【連載】王座直前特集『挑戦』 最終回 細沼千紗女子主将×山添絵理副将×鶴岡美咲主務

庭球女子

 最終回を飾るのは、この1年間部を支えてきた3人。細沼女子主将(スポ4=東京・富士見丘)、山添絵理副将(人4=千葉・渋谷教育幕張)、鶴岡美咲主務(スポ4=香川・丸亀)だ。個人戦で結果を残せず苦しんだ主将、サポートし続けたベンチコーチ、部を回すために奔走した主務――全日本大学対抗王座決定試合(王座)は、そんな同期で支え合った日々の集大成でもある。仲間への感謝、ことしのチームに懸ける思いを笑顔と涙を交えて語ってくれた。

※この取材は9月25日に行われたものです。

「ワセダは選手と応援が信じ合っているから団体戦で強い」 (鶴岡)

涙を交えながらここまでのシーズンを振り返る細沼(中央)、山添(右)、鶴岡

――まずここまでの振り返りからお願いしたいのですが、それぞれ個人戦のラストシーズンをどう評価しますか

鶴岡 個人戦を振り返ると、1、2、年生の頃は二次予選の決勝くらいまではいけていたのですが、3年生くらいから気持ちいいスコアで負けることが増えて・・・。3年で一度単複合わせて1ゲームも取れずに終わった時があって「やばいな」と思っていたのですが、最後の大会ではダブルスがいい感じで、シングルスでもちゃんとシコく1ゲーム取って気持ちいいスコアを免れることができたので、終わり良ければ全て良しだと。満足しています(笑)。

山添 私は就職活動もあったので新進(関東学生新進選手権)、春関(関東学生トーナメント)の時期はすごく両立が難しかったのですが、その中でも後輩の育成層のメンバーがすごく頑張っていたり、副将も二人いるのでお互い声をかけ合いながら何とか夏の大会まで頑張ることができて。夏の直前に脱臼をしてしまってインカレ(全日本学生選手権)に出られるかどうか不安だったのですが、その時はすごく同期が支えてくれて、普段私がベンチコーチをしている細沼が逆にすごく声を掛けてくれたりだとか、めっちゃ心強くて(笑)。(インカレに)出られて(パートナーの)辻(紘子、教3=東京・早実)にも欠場させずに済んで、何とか無事に終えられて良かったなという感じです。

細沼 一番結果を出せなかった年だったのでいろいろ思うことはあったのですが、試合前は結構頑張って練習できていたので、悔いはすごくあるんですけど後悔はあまりありません。頑張ったので良かったかなとは思いますが、やっぱり個人戦はもう一度やり直したいなと思います(笑)。

――インカレでは女子全体として結果が残せませんでしたが、あの時期にチームとして危機感や不安はありましたか

細沼 あったよね・・・。

鶴岡 私はインカレの現場には行っていなかったのですが、随時流れてくる結果を見て、他大がすごく力を入れてきているということは分かっていたので、その中でなかなか結果が出ていないという現状を突き付けられて・・・。インカレ後すぐリーグ(関東大学リーグ)だったので、これ大丈夫かなという不安はありましたね、やっぱり。この先どうなるんだろうか、という。

――そのような状況で、団体戦を前にチームでどのような話をしていましたか

山添 インカレ最終日までサポートにいっていたのですが、結果はもちろんですがプレッシャーというか、不安なままプレーしている選手がすごく多くて。振り切れていなかったりだとか、そういうところがインカレの反省として出ていたので、とにかくチャレンジャーの気持ちで、リーグで2年前に(慶大に)負けたことだったり、筑波に対抗戦で負けたことだったり、自分たちはチャレンジャーなんだということはミーティングでもすごく言っていました。それで今回リーグもチャレンジャーの気持ちで迎えられたのかなと思います。

細沼 隼さん(渡邉ヘッドコーチ、平19スポ卒=静岡・庵原)もインカレを振り返って「振れていない人が多過ぎた」ということをおっしゃっていて、夏関(関東学生選手権)前に集合した時に「守りに入っていて、自分たちの立場を守ろうとし過ぎてこういう結果になってしまっているから夏関は挑戦してこい」という言葉を掛けてもらって。夏関もワセダはそんなに良くはなかったのですが、インカレに比べたらラケットを振れるようになっていたので、やっぱり守りに入っちゃ駄目なんだなと思いました。

――実際にリーグが始まって、チームの雰囲気や戦いぶりはどう振り返りますか

鶴岡 レギュラーの試合をやっている子たちの試合を見ていても、何だかんだ団体戦は強いなと思って。選手も応援のことを信頼してくれているからこそだし、応援側も選手が最後は勝ってくれるということを信じているから最終的にワセダは団体戦で強いと感じられたのかなと思いました。そこは自信にしていきたいなと感じています。

山添 ミーティングでの後輩たちの言葉とかからも、連覇とかプレッシャー以上に感謝の気持ちでリーグに臨んでいる子がすごく多かったのが印象的で。選手として動く人が多くてサポートの人数が少ない中で、4年生がボーラーに入ったりだとか掃除も全員で行ったりとか、甘さにつながるかもしれないと不安なところもあったのですが、逆に全員がお互いに感謝の気持ちを持って臨めたのが、プレッシャー以上にいいプレーが引き出せたのかなと感じました。

細沼 試合の前日にミーティングするのですが、初戦の前から泣いちゃったんですよ(笑)。

鶴岡 リーグでは試合の前日にミーティングをするのですが、今までリーグの時は泣いたことはなかったんですよ。というか泣くようなミーティングじゃないんですよ(笑)。

山添 王座の前だけ泣くんですけど(笑)。

鶴岡 でも山添が泣き出して、引き出してきて。

細沼 声が何も聞こえなくて。

鶴岡 ブルッブルに震えていて、みんな学年ごとに言っていって最後山添、鶴岡、細沼の順番で言うんですけど、山添がそんなんだから私ももうもらい泣きしちゃって、号泣して(笑)。

細沼 4年生が結構泣いていて、本当に同期好きだなと思って。4年生がボーラーに入ることが結構多かったので、ベンコとボーラーと一緒に頑張って、この同期で優勝したいなという気持ちで戦おうと思いました。でもすごく不安はあったんですよね、個人戦であれだけ勝てなかったので・・・。でも団体戦の女なので、私は(笑)。それを出せればいいかなと思っていました。

――実際に細沼選手は団体戦に入ってから強さを見せましたが、ご自身の試合を振り返っていかがですか

細沼 強かった(笑)?

山添 強かったよ(笑)。本当によく持ち直したよ・・・。

鶴岡 細沼のボーラーに入ったり後ろで応援したりしてたんですけど、すごくいい試合をしてくれて。応援してても一言一言ポイント間で声を掛けても毎回振り返って笑顔で「うん、うん」ってしてくれるので、ちゃんと私たちの声が届いているんだなというのが逆に応援する力になりますし、すごく元気よくプレーしてくれたので、主将らしい試合だったと思います。

山添 ・・・泣けてきた、もう(笑)。

細沼 正直山梨学院大戦ではシングルスに出るか分からなくて、団体戦前にも隼さんに「細沼はあまりいいプレーができていないから」と、シングルスは最後の方は出ないみたいなニュアンスで言われていて。出られたら本当に頑張るしかないなと思っていて、去年は団体戦負けなしでチームの力になれていたのに、主将になってチームの力になれないのって本当に情けないなと思ったので。テニスが本当に楽しめていなかったのですが、(リーグでは)応援がすごく一生懸命してくれて、楽しんで、一番応援と一体感のあるプレーができたかなと思います。

――ベンチコーチとしてどうご覧になっていましたか

山添 うううう・・・。

鶴岡 やばいよ、泣くよ(笑)。

山添 インカレで去年準優勝していて、プレッシャー抱えながらうまくいかない時期があったので、リーグまでの間も一生懸命・・・。

鶴岡・細沼 (爆笑)

山添 一緒に休みの日もビデオ見たり球出ししたり、みんなが知らない時間も努力している姿を見ていたので・・・。

鶴岡 ちょっともらい泣きするわ、私関係ないんだけどさ(笑)。

山添 コートで振り切っているだけですごいなと思って・・・。かっこよかったです。そのプレーでチームのみんなも勢いづいたと思います。

細沼 山添はベンコで頑張ってくれたんですけど、早慶戦の江代さん(純菜)との試合では鶴岡がファイナルになってボーラーに入ってくれて。それで頑張れました、本当に。

山添 ミスが減ったよね、「走らせちゃいけない」って(笑)。

鶴岡 就活が終わってそのまま(新入生の)勧誘にいって高校生指導をしていたのでずっと運動不足で、不安に思われて(笑)。「こいつを走らせたら倒れる」と思ってめっちゃミス減ったんですよ、ネットとか本当にしなくなって。

細沼 「走らせちゃいかん」と思って(笑)。集中力が上がりました。あのファイナルセットは3人で勝ち取ったものです(笑)。

山添 ボーラーいいチェンジだったね(笑)。

鶴岡 若かったら頑張れてないからね。

――リーグを終えて、チームとしての課題は

細沼 去年ほどではないのですが、勝てる試合も何個か負けてしまって。亜大戦の倉持(美穂、商1=東京・早実)もファースト5-2だったりとか、明大戦の金井(綾香、社4=東京・早実)もファイナルでタイブレークにいったりだとか、清水(映里、スポ1=埼玉・山村学園)も2本落としてしまっているのですが、本来の清水なら勝てるかなという試合もあったりして・・・。みんな出し切れてはいるのですが、勝利への道は遠いなと思いました。1本取ることの難しさです。ワセダには『この一球』の精神があるのですが、王座では目の前の一球を本当に大切にしなくてはいけないなと試合を見ていて思いましたね。

――良かった点や収穫などはありましたか

鶴岡 さっき山添も言っていたのですが、選手、サポート関係なく一人一人がお互いに対して感謝の気持ちを持っていて、お互いを気に掛けながら行動することができていました。もともとワセダはチーム力を前面に押しているのですが、特にことしはすごくいい雰囲気のチームづくりが、自意識過剰かもしれないのですが(笑)できているのかなとは感じていますね。

「私の顔を見るだけで頑張ってきたことを思い出せるように」(山添)

副将、そしてベンチコーチとして細沼と共に戦ってきた山添

――四年間一緒に過ごしてきていますが、お互いどのような人ですか

細沼 鶴岡は初め本当に田舎っぺだなと。化けたよね(笑)?

山添 髪伸びたしね。

鶴岡 これディスるタイムなの(笑)?

細沼 でも努力してまあまあになりました。・・・ちょっとディスっちゃったから褒めてあげて(笑)。

山添 個人的には私がすごいビビりで優柔不断なところがあるので、一緒にサポートをやっているとすごく決断力があって、「これはこうした方がいい!」って引っ張ってくれるので、頼もしいですね。

細沼 私たちはフリーがあるのですが、鶴岡だけ高校生指導とかでフリーがないのに嫌な顔しないから。大人に怒られちゃったときはすぐに顔に出るけど(笑)、そういう大変さは出してこない。

鶴岡 たぶんそれは感じてないからだよ。楽しんでるから。

細沼 すごいよ、でも。

鶴岡 うれしいですね。でも基本的に性格がテキトーなので、決断力があるのもこだわりがないだけなのかなと。そんなにすごいことではないかも(笑)。

――細沼さんの印象はいかがですか

山添 いいやつです。

細沼 本当?

山添 私は小さい頃からの夢があって、就活で挑戦するかどうかすごく迷った時期があったのですが、お守りとかくれて。部を空ける時間も増えるのにすごく応援してくれて・・・。

鶴岡 また泣いてんの?うそでしょ(笑)?

山添 面接の前もずっと握り締めて、「いける!」と思っていったら面接受かりました・・・。

鶴岡・細沼 (爆笑)

山添 うまく言葉が伝わらなかったりするところもあるかもしれないのですが、すごく心優しいので。いいやつです。

鶴岡 チームとか仲間が尋常じゃないくらい好きなタイプで、みんなで何かやるとか、そういうのがすごく好きなんですよ。私たちも同期会とかするんですけど、やろうよって言い出してくれるのは大体細沼ですね。そういったところで、・・・まあいいやつですね。

山添 いいやつなんだよ・・・。

細沼 あざーす(笑)!!

鶴岡 ただ、ちょっとディスるんですけど、頭がちょっと弱くて言葉のチョイスが下手くそなので、いい言葉がなかなか出てこなくて。

細沼 そうなんですよ、それ永遠の課題で・・・。

鶴岡 そこは・・・課題だと思いますけど(笑)。でもいいやつです。

細沼 いろいろと不器用なんですよね。

鶴岡 運動音痴なんですよ、めちゃくちゃ。テニス以外できない!まっすぐ走ることはできるのですが、バッティングとか卓球とかはさっぱり。そういうのだったら絶対私の方がうまいです。

――スポーツ科学部は実技の授業が多いイメージですが

細沼 バスケの授業でレイアップシュートのテストをみんなの前でやったんですけど、下から入っちゃって・・・。

一同 (笑)

細沼 めっちゃ恥ずかしかった・・・入ったって言わないか(笑)。でも運動神経ありそうに見えるじゃないですか。

鶴岡 自分で言うの(笑)?

山添 見える見える(笑)。

細沼 だからばかにされます。

鶴岡 みんなこうやって体育会に入っているのである程度はできるんですけど、細沼は本当にずば抜けてますね。

――山添選手の印象はいかがでしょうか

細沼 声が震えてます。

鶴岡 別に泣きそうじゃなくても、ミーティングで人前で話す時に。

山添 人前で話すタイプじゃないので、結構発言する役割はきついです・・・。

細沼 でもかわいいじゃないですか。だから顔で得してるタイプです。

鶴岡 顔で生きていける。ねたむ。

細沼 でもテニスの調子が悪い時とかもすごく気にしてくれて、ベンチコーチだからというのもありますがそれ以上に本当に心配してくれていて・・・。

鶴岡 また泣くの?何回泣くの(笑)?

山添 2年だから、ベンコ歴・・・。

鶴岡 そうだね、そうだね。

細沼 後ろで必死に応援してくれるんですよ・・・。

鶴岡 私が先に言えば良かった、この後しゃべりづらいです(笑)。

細沼 眉毛がハの字になって。きゅいーんって。本当に頑張らなきゃいけないなって思います、山添がこんなに必死に応援してくれるのに何やってんだろうって思っちゃいます。・・・あー泣ける(笑)。

鶴岡 山添の印象としてはさっきの私の裏返しになってしまうのですが、私はすっごくテキトーで、本来主務だったら駄目なんですけど「このくらいでいいっしょ」とかって感じで。でも横で「これをやった方がいいんじゃない?」ってこそっと言ってくれるのがめっちゃ助かってて。・・・もう主務やってほしいです(笑)。

一同 (笑)

鶴岡 冷静なんですよ。私たちの学年ってすっごくうるさくて、1年生の時から先輩からもうるさいうるさいって言われて、「コート中に声が響き渡ってるよ!」って感じで怒られて。でも山添は唯一私たちのことを歯止めしてくれる存在で、「ちょっと静かにした方がいいんじゃない?」って言ってくれるのは一人しかいないので。みんな楽しくなっちゃってワイワイしちゃうんですけど、「ちょっと・・・」って言って鎮めてくれる大切な存在です。

細沼 周りがよく見えていますね。

山添 めっちゃ褒めてもらえた(笑)。

鶴岡 まあ声が通らないだけなんですけど。

細沼 それ(注意する声)も聞こえない(笑)。

山添 こんな話するの初めてなのでなんかうれしいです(笑)。頑張ります・・・。

――4年生はどのような学年ですか

鶴岡 今までにない学年だなと。リーグ前のミーティングにしても、いつも堅過ぎるんですよ、今まで私たちが経験してきたのは。引き締めるという意味ではそれはそれでいいと思うんですけど、私たちはいき過ぎずいい度合いに砕けてるというか、学年全体としてそういう雰囲気をつくり出すのがうまくて・・・また自意識過剰になってしまうんですけど(笑)。締め過ぎず、でもちゃんと締めるところは締めているので、いい度合いの学年かなとは感じています。

細沼 リーグの明大戦前のミーティングなのですが、今村(南、社2=大阪・城南学園)が「4年生のために勝ちたいんです」って泣いてくれて。「え、こんなことある?」って。

山添 うれしかったね。

鶴岡 リーグって4年生のためにっていうワード出てこないよね。王座前のミーティングは最後のミーティングになるので大体「4年生を笑顔で送り出したいです!」ってみんな言ってくれるのですが、リーグはないよね。

細沼 8人で頑張ってきて良かったな、とその時すごく思いましたね。うるさい学年だけど。

鶴岡 正直不安だったよね。あまりまとめるというタイプの人が集まっているわけじゃなくて個々が楽しむ感じの学年なので、去年の王座が終わった時点で「私たちちゃんとチームをまとめていけるの?」ってずっと不安に思っていて。最上級生務まるのかなと思っていたのですが、この時期になってみて、いいかなとは思っております(笑)。

細沼 ね(笑)。

山添 すごく元気があるのでもやもやとかもため込まずみんなで集まってぶつかって、その分その後にすごく絆が深まるという四年間を過ごしてきました。やっぱりこの一年間でお互い役職に初めて就いて間違えることもあったのですが、全員そこを指摘し合いながらできたので、今この時期になって全員がそれぞれの役職の中で成長できているかなと感じています。

――それぞれ主将、主務、副将という役割で大変なことはありましたか

細沼 私のすごく悪いところはすごく抱えちゃうというか、「自分が頑張らないとついてこない、頑張らなきゃ頑張らなきゃ」って思ってタンクしちゃうタイプなので・・・。主将の大変さはそんなにないと思っているのですが、主将という肩書きを背負い過ぎてテニスがあまり良くなくなっちゃったのかなという部分がかなりあります。

――今は力に変えていける部分はありますか

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細沼 今はすごく力になっています。夏関までは本当にひどくて、何で主将なのにこんなに負けてるんだと思っていたのですが、団体戦の女なので(笑)。せっかくだから私が勝利を持ってこようと思えるようになってきたので、楽しめるようになってからは結構いいかなと思っています。

――山添副将はいかがでしょう

山添 組織をマネジメントするタイプではなかったのと、副キャプテンはレギュラーの方がやってきていたので、ノンレギュラーの私に何ができるんだろうとすごく不安な部分から始まって。2年前副キャプテンをやっていた日比沙織さん(平28スポ卒=神奈川・湘南工大付)だったり、去年は早野(夏希、平29教卒=東京・早実)さんや辻さん(恵子、平29教卒=東京・早実)だったり、経験されてきた先輩方がすごくアドバイスをくださって、OGの方にすごく支えていただきました。自分はレギュラーとノンレギュラーどちらも経験したということを生かしていけばいいんじゃないかというアドバイスをくださったので、助けられましたね、すごく。相談しながら1年間考え続けてきたという感じですね。

――鶴岡さんはいかがでしょう

鶴岡 何回も言っているのですが自分がすごくテキトーな性格で、やらないといけないこととかも後回しにしてしまうので、嶋崎さん(徹夫監督代行、平元商卒=神奈川・桐蔭学園)からこの資料作っておいてって言われてもすごくギリギリになって作ったりとか。その度に自分駄目だな、向いてないなと思っていたのですが、同期に手伝ってもらって何とかここまでこられて良かったなと感じています。

――山添さんは細沼選手のベンチコーチも務めていますが、細沼選手はなぜ山添さんを指名したのですか

山添 聞いたことなかった。私すごい覚えてるよ、そこの階段で「絵理、頼んだよ」って言われたの(笑)。

細沼 山添は1年生の時にダブラーとして期待されていてレギュラーを経験していて。その時私は本当に周りのことが見えていなかったので分からなかったのですが、2年生になって山添の立場って本当に大変だったんだよなと思うようになって。その時でも同期とかに全然つらい顔を見せずに頑張っていた姿を思い出したんですよね、2年生の時に。そう思うと本当にすごいなと思って・・・。

山添 ・・・。

鶴岡 ・・・ねえ。

細沼・山添 (笑)

鶴岡 泣くの何回目(笑)?

山添 こらえようと思ってるんだけど・・・。

細沼 あまり勝てなかったんですよね。ノンレギュラーとしていろいろな経験をしてきて、でもつらい顔を見せずに頑張っている山添に全てを託したいなと思うようになって。あと私かわいい人をベンコに選ぶんですよ(笑)。

鶴岡・山添 (爆笑)

鶴岡 じゃあ同期ぞえちゃん以外無理じゃん(笑)。

細沼 高田千奈美さん(平27スポ卒=静岡・浜松西)、日比沙織さん、山添。

鶴岡 かわいい(笑)。

細沼 ベンチに帰ってきて癒されたいんですよ!

鶴岡 めっちゃ不純な動機じゃん(笑)!

細沼 そういう部分もあります。あと視野が広いのでいろいろ気づいてくれるかなと思って選びました。

――ベンチコーチとして心掛けていることはありますか

山添 試合中とかポイント間とかもすごく目を見てくれる選手なので、私の顔を見るだけで自分が頑張ってきたことを思い出せるくらいに、自主練であったりとか、たくさんの時間を一緒に過ごすようには心掛けました。本当に努力する選手なので、自分を信じて戦ってもらえれば本当に誰よりもいいボールを打つし、ちょっと顔を見ただけで練習を思い出していつも通りのプレーができたらいいなと思いながら。

――スローガン『挑戦』にちなみ、個人的に挑戦したことはありますか

山添 私は何かに立候補することを人生の中でしたことがなくて、今まで勇気を出したことがあまりなかったのですが、細沼が主将をやると聞いた時に就活の自分の夢もある中で、組織をまとめるという初めての挑戦をしました。

「このチームで、この同期で本当に頑張ってきたことを証明したい」(細沼)

リーグでは『団体戦の女』としてチームメートと共に頼もしいプレーを見せた細沼

――このチームが発足してから対抗戦なども含めてここまでの戦いをどう振り返りますか

鶴岡 全ての対抗戦を見たわけではなく、同期からどんな様子だったか聞いた上で感じたことなのですが・・・チームが始まって最初だったり負けてしまった筑波大との対抗戦であったりとか、まだチームとしての力を出し切れていないなと思っていました。でも日々を過ごして今はリーグ戦もみんなすごくいい試合ばかりでしたし、いい感じのチームに仕上がってきているのではないかなと思います。

山添 一年間を通して部員の誰かがずっとチームを引っ張るというよりは、選手層であれば春関だったらダブルスで大矢(希、スポ3=愛知・名古屋経大高蔵)・清水(映里、スポ1=埼玉・山村学園)が頑張ってくれたり、インカレは清水が頑張って、夏関は上(スポ3=兵庫・園田学園)・大矢、それだけでなく育成層で剱持(梓、社2=東京・早実)・森川(菜花、社2=山口・野田学園)、リーグであれば倉持が出て、総力戦でお互いが刺激し合って「次は私も頑張らなきゃ」という気持ちになれたのがここへきて全員のレベルアップにつながっているかなと感じています。

細沼 育成層が頑張ってくれた分選手層も「それに追い越されないようにしなきゃ」と思えた一年だったので、本当に底上げができていて。育成層から選手層の練習などに混ざっていて選手層も協力していたのですが、ここまで一気にくるとは思っていませんでした。うまくなった分リーグに出られなくて悔しい思いをした選手がたくさんいて、その子たちはいろいろ思う部分があったかもしれないのですが、それにめげずに頑張ってくれることを信じて、これからもっと強くなるんじゃないかと期待しています。

――王座を2週間後に控え、今のチームの状態はいかがですか

鶴岡  練習も全体を通してみんな元気を出してやってくれるし、特に下級生とかすごく声を出してやってくれるんですよ。サポートが「頑張っていくよ」って声を掛けた時にもすごく返事をしてくれるので、こちらもサポートしがいがありますし、そういうところでも一体感は出てきているんじゃないかなと思います。

山添 このチームで優勝したいという気持ちが全員にあって、まとまりが出てきているなと思います。王座の緊張した場面でもそのシンプルな気持ちを忘れずにいつも通りの力を発揮できたら結果はついてくるのかなと。

細沼 前より私の方に視線をくれるようになって。前まで全然合わなかったのですが、今は結構見てくれて、返事もするようになってくれて、そこでチーム力が上がっているなと感じました。富士見丘の校長先生が「人の目を見て話を聞きなさい」とすごく言っていて、目と目を合わせて話すのが一番コミュニケーションが取れるんだな、テニス以前にあいさつとか返事とか、人の目を見て話すとかが大事だなと学びました。今になって全員ができるようになってきているので、成長してきているなと感じます。

――今はどのような練習を行っていますか

鶴岡 一体感を出すために全員で球出しをやったりとか、リーグの課題練とかですね。

山添 待ちがすごく多かったので、基礎的なところからもう一度やっています。

――細沼選手が個人として見つけた課題は

細沼 課題が挙がり過ぎて3ページくらいになっちゃったのですが(笑)。一番は、さっき「応援と一体感を持って試合をしている」と褒めてくれたのですが、私自身はもっともっと一体感を出さなくてはいけないなと思っていて。江代さんにセカンドセットを取られた時に、前よりは良くなったのですが一体感が出せなかったので、駄目な時でもみんなと戦っていることを常に心に刻んで戦わなくてはいけないなと思います。それが一番の課題ですかね。私はみんなと戦えればいいプレーができると中学校くらいの時から先生に言われているので、技術よりそういうことかなと思います。

――王座で最大のカベになるであろう筑波大のチームとしての印象は

鶴岡 筑波も合宿とかがあって、合宿をする度に「このチーム大好き」って言ったりしていて。部活というより個人個人で頑張るタイプだと思うんですけど、チームの一体感はちょっとずつ出てきているチームだと思います。個々のレベルは拮抗(きっこう)していてすごく接戦が続くと思うので、チーム力では絶対に負けないようにしたい相手だなと感じています。

細沼 練習量がないのに強いですよね。ワセダの方が2倍、3倍してるんですけど、インカレの結果を見ても筑波の方が上だったりとか。そういう面で、王座を取りにこようと全員が思った時にどういう力を発揮するのかなと思うと強いチームだなと思います。

山添 牛島(里咲)がユニバーシアードに行ったりとか、森崎(可南子)・米原(実令)がプロの大会にも出るようになったりとか、個々のレベルが上がっているなと感じています。王座は去年筑波にとって初めてだったのでいろいろな緊張、慣れない部分もあったとは思うのですが、ことしは慣れた部分もあるし、ことしこそ優勝したいという気持ちでくると思うので、リーグよりもチーム力は上げてくるんじゃないかなとは感じています。

――その中で優勝するためのキーポイントは何ですか

鶴岡 ダブルス?

細沼 ダブルスだね。

山添 ダブルス大事だね・・・。

細沼 去年からずっとダブルスが2-0だったのですがこの前の筑波第戦で私が敗れてしまって、久々に1-1になった時に自分自身が一番感じたのは「1-1って結構やばいな」と。みんな感じているとは思うのですが、王座はシングルス3本なので、2-0にしてリーチをかけることが一番大切かなと思います。

――ことしの王座は皆さんにとってどのような大会になりますか

細沼 このチームで優勝したいんですけど、一番はこの同期で本当に頑張ってきたということを証明したいなと思って。この不器用な8人でここまで頑張って12連覇したぞということを先輩方に証明したいなと思う部分が結構あります。

山添 リーグ優勝しても後輩がすごくうれしそうな顔をしていたりとか、OB・OGの方がすごく喜んで「おめでとう」と連絡をくれたりとか、自分たちの優勝はワセダに関わってくれる人たちみんなが喜んでくれる優勝なので。4年生としてチームをつくる責任がある中で、王座も優勝していろいろな人が喜んでくれる結果を残したいなと思います。

鶴岡 一人一人本当にいろいろな思い、つらいこととかが常日頃あると思うのですが、王座の優勝って本当にそういう思いが報われる瞬間なんですよ。自分もここまで四年間やってきて、いろいろ思うことはあったのですが、そういうのが絶対に優勝することで報われると思うので。譲れないですね、本当に。

――後輩への思いは

細沼 最近めっちゃかわいいです、みんなが。

山添 うん、かわいい・・・。

鶴岡 娘。3年生は妹っていう感じで、本当に仲良くなり過ぎて同期みたいに感じている子もいます、副務の澤田(実梨、文構3=奈良・帝塚山)とかは高校生指導でずっと一緒にやっているので。1、2年生はもう娘ですね。かわいいです。

細沼 1年生は孫(笑)。

一同 (笑)

鶴岡 1年生は去年の高校生指導から関わっているので、ちょっと身近に感じつつかわいいなと思いながら見ています。

――とにかくかわいいと

鶴岡・細沼・山添 かわいいです。

――王座におけるご自身の役割はどう考えますか

細沼 隼さんが筑波大戦の後の早スポの取材で「王座でキーになってくるのは細沼と清水」っておっしゃっていたり、あと去年の王座後かな?土橋さん(登志久監督、平元教卒=福岡・柳川)も取材で「細沼が重要になってくる」っておっしゃっていたりしたのを見て、やっぱり私が重要になるなと自分でも感じて。自分が楽しんでプレーしている姿にみんな「頑張ってほしい」と思うはずなので、あまり背負わずに、みんなでプレーすることが自分の一番の役割かなと思いますね。

山添 副将としてもベンコとしても、細沼が元気よくプレーできるように、試合にとことん集中できるように、その他の部のマネジメントを担っていきたいなと思っていますし、王座は特に出られる選手が限られてくるので、全員が優勝したいという熱い思いで試合に臨めるように、一人一人のモチベーションも意識しながらチームをまとめていけるように頑張りたいと思っています。

鶴岡 細沼が「自分が、自分が」と抱え込んで責任を感じ過ぎてしまう部分があるので、ちょっとでも細沼がそう思わなくてもいいような空気をつくれるように働きかけていけたらなとは感じています。

細沼 ありがとう・・・。

――最後に、王座への意気込みを改めてお聞かせください

細沼 『全てはこの日のために』だね。

鶴岡 まさに。

細沼 あと2週間と2日しかなくて、もう4年生はここでケガしても今後がないので(笑)。4年生がチームを引っ張って、『全てはこの日のために』というスローガンに向かって頑張っていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 熊木玲佳)

細沼選手が「喜怒哀楽が激しかった」と振り返る対談になりました!

◆鶴岡美咲(つるおか・みさき)(※写真右)

1995年(平7)7月9日生まれ。身長166センチ。香川・丸亀高出身。スポーツ科学部4年。卒論ではテニスにおける腰痛発症のメカニズムを取り扱う予定だという鶴岡さん。予防法まで考えられるのが理想とのことで、「腰痛に悩む子が減ったらいい」と部員思いの一面も見せてくれました!

◆細沼千紗(ほそぬま・ちさ)(※写真中央)

1996年(平8)3月26日生まれ。身長168センチ。東京・富士見丘高出身。スポーツ科学部4年。今季の主な実績は関東学生トーナメントシングルスベスト16、全日本学生選手権ダブルスベスト4、関東学生選手権シングルスベスト16。全日本学生ランキングシングルス15位、ダブルス4位(2017年9月付)。昨年メンタリストのDaiGoが書いた本を読んだという細沼選手。当時は「なるほどね」と思った程度だったそうですが、ことしのリーグ前に読んだ時には新たな発見があり、試合中も思い出していたとのこと。王座でもメンタリズムを駆使してプレーしてほしいですね

◆山添絵理(やまぞえ・えり)(※写真左)

1995年(平7)12月31日生まれ。身長158センチ。千葉・渋谷教育幕張高出身。人間科学部年。卒業後はCAになる山添さん。山添さんの機内アナウンスに不安を抱いているという鶴岡さんと一緒に発音練習をしているそうです。王座では成果を発揮し、大きく分かりやすい声で選手を鼓舞します!