松平、まさかの2回戦敗退

卓球男子

 誰もが目を疑った。単複共に初戦を突破し、迎えたシングルス2回戦。松平健太(人4=青森山田)と対するは、1回戦で世界ランキング6位の荘智淵を破った塩野真人(東京アート)だ。「やり慣れていて有利だと思った」という言葉通り、緩急をつけた攻撃で3-0と大きくリードを奪う。しかし、あと1ゲームというところで、悪夢が訪れた。決め球が決まらず、珍しくサーブで失点するなどミスを連発。3ゲームを奪われ、試合は振り出しに戻る。最終ゲームは息を飲む接戦となったが、一歩及ばず、まさかの敗戦。波乱の展開に、会場はどよめいた。

格下相手に苦戦を強いられた松平(右)・丹羽組

 窮地に立たされながらも、何とか粘り勝ちした。第5シードの松平・丹羽孝希(明大)組は、1回戦に出場。第1ゲームを15-13と競るなど、序盤から格下相手に苦戦を強いられる。結局その後は2ゲームを連取され、1-2とあとがない状況に。しかし、ここから執念を見せた。第4ゲームをジュースの末に12-10で奪うと、第5ゲームは相手のミスを誘い、11-5と快勝。毎度の出だしの悪さは懸念材料ではあるが、不利な状況から挽回できたことには大きな意義があった。

塩野とのロングラリーで懸命に動く松平

 パリでのプレーを見せることはできなかった。シングルス2回戦、対するはカットマン塩野。普段共に練習している松平にとって、得意意識は大きかった。序盤はその通りに、ループドライブとスピードドライブを混ぜた緩急のある攻撃で、一気に3ゲームを奪取する。勝利まで、もうあと1ゲーム。ここで出た気持ちの余裕が、松平を苦しめることになった。大量連続失点に、要所での凡ミス、サーブミス。明らかに歯車は狂いだしていた。そしてついに、3-3のフルゲームに。最後のゲームは9-6とリードし、勝負ありと思われたが、流れを変えようと塩野がタイムアウトを要求する。「少し集中力が切れてしまった」と、ここからまたもや松平のミスが目立ち、5連続ポイントを許して力尽きた。

 長い卓球人生の中で初めての、3-0からの逆転負け。それだけに悔やまれる試合となったが、「3-0から勝負のつもりでやっていきたい」と改めて気を引き締めるきっかけとなった。明日は、丹羽とのダブルスが控える。「シングルスの借りを返したい」――。全てをぶつけて、目標の優勝を狙いに行く。

(記事 栗坂美祐、写真 加藤万理子)

結果

▽男子シングルス

1回戦

○松平4-1キム・ジファン(11-5、11-6、11-7、11-13、11-9)

2回戦

●松平3-4塩野(11-4、11-6、11-2、6-11、11-13、10-12、9-11)

▽男子ダブルス

1回戦

○松平・丹羽組3-2洪子翔・李佳陞(共にチャイニーズタイペイ)組

コメント

松平健太(人4=青森山田)

――今日の試合を振り返って

全体的に調子は良くありませんでした。塩野さんとの試合では、最初3ゲーム取ったあとは、向こうも段々やり慣れてきたり、僕のミスも多くなって逆転されてしまいました。3-0から逆転されたのは初めてなので、最終的にはすごく悔しい試合になりました。

――もうあと1ゲームというところで、何か変化はあったのでしょうか

僕自身はそこまでなかったんですけど、塩野さんが1、2、3ゲーム目より数多く返してきたので、僕が先にミスをしてしまったという展開はすごく良くなかったと思います。

――最後のゲームはかなり競っていましたが、どんな気持ちで試合をしていましたか

最終ゲームは無我夢中でやってて、9-6で勝ってて負けたんですけど、そこでタイムアウトを取られてから自分のミスが目立ったので、少し集中力が切れたのかなと思いました。

――この敗戦で、次に向けての収穫はありましたか

3-0で取ってても何が起こるか分からないというのを今回初めて分かったので、3―0から勝負のつもりでこれからやっていきたいと思います。

――塩野さんは練習仲間だということに対するやりにくさ、また会場が日本だということで特別な感情があったのかなと思いますが

カットマンなので、僕の方がやり慣れていてすごく有利だと思っていました。やはり1、2、3ゲーム目はその通りにいったので、このままいけるかなというそういう気持ちがあったのがいけなかったと思います。

――世界選手権で注目を集めた中で今回どんなプレーをしたかったのか、また今後にどうつなげたいかを聞かせてください

パリに比べたら、全然良くなくて、ファンの人たちの期待を裏切ってしまったので悲しいですね。自分自身も納得のいくプレーが最初から最後までできなかったので。でもまだダブルスがあるので、ダブルスでしっかりシングルスの借りを返したいです。

――ダブルスで目指すところは

もちろん優勝です。毎回優勝を目標にやっているので、それは変わりないです。

――世界選手権に比べて体の状態は

パリの時は絶好調にもってきたので、ただそれでパリ終わってから休んだりもしたし、そういうのもあって調整が上手くいっていなかったというのが一番大きいです。

――塩野さんとの試合でかなり汗をかかれていましたが体力的にはどうでしたか

そうですね、普通の攻撃マンと7ゲームやるより、2倍くらいは疲れるので、すごい苦しい試合でした。

――3-0からの逆転負けは初めてだとおっしゃっていましたが、ここだという敗因はありますか

戦術ですね。戦術がやはり偏ってしまったので、もう少し展開を変えられていたら変わってたと思います。

※囲み取材より、一部抜粋いたしました