国内トップ選手がひのくに・熊本県に集結する金栗記念中長距離選抜選手権がことしも開催された。リオデジャネイロ五輪代表の塩尻和也(順大)が13分33秒14の好記録をマークするなど、ハイレベルな戦いが繰り広げられた。早大からは東京箱根間往復大学駅伝2区を走った永山博基(スポ3=鹿児島実)が今季初レースとして5000メートルに出場。満足のいく結果とはならなかったものの、ターゲットとする23日の兵庫リレーカーニバルに向けて現状を再確認することができた。
永山がエントリーしたのは五輪銀メダリストのポール・タヌイ(九電工)や日本歴代2位の記録を持つ鎧坂哲哉(旭化成)など、強豪ひしめく最終の5組。大会のトリを飾る注目の一戦に多くの観客がトラックの周辺に集まる。レースは予想通りハイペースとなり、2000メートルまで先頭が2分45秒前後の高速ラップを刻み続けた。「様子を見て、チャンスがあれば」と、永山は集団の後方で待機。2600メートルを過ぎたあたりで設楽悠太(Honda)が仕掛けると、集団はペースアップする。そして、先頭は目まぐるしく変わり、その度にラップはさらに速まった。しかし、永山は3000メートル付近からついていくことができずに失速。そのままフィニッシュし、「いっぱいいっぱいで、後半に体を動かすことができなかった。タイムも満足していない」と肩を落とすこととなった。
後半は失速してしまい、そのままゴールとなった
「結果はぼろ負けだった」。トップランナーたちとの試合を終えて、スプリント力の差を痛感したという永山。中盤のペースアップやラストスパートなど、何度も遅れをとってしまった。そして、自ら仕掛ける余裕もなかったと、振り返る。しかし、「緊張せず、ひるむことなく向かっていけたのは良かった」と収穫もあった。冷静に課題を口にする永山の表情には、手応えを感じているようにも見えた。
3週間後には、きょうの反省を踏まえた走りが求められる
現在、永山が照準を合わせているのがユニバーシアード1万メートルの代表選考会である兵庫リレーカーニバル。永山にとって、入学当初から夢見ていた舞台への最大のチャンスだ。「これが1万メートルだったら、もっと失速していた」と今回のレース後に不安をこぼしたが、もう立ち止まっている暇はない。4月23日の選考会当日まであと3週間。ラストスパートのキレや後半の粘り、課題は明白になった。短期間で修正し、本番当日にこそ本領を発揮したい。
(記事 本田京太郎、写真 吉村早莉、鎌田理沙)
結果
▽男子5000メートル決勝
永山博基(スポ3=鹿児島実) 14分07秒89(53着)
コメント
永山博基(スポ3=鹿児島実)
――今日の大会の位置付けは
1戦目ということでメインは兵庫(兵庫リレーカーニバル)っていうことだったんですが、初戦からしっかり入っていきたいなと思っていました。
――きょうの5組目はかなり豪華なメンバーだったと思いますが、レース前に設定したタイムはありましたか
先頭に2分40秒ペースのペースメーカーがつくということで、日本のトップレベルの選手たちもたくさんいたんですけど、こういう機会はなかなかないのでしっかりチャレンジしようという気持ちでいきました。
――好タイムを狙っていったという感じでしょうか
せっかく競り合える大会でしたし、前でしっかり勝負したいなと思ったんですけど、力的にまだまだなところがあったので様子を見てからいこうかなと思っていました。
――もともとレースプランは何かありましたか
設定が速いって分かっていたので1000メートルは様子を見てそこから考えていくという感じでした。
――いけたらいくという感じだったのでしょうか
いけたらいこうとは思っていたんですけど、13分30秒とかを狙っていたわけではなかったので様子を見ながらですね。
――レースの内容をご自身ではどう評価されていますか
タイムも良くなかったですし、後半動かせなかったというのは課題で、これがもし1万メートルだったらって考えたら多分後半ずるずるいってしまうと思いますし、残り3週間でやらないといけない部分が明確になりました。
――3000メートルあたりでちょっとペースが落ちてしまったのかなと思うのですが、それについては
いっぱいいっぱいで。3000メートル以降、4000メートル、5000メートルとラップタイムを落としてしまって、課題の残る内容になってしまいました。
――ラップタイムは覚えていますか
覚えていないんですけど、70秒近くかかってしまいました。
――このレースに臨む前に合宿で具体的に取り組んだこと、強化した面はありますか
大事なポイント練習が1回あったのでそこでしっかり外さないようにしようとしたことと、練習量もちょっといつもより多くしたりしました。
――フォームであったり去年と変えた点はありますか
去年は故障とか体調不良とかでこの時期は走れていませんでした。ことしは合宿で意識したこととかはないんですけど久しぶりにケガなく2、3月練習できたのでそこがすごく良いことだなと思っていて。これからも一番は継続して練習して試合に出ることなので残りの試合もケガせずいきたいなと思っています。
――レースの中で見えた課題は
箱根(東京箱根間往復大学駅伝)前に比べたら練習量も落ちていて、練習不足もありますしラストのキレとかもまだまだなのでしっかり体を作っていかないとと思いました。
――体作りというのは具体的に食事とかですか
食事とか休養とかも必要なんですけど、しっかり練習するっていうことです。
――トップ選手と渡りあって、何かトップ選手と自分との差というのを感じるところはありましたか
スピードの差というのはすごく感じました。結果はぼろ負けだったんですけど思ったより強い相手にも怯まず緊張せずいけたのは良かったかなと思います。
――スタンドで永山選手の名前を呼ぶ声が聞こえましたが、ご家族がいらっしゃっていたのでしょうか
そうですね。父、母、祖父が近いので来ていました。それ以外も高校の応援もあって力になりました。
――ユニバーシアードは1万メートルを狙っていかれるのでしょうか
はい。
――すでに派遣標準記録を切られているので兵庫(兵庫リレーカーニバル)では順位を狙うという感じでしょうか
そうですね。
――兵庫に向けての意気込み、意識して取り組まれていることはありますか
後3週間しかないので時間はないんですけどずっと入学当初からユニバーシアードは目指してきた大会ですので1日1日を大切にしていきたいなと思っています。
――調整は上手くいっていますか
そうですね、きょうもうちょっとタイムが欲しかったというところでそこが誤算ではあるんですけどケガせずひとまず練習できているので後3週間集中していきたいです。
――改めて今シーズンの目標を教えてください
兵庫の1万メートルが一番大切な試合だと捉えています。狙った試合でしっかり勝てる選手にことしはなりたいのでしっかり戦っていきたいなと思います。