第111回早慶対抗庭球試合 6月16日 慶應義塾大学日吉キャンパス蝮谷テニスコート
昨日から引き続き、早慶杯をかけた因縁の対決が慶應義塾大学の蝮谷テニスコートで行われた。ダブルスは2-0で終了し早大の底力を見せたが、今日のシングルスでも気は抜けない。多くの観客が見守る中、室内コートの2面で早大の5人の選手が白熱した戦いを繰り広げた。
先陣を切って登場したのは、昨日のダブルスでも活躍を見せた金子さら紗(スポ3=埼玉・浦和麗明)と小髙未織(スポ1=埼玉・浦和麗明)だ。昨日のダブルスでは齋藤優寧(スポ4=岡山・岡山学芸館)と共に強さを見せつけた金子は今日のシングルスでも相手を寄せ付けなかった。強烈なフォアハンドストロークを見事に打ち分け、相手を翻弄(ほんろう)する。長いラリーが続く中確実にポイントを重ね、第1セットを獲得する。続く2セット目も逆サイドに返球するなど冷静な状況判断を見せ、相手を走らせた。強者の余裕を見せた金子は危なげなく勝利を掴んだ。金子の高校の後輩にあたる小髙も1年生ながら強気の姿勢で有利に試合を運んだ。弾道の低いショットとスライスショットを交互に織り交ぜ、相手に決めさせない。サービスライン前からの鋭いボレーショットも光り、ストレート勝ちを決める。
ストロークを打つ小髙
試合開始直後から、早い回転のかかったストロークを相手コートに叩き込み、齋藤は絶好調な様子を見せる。齋藤の鋭いボールに慶大選手はラケットを振ることさえできず、続けざまに4セットを先取する。相手のしぶとい粘りをものともせず、さらに点差を引き離し、見事勝利を収めた。今日の試合を「100点満点だった」と齋藤が後に振り返るように、終始主導権を渡さない素晴らしい試合であった。一方で隣コートの田邑来未(スポ2=大阪・城南学園)は第1セットを5-7で落としてしまい、拮抗した試合を見せていた。田邑は序盤、体勢を崩すことなく相手の鋭いショットを返し、前に詰めてスマッシュを決めるなどキレのある動きを見せる。先に5ゲームを取り、第1セットに王手をかけた。しかし、サイドに打った球がシングルスラインを割ってしまうなどのミスが目立つ。調子を崩してしまった田邑は慶大選手に4ゲームを連続で奪い取られてしまう。しかし、そのままでは終わらないのが田邑だ。第1セットではアウトとなってしまったサイドへの攻撃が決まるようになると、着々と相手を追い詰める。底力を見せた田邑はなんと6ゲームを連続で奪取する。続く第3セットも田邑の反撃は終わらない。浮いた球を逃さず、丁寧にスマッシュを返し相手を攪乱する。慶大選手も根気強くボールに食らいつき鋭いストロークを返すが、序盤の不調から冷静に体制を立て直した田邑に勝ることはできなかった。6-3でファイナルセットをものにした田邑に軍配が上がった。
セットを取り、ガッツポーズする齋藤
ここまで全勝で進んできた早大の最後を託されたのは宮田萌芳(基理3=東京・雙葉)だ。早慶戦の早大の優勝は決まったが、目標は7-0で勝つことだ。対峙するのは、慶大のエースの大橋だ。第1セット初めから長いラリーが続く中安定した返球を見せ、五分五分の戦いを見せる。サーバーの時には、強烈なサーブで相手を崩し順調にゲームを取る。しかし、相手から放たれる逆を突くショットに対応しきれず、タイブレークを許してしまう。第2セットも慶大の勢いは止まらず、宮田は的確に打ち分けられたボールに体勢を崩し追いつくことができない。諦めずに必死に食らいつき、反撃のチャンスをうかがうが、1ゲームも取ることが出来ずに相手の勝利が目前になってしまう。追い込まれた宮田は、他の部員の応援を背に1ゲーム獲得に成功するが、あえなくゲームセットとなる。2セット目も取ることができずストレート負けを喫した。
最後の試合では慶大に勝利を譲ったが、チームでは見事早慶戦優勝をつかみ取った。この優勝によって昨年の早慶戦から3連覇を達成し、チームに勢いをつけることとなった。しかし、主将の齋藤が「強い選手が登場するS1で勝って終わるということが今後の私たちの課題だと改めて感じた」と語るように多くの強敵が登場するインカレやリーグに向けて油断することはできない。早大庭球部の強さが増していることは確実であり、王座優勝も夢ではないことを証明できた早慶戦だと感じた。二日間の慶大との一戦を経てより進化を遂げるであろう早大選手たちから目が離せない。
早慶杯を手にし、笑顔を見せる部員たち
(取材・執筆・写真 中村由愛、編集 大日結貴) ※掲載が遅れてしまい、申し訳ありません
結果
〇早大6-1慶大●
●S1宮田萌芳0-2(3-6、1-6)大橋麗美華
〇S2田邑来未2-1(5-7、6-1、6-3)中島玲亜
〇S3齋藤優寧2-0(6-2、6-3)西飛奈
〇S4金子さら紗2-0(6-4、6-1)渡邊多笑
〇S5小髙未織2-0(6-3、6-4)菅原悠
コメント
齋藤優寧(スポ4=岡山・岡山学芸館)
――今日の試合を振り返っての率直な感想をお願いします
素直に優勝できて嬉しいというのが今の気持ちです。慶應という最大のライバルに対して良い試合内容で、6-1というスコアで勝つことができました。加えて新1年生の活躍もあり、インカレやリーグに向けて弾みになる試合だったのかなと思います。しかし私たちの目標は7-0で終わることだったので、強い選手が登場するS1で勝って終わるということが今後の私たちの課題だと改めて感じました。まだまだやれることはたくさんあると思うので、そこをうまく練習に取り入れながら今後も頑張っていきたいと思います
――今日の試合はストレートで勝利を収めましたが、練習の成果が出たのでしょうか
今日の相手のプレースタイルは分かっており、自分のプレースタイル的にやることが変わらなかったので、深く考えずにありのままで試合に臨みました。また、主将としてチームを元気づけたいと思いながらプレーしていました。その結果隣のコートの田邑も勝ちましたし、自分の試合が周りに良い影響を与えられたと思います。練習の成果は出たと思います。早慶戦ならではのチームで勝つというところにフォーカスした上で今日の試合は100点満点かなと自分では思っています
――チームの雰囲気が良く、主将の力かなと思うのですがどうお考えですか
春休みの約2ヶ月がどうしてもだらけがちになってしまうなど、変えないといけないなと思うところが主将になる前の3年半の経験で多く見つかりました。主将になって半年が過ぎましたが、そのようなところをどんどん変えていくことができました。また、部員全員に寄り添った練習がしたいと思っていたので、幹部と課題を設定し、部員が毎日100%で練習に取り組めるような環境を頑張って整えました。その成果が春関、早慶戦という場で出ていると感じています。主将だけの力ではないと思うのですが、自分ができることは全部やれたんじゃないかなと思っています
――最後の挨拶の時に涙が見えたのですが、その引き金となったものはなんですか
私が涙脆いので、誰かが泣いているところを見ると泣いちゃうんですよ。プライベートでも仲の良い鈴木と山口が泣いている姿が引き金となりました。鈴木とは主将以外の業務の仕事も一緒になることが多くあり、一緒に過ごす時間が他の部員と比べて長いです。山口とも1年生の頃から仲が良く、いろいろな場面で助けてもらっている仲間です。鈴木と山口が静かに泣いているところを見ると、やっぱり私も悔しい気持ちでいっぱいになります。早慶戦という大きな舞台は早稲田にとってはクリアしなければいけないものです。もちろん女子が勝ったことは嬉しいんですけど、男子が負ければ早稲田として負けたというふうに考えることもしなければならないのかなと思います。やはり男女で強い早稲田を取り戻したいという思いが強いです。そのためにはまだまだやることは女子にもたくさんあるので、頑張っていきたいです
――明日もまだ試合が続くと思うのですが、意気込みをお願いします
先日の春関も含めて早稲田の強さというのは徐々に上がってきていると思います。昨年王座優勝に近いと言われていた中で、王座にもいけず、リーグをクリアすることもできませんでした。その経験を経た上で、チーム力が早大の課題だなと私の中で思いました。しかし、そこは本当に今上がってきているので、あとは個々の力を伸ばしていきたいと思います。そして、インカレでチームとして良い結果を残してリーグに向けていい流れでいきたいなと思っています。この2ヶ月の過ごし方をよく考えてインカレ、リーグ、王座へと波に乗って向かっていければいいなと思います