秋季関東学生リーグ戦直前特集、最終回を飾るのは徳永美子女子主将(スポ4=福岡・希望が丘)、阿部愛莉(スポ4=大阪・四天王寺)、小笠原芽衣(文構4=東京・早実)の3人。女子部を春季関東学生リーグ戦、全日本大学総合選手権団体の部(インカレ)の2冠に導いた4年生は創部史上初の『グランドスラム』(※)達成に向け、今何を思うのか。
※この取材は8月28日に行われたものです。
苦しんだインカレで3連覇達成
これまでのシーズンを振り返る小笠原
――春季リーグ戦では10年ぶりの優勝を果たしましたが、これまでと取り組み方を変えた部分はあったのでしょうか
阿部 大きく変えたということはないんですけど、気持ちの部分で、今までは楽しみながら試合をすることを意識していたのを、私たちの代では勝ちにこだわりながら楽しむという方針でやってきたので、意識的に変えたのはそういう部分かなと思います。
徳永 毎年春リーグは1年生が入ったばかりということもあってバタバタした感じになってしまうという反省があったので、レギュラーの1年生がスムーズにリーグ戦に入りやすいように事前の準備ができていたことがチームとしてうまくいった部分だと思います。
小笠原 春リーグは1年生の存在が大きいということは自分たちが入学した時からすごく感じていて、1年生の主力メンバーがどれだけ緊張せずにリーグ戦に臨めるかということをチームとして特に意識していました。
――小笠原選手は主務としての役割と就職活動を同時にこなさなければいけない時期があったと思います
小笠原 練習から抜けてしまう期間もあったのですが、その間は3年生が特にカバーしてくれました。そのような下級生がしっかりと支えてくれる環境があったことも春リーグの優勝に繋がったと思います。
――1年生レギュラー2人の活躍は先輩から見ていかがでしたか
阿部 (専大戦では)1年生に6、7番手で勝つという使命を与える形になってしまって申し訳ない気持ちもあったのですが、優勝のためには2人に勝ってもらわなければいけなかったので、あまり勝つことを意識させ過ぎないようにベンチでは明るく楽しんでやってくるように声をかけていました。思い切ったプレーをしてくれて良かったです。
徳永 専大戦のオーダーを見た時に最後まで競るような展開になるということはみんな予想していたので、その中で6、7番手を1年生に託したことには少し驚いたのですが、苦しい試合の中でも元気よくプレーしてくれて勝つこともできたので良かったと思います。1年生が必死に頑張っている姿を見ていつも以上に感動しましたね。
小笠原 入学してすぐのリーグ戦で自分たちが勝たなければチームが負けてしまうという状況はとても辛かったと思うのですが、普段よりも気持ちを出して試合をしてくれたのでとても感動しました。
――6月の関東学生選手権を振り返ってみていかがですか
阿部 個人戦では思うような結果が出なかったのですが、その分インカレでは気持ちを引き締めて臨めたので、それほど落ち込むことなく前向きに次に繋げることができたことは良かったかなと思います。
徳永 自分の試合としては、ランク入り決定戦で中大の梅村選手(1年)と当たるだろうなということが分かっていて、あまり勝ったことがない相手だったのでその試合を勝てたことは大きかったです。その次の試合は逆にあまり負けたことがない相手に負けてしまって、勝ちたいという気持ちが強すぎて冷静に戦うことができなかったことが反省点でした。結果はあまり良くなかったですが、自分にとっては精神的な部分も含めていい経験になったのかなと思います。チームとしては、去年はほとんどランク入りできなかったですが、ことしは5人がランク入りを達成することができたので去年よりもいい形でインカレに向かっていけるということで前向きに捉えていました。
――続いてインカレを振り返っていただきたいのですが、ことしの優勝は実感としてはいかがでしたか
阿部 今までのインカレではどの試合もリードする展開が多くて、後半の選手も気楽に戦えていたのかなと思うのですが、今回は準々決勝で(団体戦カウント)1-2と負けそうになってしまったところから後半の選手がしっかりと勝ってくれて次に進むことができました。あの試合で勝てたので決勝戦でどんなに競っても最後は勝ち切れるという自信がみんなについたと思うので、いつも以上に苦しいインカレでしたが優勝できて良かったです。
徳永 優勝を重ねるごとに勢いだけでは優勝できないというか、実力がないと優勝できないということはすごく感じていて、周りからも3連覇という声が大きくてみんなきつかったと思うのですが、苦しい試合を勝ち切って優勝できたことは、今までチームとして取り組んできたことが結果として出たのですごく嬉しかったです。
――インカレはベンチメンバーが限られているということでベンチワークの面で難しさは感じましたか
小笠原 自分にとっても初めてインカレでベンチに入って、リーグ戦であれば下級生がやってくれるような仕事を自分でやらなければいけなかったり、応援の声も小さくなってしまうので、自分が誰よりも動いて誰よりも声を出すということは意識していました。
――インカレでは特に3年生の鎌田那美(スポ3=北海道・駒大苫小牧)選手の活躍が大きかったですね
阿部 決勝トーナメント2回戦で1番手の鎌ちゃんはリードされている状況からしっかりと逆転で勝つことができて、本人の自信にもなったと思いますし、その勢いで準々決勝、決勝と5番手で勝ってくれたのでチームにとって大きかったと思います。
徳永 鎌ちゃんは入学してから自分でしっかり考えたり人からアドバイスを聞いたりと、勝っても負けても常に人一倍謙虚に努力していて、そういう姿をずっと見てきたので5番手でも信頼して応援していました。結果論にはなるんですけど、きっと勝ってくれるだろうなと思って見ていましたね。
小笠原 ことしのワセダはやはり1年生と4年生が注目されてると思うのですが、リーグ戦でも鎌田の存在はすごく大きかったですし、徳永が言ったように誰よりも練習してきていると思うので、ベンチも安心して応援していました。秋リーグも頑張ってもらいたいです。
思い出
笑顔で入学当初の印象を振り返る3人
――夏休み中の練習はいかがでしたか
阿部 インカレでは表(ラバー)の選手に苦戦することが多かったので、男子選手にも協力してもらって表の選手に対する強化をみんなでしてきました。他には、団体戦では選手からのアドバイスも大事になるので、的確なアドバイスができるようにチーム内で話し合いをしてきました。
徳永 だいたい阿部が言ってくれた通りですが、他にはロングサーブの対処が課題としてあったので、レシーブからの展開を練習してきました。
――4年生にとっては学生生活最後の夏休みでしたが
徳永 花火とプールに行きました。晴れていたので良かったです(笑)。
阿部 何の報告(笑)?
小笠原 学生最後ということでとりあえず遊びまくろうと思ってフリーの時間は色々な人と遊びまくっていました(笑)。
――学生生活も終わりが近づいてきましたが、入学当初の小笠原選手の印象などは覚えていますか
阿部 顔が可愛いなと(笑)。
徳永 入学する前に私服で会った時に綺麗だなと思いました(笑)。今とはだいぶ違う印象ですけど。あ、見た目は変わらず綺麗です。
――小笠原選手から見た阿部選手、徳永選手の印象は覚えていますか
小笠原 インターハイで2人のことを見たことがあったのですが、強い選手なので色々な噂とかがあって、とても怖い印象でした。仲良くなれるか不安だったんですけど、徳永は最初に会った時にホワイトボードに変な絵を描いていてイメージと全く違って柔らかい人なんだと分かりました。阿部は全く話さないので噂通り怖かったです(笑)。でも入学してからはずっと一緒にいたのですぐに打ち解けられました。
――お互いに見て入学時と変わったところはありますか
阿部 あるかな。
徳永 ないね、成長なし(笑)。
小笠原 トレーニングができるようになりましたね(笑)。入ったばかりの頃は本当に酷かったです。あと徳永は試合が落ち着いたと思います。1年生の頃はガッツポーズもすごい大きかったですし。
――4年間の活動で特に濃密だった年はありますか
小笠原 やはり4年生のことしですかね。
阿部 1年生の頃も割と濃い1年でした。1年生だと先輩だらけで気を遣う部分も多かったり仕事も多くて大変でした。
――学生のうちにやっておきたいことはありますか
阿部 できるか分からないんですけど、金髪にしたいです(笑)。
徳永 東京にいるうちに色々な美味しいものを食べに行きたいです。並ぶことが好きじゃないので、とっさに行こうと思っても行列見て妥協することが多いですね(笑)。
小笠原 私は引退したらピアスを開けるのと、ネイルをやってみたいですね。
13人全員で勝つ
秋リーグに向けた意気込みを語る徳永
――秋季リーグ戦が近づいてきましたが、チームの調子はいかがですか
阿部 インカレが終わってからあまり実戦がなかったのでみんなの調子はよく分かりませんが、合宿などで追い込んできたので秋リーグに向けて気持ちは引き締まっていると思います。
徳永 夏休みは練習量も多い中で、ほとんど怪我している選手もいなくてフィジカル面でもいい感じに調整できているかなと思います。秋リーグは難しいことが当たり前で、もっと気を引き締めていかないと優勝できないと思うので、もう一度ここから意識を高く持って調整していきたいと思います。
小笠原 関学大との定期戦で、阿部と徳永がいない中でも勝ち切ることができたので悪くはないと思うのですが、インカレ後から多少の気の緩みは感じるので秋リーグに向けてまたゼロからやるつもりで気を引き締めたいです。
――グランドスラム達成が懸かる秋季リーグ戦ですが、プレッシャーは感じていますか
阿部 今の時点ではプレッシャーは感じていませんが、いざ始まったら自分でも気付かないうちにプレッシャーを感じてしまうと思うので、勝ちにこだわりつつ楽しんでプレーしていきたいです。
徳永 主将として毎回優勝するたびに次は優勝できないかもしれないという不安は感じているのですが、だいぶプレッシャーには慣れてきたのかなと思います。グランドスラムは懸かっていますが一つの秋リーグとして戦っていきたいですね。
小笠原 OBの方などから声をかけていただくことも多いですが、プレッシャーを感じてしまうのはやはりレギュラーメンバーだと思いますし、その中で私はレギュラーメンバーが緊張し過ぎないようにしてあげることが仕事だと思っているので、みんなで楽しんで向かっていきたいです。
――秋季リーグ戦では最大のライバルは中大になると思いますが中大以外に警戒しているチームはありますか
徳永 専大、青学大ですかね。専大には春リーグで本当にギリギリの戦いでしたし、ワセダから見て分が悪い選手もいるので、しっかりと対策をして誰と当たっても勝ちにいけるように取り組んでいきたいと思います。
小笠原 1年生の頃の秋リーグで、前半戦で日体大に負けてしまったことがすごく頭の中にあって、前半戦で取りこぼさないようにすることが大事かなと思います。
――優勝に向けてカギになる選手はいますか
阿部 鎌ちゃんです。リーグ戦よりもインカレの方が力を発揮しやすいタイプなのかなと思うんですけど、リーグ戦でもインカレの時のような勝負強さを発揮してもらいたいです。
徳永 笹尾(明日香、社1=神奈川・横浜隼人)ですかね。今までは阿部が前半に固定だったところを笹尾が前半でしっかり勝ってくれることで阿部の負担も減ると思います。実力は学生の中では飛び抜けていると思いますし、元気よくプレーしてくれることでチームにも勢いがつくかなと思います。あとは金子(碧衣、スポ3=愛知みずほ大瑞穂)や加藤(結有子、スポ2=東京・エリートアカデミー/帝京)はインカレには出ていませんでしたが、私たちが抜けたあとに主力になっていく選手だと思うので頑張ってもらいたいです。
小笠原 徳永ですね。主将としてここまでチームを引っ張ってきてくれて、どんな結果であっても戦い方がチームに影響を与える存在だと思うので、主将らしく頑張ってほしいです。
――最後のリーグ戦で後輩に伝えたいことはありますか
阿部 私がワセダに入って4年間ずっと感じていることは、ワセダのチーム力が他大よりも大きいということなので、先輩方が築き上げてきてくれたチーム力を私たちが抜けた後もさらにレベルアップさせてもらいたいと思います。秋リーグでは個人個人の戦いもあると思いますが、チーム全体で盛り上げてことし一番のチーム力を発揮したいです。
徳永 年々ワセダのチームとしての基盤というか意識が良くなっていると思っていて、去年の4年生がバトンを渡してくれた時もゼロからではなくてすごくやりやすい状況で始めることができました。この1年かけて伝えることは伝えてきたつもりなので、秋は3年生をはじめ後輩ともっとコミュニケーションを取りながらいい形で次に繋げられたらと思います。
小笠原 私もワセダの一番の強みはチーム力だと思っています。私はずっとサポートとしてやってきたので、サポートメンバーに自分のいる意味であったりを背中で見せて何かを感じてもらえるような秋リーグにしていきたいなと思います。
――最後のリーグ戦で戦っている姿を見せたい方はいますか
阿部 家族といつもお世話になっているOB・OGの方々に優勝をプレゼントできるように頑張りたいです。
徳永 これまで一緒に戦ってきた後輩たちには感謝でいっぱいなので最後いいプレーをしてその気持ちを伝えたいです。
小笠原 いつも応援してくれる方はもちろんですが、個人的には梶本コーチにすごく見てもらいたいと思っていて、1年生の頃から面倒を見ていただいたので成長した姿を見てもらいたいです。
――最後に秋リーグに向けた意気込みをお願いします。
阿部 秋リーグは自分にとっても最後のリーグ戦ですし、13人で戦う最後のリーグ戦なので、勝ちにこだわりつつチームのみんなで助け合いながら楽しんで笑顔で終われるように頑張ります。
徳永 あまりみんなの前では言わないのですが、秋は特に絶対優勝したいと思っているので、みんなでチームを盛り上げて最後までワセダらしいプレーをして悔いのない秋リーグにしたいと思います。
小笠原 私は恩返しのリーグ戦にしたいと思います。今までたくさん優勝を味わせてくれた選手たちにはもちろん、色々な方々に恩返しするつもりで最高のサポートをして、最後に13人全員笑顔で終われるようなリーグ戦にしたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 吉田寛人)
※春季リーグ、インカレ、秋季リーグの三冠を達成することを『グランドスラム』と呼ぶ。
秋季リーグ戦の抱負を色紙に書いていただきました!
◆徳永美子(とくなが・みこ)(※写真中央)
1996年(平8)12月12日生まれ。158センチ。O型。福岡・希望が丘高出身。スポーツ科学部4年。左シェーク裏・裏。主将としてチームを引っ張ってきた徳永選手。得意のラリー戦で勝利を掴み取ってくれることでしょう!
◆阿部愛莉(あべ・あいり)(※写真左)
1996年(平8)12月6日生まれ。148センチ。B型。大阪・四天王寺高出身。スポーツ科学部4年。右シェーク裏・表。エースとして数多くの勝ち星を挙げてきた阿部選手。小さな体から放たれる強烈なスマッシュに注目です!
◆小笠原芽衣(おがさわら・めい)(※写真右)
1996年(平8)5月10日生まれ。160センチ。東京・早実高出身。文化構想学部4年。左シェーク裏・表。主務としてチームを支えてきた小笠原選手。最高のサポートでチームを優勝に導きます!