連覇を懸けた大接戦

陸上競技
走り幅跳の試技の合間を縫ってやり投に出場したディーン

走り幅跳の試技の合間を縫ってやり投に出場したディーン

 早慶対抗競技会が、ことしは早大の織田幹雄記念競技場で行われた。負けるわけにはいかない早大と、なんとしても早大の連覇を食い止めたい慶大とが、最終種目まで勝敗の見えない大接戦を繰り広げた。両者の闘いの結末は、日本新記録を樹立した早大の4×200メートルリレーの優勝により、30‐27の僅差で早大が19連覇を果たした。

 きのう行われた早大対関学大対校大会同様、ディーン元気(スポ4=兵庫・市尼崎)が、やり投に登場。一回のみの投てきであったが、69メートル25の記録を残し、王者の貫禄を見せつけた。この他にも今大会でディーンは、円盤投、走り幅跳、オープンの4×200メートルリレーにも出場。「いままでやり投に特化してずっとやって来たので、さまざまな動きをやって体を使いこなすことを目的に挑戦しようと思っています」と語るディーンにとって、新たな挑戦となったであろう。

 トラックでは、110メートル障害で早川恭平(スポ4=長野吉田)、100メートルでは竹下裕希(スポ3=福岡大大濠)らが活躍を見せた。早川は、再レースというアクシデントに見舞われながらも、落ち着いた走りで中盤から徐々に後続を引き離し、見事一着でゴール。しかし、13秒台を狙っていた早川の表情には、悔しさが滲み出ていた。100メートルでは、竹下の隣に慶大・山縣亮太が並んだ。世界で活躍する山縣に懸命に食らいついた竹下は、10秒35で竹下自身のセカンドベストの走りを見せる。山縣に続き二着となり、両者共に大会新記録を叩き出した。竹下は、きのうの大会からの修正が功を奏し、納得のいく走りができたようだ。

日本記録を樹立しWマークを作って喜ぶリレーメンバー。左から、木村、竹下、愛敬、永沼

日本記録を樹立しWマークを作って喜ぶリレーメンバー。左から、木村、竹下、愛敬、永沼

 最終種目は、4×200メートルリレー。ここまでの得点は27-27と同点のため、最終種目での結果が、対抗得点の勝敗を決めることとなった。一走は、木村賢太(スポ2=大分・杵築)。後半からの加速により、慶大に差を広げられることもなく、チームとして幸先良いスタートを決める。二走の竹下は、100メートルに続き、再び山縣との闘い。山縣と接戦を繰り広げる大健闘であった。三走の愛敬彰太郎(スポ1=三重・桑名)で逃げ切り、アンカーに繋げると、永沼賢治(スポ2=大分舞鶴)がラスト100メートルから慶大を引き離し、日本新記録の樹立と共に、早大の優勝を確定させた。

 今大会は、短距離のシーズンの終わりを告げるとともに、4年生にとっては、最後のエンジとなった。今後は、駅伝のシーズンへと突入し、チームも代替わりをする。新体制となる今後の早大の活躍に期待が高まるばかりだ。

(記事 須藤絵莉、写真 西脇敦史、手塚悠)

結果

▽男子100メートル
竹下裕希 10秒35(2位)
須田隼人(スポ1=神奈川・市橘) 10秒45(3位)自己新記録
北村拓也(スポ2=広島皆実) 10秒53(4位)

▽400メートル
木村賢太 46秒99(1位)自己新記録
佐藤拓也(スポ2=埼玉・越谷西) 47秒00(2位)
愛敬彰太郎 47秒27(4位)

▽1500メートル
池山謙太(スポ2=新潟・長岡大手) 4分01秒24(1位)
出口翔(スポ2=東京・開成) 4分02秒07(3位)
亀田卓志(基理3=栃木) 4分02秒44(4位)

▽110メートル障害
早川恭平 14秒04(1位)
竹吉大記(スポ1=千葉・市船橋) 14秒64(2位)
野澤啓佑(スポ4=山梨・巨摩) 14秒71(3位)自己新記録

▽4×200メートルリレー
早大(木村-竹下-愛敬-永沼) 1分22秒41(1位)
日本新記録 アジア新記録 大会新記録 早稲田新記録

▽男子走高跳
林風汰(スポ4=三重・宇治山田商) 1メートル85(4位)
早川恭平 1メートル80(5位)
仲野遼(創理1=福岡・京都)  NM

▽男子走幅跳
林風汰 7メートル28(1位)
渡辺翔大(スポ4=静岡・沼津東) 6メートル74(5位)
ディーン元気 6メートル28(6位)

▽円盤投
ディーン元気 45メートル27(2位)
釼持優太(スポ2=神奈川・小田原) 28メートル50(5位)自己新記録

▽男子やり投
ディーン元気 69メートル25(1位)
釼持優太 59メートル85(3位)
中川雄太(スポ1=和歌山・近畿大和歌山) 37メートル66(6位)自己新記録

▽対校得点
1位 早大 30点
2位 慶大 27点

▽男子100メートルOP
永沼賢治 10秒86(1組2着)
竹井尚也(スポ4=京都・龍谷大平安) 10秒94(1組3着)
欠畑岳(スポ3=岩手・盛岡一) 10秒94(1組4着)
玉井修平(人1=大分舞鶴) 11秒00(2組1着)
野澤啓佑 11秒06(2組2着)自己新記録

▽男子400メートルOP
中野直哉(スポ1=長野吉田) 47秒96(1着)
永野佑一(スポ3=福岡・育徳館) 48秒45(2着)
伊澤賢人(スポ2=栃木) 48秒47(3着)自己新記録
吉田貴洋(スポ2=和歌山・田辺) 48秒88(4着)
田波康太(スポ2=埼玉・早大本庄) 52秒05(6着) 自己新記録
渡辺高博中距離コーチ(平5人卒=愛媛・ 新居浜東) 53秒95(7着)

▽女子100メートルOP
長田彩楓(スポ1=早稲田佐賀) 12秒57(1着)
竹原由梨(スポ1=岡山城東) 13秒06(2着)自己新記録
羽角彩恵(スポ3=北海道・札幌一) 13秒12(3着)
中澤希緒(政経1=埼玉・早大本庄) 13秒23(4着)
杉田望美(スポ1=栃木女) 13秒99(5着)

コメント

早川恭平主将(スポ4=長野吉田)

――今日のレースの振り返りをお願いします

主にそうですね。僕が考えています。

――きょうの練習を振り返って

1カ月後に関東の団体戦があるので試合前ということで、体力づけと、試合中できつくなった時に踏ん張れるような体力をつけるということ。あとは身体に染み付くような練習とまだ個人個人が出来ていない部分があり、共通する部分があったら、その1個をとりあえず直そうというのを目標にして練習を組み立てています。そういうやり方で、ウォーミングアップでちょっと体力を使い、辛いけど足を動かす練習と、試合前ということで対人の練習でスパーリングや打ち込み、目ならしの練習で感覚を養いました。

――目ならしというのは

身体が動いていない状態で急に突きが来ても貰ってしまうんですよね。だから当たらない程度に突きを出して、避けられる練習をやります。

――足を動かす練習というのは辛いのですか

休み明けというのもあって、きょうはどちらかといえば抑えていた方です。身体がしんどいときに急にバーンとやってもケガをしてしまうので。普段はもっと道着がびちょびちょになるんですけどね、きょうはちょっと取材があるので(笑)。

――試合が近づくと練習は抑えるのですか

1週間前ぐらいに徐々に温存していきます。オーバーワークだと身体がついていけなくなるので。これからまたちょっとずつ上げていって、1週間前にちょっとずつ下げていってという感じです。

――練習はどのように工夫していますか

モチベーションが上がらなくなってしまうのは嫌で、ずっと6日間練習しているとどんどん悪い方向に進んでいってしまうのは嫌なので、ちょっときつい練習した後は1日置いて、次の日は楽しい練習したりとか色々工夫しないと練習ってつまんなくなってしまうと思います。勝たなくてはいけないのできつい練習もしなければならないんですけど。折り合いは難しいです。どうせなら楽しくやりたい、きついことも楽しくやって試合も楽しくやって、というスタンスでいます。楽しくやろうという感じです。みんな真面目なので、楽しくやっていてもふざけて、というのも無いですし。そこら辺のけじめはしっかりできています。

ディーン元気(スポ4=市尼崎)

――きょう幅跳びに出場されたのはなぜですか

東アジア(東アジア選手権)が終わったあと、まだわかりませんが、国士舘大学Combined Challenge2013で一応十種に出ようと思っています。東アジアが終わって体調で決めようと思っています。大学最後にいろいろな体の使い方というか、いままでやり投げに特化してずっとやって来たので、いろいろな動きをやって体を使いこなすことを目的に挑戦しようと思っています。それもあって今日は走り幅跳びに出場しました。

――この二日間、やり投で意識したことは

きのう、きょうと連続した日程だったので、きのうは思いきってというか技術な方を意識しました。助走はきょうと同じ距離だったのですが、きのうは課題を克服できて良かったです。きょうはコーチと相談して1本だけで、勝てる記録を投げて、もう終わっていいんじゃないかという風になったのでそうしました。東アジアも控えているので、きょうは1本だけにとどめました。きのうはわりとやりがまっすぐきれいに飛んでくれたと思います。

――きのう克服できた課題というのは

やりを自分の腕でコントロールして高く上げようとして、上げたときにやりのしっぽが上に上がったまま飛んでいくようなことが多いのですが、その点を意識しました。自分の腕で無理矢理上げるような動きをせずに構えるとこからそのまままっすぐ伝えるという基本的なことです。変な癖が気づかないうちについてしまって、それを克服して、落ち着いてしっかり投げたら記録もついてきました。全力で投げようというよりはきれいに忠実にやりに力を伝えていければと思って投げたという感じですね。あとは体が整って東アジアを迎えられるかどうかというのが一番大事だと思います。

――東アジアまではどのような調整をする予定ですか

全カレ(日本学生対校選手権)まではケガの療養で満足にトレーニングが積めていませんでした。全カレが終わってから少しずつ走り込みなどをして足が動いてくることによって、きのう投げた感じもすごく楽になりました。基礎をしっかり固めて、体力トレーニングを継続して、自分のパフォーマンスを楽に、リラックスして出せる状態にして迎えられれば、自分の思った通りのフォームとかで入り込める投げができるんじゃないかと思います。

――最後の早慶戦勝利ということで感想をお願いします。

接戦だったので、僕もやり投で勝てて、円盤投でも勝ちたいところでしたが、最後負けてしまったので流れ的にもどうかなと思っていました。下の学年の選手たちが頑張ってくれたおかげで勝てたので、しっかりこの勝ちを続けるのはもちろんですが、僕たちの学年も最後までうまく締めることができて良かったと思います。

野澤啓佑(スポ4=山梨・巨摩)

――今大会の目標は何でしたか

最後の対抗戦だったので、学生としても今シーズンのまとめとしても、自分としてはとりあえず、100メートル障害で1、2、3着をとるのが目標でした。この目標を果たすことは出来たので良かったと思います。

――ゴール直後にセーフとジェスチャーしていたのはなんだったのでしょうか

1レース目に脚を吊ってしまっていて(スタートやり直しで)再スタートとなった際に少し不安がありました。それでも最後まで走りきれたので、そういう動きが出てしまったのだと思います。自分ではそうやったことを覚えていません(笑)。

――きょうの試合を振り返って、110メートル障害は高校生ぶりに出場したと伺っています

そうですね、高校3年の夏以来でした。少しだけ練習して臨んだのですが、久しぶりに出場できて楽しかったです。

――オープンで出場されていた100mについては

100メートルは少し残念でした。最低の目標は10秒台を出すことだったのですが、出せなかったので悔しい気持ちが大きいです。今後も競技は続けるつもりなのですが100メートルにエントリーするかは分からないので、今大会が障害最後の100メートルのレースになるかもしれません。

――4×200メートルリレーの後、倒れ込んでいたのは

ハードルの影響でまた同じ部分を吊ってしまい、もう立てる状況ではありませんでした。レース途中で競っているうちに脚を吊ってしまっていて最後まで全力で走りきれなかったのが悔しいです。

――2日間全体を通じての感想をお願いします

対抗戦ということで学校として戦うということもあったのですが、楽しくレースに挑めたと思います。周りの応援も全体を通じて見ることが出来ました。今までやった対抗戦の中で最後に良い試合が出来たのではないかと思います。

――次の大会の予定は

次は国体、東アジア選手権、実学(実業団・学生対抗大会)、日本選手権リレーですね。日本代表として恥のないレース、今年最高のレースが出来たら良いと思います。そうなるように取り組んでいきたいと思います。

林風汰(スポ4=宇治山田商)

――この二日間を振り返っていかがですか

きのうの試合では幅跳びで負けてしまって、高跳びも記録なしという結果でした。きょうはその分、4年生ですし最後の対抗戦でもあったので、しっかり結果を出して4年生としての姿を見せようと考えて取り組みました。結果としては幅跳びの記録があまり良くなかったのできょうも最低限のことしか出来なかったと感じています。

――今回が最後のエンジだったということですが、4年間を振り返ってどうでしたか

結果として振り返ったらインカレでもそうですし、対抗戦でもしっかりとした結果が残せなかったのが正直な結果だと思います。

結果だけみたら残せなかったことに悔しいという気持ちが正直なところです。

――では最後に国体に向けての抱負と課題をお願いします

国体はワセダのユニホームを着て出るわけではありませんが、競走部としての最後の大きな試合になると思うので、この4年間やってきた集大成というのを、ちょっと遅くなりましたがしっかり出せるようにやっていきたいと思います。課題としては、現状が7メートル28なので、時間もないですがしっかり修正できるところは修正して、ベストのコンディションを出せれるように頑張っていきたいと思います。

竹下裕希(スポ3=福岡大大濠)

――4×200メートルリレーの日本新記録おめでとうございます。いまのお気持ちは

日本記録が出たことも嬉しいですが、やはり総合優勝が続いていて、最終のリレーの前で27ー27で同点でということで優勝がリレーに懸かっていたので、そこで勝てたということが嬉しいです。このチームで対抗戦として、4年生を入れて闘えるのも最後ですし、何としても勝ちたいという思いで、4人だけでなく、全員で闘えました。

――きのうはリレーを走ってないですが、今日出られた理由は

全日本インカレで痛めた所があったので、安全をとってきょうに懸けようということでした。

――100メートルでもリレーでも山縣選手と隣のレーンでしたが、いかがでしたか

彼は、いまの短距離を引っ張っていっている選手で、自分は実力ではまだまだ足りないと思っています。しかしどうにかして彼に近付いて、チームに貢献したいという気持ちで臨みました。

――100メートルもセカンドベストでしたが、きょうの調子はいかがでしたか

きょうの調子は良かったですね。きのうのレースからスタートから加速の部分で修正点がいくつかあったので、そこでうまく今日に修正して臨みました。それがうまくはまって今日のセカンドベストに繋がったと思います。

――その修正とはどのようなものですか

接地のタイミングが自分の中で、感覚としてずれていたので、そこの部分をワンテンポ早くすることで、上半身と下半身のタイミングが合って、うまく走れたと思います。

――国体に出場されると思いますが、意気込みを一言お願いします

はい、出ます。国体では、自己ベストと表彰台を狙っていきたいと思います。