『挑戦』の4年間
「団体戦で勝ちたいという気持ち」。岩永宜久(スポ4=福島・帝京安積)は、個人競技と思われがちな卓球での自身の原動力をこのように語った。1年時から団体戦に出場し、シングルス、ダブルス共に輝かしい結果を残した岩永。早大卓球部で日本一に挑戦し続けてきた4年間を振り返る。
卓球を始めたのは小学校4年生の頃。当時仲の良かった友達がやっていたことがきっかけだった。元々テニスをしていたこともあり、卓球のコツをいち早くつかみのめり込んでいった。地元の卓球強豪校である福島・帝京安積高校に進学すると、岩永は実力を伸ばし続け平成30年度高校総体では男子シングルスベスト8という大きな結果を残した。「小中では全国大会で勝つことができなかったが高校1年生から結果を残すことができるようになった」と、自身の成長を振り返った。
中学生の頃から憧れを持っていた早稲田大学への入学を決めると、「最初はレベルの高い練習に着いていくことが大変で日頃から強い選手が周りにいる質の高さを感じた」と、レベルの高さを実感する。入学後初の団体戦となった春季関東学生リーグ戦(春季リーグ戦)から1年生ながらに起用されその実力を発揮してきたように思えるが、自身では「1年生の頃は全く良い成績が残せなかった」と悔しさを口にした。大学入学後より強いボールを打つことをコーチ陣からも指摘され、強く打つ分ミスも増え自分の中でかみ合わない部分があったという。
インターバル中、宮木宏輔(商4=京都・東山)と笑顔で話す岩永
2年生では結果を出したいと考えていた矢先、新型コロナウイルスの影響で多くの試合が中止になった。試合で勝つという目標が達成できないもどかしさからモチベーションを回復させることができたのは、部員みんなと一緒に練習する楽しさがあったからだった。練習に打ち込む中でこれまで課題としていた「強いボールを打つ」プレースタイルを確立させていき、大学3年時の全日本学生選抜選手権(全日学選抜)では目標以上のベスト4という結果を打ち出した。「自分の中でのプレースタイルがかみ合って大学3年の全日学選で初めて成績を残せたので努力が実ったと思う」と岩永は実力を伸ばし続けた。
個人戦で確実に成績を残す中、自身が主将として挑んだ初めての団体戦は3年時の秋季関東学生リーグ戦(秋季リーグ戦)である。しかし早大男子部はこの大会をまさかの最下位という結果で終えた。「人数が少ない分厳しいとは思っていたが自分達が思っていたよりも勝つことができず厳しい現実だった」と、団体戦で大きな壁にぶつかりラストイヤーを迎えることとなる。
リーグ戦最下位という悔しい結果からの挽回のためには何が必要か。岩永は「リーグ戦最下位の時はチーム全員が本気で優勝したいと思っておらずバラバラだった。本気で全員が日本一を目指す目標設定をすることが重要だったと思う」と、全員の気持ちの面を重視した。団体戦で勝つために主将としてチームを引っ張り、春季リーグ戦では最下位からの悔しさを晴らす2位という好成績を残した。さらに全日本学生総合選手権・個人の部(全日学)では昨春からペアを組んでいた濵田一輝(スポ1=愛知・愛工大名電)とのダブルス戦で悲願の優勝を果たし、「4年間で1番印象に残る試合だった」と最高のかたちで集大成を迎えた。
全日学での優勝が決まった瞬間、喜び合う岩永・濵田ペア
卓球に取り組む姿勢やプレーでチームをけん引してきた岩永は卓球部での4年間を『挑戦』と振り返った。「関東の大学なので高校の強豪たちがたくさん集まってさまざまな大会で強い選手と当たる中で、本気で日本一に挑戦したりリーグ戦優勝に向けて挑戦できた4年間だった」という。卒業後は卓球から離れるが、「色んな境遇の人が一生懸命頑張る部活。周りの部員に影響されて頑張れたことが良い環境だった」と、スポーツ推薦に限らず様々な境遇の部員が集まる早大だからこそ経験できた思い出を胸に、社会人生活に進む。後輩たちが日本一を達成することを願って。
(記事 芳田彩歌 写真 是津直子)