秋晴れの中行われた1万メートル記録挑戦競技会。各々が目標タイム達成に向けて出走した。8組では復帰2戦目の車田颯(スポ1=福島・学法石川)が終始先頭を譲らないレースで29分41秒08をマーク。単独走となったが安定したラップを刻み、結果を残した。また久々の1万メートルに出場した高田康暉駅伝主将(スポ4=鹿児島実)はハイペースな展開のなか29分19秒10でまとめ、復調ぶりを示した。
男子1万メートル8組。スタートの号砲と共に真っ先に飛び出したのは車田だった。勢いそのままに、重心のぶれないスムーズな足運びで後方集団との差をぐんぐん広げていく。ときおり後ろを振り向くが後続が車田に追いつくことはなく、レース後半には100メートル近い差をもつけた。最後の1周を猛スパートで駆け抜けると、ガッツポーズを見せた1位でゴール。「終始先頭を守り切りゴールできたというのは自信になった」(車田)。高校時代からのケガに苦しめられてきたが、復帰後は2戦連続で自己新記録をたたき出した。
終始独走し、自己記録を更新した車田
日没後の男子1万メートル11組に登場したのは、駅伝主将の高田。28分台で走ることを目標に挑んだ。立ち上がり、久保田和真(青学大)が先頭となり縦長の集団を引っ張る。初めの1キロを2分48秒で入るなか高田も集団の真ん中に位置取り、冷静に試合を進めていく。その後一度は落ち着いたものの、5000メートル過ぎに再びペースが上がる。「少しきつくなったらすぐに我慢ができなかった」と振り返った高田。次第に前との差が開き、粘り切ることはできなかった。目標には届かなかったものの、前半では余裕をもってレースを進められたことに手応えをつかんだ。
久々の1万メートルとなった高田駅伝主将
「チームとしてはいま良い状態できているので、勝つ気持ちを持ちながらやるということが大切になると思う」(高田)。車田の快走、高田の復調などケガから立ち直った選手の明るい話題が持ち上がった。誰が東京箱根往復大学駅伝(箱根)のエントリーに選出されてもおかしくないという状況が早大を強くするだろう。新春の大一番へ向け、集中練習でさらなる強化を誓う。
(記事 杉野利恵、写真 平野紘揮、須藤絵莉)
結果
▽男子1万メートル
西田稜(政経1=東京・早大学院) 31分06秒11(4組11着) 自己新記録
岡田望(商1=東京・国学院久我山) 31分45秒66(7組22着) 自己新記録
車田颯(スポ1=福島・学法石川) 29分41秒08(8組1着) 自己新記録
谷口耕一郎(スポ2=福岡大大濠) 30分58秒12(8組12着)
箱田幸寛(スポ3=広島・世羅) 31分21秒33(8組7着)
高田康暉(スポ4=鹿児島実) 29分19秒10(11組23着)
コメント
高田康暉駅伝主将(スポ4=鹿児島実)
――きょうのレースを振り返っていかがでしたか
先々週も5000メートルを走ったのですが、今回は1万メートルということで28分台を出せれば良いかなと思っていました。現実としてはちょっとまだまだと言うか、もう少しかなという気がしました。
――先日のトライアルin伊勢崎ウィンターでは2レースに出場されていましたが、調子は戻ってきていらっしゃいますか
そうですね。調子と言いますか、足に問題なく練習ができてきていることが一番大きいかなと思います。
――本日のレースプランは
14分10から20(秒)くらいで(前半5000メートルが)いくと思っていたので、そういった面ではすごく準備をし、楽にいけたら良いなと思っていました。
――今回のレースの収穫、課題点は
レース自体は余裕を持って進めることができたことは良かったのですが、課題としては少しきつくなったらすぐに我慢ができなかったです。それはまだ練習をしっかりやり始めたばかりなので、箱根(東京箱根間往復大学駅伝)まで残り1カ月なのですがここからちょっと量を積むような練習が入って来るので、そこから体をつくっていけばこの課題はしっかり克服できると思います。
――これから集中練習が始まりますが、チーム、個人としてそれぞれどのような部分を強化したいですか
チームとしてはいま良い状態で来ているので、上尾ハーフ(上尾シティマラソン)を走った選手たちもさらに上に行けるように、全体で士気を上げながらただやるだけではなく、勝つ気持ちを持ちながらそれぞれがやるということが大事になると思います。主将ではあるのですが、一番自分自身が(集中練習で)走らなければいけないと感じています。自分自身がしっかりと箱根のスタートラインに自信を持って立てるように、きちんと準備をしていきたいなと思います。
車田颯(スポ1=福島・学法石川)
――今回のレースを振り返っていかがですか
結果的に29分40秒台というタイムを出せたのですが、当初このレースでは(組ごとの)目標タイムで設定されている通り、29分前半のタイムを目標としていました。結果的にそれに届いていませんでした。ですが、初めて自分から積極的に前に出て、1万メートルという自分でもあまり良い記録を持っていない距離で、終始先頭を守りきりゴールできたというのは自信になったと思います。
――序盤から一気に先頭に出てレースを進めましたが、これはレースプラン内でしたか
あまりこのレースに関してはプランは無かったのですが、レース前日に行った刺激練習の動きを見て、少し肩に力が入っているように自分で感じました。なので、1万メートルという長い距離ではできるだけ肩に力を入れないようにということを意識しました。肩に力を入れず、大きな腕振りを最初から最後まで続けることを意識して走ったことが結果につながったのかなと思います。
――今季はケガで出場の機会がなかなか得られませんでしたが
大学に入る前からケガをしていて、やはり試合に出たいという焦りから、ずっと他のケガを誘発してしまったり同じ箇所のケガをぶり返していました。自分でももったいないなと思うことがたくさんあったのですが、その期間で自分の根本的な走り方に、てこ入れをすることができ、復帰したばかりではありますが結果はついてきているので、今後も頑張りたいと思います。
――大学に入る前のケガというのは、どのようなケガだったのですか
全国高校駅伝前に、かかとが痛んでしまいました。ただ、その駅伝は高校3年間の集大成を見せたくて、どうしても出たいと思っていました。そのケガをおして強行出場してしまい、そこから高校卒業まで全く走れないという状態が続きました。
――ケガ明け以降の練習について教えて下さい
自分は少し練習を自分からやり過ぎてしまうくせがあるので、そこを見極めながらと言いますか。自分ができる範囲、なおかつやり過ぎない範囲でコーチが練習を組んで下さっていたので、上のチームの速いペースを感じながら練習を積むことができていました。
――箱根に向けての意気込みがあればお願いします
この一年間何のレースにも出られなかったというのが自分にとっても悔しくて、苦い思い出でもあります。しかしその悔しさをバネに、まずはチーム内の先輩に挑んでいく姿勢を見せ、自分が迫ってきているという危機感をチームに与えて、どんどんチームのレギュラー陣が上に上がっていくこと、そしてその上で自分もレギュラーに近付き、いつか追い越せるように、箱根までの残りの時間で頑張っていきたいと思います。