関東学生対校選手権(関カレ)まで1週間を切った。部内の緊張感は日々増してきており、それは関カレのメンバーの座を逃した選手たちも例外ではない。今回で250回を数える日本体育大学長距離競技会の出場者には、惜しくも関カレに出場することがかなわなかったメンバーたちが名を連ねた。その中には、エース候補と期待されている武田凜太郎(スポ4=東京・早実)や、今シーズン順調な立ち上がりを見せていた鈴木洋平(スポ4=愛媛・新居浜西)、柄本勲明(スポ4=早稲田佐賀)の姿も。迫る大舞台を前に、チームを勢いづける走りが各々に求められていた。
1日目の1万メートルには柄本と箱田幸寛(スポ4=広島・世羅)が出走した。両選手とも関カレではハーフマラソン出場を狙っていた選手。高いレベルの練習を消化していた中で今回の記録会に挑んだ。レース序盤は柄本、箱田ともに最後尾でレースの出方をうかがう。集団が徐々にばらけ始めた時、箱田が前に出て後方集団をけん引。そこで足を使ってしまったと反省点を上げたが、その後も攻めの走りを見せ自己ベストを30秒近く更新する29分47秒65でゴール。「自分がしっかり走ることでチームの士気は上がるし、(同記録会の)5000メートルを走るメンバーにもいい刺激になったと思います」と、最上学年らしく走りでチームを盛り上げた。
自己ベストを更新した箱田
2日目の5000メートル、注目の武田と鈴木洋は最終組に登場した。申請タイムが最も高い組なこともあり、1キロ2分40秒前後というハイペースなレース展開に。外国人選手がレースメイクをする中で、そこに割って入ったのが鈴木洋だった。3000メートルを過ぎてもそのスピードは衰えない。そればかりか集団の前に出て積極的に仕掛ける場面も見受けられた。「生涯最後の5000メートルになる可能性があったので、悔いのないように走ろうと思った」(鈴木洋)。4年間の努力は嘘をつかなかった。ゴールタイムは自身初の13分台。今季2戦連続で自己ベストを更新し、シーズンベストでもチーム内2位という文字通りの快走を披露した。また、ケガでシーズンインが遅れた武田も14分一桁台でまとめ「自己ベストを出せるレースとは思っていた」と、復調のめどが立ってきたようだ。
外国人選手にも臆することなく挑んだ鈴木洋
鈴木洋の13分台の意味は大きい。4年間、思うように結果を残せなかった選手が、最後の年、そして関カレ前という時期に持ちタイムを飛躍させたことは仲間たちを強く鼓舞しただろう。「(関カレに選ばれた選手は)僕より走れる。自信を持って走ってほしい」。そう背中を押す鈴木洋。トラック部門2位に甘んじた昨シーズンだったが、今季こそは再び学生王者に輝くために――。チームは今、勢いに乗ってきている。
(記事 平野紘揮、写真 鎌田理沙、杉野利恵)
結果
▽男子800メートル
坂本優人(スポ2=早稲田佐賀) DNS
徳永翼(人1=岡山操山) DNS
▽男子5000メートル
白石達郎(人1=東京・日大二) 15分58秒46(7組27着)
野田拓夢(スポ1=長崎北陽台) 15分53秒44(10組36着)
真柄光佑(スポ1=埼玉・西武学園文理) 15分04秒37(11組14着)
井上翔太(スポ2=愛知・千種) 15分33秒88(11組32着)
遠藤宏夢(商1=東京・国学院久我山) 14分47秒15(14組17着)
河合祐哉(スポ3=愛知・時習館) 14分51秒60(14組22着)
川村裕幹(基理4=和歌山・桐蔭) 14分54秒35(14組25着)
伊澤優人(社1=千葉・東海大浦安) 15分11秒00(14組30着)
鈴木洋平(スポ4=愛媛・新居浜西) 13分53秒58(16組6着)自己新記録
武田凜太郎(スポ4=東京・早実) 14分06秒95(16組13着)
谷口耕一郎(スポ3=福岡大大濠) 14分29秒46(16組23着)
三上多聞(商1=東京・早実) DNS
西田稜(政経2=東京・早大学院) DNS
浅川倖生(スポ4=兵庫・西脇工) DNS
▽男子1万メートル
箱田幸寛(スポ4=広島・世羅) 29分47秒65(5組14着)自己新記録
柄本勲明(スポ4=早稲田佐賀) 30分30秒93(5組24着)
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コメント
柄本勲明(スポ4=早稲田佐賀)
――きょうのレースを振り返って
僕の目標として30分切りというのがありました。ですが序盤から集団の後ろの方のスタートになってしまい、集団がばらけ始めたときに追いきれず、ずるずると後ろに下がってしまいました。そこは改善できるポイントかなと思います。
――今回のレースは前に出られない場面が続きました
できれば(1周)70秒前後でおしていきたかったですが、今の僕の状態としても練習で重たい走りになっていたので、今できるのは3分を切るペースで走り続けるということでした。そこを粘りきれなかったのは残念だったかなと思います。
――関東学生対校選手権(関カレ)でハーフマラソンの出場を狙っているとのことでしたが、残念ながら今回メンバー入りはかないませんでした
ずっと関カレに向けて練習をしていたのでショックはあったのですが、それが僕の現状ということですし、その分強いメンバーがいるので、関カレの選手たちには頑張ってほしいなと思います。
――関カレに出場するメンバーに向けて、一言お願いします。
僕自身としても最後の関カレになるので、一生懸命応援したいと思います。それぞれの選手が自分らしい走りをして、しっかりとチームに貢献してほしいなと思います。
武田凜太郎(スポ4=東京・早実)
――きょうのレースの手応えはいかがでしたか
(先週の)1万メートルを走ってから、練習の大事さや小さいことの積み重ねが本当に大切ということを学びました。距離が短くなりましたが、一つ一つの練習をしっかりこなしていくということを意識して、練習の一環というか、そういった流れのなかで試合に出ました。
――きょうのレースの位置づけとしては、タイムを狙うというよりも練習に近いものでしたか
その中でも自己ベストを出せるレースだとは思っていたので、自己ベストを出したいなとは思っていました。自分が自己ベストを出すことで関カレでもチームとして弾みにもなると思うので、自己ベストを出せなかったことは反省点ですね。
――関カレについてですが、前回お話を伺ったときには「関カレにはもう間に合わない」とおっしゃられていました。その中でチームにどのように関わられていましたか
自分が出られないと分かったからには、こういった記録会で結果を出すことがまず第一だと思いました。駅伝主将である平(和真、スポ4=愛知・豊川工)や井戸(浩貴、商4=兵庫・龍野)らが関カレに向けて練習する中で、チームによく目を向けるというのが自分の役目かなと思ってやってきました。
――きょうのタイムについてはいかがですか
3週間前からしたらだいぶ修正できたと思いますが、まだ良いタイムとは言えません。光が見えてきたかなとは思いますが、上で戦うには13分台は当たり前だと思いますし、13分台というだけではなく(13分)40秒、30秒に向かっていかないといけない立場だと思っているのですが、そこにはまたまだ手が届かないなと感じました。
――これからはどのような練習を積んでいく予定ですか
2週間後に記録会が控えているので、そこで13分台を出して7月のホクレンロングディスタンスの1万メートルで28分台を出すことが大きな目標になっています。そこに向かって頑張っていきたいと思います。
――ケガの具合についてはいかがですか
ケガはまったく痛みなく走れています。
鈴木洋平(スポ4=愛媛・新居浜西)
――きょうの目標タイムは
きょうは14分05秒を目標に臨みました。
――調子はいかがでしたか
前回よりも練習は積めていたので、走ってみたいと分からないところはありましたが、自信を持ってスタートに立てたかなと思います。
――5000メートルで関カレのメンバーには落ちてしまいましたが、そこからどのように気持ちを立て直されましたか
やはり最後の関カレでしたし、1年生のときに関カレで最下位になっていたのでリベンジしたいと思っていましたが出られませんでした。自分が選ばれなかったことを悔しく思っていましたし、一番は監督を見返してやりたいという気持ちで、やればできるんだぞというところを見せたいと思いました。
――序盤から外国人選手についていくなど、積極的にレースを進められていましたが、その点についてはいかがですか
最近は後ろからいくレースが多かったのと、きょうが生涯最後の5000メートルになる可能性があったので、悔いのないように走ろうと思って前に出ました。
――3600メートル辺りで外国人選手よりも前に出られていましたが
監督から前回の反省で前に1回も出られなかったことを上げられたので、ラスト1600メートルから1200メートルで勝負を仕掛けようと決めていました。
――今回の記録はチーム内のシーズンベストでも2位となりますが、その点についてはいかがですか
光延(誠、スポ3=佐賀・鳥栖工)が1つ下なのでその記録を抜きたいと思っていたのですが、そこが関カレに選ばれているか選ばれていないかの違いかなと思います。
――来週には関カレが行われますが、チームメイトにどのような走りをして欲しいですか
先ほど自分が選ばれなくてふがいないと言いましたが、やはり力があると認められて出されるので、僕よりは走れると思いますし、自信を持って走って欲しいと思います。
箱田幸寛(スポ4=広島・世羅)
――きょうのレースの手応えは
自分の中では29分50秒を目標にしてたので、そこを達成できたのは良かったと思います。欲を言えば29分30秒を切るのを狙っていたので、もう少しいけたのではないかとも思いました。
――自己ベストを更新したことについては
そもそも1万メートルの自己ベストは先日の早大競技会で出した30分16秒なので、不満というか、自分の中ではまだまだいけると思っていました。なので自己ベスト更新は素直に嬉しいです。
――本日のレース展開について、8000メートル付近でスパートをかけられたことについてはいかがですか
集団を離すというよりは、タイムを狙っていくという意味で前に出ました。しかし3000から4000メートルあたりで自分が集団を引っ張っていたので、足を使ってしまい、ラストで置いていかれたのは課題かなと思います。ただ、自分でレースを組み立てて、あそこまでできたのは自信になりました。もう一つ言うとしたら、自分が思ったよりタイムが遅かったので、そこに関しては前半の自分の判断ミスかなと思います。
――関カレの部内選考は漏れてしまいましたが、それを踏まえてきょうはどのようなお気持ちで臨まれましたか
関カレはハーフマラソンの方で、先日までみんなと練習してメンバー争いはしていたのですが、重要な練習で、関カレに選ばれた3人に負け、悔しい思いをしました。ただ、そのメンバーに負けてしまったことは悔しいですが、自分そのメンバーを鼓舞する意味でも、この記録会で自分が走ることでチームの士気も上がりますし、関東インカレだけではなく、あしたの日体大記録会の5000メートルを走るメンバーに向けてもいい刺激になったと思います。自分が走るのはいまのチームにとって重要、そのような位置付けで走りました。
――次のレースの予定は
次は関カレの次の土曜日にある記録会で、5000メートルに出ます。その自己ベストも、高1の時から更新していない14分30秒なので、それを更新していきたいです。きょうのレースはそこに向けて自信になったかなと思います。