【連載】『平成27年度卒業記念特集』 第24回 小道野結/卓球

卓球女子

苦難を乗り越えて

 昨年の秋季関東学生リーグ戦(秋季リーグ戦)で悲願の連覇を遂げた女子卓球部。快挙を達成し、みなで喜びを分かち合う輪の中心には小道野結(スポ=神奈川・横浜隼人)がいた。 エースとして、そして主将として、チームをけん引し続けた小道野。しかし有終の美を飾るまでの道のりは、決して平たんなものではなかった。

 初めてラケットを握ったのは、幼稚園生のころ。卓球選手だった両親の影響で始め、小学3年生でクラブチームに所属してからは本格的に取り組むようになった。そして中高は、神奈川県の強豪校である横浜隼人に進学。ひたすら練習に打ち込む日々の中で、「卓球を深く知った中高の6年間だった」と振り返る。ワセダへの入学を意識しだしたのも、このころだった。横浜隼人を経てワセダに進んだ先輩から大学の話を聞くうちに、ワセダに対する憧れの気持ちが募っていく。そして4年前の春、小道野は大学卓球界の名門・早稲田大学の門を叩いたのだった。

4年時の秋季リーグ戦では自らの勝利で連覇を決めた小道野

  大学は、監督やコーチによってマネジメントされていた高校時代の練習環境とは何もかもが違った。何よりも自主性が重視される早大卓球部では、練習時間から練習内容まで、決めるのは選手自身。「自分の意思でメンタル面や頭を使う戦術を考えるようになった」。この環境こそが小道野の卓球の実力をさらに高めた。団体戦では単複で勝ち点を期待されるような、チームにとって不可欠な存在にまで上り詰めた小道野。周囲もその確かな実力を認め、監督と同期からの投票によって主将に選出された。こうして任された、『ワセダのキャプテン』という大役。順風満帆にも思えた小道野の大学生活は、一変した。

 「一番しんどかった」。主将として過ごしたラストイヤーを、小道野はこう振り返る。団体戦ではポイントゲッターとして勝利が求められる中、主将としてチームもまとめていかねばならない。エースと主将のジレンマに苦しみ春季関東学生リーグ戦や全日本大学総合選手権団体の部では思うような結果を残せなかった。チームのことを考えすぎるあまり、自分自身が崩れていってしまう。苦しみもがく小道野を救ったのは、同期からの言葉だった。「もっと自分のことを考えていいよ」――。重くのしかかっていた肩の荷が、少し軽くなった気がした。自らが卓球に打ち込む姿を見せることで、チームを引っ張っていく。自分なりの主将像を見つけることができた。そして迎えた、引退試合でもある秋季リーグ戦。優勝を狙う早大だったが、初戦はまさかの黒星スタート。しかしこのピンチの中でも、相手に強い気持ちで向かっていこうとする小道野の姿勢がチーム全体を奮起させる。最終戦まで一丸となって白星を積み重ねた女子卓球部は、秋季リーグ戦制覇という最大の目標を達成した。「喜びと安心の優勝だった」。連覇が懸かるプレッシャーにも打ち勝ち、最後の最後に手にした最高の結果。小道野の選んだ道は正しかったのだと、証明された瞬間でもあった。

 自身の大学生活を小道野はこう表現する。「あっという間の4年間、人生で一番濃い4年間」。うれしいことだけでなく、つらいこともたくさん経験した。しかし困難に直面するたびに、そのカベを一緒に乗り越えようとしてくれる仲間が小道野のそばにはいた。「主将をやって周りのつながりや支えに気付けた。みんなの存在があったからやってこれた」。4年間を通して、卓球だけでなく人間的にも成長を遂げられたと小道野は語る。卒業後は実業団に所属し、競技を続けていく。ワセダで得た技術、人間性、そして感謝を胸に――。ここから小道野の新たな歴史が始まる。

(記事 稲満美也、写真 豊田光司氏)