国際クラス別パラ選手権はパラ卓球における国内最高峰の大会だ。この大会では障害の程度によってクラス分けされ、試合が行われる。車いすの部がクラス1〜5、立位の部がクラス6〜10、およびSとなる。早大の岩渕幸洋(教4=東京・早実)はクラス9に、今大会シングルス3連覇を懸け臨んだ。1日目のシングルスでは予選から他を寄せ付けない圧倒的な強さで決勝へ。しかし、決勝では1ゲームも取れずゲームカウント0-3で惜しくもV3を逃した。また2日目に行われたダブルスではクラス9~Sのカテゴリーに出場し、前日シングルス決勝で対戦した鈴木伸幸(大分)と組んだが、こちらも2位に終わった。
リオデジャネイロパラリンピック(リオパラリンピック)に日本代表として出場するなど、今や日本パラ卓球界のエースである岩渕。予選から準決勝まで1ゲームも失うことなく、その力を遺憾なく発揮し、勝ち進んでいった。迎えた決勝では、冷静なプレーを見せていたそれまでの試合とは打って変わって、ポイントを取るごとに雄叫びをあげるなど気持ちを前面に押し出す。第1ゲームは序盤からリードを保ったが、中盤に5連続でポイントを失って逆転されると、そのまま先制を許してしまう。その後も「同じ展開で点を取られてしまって、試合を通して流れを変えられなかった」と振り返るように、相手のバックハンドへの対応に苦しみ、1ゲームも取れないまま惜敗。4年連続決勝戦で対戦しているライバルに3年ぶりに苦汁をなめさせられた。
岩渕は3連覇を逃し、肩を落とした
シングルスの悔しい敗戦から一夜明けた大会2日目は、ダブルスに臨んだ。岩渕は、前日のシングルスクラス9決勝で対戦した鈴木信幸(大分)とペアを組み、クラス9〜Sのカテゴリーに出場。結成2年目のペアは、予選から安定した試合運びで、1ゲームも落とすことなく決勝まで進出した。決勝の相手は、今大会のダブルス2連覇中であり、シングルスクラス10の1位・2位ペア。挑戦者として果敢に仕掛ける岩渕・鈴木組だったが、相手の威力あるボールに終始押されてしまう。競る場面も見せたが、要所で一本が遠かった。岩渕・鈴木組は強敵にストレートで屈し、2年連続の銀メダルに甘んじた。
ダブルスでも決勝に進出した
「こんなところでつまづいているようでは、先は長い」。3年連続の日本一を逃し、岩渕はこう語った。思えば2016年は岩渕にとって、激動の一年だったと言える。年初にリオパラリンピック代表に内定すると、3月のジャパンオープンでは2年ぶりに優勝。そして、期待を一身に背負い表彰台を目標に挑んだリオパラリンピックでは予選敗退に沈んだ。戦いの厳しさを学んだ大舞台を経て、ことしの集大成として迎えた国際クラス別パラ選手権。「勝たなきゃいけなかった」。3連覇目前での敗戦に、岩渕は唇をかんだ。しかし2020年への夢路が絶たれたわけではない。東京パラリンピックで目指すは、もちろん表彰台の一番上。日本パラ卓球界のホープが、悲願に向けてリスタートを切る。
(記事 加藤耀、稲満美也、写真 稲満美也)
結果
▽予選 シングルスクラス9
Aブロック 1位通過
○岩渕3―0舟山真弘(埼玉)
○岩渕3―0渡辺紳一郎(愛知)
▽決勝トーナメント
準々決勝
○岩渕3―0矢本勝(兵庫)
準決勝
○岩渕3―0辻村琢光(神奈川)
決勝
●岩渕0―3鈴木(大分)
▽予選 ダブルスクラス9―S
Bブロック 1位通過
○岩渕・鈴木組3―0塚崎智弘・清水総一朗組(岡山)
○岩渕・鈴木組3―0南達也・佐伯修三組(愛媛)
▽決勝トーナメント
準決勝
○岩渕・鈴木組3―0本田強・永井浩之組(京都)
決勝
●岩渕・鈴木組0―3垣田斉明(熊本)・永下尚也(福井)組
コメント
▽シングルス終了後
岩渕幸洋(教4=東京・早実)
――率直に、いまどのようなお気持ちですか
最悪です(笑)。こんなところでつまづいているようでは、先は長いですね。
――表彰式後、銀メダルをすぐに首から外していましたが、それも気持ちの表れでしょうか
そうですね。しっかり勝たなきゃいけなかったんですが、あのような結果になって本当に悔しいです。
――パラリンピックに出場したことでご自身の注目度も上がっていますし、また今大会は2連覇中でした。プレッシャーもかなり大きかったのではないでしょうか
プレッシャーもありましたが、その中で今後はやっていかなくてはいけないです。気にせずにプレーできるようにしていきたいです。
――決勝までは1ゲームも失いませんでした
そこはしっかりできたかなと思います。まだまだチャンスボールのミスがあったので、そこは修正しなくてはいけないですが、3―0で勝てたのは良かったです。
――決勝は手の内を知り合った相手との試合でした。振り返っていかがですか
4年連続、決勝で当たっています。去年、おととしは勝っていたのですが、きょうはレシーブから自分が後手に回って、相手のバックドライブへの距離感も合わなかったです。完全に攻め込まれる、一方的な展開になってしまいました。
――追い込まれる中で、どのように巻き返そうと考えていましたか
バック対バックからの展開が良くなかったので、自分のフォアハンドをしっかり使って先に仕掛けていく展開を狙っていました。ですが、結局は同じ展開で点を取られてしまって、試合を通して流れを変えられなかったことが良くなかったです。
――来年からは環境も変わりますが、これからどのような取り組みをしていきたいですか
新しい環境の中でどれだけ自分のやりたいことを通せるかということで、いい環境を整えて勝っていきたいと思います。