まだまだ肌寒い気候が続くなか、第229回日本体育大学長距離競技会1日目が行われた。今季初となる1万メートルにワセダからは9名が出場。先週行われた六大学対校大会に引き続き2週連続のレースとなるも、4人が自己ベストを更新。ロードレースでチームの底上げを実感した昨季。トラックシーズンでも引き続き記録を出し、確実に力をつけてきている。
スローペースで始まった3組には田口大貴(スポ3=秋田)と田中鴻佑(法4=京都・洛南)が出場。ともに集団内に上手く位置取りをし、レースを進めていく。7000メートルからのペースアップに難なく対応するも、そこから明暗が分かれた。田口は集団の3番手につけ流れに乗ると、「思った以上に集団でタイムが上がっていた」。その言葉通り先頭集団は徐々に減り、9000メートル手前では拓殖大・佐護啓輔と一騎打ちに。その後先頭に立つと動きを切り替え、スパートをかける。「ラストでどれだけ切り替えて稼げるか」をポイントとしていた田口は残り1周、再びスパートをかけ佐護を引き離すと1着でフィニッシュ。今回のレースは「上手く対応できた」と笑顔を覗かせた田口は、既にレースを終え応援していたワセダ部員に向かってガッツポーズを見せた。今まで結果を残せていなかった1万メートル。それだけに今回満足のいく走りが出来たことは自信に繋がるだろう。一方、田中は「残り2000から踏ん張りきれなかった」という言葉通り少しずつ離れ単独走に。全体の7着でゴールした。
残り1000メートルを切りラストスパートをかける田口
高校生から第一線で活躍してきた武田凜太郎(スポ1=東京・早実)と平和真(スポ1=愛知・豊川工)は実業団や他大の主力が集った最終組に登場。新生活が始まり、競技だけでなく大きな環境の変化がある中挑んだ今回のレース。「最初から思い切っていけ」と渡辺康幸駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)からの指示があった通り、大集団の中でも1年生らしい堂々とした走りを披露した。6000メートル過ぎに起きた急激なペース変化に対応できず第2集団に下がるも、ラストキレのあるスパートで数名をかわした武田は自己記録を更新。平は初の1万メートルでまずまずの結果を残した。ワセダに入学してからも「良いライバル」(武田)である両者。今後も切磋琢磨し合い成長していく姿に注目が集まる。
1番速い組でも落ち着いてレースを進める武田(左)、平
新たな戦力となるルーキーを含め、4名が自己ベストを更新した今大会。チーム全体として良い感触をつかんだように思えたが、選手それぞれがレースを終え感じたことは多種多様だろう。しかしトラックシーズンは開幕したばかり。見つかった課題を修正し約1カ月後に控える関東学生対校選手権では、各々の実力を発揮してほしい。
(記事 目良夕貴、写真 細矢大帆、加藤万理子)
◆結果
▽男子1万メートル
臼田稔宏(基理3=長野・佐久長聖) 30分02秒23(2組1着)
中村信一郎(スポ2=香川・高松工芸) 30分28秒66(2組5着)
高橋広夢(スポ3=東京・東大付) 30分36秒74(2組6着)
三浦雅裕(スポ2=兵庫・西脇工) 30分56秒86(2組14着)
関口直人(商4=埼玉・浦和) 34分12秒39(2組36着)
田口大貴 29分14秒42(3組1着) 自己新記録
田中鴻佑 29分33秒69(3組7着) 自己新記録
武田凜太郎 29分04秒20(4組11着) 自己新記録
平和真 29分32秒14(4組21着) 自己新記録
▽女子3000メートル
納谷恵(文3=青森東) 10分24秒88(4組29着)
コメント
田中鴻佑(法4=京都・洛南)
――今日のレースを振り返っていかがですか
後半勝負と思っていたので、8000くらいまでは想定通りだったのですが、残り2000から踏ん張れなかったのは、次までに改善していきたいところです。
――先頭で引っ張る場面もありましたが
少しペースが落ちたなと思って自分で前に出て戻したのですが、長く引っ張るつもりはなかったので、わざと先頭を変わってもらいました。でも最後失速してしまったのは、単純に力不足かなと思います。
――あのまま最後粘る、というのが理想の展開ですか
そうですね。田口がそういうレース展開で結果を残しているので、僕もそういう走りをしたかったなと思います。
――冬はどういった練習をされていたのですか
最上級生として周りを引っ張っていかなくては、と自分で勝手に責任感を感じてやっていたのですが、その分少し空回りしてしまったというか、練習をやりすぎて、オーバートレーニング気味で調子を崩していた時期もありました。今はまだその調子が上がらないまま来てしまっていいます。ただ今回で、調子悪いながらでも走れた、という手応えはあるので、冬の成果は徐々に出てきているのかなと思います。
――クロカンや立川ハーフでも、思い通りの結果は出せていないかと思いますが、今後何か変えていきたい点はありますか
今までは練習では量を求めてやってきたのですが、昨季はそれが良いように影響して、ロードシーズンも結果を出せました。一方できょねんの反省点としてはトラックのタイムがあまり出せていないという点があったので、ことしは量だけではなくて、質も重視していきたいと思って、試行錯誤しています。ある程度スピードを求めてやっていかないといけないなと思っています。
――次の早大記録会に向けて、きょうの収穫を教えてください
今のあまり調子が上がっていない状態でも、29分30秒前後で走れたというのは自信につながります。でも次の早大記録会に合わせるというよりも、その次の関カレで結果を残したいと思っているので、それに向けて上向いていけるように、一戦一戦大事にしていきたいです。
――関カレへの意気込みを教えてください
この関カレはもちろん、駅伝に向けての大事な前哨戦になると思います。出させてもらえるのであれば、やはり最上級生として、しっかり点数を取ってチームに貢献したいと思うので、最低限入賞はできるように頑張りたいと思います。
田口大貴(スポ3=秋田)
――今日のレース展開を振り返っていかがですか
今日は集団の流れに乗ってレースを進めていくということと、最後でどれだけ切り替えて稼いでいくかというところがポイントだったレースでした。
――9000メートル手前から先頭に立ったのは最初から決めていたのですか
いえ、決めてはいなかったのですが、残り2000メートルくらいでペースを上げていくということを考えてはいました。思った以上に集団でタイムが上がっていたのでそこでは柔軟に対応して1000メートル手前くらいで動きを切り替えました。最後切り替えてなるべく稼ぎたい気持ちがあったので、そういった意味では、当初予定していたこととは違いますが、自分なりに上手く対応できたのかなと思っています。
――予定していたレース展開というのは
本当は5000メートルをもう少し早く通過するのかなと思っていました。思った以上に通過が遅かったです。でもまあそこは気にしないでその集団の中でレースを進めていくことを考えていました。
――7000メートルで一回ペースが上がったようでしたが
まだ仕掛けるのも早いですし、上手くレースが進んでいたので変に気にしないで、ペースが上がったから上手く対応してということを考えていました。
――今日は自己ベストでしたが、苦手なトラックで自己ベストというのはいかがですか
ずっとこう1万でなぜかタイムが出てこない時期が続いていたので、僕もストレスを感じていたんですけど。ここで少しベストというかたちでタイムが出たので、今後に向けていい流れが自分の中で作れたのかなと思います。
――好調が続いているように感じますが、要因はなんですか
練習でやってきたことを試合で出来るようになってきたことじゃないかなと思います。今までは練習では同じような感じでずっと出来ていたのですが、それが試合で結果として出てこなかったので嬉しいですね。調子が上がったというよりかは、試合で走れてきたという感覚が自分の中であります。すごく自信になります。
――今後の予定を教えてください
一応、早大の長距離競技会が月末にもう一本あるので、そこをステップに関カレに向けてやっていくつもりです。
武田凜太郎(スポ1=東京・早実)
――2組から最終組に移られた経緯を教えてください
自分が申請したタイムではない記録を申請してしまい、そのタイムで組が決定してしまいました。そのため、監督と話し合った結果、記録を狙うために最終組で走ることになりました。
――きょうのレースプランはどのようなものでしたか
外国人の選手が何人かいたので、彼らに無理に付いて行こうとはせずに、実業団や大学のトップレベルの選手たちに付けるところまで付いて行こうと思っていました。
――中盤まで平選手のすぐそばで走っていましたが
僕の中で平はとても良いライバルでありますし、二人でレースを進めることによって、二人で良い記録が出せるのではないかと思い、一緒に走りました。
――6キロ過ぎに集団が二つに分かれましたね
急激なペース変化にまだ対応できなかったかなというのはあります。
――ラストスパートでは何人か選手を交わしましたが
できればラスト1周から300メートルくらいから行きたかったのですが、まだそこでは出すことができず、ラスト100メートルの直線に入ってから全力を振り絞りました。
――授業が始まって1週間、大学生活はいかがですか
授業も高校よりもコマ数が少ない印象です。高校時代、朝練がなかったのでそこは苦労しています。
――寮生活には慣れましたか
寮のご飯もおいしいですし、規則正しい生活が送れているので、自分にとってはプラスになっていると思います。
――これからの目標を教えてください
やはり関東インカレにワセダの代表として出場して、1年生なのでそんなに気負う必要はないとは思いますが、ワセダを背負って今度は1万メートル28分台を狙うのが目標です。
平和真(スポ1=愛知・豊川工)
――きょうのレースを振り返って
初めての1万メートルということで、とにかく自分がどれくらいの力を持っているのか試そうと思い、レースに臨みました。もう何も考えずに走りました。
――目標タイム、レースプランはどのようなものでしたか
目標タイムとしては一応、29分を切れたらと考えていました。最終組ということで、良いペースでレースが進むことはわかっていたので、どこまでくらい付いていけるかということが課題でした。
――武田選手(凛太郎、スポ1=東京・早実)への意識はありましたか
ずっと並走していましたし、前でゴールできたらとは思っていましたが、力の差で後半離されてしまいました。
――初のトラックでの1万メートルレースとなりましたが、何か感じたことはありますか
長さ的には特に長いとは感じませんでしたが、後半に身体が動かないということは、まだまだ練習不足かなとは感じました。
――最終組で走ることになりましたが
1年生なので、「最初から思い切って行け」という渡辺監督(康幸、平8人卒=千葉・市立船橋)からの指示がありました。そういう意味でも最終組で走れて良かったなと思います。
――目標としている選手はいますか
特にいまはいませんが、ワセダで自分がどの位置にいるのかをしっかり考えて、一人一人追い抜いていけたらと思います。
――オーストラリアでの合宿はいかがでしたか
スピードのある選手ばかりでした。僕にはまだまだスピードがないので、感じるところや学ぶところがたくさんありました。
――具体的にはどのような点が参考になりましたか
上半身の使い方など、とにかく皆フォームが大きくて、自分はまだまだ小さくなってしまいます。まずは動き作りから始めて、もっと大きなフォームにすることを課題に置いています。
――大学生活はいかがですか
高校とは違ってゆとりがあるので、疲れは感じません。でもまだガイダンスの段階なので(笑)、これから部活と両立できるように頑張りたいです。
――早大競走部の雰囲気には慣れましたか
はい、だいぶ慣れました。
――今後の目標を教えてください
六大の対抗戦で足を引っ張ってしまった部分があるので、関カレとインカレでワセダの一員として貢献できるようにしたいです。任された種目ではメダルを取りたいと思います。具体的なタイムも含めると、5000メートルで13分台を出して、メダルを取りたいです。