好調前田が3位、新たな戦力も台頭!

陸上競技

  東京箱根間往復大学駅伝(箱根)前の最後のロードレースとなる上尾シティハーフマラソン。毎年メンバー選考において大きな意味を持つこの大会に多くの主力が参加した。前田悠貴(スポ4=宮崎・小林)が3位で走破すると、志方文典(スポ3=兵庫・西脇工)が復調の兆しをみせる12位と健闘した。全日本大学駅伝対校選手権(全日本)を走らなかった選手も結果を残し収穫のある大会となった。

序盤、先頭集団でレースを進める佐々木(左)と前田

  昨年、この大会で好走し箱根で9区を任された前田はことしも上々の走りをみせた。序盤からライバルである東洋大や駒大の選手と共に先頭集団を形成すると、終始上位でレースを進め3位でフィニッシュ。全日本で区間新を出した勢いは健在、チームの柱として箱根では主要区間での出走が予想される。二つの前哨戦を欠場し「戻ってこられるか心配だった」と不調に悩まされた志方は10キロ手前で先頭集団から離されてしまうも、1人になったところから粘り前を追う走りで部内2位の結果を残した。63台のタイムは想定以上、力のある選手なだけにさらなる飛躍が求められる。

  また、全日本では出場が叶わなかった選手の走りも目を見張った。今季急成長を見せる田中鴻佑(法3=京都・洛南)と出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)に出場した田口大貴(スポ2=秋田)が部内3位、4位に入るなど箱根メンバー当落線上の選手が意地をみせた。層の薄さが心配されるワセダにとってはこの2人の走りは大きな収穫と言える。一方で全日本に出場した佐々木寛文(スポ4=長野・佐久長聖)や高田康暉(スポ1=鹿児島実)などは力を発揮できず、集中練習に向け課題を残した。

63分台の好タイムでゴールした志方

 現在の力通りの結果となった今大会。渡辺康幸駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)は「東洋さんに圧倒された」と振り返る。学生三大駅伝未出場の選手が63分台を出すなど東洋大の選手層の厚さを見せ付けられるかたちとなり、立ちはだかる王者の壁の高さを改めて感じた。今後は集中練習でどれだけ15キロ以上の距離対応ができるかがカギとなってくる。故障者を出さずに12月を乗り切り、王座奪還へ完璧な状態で正月を迎えたい。

(記事 石丸諒、写真 浜雄介、大道瞳)

結果

▽大学生男子ハーフマラソンの部

前田悠貴  1時間03分07秒(3位)

志方文典  1時間03分53秒(12位)

田中鴻佑  1時間04分07秒(14位)自己新記録

田口大貴  1時間04分25秒(25位)自己新記録

市川宗一朗 1時間04分39秒(33位)自己新記録

柳 利幸  1時間04分40秒(35位)自己新記録

高田康暉  1時間05分24秒(76位)自己新記録

佐々木寛文 1時間05分30秒(82位)

萩原 涼  1時間05分34秒(84位)自己新記録

岡野 徹  1時間06分28秒(125位)自己新記録

高瀬和人  1時間07分45秒(189位)自己新記録

コメント

渡辺康幸駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)

――きょうのレースについてどのような印象を持たれましたか

全体的に言えば、コンディションの割には力通りの結果なんですけど、東洋さんに圧倒された感じですね。

――設定タイムと比較していかがですか

例年と比べて風が強かったんですけど、その中では上位6〜7人は設定通りできています。ただ優勝を狙うとなるともうちょっと底上げが必要だなと感じましたね。

――64分台で走った選手は及第点ということでしょうか

はい。4分30秒までは合格ですね。

――——昨年に続いて部内トップは前田選手となりました

前田はもう主力ですから走って当然、志方もそうですね。つなぎのところがもうちょっと3分台までいかないと、東洋さん駒澤さんとやるには分が悪くなりますよね。

――志方選手の調子は良くなったということでしょうか

彼は本来全日本でもメンバーに入らなきゃいけなかったのに自分のミスでああなっていますので、次はもう間違いなく(メンバーに)入るでしょう。

――収穫と課題を挙げるとすればいかがですか

もうどっちにしろ15キロからはスタミナ切れをして、それを課題として集中練習に臨むというのが毎年のパターンになっています。ことしも後半粘った選手はいたんですけど、結果的には後半の失速が何人かで出ているので。それを補うために集中練習があります。今回逆に15キロ以降良くなかった佐々木とかはそれでいいというか、集中練習でしっかり走り込んでスタートラインに立たせるという意味で収穫ですね。マイナス要素としては、積極性と頭を使った走りをきちっと身につけていかなければならないということです。うちは悪条件になると、例えば向かい風であったり寒過ぎたり暑過ぎたりというときに、どうしても泥臭さが東洋さん駒澤さんに比べて負けているところがあるので、そういうところが課題ですね。

――集中練習に向けて一言お願いします

もちろん練習はどこのチームも当たり前にやっているので、いままで通り伝統的にやっている練習をきちっとやって、故障のないようにしっかりと準備をしてスタートラインに立ちたいという気持ちです。

市川宗一朗(スポ4=愛知・岡崎)

――きょうのレースの感想をお願いします

全日本が終わってから箱根までの大事なハーフということですし、20キロ以上のレースもこれでもう箱根までないので、しっかりここでタイムを出しておきたいと思ったのですが、やはり自分が想定していたタイムにはまだまだ及ばなかったので、その点で課題が見つかったレースでした。

――現在の調子はいかがですか

全日本が終わってから結構練習を積んでいたので、調子が良かったかというとそうでもなくて、少し疲れが出ていたのもあるのですが、その中でも自己ベストでは走れたので、だいぶ安定感のある走りができるようになってきたかなと思います。

――きょうのレースで心がけていたことや目標はありましたか

最低自己ベストで走るということとやはり63分台、あわよくば63分を切るというくらいを狙っていたのですが、前半からそのペースにもついていけなかったので、それがまだまだ課題ですね。

――——箱根と同じ20キロを超えるレースでしたが、いかがでしたか

20キロ以上のレースは関カレ以来だったので、久々だったのですが、まず走ってみて長いなというのは感じたんですけど、20キロの走り方をもう一度確認できたというか、20キロ以上のレースの走り方をだいぶつかめてきたかと思います。

――箱根に向けて具体的な課題はありますか

スタミナや後半崩れない走りというものは、自分の中では持ち味としてできるようになってきていると思うのですが、それを生かすためのスピード、やはり前半速いスピードで入ったり、そのスピードに対応できる力がまだないので、そういうスピードや持久力をもう少し磨いていきたいと思いました。

――残すところ箱根のみとなりました。意気込みをお願いします

出雲が6位、全日本3位とワセダはまだタイトルを取っていないので、最後の箱根はしっかりと優勝できるように、自分の走りができるように頑張りたいと思います。

前田悠貴(スポ4=宮崎・小林)

――きょうの走りはいかがでしたか

練習を結構積んでいる中で出たレースとしては、最低限の走りはできたと思います。ただ駒大の村山くんと東洋大の大津くんに負けてしまった点は悔しいですね。

――普段通りの練習の中でのレースということでしょうか

そうですね。例年練習を積んだ状態で出場しています。全日本で一度ピークを持ってきているので、やはり多少の疲労はありますね。全日本のあとはあまり練習を落とさず、集中練習前に少し落としています。

――昨年は63分台が目標ということでしたが

62分台を一応目標にしていたのですが、きょうは風も強く状況があまり良くなかったので、集団にどこまで付いて、最後大津くんたちと勝負できるかだと思って走っていました。

――そこで差がついた原因は何だとお考えですか

最後スパートで負けてしまったので、まだ2人には力が及ばなかったのかなと思います。単純に力不足ですね。

――その差について箱根までにできることは何でしょうか

まずは故障しないことと、あとはやはり自分だけではなくチーム全体での底上げというのが大事だと思うので、しっかり後輩たちを引っ張っていきながら、全員で調子を上げていけたらいいなと考えています。

――箱根は距離が長くなります。長い距離が得意ということですが、自信はありますか

短い距離でも力がついてきていると思うので、昨年よりは絶対に良い走りをしなければいけませんし、 それだけの自信もあります。

――——全日本で区間賞を獲得されましたが、そのことによりチームの士気は上がりましたか

そうですね。初めて区間賞を取ったので、僕でもやれるんだ、と思ってくれる人がたくさんいてくれたらまたその人たちの士気も上がってくれるのではないかなと思います。

――箱根に向けて一言お願いします

やはり東洋大、駒大が普通に力を出してくると僕らはまだ及ばないと思うので、しっかりその差を詰めて、箱根では逆転できるように頑張りたいと思います。

志方文典(スポ3=兵庫・西脇工)

――久しぶりのレースとなりましたがいかがでしたか

結果自体は思っていたよりも良かったですが、内容が渡辺監督や相楽コーチの指示よりは下回ってしまいました。

――——どのような指示が出されていたのですか

10キロ、15キロくらいまでは3分ペースぐらいで前に付いていき、例えそれ以降がダメでも集中練習でどうにかなるので、10キロ、15キロまでは頑張ってそこからは粘るようにとの指示でした。しかし10キロ手前で離れてしまったので残念でした。

――部内2位、全体12位という順位についてはいかがですか

1、2カ月前に比べたらだいぶ戻ってきた方なのですが、本来あるべき位置からはだいぶ遠い位置にいるので決して満足してはいけない順位です。危機感を持って自分に厳しくしなければいけないと思います。

――63分52というタイムに関してはいかがですか

今回は65分を切れれば良いという思いで臨んだのでタイムとしては良かったです。

――走りで良かった点は

1人になってもあまり崩れず前を追っていけたのが良かったと思います。

――逆に課題などはありますか

ペースが上がった時に対応できなかった事です。そこを対応できていればタイムは悪くても内容は良かったと言えたと思います。

――全日本は欠場されましたがどのような理由からですか

全日本は欠場されましたがどのような理由からですか

――出雲、全日本と欠場し我慢の時期が続きましたがどのような気持ちで過ごされていましたか

ことしこそは三大駅伝に全部出ようと意気込んでいたのですが、出ることができませんでした。出雲が出られなかった時期は緊張の糸が切れてしまい気持ちに緩みがでたことで戻ってこられるか心配になりましたが、陸上を辞めたくないというのが1番にあってもっと結果を出したいという気持ちもあり、そこだけは変えずに過ごしたことできょうの結果にギリギリ結びつきました。

――箱根に向けての意気込みをお願いします

チームとして出雲、全日本と不本意な結果になり、個人としても出場できないということでチームに迷惑をかけてしまい悔しい思いをしたので、箱根駅伝こそはチームとしても個人としても良い結果で終えるようにしたいです。

田中鴻佑(法3=京都・洛南)

——走り終えた感想は

目標として63分台を目指していたので、結果的に少し足りなかったことはこの夏の努力がまだまだ甘かったというか、詰めが甘かったのかなと感じました。

——タイムは自己新記録ですよね

今回が2回目のハーフで、1回目が65分28秒だったので自己新です。

——それでも満足はされていませんか

しっかり他大学と戦えるように、と考えていたので実際に順位も20番くらいで、上位とはだいぶ離されてしまったのでまだまだです。

——大会で20キロ以上走られるのは久しぶりだったと思いますがいかがでしたか

3月の立川ハーフ以来でやっぱり長かったんですけど、それだけの練習はできていたと思っていたので距離に対する不安はありませんでした。

——ここまで駅伝でメンバー入りするなど、手応えもあるのでは

ことし初めて出雲、全日本とメンバー入りさせてもらって、ただ、どちらとも走れなかったというのが自分の中でかなり悔しかったので、箱根にその悔しさをぶつけられればと思ってきょうも上尾に出ました。

——きょうの結果を受けて箱根での出走が見えてきたのではありませんか

そうですね、でも走れるか走れないかのレベルではなくて、戦えるか戦えないかのレベルで考えないといけないと思っているので、あと1カ月の期間でしっかり詰めて練習して、他大学と張り合えるようにしたいです。

——箱根での具体的な目標はありますか

もちろんチームの優勝というのがあるので、自分が走るからには足を引っ張るような結果ではなくて、チームを優勝に引っ張っていけるような、走るとしてもつなぎ区間にはなると思うんですけど、つなぎでもやっぱり区間賞争いをしていかないと優勝にはつながらないと思うのでしっかりチームを引っ張っていきたいと思います。

田口大貴(スポ2=秋田)

——きょうのレースを振り返っていかがですか

最低限自分の力を出せたという印象です。

——自己ベスト更新ですね

そうですね。箱根を前にベストを更新できたというのは自分にとってとても良いことだと思います。

——自己ベストの要因は何でしょうか

夏合宿の出来からいって自己ベストを更新するというのは当たり前だと思うんですが、それ以上に出雲が終わってから調子を崩していたので、先週からの取り組みでここまで持ってこれたというところに、今回に限ってコンディションの持っていき方がうまくいったと思います。

——どんな練習をされたのですか

今回は直前の集中練習の方法が変わって、全日本組のように上尾に合わせたというわけではないんですが、もう一つ違うチームで練習していました。上尾ハーフはその練習の一貫という位置付けです。

——これから箱根に向けてどんな練習をされますか

今回一番感じたのは15キロすぎからのスタミナが一番の課題だなということです。監督、コーチもおっしゃっていたのですが、集中練習でそこの部分を調整します。

——箱根に向けて抱負をお願いします

出雲、全日本を終えてチームとしてもそうですが、個人的にもすごく悔しい思いをしているので、そういった意味でチームに迷惑をかけている分、最後は貢献したいという思いがすごく強いです。なので、それをしっかり実現できるようにいまからやるべきことをもう一回整理して、箱根に向けて1日1日を大切にしていきたいです。

柳利幸(教1=埼玉・早大本庄)

——初めてのハーフを終えていかがですか

監督やコーチからも15キロまでは先頭集団についていくように言われて、その走りを15キロぐらいまではちゃんとできていたと思うのですが、そのあとの力不足で、失速してしまいました。

——失速の原因は何でしょうか

やはり距離に適性がまだないのかなと思います。

——全日本を終えてからきょうまでの調子はいかがでしたか

全日本を終えてから1週間は精神的にも肉体的にも結構つらくて、落ち込んでいました。でも、監督に「次の大会があるし切り替えてやっていけ」と言われたのと、仲間や先輩方から「お前はまだ1年だから心配するな」などと背中を押してもらって、今週は前向きに練習を進められました。

——箱根に向け良い調整になったと思いますが、今後の課題を教えてください

やはり、距離への適性と先頭の人たちにどれだけくらいついていけるのかが自分の課題だと思うので、そこをこれからの集中練習でつけていけたらなと思います。

——最後に今後の意気込みをお願いします

箱根では先輩方に良い順位でタスキを渡せるように全力で頑張りたいと思います。