【連載】王座直前特集『覇者の挑戦』 女子・第3回 梶谷桜舞×林恵里奈

庭球女子

 絶対に負けられない戦いが近付いている――。常勝軍団として追われる側のワセダ。そのチームの中核を担うのは、梶谷桜舞(スポ3=東京・富士見丘)と林恵里奈(スポ2=福井・仁愛女)だ。2人で組むダブルスは、全日本学生選手権(インカレ)を制し波に乗っている。全日本大学対抗王座決定試合(王座)9連覇に向け闘志を燃やす両者に、現在に至るまでの話を聞いた。

※この取材は10月10日に行われたものです。

テニス漬けの日々

梶谷(左)・林組はインカレで優勝し、リーグ戦でも勝利を重ねる

――王座に向けて、現在はどのように毎日を過ごしていますか

 テニス、テニス、テニス…(笑)。1にテニス、2にテニス…10に睡眠(笑)。そんな感じです。

梶谷 テニス、食事、テニス、テニス(笑)。授業、テニス、テニス(笑)。

――現段階で、今シーズンの成績を振り返っていかがですか

 昨季に比べて、コミュニケーションは取れていると思います。2年目になって、ポイントを取るパターンについても「こうすれば点が取れる」と、だんだん分かるようになってきましたね。この前のリーグ戦(関東大学リーグ)も全勝することができたので、良いかたちで王座を迎えられるなと思います。しかしインカレインドア(全日本学生室内選手権)優勝、インカレ優勝を経て、絶対に負けられないというプレッシャーがあると思います。そのプレッシャーに打ち勝てるように、残りの練習にしっかりと取り組んで、自信を持って王座に向かっていけたらと思います。

――メンタル面が強くなったという印象ですか

 そうですね。昨季は1年目ということもありチャレンジャー精神で思いっきりできたのですが、ことしはチャレンジャーが来るという立場になって、それをはねのけられるメンタルがついてきたのかなと思います。

――梶谷選手は、今シーズンを振り返っていかがですか

梶谷 春関(関東学生トーナメント)は、私のケガが響いてしまって不甲斐ない結果に終わってしまいました。夏関(関東学生選手権)では、ペアは違っていたのですが、林と組んだ昨季のインカレのことを思い出しながら一戦一戦を戦うことができました。インカレの決勝というのがすごく大きかったなと感じています。でもその分、プレッシャーはありますね。元気だけでは通用しないと感じています。

――ことし、印象に残っている試合とは

 春の早慶戦(早慶対抗試合)のダブルスの試合が、すごく印象に残っています。春関で慶大の藤岡(莉子)・村瀬(早香)組に負けていて、絶対に負けられないという思いで迎えた早慶戦でした。ファイナルセットまでもつれ込み、どっちが勝ってもおかしくない試合で緊張はしましたが、2人で力を合わせてポイントを取り、ファイナルセットを6-0で勝ち切ったということがとても印象に残っています。

梶谷 吉冨(愛子、スポ3=愛知・椙山女学園)と組んだ夏関決勝の悔しさはいまでも忘れられないですね。スーパータイブレークで9-6になって勝利が見えたときの自分たちの弱さ…。負けたときは、本当に何が起きたのか分からなくて、本当にこういうことってあるのだなと。その悔しさがインカレの試合で生かすことができたと思います。インカレ決勝で、最後にスーパータイブレークになったとき、夏関の試合が頭によぎって強気でいけました。そのときのファーストセットも完璧でしたね。自分たちの理想のテニス、ゲーム運びができました。

 法大の水沼(茉子)・江見(優生乃)組のときも良くなかったですか?

梶谷 確かに!

――インカレ優勝を経ての心境の変化とは

梶谷 いまだに実感が沸きません。最後の表彰式もドタバタで(笑)。「早く!新幹線の時間だー!」とか言っていて。大会が終わって、たくさんの人からおめでとうと言われてから、「ああ、本当に優勝したんだな」という感じでしたね(笑)。優勝した余韻に浸ることはありませんでした。まだお祝いもしていないですね(笑)。「優勝したご褒美に食事に行こうね!」と、林と話していたのですが、まだ行けていないです。王座が終わったら、今度こそ(笑)。

 私の場合は焦っていました。インカレで見つけた良かった点を、リーグ戦に向けて調整する期間が短くて。リーグ戦のときは、インカレで優勝したことで、絶対に負けられないというプレッシャーを感じすぎていました。無駄な緊張をしたなと、いまは思います(笑)。

――緊張した際の対処法を見つけ出すことはできましたか

 私の場合は声を出していれば緊張がほぐれるのかなと思っているので、緊張した時は声を出すようにしています。

――シングルスに関しては

 インカレで、自分で気持ちを上げているときは良い試合ができると分かりました。なのでリーグ戦では、絶対に気持ちを上げていこうと意識的に取り組んでいきました。

梶谷 結果だけでいうと、昨季の方が良かったです。新進(関東学生新進選手権)優勝から勢いに乗り、伸び伸びとできていたと思います。でも、いま追い込んできている中で、リーグ戦のときよりかは安定してきたと感じています。

――リーグ戦で2人は全勝しましたが、そのときのことは鮮明に覚えていますか

 ほっとしました。特にダブルスでは絶対に負けられないということで、勝った瞬間にプレッシャーから解放されましたね。「やっと終わった…」と(笑)。勝ったというより、安心の方が大きかったですね。大きくリードしているときに考えたのは、0-0になったつもりとか、0-3で逆に負けているということを意識してプレーをしていました。

梶谷 私はダブルスだけだったのですが、勝ったときは安心しました。特に山梨学院大戦が終わったときは本当にほっとしました。山梨学院大は、インカレなどのビデオを見たら隙がなくてすごく強かったので。相手の挑戦を受けて立つというスタイルではだめだなと思いました。考えすぎると頭が真っ白になってしまうので、隣のダブルス1も頑張っているから、元気を出して1ポイント1ポイントを大切に取っていこうと思っていました。

――林選手は昨季から単複ともに勝利を重ねていますが、勝利に対する意識はどのようなものですか

 昨季は1年目ということもあり、チャレンジャー精神でやっていくということができましたね。今季は春の早慶戦のシングルス5で出て悔しい思いをし、細沼(千紗、スポ1=東京・富士見丘)にプレッシャーをかけてしまったので、勝ちにこだわっていました。同じくシングルス5で出場したリーグ戦は、絶対に負けられないと思っていましたね。私がシングルス5で、辻(恵子、教2=東京・早実)がシングルス4というかたちだったので、私と辻が勝ちを取って、シングルス2に出る細沼に安心感をというか、プレッシャーをかけないようにと意識をしていました。

――個人戦と団体戦での違いとは

 団体戦は自分の負けがチームの結果にもつながってくるので、1ポイント1ポイントがチームの勝敗を分けているという思いがあります。応援をしてもらい、ワセダの代表で出ているんだということを実感します。チームのために戦っていますね。

梶谷 私も林と同じ考えです。特に、山梨学院大戦は勉強になりました。私たちがセカンドセットで競ったときに隣のペアももつれていて、「あのポイントを取っていれば…」「もう一段階ギアを入れていればストレートで勝てたのに」と、勉強になりました。もし私たちがストレートで勝っていれば、隣のダブルスも余裕を持ってプレーでき、シングルス5を控えていた林の休憩時間も取れたと思います。1ポイント1ポイント、一つ一つのショットのコースなど、『この一球』精神が響いてきますね。

――ベンチコーチの谷口遥選手(スポ3=宮崎商)などの存在とは

梶谷 ことしは、練習からずっと谷口に入ってもらっていました。同期ということもあるのでコミュニケーションも取れています。谷口はケガなどで伸び悩んでいると思うのですが、だからこそ選手の目線が分かっていると思います。一緒に練習をしているからこそ、一緒に頑張ろうという思いが強いです。谷口は小さいので、ちょっと身を乗り出しながら声を掛けてくれますね(笑)。すごく安心感があります。

 練習のときから「ここが良かった」「ここが悪かった」と、メモを取りながら具体的に指摘してくださいます。リーグ戦のチェンジコートのときもアドバイスをくださったので、すごく心強かったです。私の方から「きょうの試合はこういうところを重視して進めていこうと思うので、そこを重視して見てもらってもいいですか」と伝えて、具体的なアドバイスを教えていただいています。

「頑張っている姿を見ると応援したくなる」(梶谷)

笑顔を交えて話す梶谷と林(左)

――梶谷選手は1年の時に「赤ちゃん」と呼ばれていたそうですが、いまはどのような存在に

梶谷 いまでも、早紀さん(間中副将、スポ4=東京・早実)からは「赤ん坊!」と(笑)。金井(綾香、スポ1=東京・早実)からも「桜舞さんは赤ちゃんみたいですね」と言われました(笑)。先輩として意識していることは、練習中にアドバイスをするくらいですかね。人が頑張っている姿を見ると応援したくなりますね。

 練習のきついとき、梶谷さんが声を掛けてくださると、いつも「ああ、頑張らないと!」と思います。きょうもきつい練習でしたが、声を掛けてくださったので頑張ろうと思いました。

――梶谷選手から林選手を見ていかがですか

梶谷 後輩に見えないです、先輩に見えます(笑)。大人っぽいですね。

 オンとオフをはっきりというか、やるときはやりますし、休憩するときは休憩しています(笑)。本当はふざけたいけれど、自分を表現するのがうまくないというか、ふざけられないのかもしれないです(笑)。

――林選手はオフのときには何をしているのですか

 家でリラックスしたいのですが、オフの日もテニスの試合を見たりしますね。やはり、離れられないなと(笑)。いざ休みをもらったら、自分の試合のテニスのビデオを見てしまいますね。結局、テニスから離れられないですね。

――現在、自炊なども始めたのですか

 最近、頑張っています(笑)。

梶谷 確かに。お弁当とかもちゃんと持ってきているよね。私の場合は、果物をよく食べますね。昔から栄養について母がうるさかったので(笑)。

――ご両親からのアドバイスや仕送りはあるのですか

 私の親は送ってくれますね。

梶谷 今度ちょうだい(笑)。

 1年のときとかは、連休があると自分のところに来たときに持ってきてくれたり、作り置きしてくれたりしていました。言えば送ってくれますよ(笑)。

梶谷 「送って」って言っても「自分でやりなさい!」って(笑)。よく、恵里奈ちゃんママと私のママで話すみたいで、「恵里奈ちゃんは作っているらしいよ!あなたも!」って言われてしまいます(笑)。

――選手の親同士での交流もあるのですか

梶谷 インカレインドアで初めて親同士が会って、インカレでご飯を食べて話が弾みました(笑)。高校時代、仁愛女高と富士見丘高が対戦していたので、「あそこにいたあの子!?」みたいな感じでした(笑)。

「笑って終われるように」(林)

林は試合中、積極的に自らを盛り上げる

――では、いまのチームの雰囲気はいかがですか

梶谷 学年にかかわらず、会話をしているという印象ですね。1年生の元気がいいです。若いなと(笑)。

 練習が終わって部室に戻ると、大きい声で話していますね。元気だなと(笑)。

梶谷 でも、1年生だけではないです。癒されたりはしないですけれど、同期の吉冨、宮地(真知香、社3=福岡・折尾愛真)、日比(沙織、スポ3=神奈川・湘南工大付)は本当に面白いです(笑)。2月のすごくきつい練習が続いたとき、テンションを上げるために休憩時間に動画を撮ったりしていました。

 ずっと踊っていましたよね(笑)。私は下にいたのですが、ドンドンドンドンしていました。上に行ったらすごくはしゃいでいるなと。汗をかいてまで(笑)。

――王座に向けて、実感していることとは

梶谷 1日がすごく早いです。充実しているから早いのだと思います。3年なので、あと2週間で自分たちが上の代になるということもありますし、その後のことも考えるとどうしようかと。王座もどきどきしますけれど、その後のことをいろいろ考えます。リーグ戦が終わってから追い込んできているので、やることはやってきているなと実感しています。『この一球』の精神で、林と、チームみんなと、頑張るしかないなと思っています。

 あと2週間後には試合が始まっていて結果も分かっていると思うので、やれることをしっかりとやって王座に臨みたいです。アベック優勝したいです。

――4年生に対する思いは

 このチームで戦う最後の戦いなので、絶対に連覇を止めたくないという思いは強いです。最後に笑って終われるように頑張りたいです。

――王座で生かせると思うご自身の強みとは

 コート上で元気よくプレーすることが自分の強みであり、武器であると思います。

梶谷 雰囲気を盛り上げることですね。インカレのときも、元気を出せば自分たちのプレーもうまくいくということが分かったので、元気を出して盛り上げていきたいです。

――最後に、王座に向けて意気込みをお願いします

梶谷 王座優勝します!

 連覇を目指して、男女アベック優勝で良いかたちで終わりたいです!

――ありがとうございました!

(取材・編集 久良佳菜子、高柳龍太郎)

それぞれが大切にしていることを教えてくださいました!

◆梶谷桜舞(かじたに・ろぶ)(※写真右)

1994(平6)年1月27日生まれ。159センチ。東京・富士見丘高出身。スポーツ科学部3年。今季の主な実績は関東学生選手権女子ダブルス2位、全日本学生選手権女子ダブルス優勝。全日本学生ランキングは女子シングルス24位、女子ダブルス1位(2014年10月15日現在)。きつい練習を乗り越えるため、積極的にチームに声を掛けているという梶谷選手。持ち前の元気と、優しさのあふれる笑顔でチームを支えています。もう『赤ちゃん』とは呼ばせません!

◆林恵里奈(はやし・えりな)(※写真左)

1994(平6)年7月21日生まれ。福井・仁愛女高出身。スポーツ科学部2年。今季の主な実績は関東学生選手権女子ダブルスベスト4、全日本学生選手権女子ダブルス優勝。全日本学生ランキング女子シングルス30位、女子ダブルス2位(2014年10月15日現在)。授業の影響から、栄養素を考えたお弁当作りに励んでいるという林選手。文武両道を目指すワセダの鏡です!