日本学生個人選手権の2日目、男子800メートルに出場した西久保達也(スポ2=埼玉・聖望学園)が、準決勝で転倒というまさかの事態が起こる。また3日目は石田裕介主将(スポ4=千葉・市船橋)がホームストレートでのミスで自己ベスト、そしてユニバーシアードの参加標準記録に届かず唇を噛む結果に。女子部の小山佳奈(スポ1=神奈川・橘)はかねてからのライバルを下し優勝するも、タイムに満足することはなかった。おのおの課題が残る大会となったが、2週間後には全国最高峰の舞台・日本選手権が控えている。今回のレースに修正を加え、今度こそ記録にこだわっていく。
(記事 鎌田理沙)
★西久保にまさかのアクシデント…。谷原は決勝へ
男子800メートルには、谷原知己(スポ3=神奈川・希望ヶ丘)、関東学生対校選手権2位の西久保達也(スポ2=埼玉・聖望学園)の2名が出走した。二選手とも予選は着順で順当に突破。しかし迎えた準決勝で、アクシデントが起こってしまう。準決勝第2組に出場した西久保は、1周目は先頭の後ろにつきつつ様子をうかがうレースを展開する。ラスト1周の鐘が鳴り、スピードが上がり集団が動き始めた。先頭のすぐ後ろに位置していた西久保もギアを変え、勝負に対応しようする。しかし、第2コーナーを曲がろうとした際、後ろと接触しまさかの転倒。すぐさま立ち上がり前を追うが、転倒のタイムロスは真剣勝負において痛すぎた。結局組8着でゴールした西久保は、準決勝で姿を消すこととなった。
「冷静に、むしろチャンスだと思って走った」(谷原)。準決勝第3組に出場した谷原は、チームメイトのアクシデントがあったものの、いたって冷静にレースを進める。ラスト300メートルで先頭集団に割って入り、4着。タイムで拾われ決勝に駒を進めた。しかし決勝では、序盤からのハイペースな先頭に付いていけず、苦しい走りになり7位でレースを終えた。
早大に入学してから輝かしい実績を残し続けてきた西久保と、3年にして中距離ブロック長の谷原。今大会は両選手とも完全燃焼とはならず、課題が残った。しかし春シーズンは日本選手権、またその他の記録会などまだ走る機会は残されている。今大会を足がかりに、さらなる飛躍となるか。
(記事 鎌田理沙)
★ルーキー小山が接戦を制す
関カレに引き続き勝負強さを発揮した小山
女子400メートル障害には、南野智美(スポ3=山口・西京)と小山佳奈(スポ1=神奈川・橘)が出場した。2名とも予選を着順で通過し、迎えた準決勝。南野はスタートこそ成功したものの、中盤あたりから遅れ始めてしまう。さいごまで追いつくことができず、61秒92と自己ベストからはほど遠い結果で準決勝敗退となった。一方の小山は序盤からバックストレートの風を上手く利用して上位でレースを進めるが、ホームストレートに入ると不安のあったハードリングが上手くいかない。組2着、全体でも2番での決勝進出ではあったが60秒15とタイムには満足のいかない結果となった。そして気持ちを切り替えて挑んだ決勝。前半から積極的な走りでスピードにのると徐々に周りを突き放していく。後半からは関西学生対校選手権の優勝者である王子田萌(立命大)との一騎打ちとなり、勝負は最終ハードル過ぎまで持ち込まれた。「本当に負けたくないという思いでラストは粘った」(小山)。小山は昨年の日本選手権で王子田に敗北した悔しい思いを晴らすかのようなスパートをかけ、見事振り切りゴール。58秒56で優勝を決めた。関東学生対校選手権と今大会の優勝で好調の小山だが、満足している様子はない。あくまで現在の目標は57秒台。さらには56秒台も視野に入れている。再来週の日本選手権では57秒台をたたき出し、3位以内の目標を掲げレースに挑む。これからも若き早大の女子エースから目が離せない。
(記事 平松史帆 写真 朝賀祐菜)
★ユニバーシアードへの道、途絶える
石田裕はホームストレートで後続に追いつかれ、3位でフィニッシュした
石田裕介(スポ4=千葉・市船橋)は男子400メートル障害に出場。石田裕は予選からユニバーシアードの標準記録である50秒00を狙いにいったものの、50秒69と標準記録を切ることができなかった。続く準決勝でも果敢にタイムを狙ったが、予選よりも風が強くなってしまい思うように走れない。50秒55と僅かに記録を伸ばしたがユニバーシアードには届かず。「気持ちが前に行きすぎて前半(力を)出しすぎました」と石田裕はこの2つのレースを振り返った。そして翌日の決勝。予選、準決勝の反省から序盤は余裕を持ってレースを進める。第3コーナー当たりから徐々に周りをかわしていくと、8つ目のハードルに差し掛かるころにはトップに。しかし、ここで勝利を確信した石田裕は集中力を欠き最終ハードルを越えたところでつまずいてしまった。なんとか体勢を立て直したものの後続の追随を許し、そのまま3位でゴール。そしてタイムは50秒89と、台北への道は途絶えた。ことしは部全体として『国際大会に5名輩出』を目標としており、今大会は主将の石田裕にとっても悔しい結果となった。次に目指すのは日本選手権で決勝に残ること。さらに、世界陸上の標準記録を破ること。これからも世界への挑戦は続いていく。
(記事 平松史帆 写真 吉村早莉)
★復帰戦の徳山が4位入賞
ケガ明けの徳山にとって、今大会は調子を確認するいい機会だった
関東学生対校選手権(関カレ)の100メートル予選に出場後、足を痛め準決勝を欠場し、その他の種目にも姿を見せなかった徳山黎(スポ4=神奈川・相洋)。その徳山は今大会、男子200メートルに出場し、予選を組1着で難なく通過した。そして追い風を使うためにバックストレートで行われた準決勝。有力選手が揃う組での出走となったが、追い風1.8メートルという良い風を味方にし、自身2年ぶりの20秒台である20秒97という好タイムを記録した。タイム順で進出を決めた決勝では、21秒05とタイムは落ちたものの4位でゴールした。「スパイクを履いてダッシュしたのが4日ほど前でした」。関カレからケガと向き合うこととなった徳山であったが、「この先調子は上がっていくのかなという希望が見えてきました」と今回の結果をプラスに捉えている。また、準決勝で日本学生対校選手権のA標準を切ることもできた徳山。これから上昇するであろう走りに注目だ。
(記事 朝賀祐菜 写真 吉村早莉)
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結果
2日目
▽男子400メートル障害予選
石田裕 50秒69(1組1着)
▽男子800メートル予選
谷原 1分52秒78(4組2着)
西久保 1分53秒80(5組1着)
齋藤雅英(スポ2=東京・早実) DNS
▽男子100メートル予選
南山義輝(スポ1=福岡・小倉東) 10秒59(+2.8)(2組3着)
▽男子400メートル障害準決勝
石田裕 50秒55(1組1着)
▽男子100メートル準決勝
南山 11秒12(+4.5)(1組8着)
▽男子800メートル準決勝
西久保 2分05秒57(2組8着)
谷原 1分51秒04(3組4着)
▽女子400メートル障害予選
小山 61秒49(1組1着)
南野 62秒09(2組3着)
兒玉 DNS
▽女子400メートル障害準決勝
南野 61秒92(1組5着)
小山 60秒15(3組2着)
3日目
▽男子200メートル予選徳山 21秒35(-2.1)(1組1着)
▽男子200メートル準決勝
徳山 20秒97(+1.8)(2組3着)
▽男子800メートル決勝
谷原 1分52秒79(7位)
▽男子400メートル障害決勝
石田裕 50秒89(3位)
▽男子200メートル決勝
徳山 21秒05(+0.9)(4位)
▽女子3000メートル障害決勝
北本可奈子(早大院1=愛知・千種) DNS
▽女子400メートル障害決勝
小山 58秒56(1位)
コメント
石田裕介主将(スポ4=千葉・市船橋)
――関東学生対校選手権(関カレ)から2週間開きましたが、調子はいかがでしたか
僕はいま教育実習の方に行っていまして、調整がしっかりできなかったと言えばそうではなかったです。しっかり高校でも練習は積めたので、準備としてはしっかりできたと思っています。
――関カレのインタビューでは「(次は)記録を狙う」とおっしゃっていましたが、今回予選、準決勝と50秒台でまとめられました。
そうですね、正直予選にすべてを懸けたつもりでいて。グラウンドコンディションもありますし、1本目ということで走らせていただきましたが記録は出なくて。じゃあ準決勝でタイムを狙うとなって、走ってみたら向かい風にやられたというかたちになりました。あとは気持ちが前に行きすぎて前半出しすぎました。結果的には予選、準決勝ともに関カレの決勝のようなレースになってしまったと思います。後半に失速したというのが予選、準決の自分の失態かなと思います。
――では、それを踏まえて決勝を迎えたときの心境は
いろいろなところからお言葉をいただいて、前半力が入りすぎということで、前半力を抜くというかリラックスして入って、後半どれだけ他の選手と勝負できるかというのをポイントにして走りました。(予選、準決勝と比較して)前半と後半をガラッと入れ替えたかたちで走りました。
――では決勝のレース内容についてですが、ハードリングについてはいかがでしたか
ハードリングの方は問題なくて。ただ決勝に関しては最後の10台目にしっかり(足を)合わせられませんでした。8、9台目のところで自分に「勝てる」という気持ちの油断が出て、そこが10台目に現れたのかなと思うので、そこは失敗でした。ただ転ばずに済んだのは幸運なことで、最後まで走れたのは良かったと思います。今回後半に(力を)出せたというのを、次のレースでも生かしていきたいと思います。
――ではこの試合を踏まえて、日本選手権ではどのようなレースをされますか
トッパー(110メートル障害)で野本(周成、スポ4=愛媛・八幡浜)がユニバ(ユニバーシアード)の標準記録も切って、1番近い候補としていけたので、チーム全体としてかなり良い風をもらっていると思います。僕もその1人として日本選手権では課題をしっかりまとめつつ、大阪での試合をやっていこうと思います。
――日本選手権での目標はありますか
まず決勝にいきたいというのと、その中で一つ一つタイムもクリアしていきたいです。またユニバは今回断念するしかなくなってしまいましたが、僕個人として世界陸上(世界選手権)を狙っていきたいです。(レースの)レベルが上がればそれだけタイムを出せる可能性も上がっていくので、夢を現実にするではないですが、しっかりとやっていこうと思います。
――徳山黎(スポ4=神奈川・相洋)
――今大会の目標は
関カレ(関東学生対校選手権)で右足のハムストリングを痛めてしまって、本当は100メートル、200メートル、マイルリレー(4×400メートルリレー)、4継(4×100メートルリレー)と合計で9本走る予定だったのに100の予選で1本だけになってしまって、それから2週間後の試合ということで、ケガなく終えるということが目標でした。
――予選から決勝までのレースプランは
予選は有力な選手と同じ組だったんですけど、その選手が欠場したので気楽に走りました。足の不安はあったんですけど、足の状態をみれば準決勝に行けるかなと思っていました。準決勝はレベルの高い組に入ってしまったのですが、そこで硬くなって無理にスピードを上げると関カレのようにケガをしてしまうので、そのようなことがないようにしました。決勝も準決勝もただ順位は狙わずに走り切るという感じで走りました。
――関カレから2週間、どのような練習をしましたか
始めの1週間は足の痛みをとるために休養や治療に専念して、スパイクを履いてダッシュしたのが4日ほど前でした。ですので正直、この試合でケガなく終われるか不安だったのですが、スピードもだんだん戻ってきていたので、この試合で確かめることができました。
――現在の調子はいかがですか
ケガをした後なので関カレよりは悪いんですけど、20秒台も2年ぶりに出して全カレ(日本学生対校選手権)のA標準も切ることが出来たので、この先調子は上がっていくのかなという希望が見えてきました。
――決勝のタイムと順位については
準決勝で20秒台が出たのに決勝で21秒かかってしまったということは、多分準決勝よりも走りが悪くなってしまったということなので、ケガなく終えたことは良かったんですけど、決勝で動きが硬くなってしまうことは課題かなと思います。
――次戦の予定と目標は
次戦は7月2日の神奈川県選手権です。200メートルも100メートルも出場するので、そこではまだ3週間ほどあるので、練習を積んで20秒台が安定して出るようにしたいです。また全カレは今日の試合で20秒前半が出ないと勝てないと思ったので、20秒前半を出して行きたいと思います。
谷原知己(スポ3=神奈川・希望ヶ丘)
――今大会への意気込みはどのようなものでしたか
全国区の試合で、また関カレ(関東学生対校選手権)の後ということもあって強い選手が出場する試合だったので、その中で9月にある全カレ(日本学生対校選手権)の予行練習というか。それを見越した上で自分がいま全国の舞台でどれくらい戦えるのかというのを確認する試合でした。
――予選を振り返っていかがですか
予選は予定通りというか、通るつもりで準決勝が勝負だと思っていたので予定通りのレースができました。
――予定通りというのは
前には出ずに、後半力のある選手が残り300メートル過ぎくらいから出てくるので、それに乗っかって最後まで維持するというレースプランでした。
――準決勝で西久保達也選手(スポ2=埼玉・聖望学園)の走りを見てからのレースとなりましたが、何か思われることはありましたか
西久保が転んだので少しは動揺したんですけど、自分が決勝に行くために頑張って走ることには変わりはないので。冷静に、むしろチャンスだと思って走りました。
――決勝のレースプランはどのようなものでしたか
ハイペースとは予想していませんでした。自分の中のレースプランとしては集団の中盤から後半につけて残り250メートル過ぎくらいから抜け出して、あわよくば表彰台が目標でした。
――実際のレースは2周目から先頭との距離が開いてしまったと思うのですが
ペースが速かったということもあってその速いペースに対応できませんでした。土曜日の疲れが残っていてその中でのレースだったので、少しガス欠だったかなという感じがしました。
――今後の目標を教えてください
標準記録を切っていないので日本選手権には出られないんですけど、7月の後半にあるトワイライト・ゲームス、また9月の全カレやその他対校戦と記録会に出る予定です。まだ大学3年生ということもあるので、来年最上級生になった時にしっかり安定した走りができるように、そういった意味でも今年はタイムまたラウンドを積む試合でもしっかりと決勝まで行って戦っていけたらと思います。
小山佳奈(スポ1=神奈川・橘)
――きょうの調子はいかがでしたか
予選、準決勝共にタイムでも分かると思うんですけど風の影響もあってタイムが出ないと思ったんですけど、上手く決勝に合わせていけました。前半上手く(風に)乗れば後半もついてくると思ったので、決勝では風を気にせず前半から突っ込んで行きました。このようなかたちで挑めたのでタイムと順位が付いてきたのかなと思ってて。大きな目標としてはユニバーシアードの57秒20を目標としていて、その下の目標では57秒台を掲げていたんですけど、達成できませんでした。もうユニバーシアードの標準記録を切ることは期間外になってしまったんですけど、57秒台出すことが目標なので再来週の日本選手権では57秒、56秒狙って日本選手権で3位以内を目標に頑張りたいと思います。
――実際のレースを振り返っていただいて、予選と準決勝はいかがでしたか
風を理由にしてはいけないと思うんですけど、思った以上に乗っていて。前半すごくいい感じで乗れたんですけど、後半で向かい風が強くて後半がうまく走れなかったのでタイムも落ちてしまいました。自己ベストよりも3秒くらい落ちてしまって不安だったんですけど、予選、準決勝はしっかりとつなげていけたので決勝で勝負できればと切り替えていました。
――予選で少しハードリングに不安が見られたのですが、風の影響もあってということですか
風の影響というより自分はハードリングが下手なので、ハードルに向かっていくときにブレーキがかかってしまい失速してしまうのが今の1番の課題だと思っているので、それを修正できれば今の目標であるタイムに少しでも近づくのではないかと思っています。
――決勝を迎えるにあたって、具体的なレースプランなど考えていらっしゃいましたか
前半から突っ込んでいくのは決勝でやってみようと思っていたことで。今までは4台目まで15歩を使っていたんですが5台目までに変えて、前半からスピードに乗って後半につなげられるようなレースプランを考えていました。
――では普段は後半粘ってというレースが多いのでしょうか
そうですね。それか一定という感じで、メリハリのないレースをしてしまっていたので。今回は積極的にというのを目標にやっていました。
――レース自体、前半から積極的に行かれていましたが、勝負が決まったのは最後のハードルを越えてからでした。そのときのお気持ちをお聞かせください
私が400メートル障害を始めたときから、最後のハードルからゴールまでは自分の中で日本一だと自負していて、練習も沢山していました。そこからは絶対に負けないという強い気持ちが響いて、あのようなレースができたのかなと思います。
――最後競っていた王子田萌選手(立命大)は自分より速い57秒台のタイムを持っていますが、意識はされていましたか。また、勝っていかがですか
昨年の日本選手権のときに王子田さんに予選で戦って。私が58秒0台のベストが出たときも王子田さんが隣にいました。最後競って同タイムだったので意識はしていました。その後の決勝で負けてしまったのが悔しくて。今回も大会に出ていてライバル心は強くて。最後は本当に負けたくないという思いでラストは粘ったという感じです。
――では、今後の目標をお願いします
日本選手権では57秒台は出さないと目標の3位以内には届かないと思うので57、さらには56秒台を狙っていきたいと思います。