厚い雲に覆われ、ぐずついた天気の中行われた世田谷陸上競技会。来週から始まるホクレン・ディスタンスチャレンジ(ホクレン)に向けて、またトラックシーズンの締めくくりとして長距離ブロックから6名の選手が出走した。今期不調だった光延誠(スポ4=佐賀・鳥栖工)は競り合いを制し組1着。ケガで一線を離れていた齋藤雅英(スポ2=東京・早実)、永山博基(スポ3=鹿児島実)らは復帰レースとなったが好記録をマークし、チームにとって明るい材料になった。
1500メートルには春シーズン姿を見せていなかった齋藤が出場。スタート直後から積極的に前に出て集団を引っ張る。途中先頭を譲り並走する場面も見られたが、残り200メートルあたりでトップに立つと最後は後続を突き放してゴール。力を見せつけた。しかし、タイムこそ設定の4分切りが達成できたものの、苦しさからフォームが崩れてしまい「課題の残るレースだったと思います」(齋藤)と内容には満足していない様子だった。1500メートル、3000メートルのレースが終わり、最後に行われた5000メートルには金森博至(スポ2=徳島・鳴門)、平子凜太郎(創理2=福島・磐城)が出場。いずれも集団の中腹でレースを進めるが、中盤から徐々に遅れ始め15分40秒台でのゴールとなった。
齋藤は競り合いを制し組1着でゴール
注目の3000メートルには、安井雄一駅伝主将(スポ4=千葉・市船橋)、光延、永山の3人が出場。永山は4月の金栗記念中長距離選抜選手権以降、3カ月ぶりのレースとなった。序盤から4年生の光延と安井が並走しながら集団を引っ張り、永山もすぐ後ろにつく。2000メートルで実業団選手がペースアップすると、そこからは激しい順位変動がある混戦に。最終的に残り300メートルでトップに立った光延が組トップの8分14秒67でゴールし、5位に永山、7位に安井が入った。設定タイム通りの結果に「想定通りです」と相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)。練習通りの成果が出たようだ。
4カ月ぶりのレースとなった永山
毎年好タイムが出るホクレン。今回のレースはそのスピードに対応するためのいい調整になっただろう。レースを引っ張る最上級生の姿、ケガ明けの選手の好走はチームにとってプラスになったはずだ。復帰した永山、調子を取り戻し始めた安井と光延、そして所沢に残って練習を積んでいるメンバーの走りに期待がかかる。春シーズンの締めくくりとなるホクレンで数字を残し、気持ちよく夏の鍛錬期につなげることができるか、注目だ。
(記事 宅森咲子、写真 加藤千咲、斉藤俊幸)
結果
▽男子1500メートル
3組目
齋藤雅英(スポ2=東京・早実) 3分56秒46(1着)
▽男子3000メートル
4組目
光延誠(スポ4=佐賀・鳥栖工) 8分14秒07(1着)
永山博基(スポ4=鹿児島実) 8分19秒25(5着)
安井雄一(スポ4=千葉・市船橋) 8分21秒54(7着)
▽男子5000メートル
5組目
金森博至(スポ2=徳島・鳴門) 15分42秒23(20着)
6組目
平子凜太郎(創理2=福島・磐城) 15分45秒48(37着)
コメント
相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)
――今回、Aチームから3人出走となりましたが、その意図は何だったのでしょうか
この後ホクレン(ホクレン・ディスタンスチャレンジ)に出場するのですが、試合を使って刺激を入れるメンバーはここに入れて、試合を使わずに練習するメンバーは所沢に残しました。メインはホクレンで、きょうはそのための刺激、調整としてこのレースを使ったというかたちです。
――先ほど光延誠選手(スポ4=佐賀・鳥栖工)にお話を伺った際、5000メートルのスピードをイメージしたとおっしゃっていました。そのような指示だったのでしょうか
関カレ(関東学生対校選手権)が終わってから練習をまとまって積ませたので、スピードが出ていなかったですし、安井(雄一駅伝主将、スポ4=千葉・市船橋)は教育実習で永山(博基、スポ3=鹿児島実)はケガ明けで試合勘がないメンバーもいたので。安井と光延はホクレンで1万メートルと5000メートルも出すのですが、試合勘を戻すというか、練習で出せないスピードもありますので。1万メートルの直前の練習で3000メートルをすることもありますし、試合を使ってやった方が強い刺激にもなりますし、実際のレースと同じ体験ができるので出させました。
――永山選手は4月上旬ぶりの試合となりました
関カレ中くらいから練習は復帰してきたので、トラックシーズン最後の大会をホクレンに絞って1カ月練習してきました。きょうは久しぶりの試合だったので最後は動かし切れなかった部分はありましたが、ブランクがあってこれくらいだろうとは思っていた範囲にはかなっているので、まずまずだと思います。
――では今回は想定通りということでしょうか
コンディションが読めなくて、もう少し暑くなるのかなとは思っていました。あとは他のチーム、メンバーのつくりかた次第では速い展開もあったかなとは思います。でもこれくらいで収めてほしいと思っていたので、こんな感じだとは思います。
――先ほど選手の方から設定タイムは8分20秒前後とお伺いしましたが
もちろんレースの展開もありますが「組の前の方でレースしてこいよ」と言いました。最後置いて行かれたのですが、やってきた練習としては8分20秒前後だとは思っていましたし、ペースとしてもずっとイーブンペースで押せていたので、やった練習通りの成果だったと思います。
――光延選手は終始組の先頭でレースを進められました。そちらはどう評価されますか
もちろんレースなんですが、高校生も大学生もいる中でけん制して走っても意味がないので、「誰も前に出ないのであれば自分たちでレースを作るくらいで行きなさい」と言いました。結果的に前半は安井と光延がレースを作ったので指示通りというか、想定通りです。最後かわされたのは残念ですが、ゆっくり走って最後だけ上げても仕方ないというつもりできょうのレースに来たので、指定通りだとは思います。
――では、ピーキングをおくホクレンについては
関カレが順位を争うレースとしてポイントを置いていました。全日本(全日本大学駅伝対校選手権)の予選がないチームの最大限の強みではないですが、この時期トレーニングを積む期間を1カ月もらえたので、ホクレンでしっかり数字、記録という形でなにかしら残したいと準備してきました。
安井雄一駅伝主将(スポ4=千葉・市船橋)
――きょうのレースの位置付けは
5日後にホクレン(ホクレン・ディスタンスチャレンジ)の深川大会があって、それの調整というか。関カレ(関東学生対校選手権)からレースが開いていたので少し速い動きをやろうということで3000メートルにしました。
――設定タイムはありましたか
特になくて、8分30秒くらいでいこうとは思っていました。8分30を切る中で光延(誠、スポ4=佐賀・鳥栖工)と永山(博基、スポ3=鹿児島実)には負けたくなかったという感じですかね。あまりタイムなどにはこだわっていなかったです。
――序盤光延選手と先頭を引っ張っていましたが、プラン通りだったのでしょうか
そうですね。光延が最初いくというのはわかっていましたし、僕も機会があれば引っ張ろうと思っていたので。2人でレースを展開できたのは良かったと思います。
――中盤からは少し後退されましたが、苦しさが出てきたのでしょうか
そうですね。久しぶりにこんなにスピードを出したので、後半持ちませんでした。でもそこまで問題視はしていないというか、良い刺激になりました。
――タイム、順位についてはどのように評価していますか
タイムは自己ベストが8分20秒台だったので、あと1秒くらい足りなくてちょっと悔しいですし、順位も光延と永山に負けてしまったので。(2人に)勝てるチャンスはきょうくらいかなと思っていたので、悔しいのですがすごく楽しかったです。
――レース中も笑顔が見られました
きょうは楽しもうと思って。特にどういう結果を出さなきゃいけないというのは無かったので、純粋にレースを楽しもうと思って走りました。
――教育実習中はどのように練習をしていたのでしょうか
結構忙しくて練習もあまりできなくて。高校生と一緒に練習をしたりはしていたのですが、あまり良い練習は積めていなかったという感じですね。
――日本選手権での部員の皆さんの活躍は刺激になりましたか
そうですね。特に石田(裕介主将、スポ4=千葉・市船橋)の活躍は本当うれしかったです。本人が「ここ最近結果が出せていなくて悔しい」と口にしていたので。主将として最高の結果を出してくれたので僕自身もすごくうれしかったです。
――ではホクレンに向けての目標をお願いします
1万メートルに関しては28分55秒、全カレ(日本学生対校選手権)の標準を切ることが第一目標です。5000メートルは自己ベスト、13分台を目標に頑張りたいと思います。
光延誠(スポ4=佐賀・鳥栖工)
――きょうの試合の位置付けや設定タイムはありましたか。
5日後にホクレンディスタンス(ホクレン・ディスタンスチャレンジ)深川1万メートルに出場するので、今日は仕上げ練習ということで3000(メートル)でレース感覚をならすということで走らせてもらいました。設定タイムは8分30秒を切るくらいで、引っ張ってもらうか自分で作るかという事を目的としてこのレースに望みました。
――組1位でしたが、順位にこだわりはありましたか。
やるからには自分のいまの力を出して動きを崩さずにやろうと思っていました。目の前に他の大学さんがいたのでこれは負けられないなというのがあり、欲が出ました。良いレースができたのでこれを5日後に発揮していきたいです。
――4年生のお二人でレースを引っ張っていましたが、何か考えていたことはありましたか。
レースの始めは引っ張る気はなかったのですが、自分は毎回レースを引っ張るということをやってきたのでそれが出てしまい、引っ張らざるを得なかったです。でも自分なりに良い感覚で走れたので良かったと思いますし、最上級生がここでちゃんと引っ張れたのは今後のレースにプラスになると思います。
――結果的に8分14秒ということでタイムも良かったと思いますがご自身ではどのように評価されていますか。
今期のトラックシーズンでは自己ベストの更新も出来ませんでしたし、関カレ(関東学生対校選手権)でも戦うことができませんでした。夏合宿前残り2レースということでそこでは最低限自己ベスト、あわよくば5000メートルでは日本選手権の標準記録を切るくらいのレースをやっていきたいので、この期間は緊張感を持ってやっていきたいと思っています。
――今回の結果をどうホクレンに繋げていこうと考えていますか。
ホクレンでは1万メートルに出場します。1万メートルのペースより今回のペースの方が速いと思うのですが、速いレースの展開を見据えてやってきたので1万では先頭集団に着いていけるようにしていきたいです。5000メートルも出るのですが、5000ではこのスピードを残り2000メートル持続出来るようにしていきたいと思っています。
――ホクレンの目標タイムはありますか。
1万メートルは28分30秒台は出したいと思っていて、最低でも全カレ(日本学生対校選手権)標準の28分55秒は切りたいです。また5000メートルでは先ほど言いましたがしっかりと日本選手権の標準を切るか、それに近いタイムを出せれば駅伝シーズンも戦える力が付けられると思うのでそのタイムは出したいと思っています。
永山博基(スポ3=鹿児島実)
――3カ月ぶりの大会となりました
4月の金栗記念(金栗記念中長距離選抜選手権)以降、兵庫リレカ(兵庫リレーカーニバル)の1万メートルを目指して練習していましたが大会直前にケガをしてしまい、きょうが復帰戦ということになりました。
――きょうの大会の位置付けとは
13日のホクレン(ホクレン・ディスタンスチャレンジ)に向けての調整です。
――何か具体的な目標はありましたか
練習の一環ということだったのですがホクレンを見据えて最低でも8分20秒を切ること、またレースも久々だったので試合勘を取り戻すことを意識して走りました。
――レース展開についてはいかがでしたか
勝ち切ることを意識し1着でゴールする事を考えていましたが、思うように体が動きませんでした
――最低限の目標とされていたタイムは切ることができましたが全体的にはいかがでしたか
タイム的には8分20秒を切ることはできましたが正直まだまだかなという感じです。しかし悲観しすぎずに残りホクレンまでの10日を過ごしたいと考えています。
――次のホクレンに向けての意気込みを教えてください
故障で練習ができなかったということを言い訳にしないような走りをして最低でも自己ベスト(13分58秒)を出して帰って来たいと思います。また春に振るわなかったぶん秋、冬に向けて駅伝シーズンにつながるいい走りができたら、と思います
齋藤雅英(スポ2=東京・早実)
――きょうのレースの意気込み、位置付けを教えてください
ケガからの復帰レースだったので4分切りを目標にしていて、タイムは目標通りいけたのですが、動きの部分ですごく悪かったので課題の残るレースだったと思います。
――きょうのレースを振り返って具体的にはいかがですか
練習で、きつくなった部分では崩さないようにという意識をしていたのですが、きょうは最初からきつかったというのもあり、フォームがだいぶ崩れてぶれてしまったので、そこが1番の課題だと思います。
――途中で2人で並走する場面がありましたが、どのように考えて走りましたか
本当は自分が全部引っ張りたかったのですが、余裕がなくて前に出してしまったのでそこも反省点かなと思います。
――次戦の予定を教えてください
19日の早大記録会(早稲田大学競技会)で1500メートルを走ります。