、日本選手権リレーでは優勝を狙っていきたいと思います。

古谷拓夢(スポ3=神奈川・相洋)

――今大会の位置づけは

全カレは悔しい結果で終わってしまったので、しっかりと早大のために貢献したいと思っていました。正直、全カレ(日本学生対校選手権)で転倒してしまったときに足を痛めてしまっていたことが不安要素としてあったのですが、勝つことはできませんでしたがしっかりと2着に入ることができ、野本さんといい結果が残せたのではないか、と個人的には思います。しかし、チームとしては勝つことが出来なかったのですごく悔しさの残る試合となりました。

――ご自身のレースを振り返っていかがですか

前半は飛び出すことができてよかったと思うのですが、悪いなりに上手くまとめられたと思うので、今シーズンに関してはこれ以降は試合はないと思うのですが、しっかりと冬期(練習を)積んで、今シーズンはなかなか勝ち切ることの出来なかったレースが多くあったので口で言うのは簡単なことなのですが、冬期はしっかりと練習を積んでいきたいと思います。

――好タイムが出ましたが、ご自身のタイムについてはいかがですか

そうですね、最低限のラインだと思います。コンディションが悪いということはありましたが、本来(の調子)であれば13秒78は出せればよかったのですが、足の不安はありましたがそのような事は言い訳になってしまうのでそこは関係なくやっていけたらいいな、と思います。

――全カレからの修正点は

正直、全カレからあまり練習を積むことが出来なかったので、現状のまま走りました。

飯島陸斗(スポ2=茨城・緑岡)

――全カレ(日本学生対校選手権)から1週間できょうの試合となりましたが疲労等はいかがでしたか

全カレに(調子を)合わせた分、この早慶戦に合わせるのは難しかったのですがそれでも自分の中では調子を持ってこれた感覚はあったので、いけるかなと思っていたのですがそれでも負けてしまったので調整の部分で駄目な部分があったのだと思います。

――比較的、調子の良い状態で臨むことができたということでしょうか

練習はまだ十分に詰めていなかったのですがその中では調子は悪くなかったのですが、それでも駄目でした。

――具体的にはどのようなところに不満をお持ちですか

練習不足も調子もどちらもあるのですが、ラスト1周でついていけなかったところは悔しかったです。

――きょうのレースに向けてどういった気持ちで臨まれましたか

初めての早慶戦でフィールド種目が少ないのでその分トラックで勝たないといけないという意識を持って試合にのぞみました。

――この先、かわさきフェスティバル等まだ試合は残っていると思うのですが今シーズンのここまでを振り返ってみていかがですか

今シーズンは春にケガをしてしまい8月にやっと練習を再開できた状態で、全然何もできていないので、(トラックシーズンの)ラスト1カ月でいいタイムを残したいと思っています。かわさきでは1500メートル、所沢選手権では800メートルに出場させていただく予定です。

――秋から冬にかけて冬季練習が始まります

来年は1500メートルで勝負したいと思っているのでそのぶん齋藤(雅英、スポ2=東京・早実)と一緒にいい練習を積めたらと思っています。スピードの面では西久保(達也、スポ2=埼玉・聖望学園)も徳永(翼、人2=岡山・操山)も、谷原さん(知己、スポ3=神奈川・希望ヶ丘)もいるので一緒に切磋琢磨して練習していきたいと思っています。

南山義輝(スポ1=福岡・小倉東)

――先週は全カレ(日本学生対校選手権)に出場されましたが、疲れなどはありましたか

いや、疲れは無かったです。

――きょうの100メートルのタイムは自己ベストに迫るものでしたが調子はいかがですか

全カレ前にちょっと足を痛めてしまって、やっと走れるようになってきたかなという感じで。コンディションは悪かったですが自分の走りができたと思っています。

――早大で新しい練習をしていく中で、フォームを変えましたか

はい。僕は走るとき地面を蹴っちゃうらしくて。なので、蹴らないように前さばきを意識して走るように変えました。

――100メートルでは近くに慶大の小池祐貴選手がいて競っていましたが、そのあたりをふまえてきょうのレース展開はどうでしたか

スタートがちょっと溜められてしまって出れなくて、あまりうまくいかなかったんですけど、そこから落ち着いて。いつもとは逆のレース展開だったんですけど、中盤いい走りができたかなと思います。いつもはスタートで行って、そこから上げていく感じなんですけどきょうはスタートが悪かったです。

――リレーは200メートルということでいつもより長く、不慣れな部分もあったと思いますがいかがでしたか

久し振りの200でした。やるしかなかったので走ったんですけど、150メートルくらいでガス欠してしまいました。あまり練習ができていないのかなと思います。

――今後のレースの予定は決まっていますか

所沢選手権が10月の中旬にあり、その後に日本ジュニア・ユース選手権に出て、その後が日本選手権リレーですかね。

――それに向けてどういう練習をしていくつもりですか

後1カ月くらいあるので、積み直して。日本選手権リレーでは優勝を狙いたいので、4年生たちと笑って終われるように頑張りたいと思います。

伊東利来也(スポ1=千葉・成田)

――日本学生対校選手権(全カレ)で4×400メートルリレーに出場されていましたが、今回の大会に向けてどのように調整されましたか

全カレ後は疲労を抜くことに専念して、それを第一に調整しました。

――今大会でのタイムや順位の目標はありましたか

今回、4×200メートルリレーと400メートルに出たのですけれど、どちらも優勝することが目標でした。今回、400メートルは優勝することができたのですが、タイムとしては物足りないというか。雨や風のあった悪天候の中だったのですが、その中でももっとタイムを出していけるようにならないといけないかなと思いました。

――400メートルはレースを振り返ってどのように評価していますか

アウトレーンで他の選手が見えない中、前半は自分のペースで落ち着いていけたのは良かったと思うのですが、後半は正直自分の走りを見失ってしまって、最後もリズム良く走れる感じではなくてがむしゃらに走ってしまったのが今回の反省点ではあるのかなと思います。

――4×200メートルリレーを振り返っていかがですか

今回、メンバーがそろわない中で僕が出ることになったのですが、その中でも今回バトンをもらうところでミスをしてしまって、チームに迷惑をかけてしまったというのが一番反省すべき点です。今年はまだマイルリレーは1走しか走っていなくて、バトンをもらうという行為はしたことがなかったのですが、今後は1走以外の走順も走ることがあると思うので、今回の失敗をしっかり次につなげられるようにしていきたいと思います。

――日本選手権リレーが控えていますが、どのように練習を進めていきたいですか

来月は日本選手権リレーのほかにも、個人で出るU20の日本選手権(日本ジュニア選手権)という大会があるのですが、その大会の次の週に日本選手権リレーがあるので、基本は先にあるU20日本選手権の方に合わせていき、その試合次第でその後の1週間の調整はしていきたいと思います。日本選手権リレーの方が気持ち的には力を入れているのですが、U20が先にあるので、先にある試合をまずひとつひとつクリアしていく感じでいきたいです。日本選手権リレーは今まで先輩方が作ってきた連覇を途切れさせないように、ことしも優勝するのが目標です。