学生、実業団選手が同じレースでしのぎを削る実業団・学生対抗大会がことしも平塚の地で開催された。早大からは110メートル障害に野本周成(スポ4=愛媛・八幡浜)、400メートル障害に小山佳奈(スポ1=神奈川・橘)が出走。小山は日本選手権以降コンディションが整っていない中の実戦で、課題があらわになった。一方野本は絶妙な風の中自己ベストタイの13秒62をマーク。しかし他選手との競り合いに勝てず5位でゴールとなった。春シーズンはもうすぐ終わりを迎えるが、おのおの勝負所は夏以降残されている。平塚でのレースを生かし、さらなる飛躍へつなげられるか。
(記事 鎌田理沙)
★悔しさ残るも、自己ベストタイを記録
学生2選手には先着を許したが、野本も好タイムをマーク
日も暮れ周囲が暗くなる中で行われた男子110メートル障害決勝。日本トップクラスの選手がそろう中、早大からは野本周成(スポ4=愛媛・八幡浜)がスタートラインに立った。「日本選手権からスタートの練習をしてきた」という野本は、序盤から実力者たちに食らいついていく。だが後半は8台目のハードルを倒してしまうなど、歩幅が合わず伸びを欠く走りとなった。「追い風が吹いていた分、ハードルと自分との間が近くなってしまった」。結果は6人中5位。日本学生個人選手権では競り勝った金井大旺(法大)や栗城アンソニー(国際武道大)に先着を許すかたちとなった。しかし順位としては悔しい結果に終わったその一方、タイムは13秒62の自己ベストタイを記録。8月に行われる第29回夏季ユニバーシアード台北大会(ユニバーシアード)に向けて、調子が安定してきていることを証明した。
野本は、この翌日に行われるトワイライト・ゲームスにも出走する予定だ。ユニバーシアードまで残り1カ月。この連戦がシーズン前半最後の試合出場となる。2日間で得た収穫を、今後へとどう生かしていくのか。ユニバーシアード3位という目標に向かって、野本の挑戦はこれからも続いていく。
(記事 藤岡小雪、写真 鎌田理沙)
★『感覚』取り戻せず…。全カレへ向け我慢のとき
6位でゴールとなった小山
女子400メートル障害には小山佳奈(スポ1=神奈川・橘)が出場。4位入賞を果たした日本選手権以来のレースとなったが、日本選手権後から足に痛みを感じ、思うように距離を踏めなかった小山。また今大会は学生トップ層に加え、実業団の実力者たちが集結。自身の調子、そして周りの面々に不安を感じつつの出走となった。
迎えた決勝。勢いよくスタートすると1、2台目のハードルは順調に超えていく。バックストレートで強い追い風が吹き、小山の背中を押す。そこで上手く乗ることができたスピードをそのまま後半に持ち込みたかったが、そう思い通りに体は動かなかった。第3コーナーを過ぎた水濠付近でギアチェンジし、もう一度加速を試みるのがいつもの小山のレースパターン。しかしきょうは、加速を試みようとしても足が回らない。練習で距離を積めなかったこともあり、そこから徐々に周りとの差が広がってしまう。8台目のハードルで他の学生選手にも抜かされてしまい、勝負あり。小山はまさかの組最下位でゴールとなった。
「日本選手権でのあの『感覚』をもう一度取り戻せるようなレースを」(小山)。日本選手権は後半の切り替えもスムーズに、足への疲労も少なく最後まで走り切るレースができた。ルーキーイヤーのことし、シーズン序盤から活躍してきた小山であったが、それにより疲労がたまっていたのも事実だ。次の最大の目標である日本学生対校選手権では、今度こそ『感覚』を取り戻し、全国の強豪たちと渡り合ってみせる。そのためにもいまはじっと我慢、躍進のための準備期間だ。
(記事 鎌田理沙、写真 藤岡小雪)
結果
▽男子110メートル障害決勝
野本周成 13秒62(+1.8)(5位)
▽女子400メートル障害決勝
小山佳奈 1分01秒01(6位)
コメント
野本周成(スポ4=愛媛・八幡浜)
――今大会は、具体的にどのような目標を持って臨まれましたか
試合続きで練習が積めていなくて、タイムを出せる自信や理由が無いままだったので、具体的な目標は持っていなかったです。うまくいけば自己ベストが出るのではないかな、と思っていたぐらいですね。
――実際自己ベストタイの記録を出されましたが、どう感じていらっしゃいますか
今回はすごくコンディションが良かったので、自己ベストが出てもおかしくない環境だったと思います。タイムに関してはまずまずかなと思うのですが、学生2人に負けてしまって、持ちタイムでも負けているので、そこはすごく悔しいです。
――今回出場者のレベルが高かったと思うのですが、周囲の選手を意識することはありましたか
今回こんな大会に出たのは初めてだったので、メンバーが本当にすごい人たちばかりで意識はしましたね。
――きょうの走りの良かった点と反省点をそれぞれ挙げていただけますか
日本選手権からスタートの練習をしてきて、スタートである程度前に立つことができたというのは良かった点だと思います。悪かった点は、インターバルをしっかり走ることができなかったことです。良い追い風が吹いていたので、その分ハードルと自分との間が近くなってしまって、踏み切れませんでした。そこは練習していかなければならないと思います。
――トワイライト・ゲームスには出場されますか
出場します。
――お体は大丈夫でしょうか
大丈夫だと思います。
――トワイライト・ゲームスにはどのような思いで臨まれますか
きょうの感じを見ていてもタイムを出せるという感じではないので、練習としてしっかり走りたいです。それで前半シーズンを終えてユニバ(ユニバーシアード)を迎えるので、そこからしっかり切り替えて1カ月間練習を積んでいくための指標というか、こういうタイムだったから次はこういうことをしていくという風にしていきたいです。
――では最後にユニバーシアードに向けての意気込みをお願いします
ユニバはことしの日本選手権のようなレベルになると思いますし、上位何人かは抜けている選手がいると思います。そういった選手に勝ちたいのはもちろんですが、目標としては3番以内に入っていきたいと思います。
小山佳奈(スポ1=神奈川・橘)
――きょうのレースの狙いは
日本選手権で走って、その(良い)感覚がずっと続くわけではないと思っていました。日本選手権明けにちょっとしたケガというか、連戦続きだったからだと思うのですが少し足を痛めてしまって、長い距離の練習を積めなかったというのがありました。次の大きな試合というのが全カレ(日本学生対校選手権)なので、全カレを見据えてきょうのレースはしたいなと思っていたのですが…。なかなか距離を積む練習が日本選手権以降できていなく、前半は強い実業団の方にも付いて行けたのですが、後半の切り替えというのがなかなかできていませんでした。全カレまであと少しですが、日本選手権でのあの感覚をもう一度取り戻せるようなレースを、またあしたもあるのでしたいです。全カレまで練習を積めるだけ積んで、もう一回自分を見直して走りの改善というのをしていきたいと思っています。
――長い距離の練習を積めなかったというので、体力面で不安が残ったということでしょうか
気持ちの面でも、日本選手権前は「いけるかも」という自信があったのですが、この試合に関してはあまり練習が積めていなかったのもあり、不安な気持ちがありました。気持ちの面でこの結果が出てしまったのかなというのはあります。
――日本選手権での『感覚』というのは、具体的に言葉で表すとすればどんな感じでしょうか
日本選手権は前半でとても良い感じに乗れたので、後半の切り替えもできて。前に青木さん(沙弥佳、東邦銀行)がいたときも自分の中で足もちゃんと回って、あまり乳酸がたまらなかったというか気持ちの良い走りができたのであのタイムが出たというのがありました。言葉で表すとすれば、前半から後半まで、疲れもあったのですが一定の走りが保たれたレースができていたかなと思います。
――きょうはその感覚は取り戻せなかっということですが
スタートしてから1台目、2台目までは結構思い切って出ることができて、バックストレートで結構な追い風の中乗れたので後半もいけるかなと思ったのですが、前も後ろも実業団の方で気持ちでビビってしまったのもあり、自分の長所である伸びのある走りというのができなかったというのが一番大きいです。
――ではレーン配置を確認して、実業団の方に挟まれてときのお気持ちは
そうですね、まだ感じてしまいますね。そういう経験も積んでいかないといけないのかなとすごく感じました。
――あしたもレースが控えているということで、間髪入れずになりますがどこを修正して臨むおつもりでしょうか
体力はこの1日では戻らないと思うので。あしたも青木選手はいらっしゃるということで、スタートから出していくというのは考えていて、前半出して今回できなかった後半での切り替えというのをしっかりとしたいです。ヨンパー(400メートル障害)を走った30分後に400が控えているので、練習の一環として、ケガなく終わることができたらと思います。でも試合ですので、タイムや順位は狙っていきたいと思います。そのあとにマイル(4×400メートルリレー)があるのですが、マイルは唯一の団体競技ということで。日本選手権リレーで走りたいので、私は多分4走だと思うのですがバトンパスをしっかりして、切り替えて後半での粘りを出して、順位とタイムを狙えられたらと思います。