橋元、世界選手権の参加A標準記録を突破!

陸上競技

ゴール後何度も拳を突き上げ喜びを表現した橋元

 男子200メートルタイムレース決勝3組、フィニッシュタイマーに表示された20秒35という記録に会場中がどよめいた。8月にモスクワで開催される世界選手権の参加A標準記録を突破するだけではなく日本歴代でも上位に入る好記録。驚嘆と興奮が入り交じる歓喜の渦の中心には大きなガッツポーズを見せるワセダのルーキー・橋元晃志(スポ1=鹿児島・川薩清修館)の姿があった。

 ワセダから竹下裕希(スポ3=福岡大付大濠)、橋元、愛敬彰太郎(スポ1=三重・桑名)の3人が出場した男子200メートルは上位記録の8人が入賞するタイムレース決勝の形式で行われた。お互い近い自己記録をもつ橋元と愛敬は3組目に出場。5、6レーンと隣同士でのレースに当初は接戦が予想された。しかし、レースがスタートするとこの予想は大きく覆される。「上手くはまった」という橋元はスタート直後にアウトレーンを走る愛敬を抜き去り独走体制を築くと、ストライドの意識を変えたというのびのある走りで最後まで突き進み衝撃的なタイムを叩き出した。

 優勝には4組で橋元タイムを上回った飯塚翔太(中大)が輝いたものの「本当にびっくりした」と橋元自身もこのタイムに喜びを隠せない。そうした今回の結果の影には4日前に織田幹雄記念国際大会で17歳ながら100メートルの日本記録に100分の1秒まで迫った桐生祥秀(洛南高)の存在がある。日本中に旋風を巻き起こした年下の桐生に刺激され、負けていられないと発奮。さらには足の使い方を参考にするなど徹底的に意識し、この結果につなげた。

 A標準を突破したことから考えていなかったという世界選手権が見えてきた橋元に「一喜一憂せずにまだまだ記録を更新していくという気持ち」とおごりはない。ワセダのエースにとどまらず活況を見せる男子短距離界の新たな担い手として、この先の関東学生対校選手権(関カレ)、日本選手権とルーキーらしくがむしゃらに駆け抜け、世界を目指していく。

(記事 石丸諒、写真 西脇敦史)

★永野が自己新記録!

今シーズン二度目の自己新記録となる走りを見せた永野

 400メートルハードルには野澤啓佑(スポ4=山梨・巨摩)、永野佑一(スポ3=福岡・育徳館)が出場。永野は前半からいいスタートを切ると中盤以降も積極的にレースを展開。10台目を終えた最後の直線でトップに立つと50秒38の一着でゴール。春先のレースに次ぐ今季2度目の自己ベストを更新した。「リズムが良くなかったのでタイムは出ていないと思った」と分析するも調子の良さが光ったレースとなった。一方、昨年度破竹の勢いを誇っていた野澤。日本ランキング上位の選手や海外からの招待選手など、粒ぞろいの有力選手が肩を並べ、熾烈を極めたレースに登場。ケガの影響も響いたのか地力を発揮できず5着でフィニッシュ。タイムも50秒73に甘んじた。しかし落ち込んでいる暇はない。世界選手権やユニバーシアード競技大会も射程圏内である野澤。日本選手権までに何としても照準を合わせ、本来の走りを取り戻したいところだ。レース後二人は口を揃えて自身の走りの感覚について言及。理想としている走りと実際の走りが一致した時さらなる記録の更新が見込まれる。「感覚のズレ」(野澤)という課題を克服した時自ずとタイムも開けるはずだ。まずは2週間後に控えた関カレで納得のいく走りを見せてほしい。

(記事 野宮瑞希、写真 西脇敦史)

★ケガの影響色濃く残る

故障明けのレースに苦しみながらもゴールする木村

 全体的に軽やかな走りではなかった。昨年エンジデビューを果たした大会に、ことしも木村賢太(スポ2=大分・杵築)が出場。しかし「力で押し切った」(木村)という200メートルまではなんとか加速したものの、後半一気に足が重くなる。最終的なタイムは48秒74と、昨年の本大会より1秒以上遅かった。2月に肉離れを起こし、しばらく練習を離れていたというき木村。いまはもう足に違和感もなく練習に復帰しているようだが、冬期の走り込み不足の影響は拭えない。昨年の4×400メートルリレー3冠(関カレ、日本学生対校選手権、日本選手権リレー)を口にし、「ことしも連勝を切らしたくない」と語ったが、果たして有言実行なるか。期待がかかる。

(記事 深谷汐里、写真 西脇敦史)

★新生活の戸惑い見られる

200メートルでも始終先頭からは遅れをとった蔭山

 今春ワセダを旅立った選手がまた一人、グランプリシリーズに登場した。蔭山愛(平25教卒=小田原市陸協)はまず400メートルに出場するが、終始スピードに乗れず伸びのない走りで6着。その4時間後には200メートルにも姿を現す。しかし、ここでもスピードが上がらない。福島千里(北海道ハイテクAC)や外国人選手が引っ張るハイレベルなレースについていくことができずに8着でゴールした。「全然練習ができていない」という蔭山。小田原市で公務員の仕事をこなす傍ら練習を積まなければいけない環境にはまだ慣れていない様子だ。これから日本選手権までにどれだけ調子を取り戻せるかがカギとなる。1か月後の日本選手権では本来の蔭山の走りが見たい。

(記事 川嶋悠里、写真 野宮瑞希)

◆結果

▽男子400メートル

木村賢太 48秒74(1組6着)

▽男子400メートル障害

永野佑一 50秒38(1組1着) 自己新記録

野澤啓佑 50秒73(4組5着)

▽男子200メートル

橋元晃志 20秒35(総合2位)大会新記録、自己新記録

竹下裕希 21秒32(2組4着)

愛敬彰太郎 21秒06(3組5着)

▽女子400メートル

蔭山愛(OB) 56秒24(2組6着)

▽女子200メートル

蔭山愛(OB) 24秒99(2組8着)

◆コメント

野澤啓佑(スポ4=山梨・巨摩)

――今日のレースを振り返っていかがですか

調子は自分の中ではいいかなと思っていたのですが、走ってみたら結果が自分の感覚と大きなズレがあって、納得できるようなレースではありませんでした。

――感覚というのは

少し難しいのですが、あんまり練習が積めていないことが大きな要因としてあります。これが次の関カレの課題となるのでしっかり体力作りと基礎の走る力をもう一回強くしていきたいと思います。

――練習を積めなかったというのは冬期のケガの影響ですか

そうですね。それもありますが、ただそういうのは理由にはなりません。一つずつのレースをしっかり、練習のようにとは言わないのですが、そこで1つずつ成長していければと思います。

――ケガの方は完治されていますか

まだ(状態は)完全ではありません。ケガというのは今後支障が出てくるので…。

――今大会はどのような位置づけでしたか

ユニバの選考もかかっているので、しっかりそこも選ばれるようにとか結果を出していれば代表というのを狙えていたのですが、この結果だとちょっとよく分からないので、自分でしっかり反省して、次につなげたいと思います。

――歩数については

きょねんと同様にオール14歩でいくというのを今日もやったのですが、後半8台目くらいから調子を崩してうまく合わなくて、最後10台目も一気にスピードが落ちてしまったので、やっぱりそこもまだ練習量が足りないということですね。しっかりそこを改善しないと記録も狙えないと思います。きょねんからそこは大丈夫かなと自分でも思っていたのですが、今日できていないのは自分の感覚が鈍っているってことだと思いますし、そこをしっかり今後その点を修正していきたいと思います。

――具体的に何台目までが何歩ですか

8台目まで14(歩)でいって、最後9台目が多分15(歩)でラストが多分14(歩)で。詳しくはわかりませんけど。

――目標としている岸本鷹幸選手(富士通)や昨年度ランキング上位の選手が揃ったハイレベルなレースでした

そうですね。岸本選手とはここでいい勝負ができるかなと思っていたのですが、やはり実力は岸本さんの方が上で、まだまだ自分の力が足りないなというのを実感しました。やはりそこは日本選手権でしっかり戦えるように努力していきたいなと思います。

――2週間後に関カレが控えています

記録ももちろんですが、学校の対校試合なので大学がどう個人で点を取って優勝できるのかっていうところで、しっかり個人種目で上位になれるように自分のベストを尽くしていきたいと思います。

永野佑一(スポ3=福岡・育徳館)

――自己ベストですが感想をお願いします

自分が走っているときはリズム良くなかったのでタイム出ていないなと思ったのですが、思ったよりタイムも出ていたという感じです。ベストが出たのは嬉しいですがそれが自分の感覚と一致できていないので、一致できればもっとタイム出ると思います。

――自分の感覚とは

歩数をこうやっていくとしっかり決めていたのに、自分が思っていた通りの歩数ではなく、ふわふわ浮いてしまいました。それでも1秒くらいベストが出たので、そういったところを修正していけば世界でも戦えるのではないかと思います。

――具体的な歩数は

5台目までが13(歩)で、7台目がいつも14(歩)だったのですが、今日は押していって、9台目まで14でいこうと思ったのですが、途中で15(歩)に変わってそのあと14(歩)になってしまいました。普通だったらありえないことというか、その分余力があったということなので、今後はしっかり力を出し切れるようにやっていきたいです。

――とても調子が良いように見受けられました

そうですね。不安もあったのですが、走ってみたらそれほど調子は悪くありませんでした。あとは関カレでチームの得点に絡んで、野澤さんと、ワンツーが取れればと思います。

――関カレの目標をお願いします。

ワンツーが取れればというのはあるのですが、1本くらい勝ってみたいので、また1番取れるよう頑張りたいです。

木村賢太(スポ2=大分・杵築)

――今日のレースを振り返ってお願いします

前半力で押し通してしまったので、後半うまく乗ることができませんでした。

――課題は見つかりましたか

ケガ明けで練習不足から不本意な走りになってしまったのだと思います

――どのようなケガだったのでしょうか

肉離れを2月にして、思うように練習できなったので、それが一番かなと思います。

――いま現在、ケガの状態は

違和感を感じなくなったので、大丈夫だと思います。

――2年生になり、技術面や精神面で成長した点などはありますか

メンタル面でも成長し、練習に費やす時間は多くなってきていると感じています。ただ、そこをうまく生かすことができないのはまだまだ未熟なところだと思います。

――六大学(対校大会)ではマイル(4×400メートルリレー)のメンバーとして優勝に貢献されました。レースの感想やリレーに対する意気込みをお願いします

1年の時に(ワセダは)マイルで三冠しているので、ことしもそれを切らすことがないよう、少しでもチームに貢献できたらいいなと思います。

――関カレに向けて一言お願いします

課題をしっかり改善できるだけの練習をして、関カレで勝負できるように頑張っていきたいと思います。

橋元晃志(スポ1=鹿児島・川薩清修館)

――まず率直な感想は

正直、本当にびっくりしました。

――入学してここまで調子が良い印象は受けませんでしたが

全然良くなかったです。この前の織田記念もあんまり納得の行く走りができなくて自分の走りが分からなくなっていました。

――どういった事が好記録に繋がったのですか

調子は良くないと思っていましたが、桐生君(祥秀、洛南高)が織田記念ですごい記録を出した事が自分に刺激になっていて、特に200メートルでは負けられないなという気持ちになったのが一つ記録を出した要因かなと思います。

――今日の走りを振り返っていかがですか

力を使ってないのに足が勝手に動いてどんどんスピードに乗る感じがありました。カーブを抜けた後のラスト50メートルでいつもなら腕と足のタイミングがバラバラになって形が崩れてしまうのですが、今日はしっかり頭でコントロールできたので形を崩さずに走れました。200メートルが短く感じましたね。タイムは出ても20秒6台とかだと思っていたので20秒3台が出て本当にびっくりしました。

――走りを何か変えられましたか

今まではその場で走っている(足が)真下で接地しているという走りでしたが、織田記念のあとに桐生くんの走りを見て、足を前に出してストライドを欲張って走ろうという考えに変えました。それが自分の走りに合っていたのだと思います。(動きを変えていたので)レース前は不安でしたが結果的に走りを変えて良かったです。

――1週間で変えられるものですか

変えられちゃいましたね(笑)。

――普段よりスタートが決まっているように見えましたが

自分でも上手くはまったなという感覚はあります。

――レースが続いていますが疲労などは大丈夫ですか

疲労はもうないですね(笑)。1年生なのでやれるところまでやろうという意識でやっています。

――ここまで来たら世界選手権が見えてきました

そうですよね(笑)。ユニバーシアードに行けたらいいなという気持ちで世界選手権は全然視野に入れていなかったのですが、こういう記録を出したからにはしっかり世界選手権に出場できるように目標を切り替えていきたいと思います。

――これからの具体的なビジョンは

自分の目標は五輪に出場する事です。ここでこういう記録を出せた事で立ち止まって次のステップに進めないという事がないように、一喜一憂せずにまだまだ記録を更新していくという気持ちを持って4年後のリオデジャネイロ五輪に行ければいいと考えています。

――早稲田記録は20秒29ですが

本当に偉大な記録ですが、自分もそこに挑戦できる位置には来ているので記録もしっかり視野に入れながらやっていきたいです。

――関カレでは飯塚翔太選手(中大)との対戦も予想されますが意気込みなどありましたらお願いします。

今日のレースはぶっちぎりだったのですが、今度は200メートルで日本のトップである飯塚さんと競ると思うのでそこでいかに自分のペースで走れるかというところをやっていきたいです。

――ワセダのチームとしては関カレでリレー連覇がかかっています。

ことしも連覇したいのでその力になれるように頑張ります。

蔭山愛(平25教卒=小田原市陸協)

――今日は200メートルと400メートルに出場されましたが振り返っていかがですか

400メートルは全然練習が出来てないので、練習がてら走ろうと思っていました。あまり走れないのが浮き彫りになったので、日本選手権まで時間はあまりありませんが頑張ろうと思います。200メートルは全然上手くいかなかったというのが正直なところです。

――現在はどこで練習されているのですか

小田原です。ほとんど1人でやっています。

――そういった環境には慣れましたか

慣れないですね。みんなとやっている時が恋しいなと思います。

――仲の良かった紫村仁美選手(平25スポ卒=佐賀陸協)と一緒に練習する予定などは

まだ日程は合わせていないのですが、夏に合宿ができればいいねとは言っています。

――日本選手権はどの種目で出場されますか

400メートルですが、どうなるかなという感じです。

――意気込みがありましたらお願いします。

へまをしないように頑張ります。