北の大地で選手たちに満開の笑顔が咲き誇った。数々の好ゲームが繰り広げられてきた全日本大学総合選手権団体の部(インカレ)もいよいよ最終日。準決勝で東京富士大と対戦した早大は、出場した選手が持ち味を存分に発揮し、ストレート勝ちを収めた。決勝戦は昨年度と同じ顔合わせとなり、日体大と対戦した。1番手の阿部愛莉(スポ3=大阪・四天王寺)がエース対決を制すると、2番手の鎌田那美(スポ2=北海道・駒大苫小牧)が大逆転勝利で続く。そして、4番手に登場した徳永美子(スポ3=福岡・希望が丘)が理想的な展開で試合を締め、早大が悲願の連覇を成し遂げた。なお、今大会シングルスで6戦全勝と大車輪の活躍をした阿部は、優勝に最も貢献した選手に贈られる殊勲賞に選出された。
理想的な展開で相手エースを下した徳永
前日に3試合にわたる長丁場を戦い抜いた選手たちの疲労具合が心配された準決勝であったが、そんな不安を払拭してくれる見事な快勝だった。対戦相手の東京富士大には、春季リーグ戦では勝利しているものの、勢いに乗ってくると畳みかけてくるだけに油断はできない。早大の1番手はエース阿部。相手は異質ラバーの使い手であったが、阿部は慌てることなく落ち着いて対応し、すぐに自分のペースに持ち込んだ。最後まで相手を寄せ付けず、ストレートで勝利した。続く2番手の徳永も回り込みのフォア強打を何度も決め、粘る相手を振りきって勝利した。3番手の田中千秋女子主将(スポ4=愛知みずほ大瑞穂)・加藤結有子(スポ1=東京・エリートアカデミー/帝京)組のダブルスも、高い修正力を見せて実力のある相手に勝利し、団体戦スコア3-0で決勝進出を果たした。
いよいよ連覇が懸かる決勝戦。相手は昨年度の決勝戦でも対戦した日体大だ。観客席からは、保護者、関係者そして男子部の選手が大きな声援を送り、早大女子部と共に戦う。決勝戦独特の緊張した雰囲気の中始まったトップは、早大・阿部と日体大・谷岡あゆか(3年)のエース対決となった。試合序盤、カットマンの谷岡に対して阿部はストップレシーブから攻撃を組み立てた。カットマンの弱点である体の正面にボールを集め、甘くなった返球を得意の強打で仕留める。このかたちがうまく決まり第1ゲームを先取した。しかし、昨年のリベンジに燃える谷岡も簡単には引き下がらない。阿部の攻撃パターンに徐々に対応し、スキがあればフォアドライブで攻撃してくる。阿部のミスも目立ち始め、第2、3ゲームを谷岡に連取されてしまう。追いつめられた阿部であったが、今大会の阿部は逆境に強かった。冷静に相手を前後左右に揺さぶり、じっくりと攻撃を組み立てて第4ゲームを取り返した。最終ゲームも息詰まる攻防が展開されたが先にマッチポイントを握ったのは谷岡。それでも、数々の厳しい戦いを乗り越えてきた阿部は諦めない。ここからさらにプレーの精度を上げ、ジュースの末に見事エース対決を勝ちきった。エースの勝利に乗っていきたい2番手の鎌田であったが、第3ゲームを終えてゲームカウント1-2とリードされる。苦しい状況に追い込まれた鎌田に対し、観客席から「鎌田さん、ドンマイ」、「ここからですよ」といった声。鎌田の母校、駒大苫小牧高校の後輩たちがたくさん応援に駆けつけてくれていたのだ。後輩からの声援を力に変え、第4ゲーム以降、鎌田は持ち味の攻撃的な卓球で相手を押し込んでいく。春季リーグ戦では苦しみ、弱気な卓球になっていたが、今大会の鎌田は本来の思いきりの良さを取り戻していた。ミスをしても、カウンターを決められても、鎌田は腕を振って攻め続けた。それが鎌田の卓球だ。最後まで自分の卓球を貫き、3球目攻撃を展開し続けた鎌田はフルゲームの末、見事に大逆転勝利を収めた。3番手のダブルスを落とし、団体戦スコア2-1で迎えた第4試合、早大の連覇を決めるべくコートに入ったのは徳永。今大会、徳永は重要な試合で勝敗がかかる後半を任されることが多かった。チームからの信頼も厚い徳永は、この試合でも抜群の安定感を見せた。持ち味のラリーの強さを生かし試合の主導権を握ると、要所では回転の分かりづらい巻き込みサーブでポイントを奪い、ストレート勝利を収めた。この瞬間、早大のインカレ連覇が決まった。
エース対決を制し、流れをつくった阿部
今大会を通して選手たちの接戦での強さが際立ったが、「部員の日頃からのコツコツと積み上げた努力の成果です」と桜井茂雄女子部監督(昭45社卒=北海道・北見北斗)が語るように一朝一夕で身につくものではない。選手たちの地道な努力がインカレ連覇という最高の結果に結びついたのだ。また、板尾佳歩(社4=岐阜・富田)、鳥屋真帆(社4=高知・明徳義塾)、金子碧衣(スポ2=愛知みずほ大瑞穂)といったサポートメンバーの存在も忘れてはならない。サポートメンバーを中心としたベンチからの声援が選手たちに力を与えた。三人の貢献なしではインカレを連覇することはできなかったであろう。まさにチーム一丸となって掴み取った優勝である。さらにチームを成熟させて、秋季リーグ戦でもワセダらしい卓球を見せてほしい。
(記事 吉田寛人、写真 大庭開、本田京太郎)
集合写真
関連記事
全日本大学総合選手権団体の部展望記事(女子部)(7/05)
男女共に1位通過!圧倒的な強さで決勝トーナメントへ!/全日本大学総合選手権団体の部(7/07)
最大のライバル中大を倒し、準決勝進出!/全日本大学総合選手権団体の部(7/08)
結果
準決勝 ○早大3―0東京富士大
○阿部3―0老松
○徳永3―0林
○田中・加藤結組3―1林・前瀧組
決勝 ○早大3―1日体大
○阿部3―2谷岡
○鎌田3―2前瀧
●田中・加藤結組1―3谷岡・高橋組
○徳永3―0竹前
コメント
▽女子
桜井茂雄女子部監督(昭45社卒=北海道・北見北斗)
――どのような意気込みでインカレに臨んでいたのでしょうか
春季リーグ戦では中大にストレートで負けていました。今回は中大にその借りを返す。リベンジを果たす。そんな思いがありました。なんとしても中大に勝って、インカレで優勝する。それが春季リーグ戦での悔しい思いを帳消しにする唯一の方法だと選手たち自身も思っていたと思います。とにかく、中大に勝ちたいという気持ちがすごく強くて、その結果に勝てて、中大戦の勝利がその後のいい流れを呼び込んでくれたと思います。
――決勝を振り返っていただいて、1番手は苦しい戦いでした
準決勝の時から、選手たちの雰囲気がかなり良かったです。それがそのまま決勝にも出てくれたと思います。トップの阿部は一時、追い込まれましたけど、積極的に攻めきってくれたと思います。つなぎのボールなど、消極的なプレーではなく、しっかりと強打、打ち抜いてくれました。2番手の鎌田も、阿部のつくった流れに乗れたので、団体戦でのとてもいいかたちで1番手が勝ってくれたと思います。
――ラストの徳永選手については
徳永は準決勝でもいい試合をしてくれました。昨日の青学大戦では苦しい試合の中、最後の5番手として勝利を決めてくれました。それが、今日の試合にいい影響をもたらしてくれたんじゃないかと思います。徳永は冷静でしたね。徳永だけじゃなく、みんな冷静でしたね。
――全員が冷静に戦えたというのは
みんな、一本一本の間の取り方やサーブの使い方など、普段アドバイスしていることがきちんとできていました。急に、どうしたんだと驚きました。自然とペースが速くなってしまったり、ミスした後はすぐにサーブ出そうとしたりだとか、リーグ戦の時には課題がありました。しかし、今回のインカレではミスしても、課題が出ても、すぐに修正して、次の作戦を考えながらプレーしてくれました。特に、サーブの使い分けが上手くいっていたと思います。徳永はサーブのバリエーションが豊富なのですが、これまでサーブの使い所や3球目攻撃へのバランスがあまり良くなかった。でも、今回は落ち着いて、イライラせずに、いいプレーができていたと思います。
――今大会通して、接戦の勝負強さが光ったと思います。何か特別にアドバイスされたことはありますか
どんな相手に対しても、全力を尽くすということを日頃から口酸っぱく言っています。でも、普段からそれが完璧にできているわけではありません。今回は不思議なくらい、どの選手も、いくらリードされても追い上げて、ひっくり返していく。全試合通して、そんな場面が多かったですね。私も、すごく感心しながら選手たちを見ていました。本当に、いいペースで試合を運んでして、なおかつ、負けている場面では逆転する。本当にすごいなと思う限りでした。この先も、そんなプレーができれば、いい結果が残せるんではないかと思っています。おっしゃる通り、今回はことごとく接戦を制して、ひっくり返して、神がかり的な活躍だったと思います。よくそんな言い方をしますが、でも、それは部員の日頃からのコツコツと積み上げた努力の成果ですよ。それがうまく発揮して、結果を出せた。なかなか、そんなうまくできるもんじゃないですよ。今回のインカレに関しては、誰一人として悔いの残る試合はなかったんじゃないかと思います。それだけ、一人一人が、全力で向かっていってくれました。