夏の鍛錬期を越え、ついに日本学生対校選手権(全カレ)が開幕した。早大競走部が一丸となって目指しているのはトラック優勝。初日は自己記録を更新した中村信一郎(スポ4=香川・高松工芸)が男子1万メートル決勝で5位入賞を果たすなど、上々の滑り出しとなった。2年連続で目標を達成するため、負けられない戦いは続く。
★冷静なレース展開で、対校得点獲得!
水濠を越える岡田
男子3000メートル障害決勝には、ルーキーの岡田望(商1=東京・国学院久我山)が出場。自らより格上の強者がそろう中で、「自分のペースを保つことが大切だとレース中に考えた」と、持ち前の冷静な判断力をいかんなく発揮したレースを展開する。序盤は周りの選手の様子を後方からうかがった。2000メートルをすぎてからは徐々にラストスパートをかけていき、最後の1周では激しい競り合いも見せながら着実に順位を上げていった。その結果は8位入賞。自己ベストまであと約2秒と迫る好タイムをたたき出した。「春に自己ベストを出したときとは違うレース展開にしても良いタイムが出せたのは、夏合宿での走り込みの成果が発揮できたからだ」と、今回の走りの分析を語った岡田。エンジをまとったルーキーの挑戦は始まったばかりだ。
(記事 榎本透子、写真 大庭開)
★初の全カレは2位でスタート
表彰式で笑顔を見せた仲野春
初めて全カレの舞台を踏む仲野春花(スポ1=福岡・中村学園女)。全カレ1日目は走高跳に挑んだ。仲野春は170センチメートルまでを1発でクリア。バーから体の高さにはかなりの余裕があり、好調ぶりがうかがえた。しかし176センチでは1回目、2回目共にかかとがバーに当たってしまい、落としてしまう。追い込まれた仲野春は176センチを3回目の試技で成功させる。土壇場で決める精神的な強さを見せ、この時点でベスト4に。跳べば優勝という179センチメートル。なかでも2回目の試技において体はバーの上にあるものの、足が引っかかる惜しい跳躍となった。少ないミスでまとめた結果、176センチメートルで銀メダルを獲得。うれしいスタートを切った。
あすにも仲野春は走幅跳を控えており、入賞が狙える位置にいる。仲野春の活躍が、ワセダのフィールド部門入賞へのカギとなるだろう。
(記事 杉野利恵、写真 戸田郁美)
★男子400メートル、2人が入賞!
必死のラストスパート見せた愛敬
昨年の日本学生対校選手権(全カレ)でルーキーながら優勝を果たした加藤修也(スポ2=静岡・浜名)。連覇を果たすべく、木村賢太(スポ4=大分・杵築)と愛敬彰太郎(スポ3=三重・桑名)と共に男子400メートルの予選に挑む。しかし本領発揮できないまま決勝進出を逃してしまう。一方の木村は第2コーナーから一歩も先頭を譲ることなく、自己新記録をたたき出し1位でフィニッシュ。無事決勝への駒を進めた。予選6組目に登場した愛敬も第1コーナーから積極的な走りを披露。接戦の末2位となったが、自己ベストの好タイムで同じく決勝進出を決めた。そして迎えた決勝。木村はバックストレートでアクシデントに見舞われ、まさかの8位。足を引きずりながらのゴールとなった。だが愛敬は粘りを見せた。決死のラストスパートを仕掛け、4位入賞と全カレでの自己最高順位を記録。見事複数入賞を果たした。この勢いのまま、あすの4×400メートルリレーでも早大旋風が吹き荒れることを期待したい。
(記事 中村朋子、写真 戸田郁美)
★猛スパートで5位入賞!
5位入賞を果たした中村信
全カレ1日目の最終競技となった男子1万メートル決勝には、高田康暉駅伝主将(スポ4=鹿児島実)、中村信一郎(スポ4=香川・高松工芸)、井戸浩貴(商3=兵庫・竜野)が出場。序盤は3人とも第2集団の中で落ち着いた走りを見せる。中村信は「少し抑え目で、後ろで待機するという位置づけで進めた」と話した通り、中盤は集団の半ばで冷静な走りを見せる。徐々にスピードを上げた中村信だったが、レースが動いたのはラスト2周だった。猛スパートで前を追い華麗に抜き去ると、28分52秒80でゴール。自己ベストを更新し、見事5位入賞を果たした。また井戸も「(集団の動きを)冷静に見極めることを今回の課題とした」と語ったように、冷静な走りを展開。序盤は集団の後ろに付き、ラスト1キロからペースを上げる。8位入賞には一歩届かなかったが、9位でフィニッシュした。
「久しぶりに(チームの)足並みがそろっている」と中村信が言うように、駅伝チーム長距離ブロックが調子を上げてきていることがうかがえるレースとなった。来る3次合宿では今回の課題を修正し、これからの駅伝シーズンへとつなげてほしい。
(記事 吉村早莉、写真 菅真衣子)
結果
▽男子100メートル
予選
須田隼人(スポ3=神奈川・市橘) 10秒39(-0.5)(3組1着)
北村拓也(スポ4=広島皆実) 13秒02(-1.7)(5組8着)
準決勝
須田隼人 10秒45(+0.5)(3組2着)
▽男子400メートル
予選
加藤修也 47秒02(2組3着)
木村賢太 46秒14(4組1着) 自己新記録
愛敬彰太郎 46秒53(6組2着) 自己新記録
決勝
愛敬彰太郎 47秒16(4位)
木村賢太 1分28秒02(8位)
▽男子1500メートル予選
小澤直人(スポ1=滋賀・草津東) 3分57秒41(1組7着)
池山謙太(スポ4=新潟・長岡大手) 3分53秒47(3組6着)
▽男子1万メートル決勝
中村信一郎 28分52秒80(5位) 自己新記録
井戸浩貴 29分01秒50(9位)
高田康暉 30分27秒25(23位)
▽男子3000メートル障害決勝
岡田望 9分02秒52(8位)
▽男子4×100メートルリレー予選
早大(永沼-須田-橋元-欠畑) 39秒60(3組1着)
▽男子ハンマー投予選
中川雄太(スポ3=近畿大和歌山) 59メートル74(11位) 自己新記録
▽女子走高跳決勝
仲野春花 1メートル76(2位)
▽女子棒高跳決勝
上原あずさ(教4=埼玉・不動岡) 3メートル40(17位)
▽男子対校トラック得点(1日目終了時点)
1位 順大 25点
2位 関西学院大 15点
3位 日大 14点
4位 早大 11点
▽男子対校得点(1日目終了時点)
1位 順大、東海大 28点
3位 日大 21点
7位 早大 11点
▽女子対校得点(1日目終了時点)
1位 筑波大 24点
2位 順大 23点
3位 中京大 14.5点
11位 早大 7点
コメント
中村信一郎(スポ4=香川・高松工芸)
――きょうのレースを振り返っていかがでしたか
元々8位入賞ということを目標にレースを進めてきた結果、5位だったのでその点は満足しているのですが、日本人1位があと少しのところで取れなかったことと、駅伝のチームが万全なメンバーで出てきていないという結果だったので、きょうはきょうでよかったと思うのですが、3次合宿などで考えていかなければいけない点だったと思います。
――レースプランはどのように考えていましたか
とりあえずしっかり最後まで走り切るということを目標において、8位目標だったのでそれより少し抑え目で、後ろで待機するという位置づけで進めていきました。監督(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)からも、「前半無理やりついていかなくても大体みんな落ちてくるから」ということを言われていたので、それを信じて焦らず後ろの方で徐々に上げていくというレースプランでした。
――タイムについてはどう思われますか
対校戦ということでタイムより順位が重要で、その中で自己ベストだったのは良かったと思います。
――積極的なレースを展開されており、特にラスト2周からは後続を突き放されていました
6、7、8位争いをしている中でやはり後ろにも人がいたのでそれが気になっていたのですが、人が仕掛けるより自分から仕掛けたほうが後ろが崩れると思ったので頑張って仕掛けました。
――夏合宿を終えて手ごたえはいかがですか
きょねんが結構良かったので、あまりきょねんとは比べたくはないのですが、万全ではない状態の中でも最低限練習はできていたと思います。
――これから駅伝シーズンに向かっていきますが、今の調子はいかがですか
まだまだ3次合宿の出来でもっと力はつくと思いますし、4年生として引っ張っていかなければという自覚はあるのでそこをしっかり忘れず引っ張っていきたいです。またチームでも久しぶりに足並みがそろっているのでそこは良い点で、もっとチーム争いが激しくなってきたら面白いのではないかと思います。
井戸浩貴(商3=兵庫・竜野)
――初めての日本学生対校選手権(全カレ)でしたが、レースを振り返っていかがでしたか
8位入賞を狙って走っていました。留学生の数が多いときょねんやおととしのように最初からついていって、全体的に速いペースで突っ込んでいくのかなと思っていました。でも、ことしは4人だったので入賞を狙うためにはそこについていかなくてもいいということで集団が分かれるだろうなと思っていました。なので、そのあたりを冷静に見極めることを課題にして今回のレースを進めていました。
――中盤から8人の7位集団でレースを進めるかたちになりましたが、どのようなレースプランを考えていらっしゃいましたか
本当はその集団の4、5番手につけて、ラストで抜いて2、3番手に上がってしっかりと8位入賞圏内に入るということを目標にしていました。中盤に集団への割り込み方で失敗してしまって、接触もあったりしたことが特にラスト3周の出遅れに響いて8位入賞を逃してしまったので、そこがこれからの課題だと思います。
――今後の練習でどのように課題を改善されていきますか
トラックを次に走る機会はなかなかすぐにはないと思うのですが、今回トラックシーズンの締めくくりとして課題が見つかって、駅伝でも1区を走ることになったらそういう展開も考えられると思うので、集団をレースペースで形成していく練習などでそういった課題を克服できればと思います。
――夏合宿での手ごたえはいかがでしたか
夏合宿では距離を踏むということを意識していて、目標としていた距離も達成できて脚にためる練習というのはできたのですが、その分疲労をためてしまって、調整に不安があるかなというところもありました。それでもそこはみんな一緒ですし、自分にできることを精一杯やろうと思ってここまできました。
――ホクレンディスタンスチャレンジで自己ベストを更新されましたが、要因としてどのようなところがあったのでしょうか
自己べストでしたが、まだスピードの速いレース展開にはついていけないので、今回のような展開になってしまった部分もありました。後半にしっかりと粘る持ち味を生かすために、きょねんに比べてジョグのベースを10分ほど毎日あげていくようにしたことが要因かなと思います。後半にばててレースを諦めてしまうこともなくなりました。
――トラックシーズンを振り返って、調子はいかがですか
4月にケガ明けということもあったのですが、2試合失敗してしまいました。そこから5、6、7月とうまくいっていて、今回の9月で入賞は無理だったのですが調子自体は悪くないと思うので、まずまずの流れではこれていると思います。
――駅伝シーズンに向けて、意気込みをお願いします
とにかくまずはケガをしないということが第一なのですが、それを恐れずに自分を練習の中で追い込んでいきたいです。距離走の部分がメインになってくるのですが、その中でもある程度スピードというのを意識して走っていこうと思います。自分がきょねん箱根は3区、全日本は6区を走らせていただいて1年生のときよりも主要区間を走らせていただいた中で力不足なところも感じたので、その部分を克服できるように駅伝シーズンに向かいたいなと思います。
岡田望(商1=東京・国学院久我山)
――入賞おめでとうございます。いまのお気持ちはいかがですか
入賞は目標にしていましたが、一発決勝ということもあり運の要素も強く、練習の成果とともに運も味方についたのだと思います。
――レース全体を振り返っていかがでしたか
レース前は先頭に着いていこうと考えていました。ですが先頭が速かったので無理に着いていかず、後半上げていこうとレース中に修正しました。
――レース中に先頭のペースは気になりましたか
そうですね。レースの先頭を走っていた同学年の塩尻選手(和也、順天堂大)は高校時代から全体を引っ張っていた選手だったので気になりましたが、それに振り回されずに自分のペースを保つことが大切だと思いました。
――やはり気にせず自分のペースを保ったことが猛烈なラストスパートにつながったのですか
2000メートルまで余裕を持って走っていて、周りの選手も疲れていた中で冷静になって見ると、自分が一番脚を動かせていたのでこのままいけば入賞もできると考えていました。
――自己ベストに近いタイムが出せた要因は何だと考えていますか
春に自己ベストを出した時とは違うレース展開をしましたが、夏合宿での走り込みで体力がついたことが一番の要因だと考えています。また来年の春に調整をして走れば自己ベストを更新できると思います。
――夏合宿の手応えは十分にあったということですね
はい。故障をせずに練習を積めたのがよかったです。――残り2日間、全カレは続きますが、ワセダというチームとしてどのように戦っていきたいと考えていますか
学年や応援、選手も関係なく全員で一丸となって戦っていけたら、目標であるトラック優勝も達成できると思います。