【連載】秋季関東学生リーグ戦直前特集 第4回 鎌田那美×笹尾明日香

卓球ダブルス

 春季関東学生リーグ戦、全日本大学総合選手権団体の部(インカレ)で見事優勝し、チーム最大の目標である『グランドスラム』(※)達成にリーチをかけた女子部。今回はここまでの快進撃に大きく貢献してきた鎌田那美(スポ3=北海道・駒大苫小牧)と笹尾明日香(社1=神奈川・横浜隼人)の主力コンビが登場。厳しい試合状況の中でも勝ち切る勝負強さの秘訣に迫った。

※この取材は9月9日に行われたものです。

ゾーンに入る

春季リーグ戦では全勝で殊勲賞を獲得した笹尾

――春季リーグ戦では10年ぶりの優勝を果たしました

鎌田 入部してから一度も春リーグでは優勝したことがなくて、新体制になってからの難しさが春リーグにはあるのかな、とこれまで感じていたのですが、ことしはグランドスラムという目標を全員で掲げて昨年の反省も生かしながら春リーグに臨み優勝できて、いいスタートが切れたので良かったですね。

笹尾 春リーグは入学してから最初の大会であまり勝手が分からない状況だったのですが、とにかく優勝を目指して頑張って結果的に優勝できたことはすごく嬉しかったです。10年ぶり、ということは後から改めてすごいことだったんだなと実感しました。

――個人的な出来については

鎌田 リーグ戦の前半は負けが続いてしまったり、いいプレーができなかったのですが、後半に向けての間で気持ちの作り方などを修正しようと課題をもって取り組めたので後半はいい形で臨めたかなと思います。そういう意味では春リーグは勉強になった試合でした。

――最終日の中大戦では森田選手に対して初めての勝利を挙げました

鎌田 (団戦カウント)2-1の状況で回ってきて、強気で試合に入れたことはもちろんなんですけど、今まで一度も勝ったことがなかったということで思い切ったプレーができたことが勝てた要因かなと思います。

――笹尾選手は春季リーグ戦の個人的な結果についてはいかがですか

笹尾 ダブルスは当時まだペアを組んだばかりだったので今ほど嚙み合っている感じではなくて色々な課題が見つかりました。シングルスは悪くはなかったのですが、カットマン相手にかなり苦戦して負けそうになったので、カットマン対策は課題として残りました。

――専大戦では6、7番手が1年生でしたがお互いに声をかけ合ったりはしましたか

笹尾 しましたね。私が勝って7番手に絶対回すからねというようなことを話して、2人とも苦しい試合にはなったんですけど最後勝てて本当に良かったです。

――先輩の鎌田選手から見てルーキー2人の活躍はいかがでしたか

鎌田 本当に1年生とは思えないぐらい2人とも堂々としていて、(専大戦では)5番手で自分のダブルスが負けてしまったのでマズイかなと思ったのですが、2人が明るく元気に頑張ってくれたのでとても助けられました。本当に頼もしいです。自分が1年生の時はプレーの波があったのですが、2人はメンタル面でのブレを感じさせないようなプレーをしていたのですごいですね。

――大学のリーグ戦は高校時代の団体戦とは雰囲気が異なりますか

笹尾 違う面もあれば同じ面もあるという感じですね。高校の時の団体戦は結構ハードで、自分が試合している時以外はずっと応援しているので疲労が蓄積してしまうのですが、リーグ戦では自分の出番の前後には栄養補給や身体のケアをしていただけるので試合をする立場としては環境を整えてもらっていてやりやすいです。やはり変わらないなと思うのは、チーム一丸となって戦う姿勢であったり周りの方が一生懸命応援してくださることですね。

――続いて関東学生選手権を振り返っていただけますか

鎌田 ダブルスもシングルスも調子が悪いわけではなかったですが、試合の中であと一本を取りきる力にとても課題を感じました。

笹尾 組み合わせを見た時に準々決勝で安藤選手(専大)と当たることが分かっていて、安藤選手には今まで4敗ぐらいしているのでなんとか思い切った試合をして勝ちたいと思っていたのですが、以前よりも競らないで完敗してしまって残念でした。

――その後インカレに向けてはどのように修正したのでしょうか

鎌田 試合の中盤から終盤にかけてサーブが単調になってしまうという課題があったので、サーブの回転量を増やしたり、質を高めようということを意識しました。

――インカレでは見事3連覇を果たしましたが、過去の優勝とは違う実感がありましたか

鎌田 去年は2連覇が懸かっているということだったんですけど、ことしは創部初の3連覇が懸かっていたということで周りからの期待もすごく大きくてありがたかったのですが、その分4年生にはとてもプレッシャーがかかっていたと思います。その中でも選手自身はあまり3連覇を意識し過ぎずに明るく向かっていこうという姿勢で戦えたことがことしの優勝の要因だったかなと思います。去年は春リーグで負けてしまったことでグランドスラム達成という目標がなくなってしまい、もう向かっていくだけだったのですが、ことしは春リーグ勝つことができてグランドスラムという目標のためにも負けられないという気持ちが強かったのではないかなと思います。

――笹尾選手は初めてのインカレを経験してみていかがでしたか

笹尾 ワセダが2連覇中という中で入学して、なんとか3連覇することができたのですが、優勝した時に4年生の方が泣いている姿を見たり、OB・OGの方々も泣いて喜んでくださっていて、偉大なことなんだなということを改めて実感しました。

――鎌田選手はチームの勝敗が懸かる最終5番手での起用が多かったですが

鎌田 5番手であっても1点は1点なので、みんなが繋いでくれた中での試合ということで、気負い過ぎることなく集中して思い切った試合ができたことが良かったかなと思います。

――お二人は負けている状況から逆転勝利を挙げることも多いですが、競っている状況や負けている状況での心境を教えていただけますか

鎌田 私は負けている時に弱気な顔をしたら絶対に負けるということが分かったので、負けていてもなるべく笑顔でいようとしたり、相手に弱みを見せないようにしています。

笹尾 私は負けている場面であっても、これは勝てるなと考えるより先に感覚的に感じることがあって、そうなれば最終的に勝てることが多いです。逆もあって、勝っていても感覚的に負けるかもと感じてしまうと大体その通りになってしまいます。なので、そのように感じた時にいかに踏ん張れるかということが課題だと思っています。インカレでは準々決勝で0-2とリードされていた場面から逆転した時にも、自分的には勝てるなという感覚があったので、何も考えずに試合に入り込んでいました。そうしたら審判の方から何度も「大丈夫?」と聞かれたので何のことだか分からなかったのですが、どうやら顔がすごく赤くなっていて熱中症だと勘違いされたみたいでした(笑)。

――ゾーンに入っていたということですか

笹尾 そうですね。負ける気がしませんでした。

――鎌田選手にもそのような瞬間はありますか

鎌田 えーあるかな(笑)。

笹尾 きっとありますよ(笑)。

鎌田 あ、でも決勝の5番手の試合ではどんなボールも入るような感覚があったかもしれないです。

――サポートメンバーの貢献についてはいかがですか

鎌田 とても大きいですね。サポートメンバーの力がなかったら自分たちは試合で力を発揮できないと思いますし、全員で戦っているという感じでとてもありがたいです。

笹尾 分析や試合前の準備をやってくださったり、1年生の仕事を早く帰れるように変わってくださったり、とても助けていただいてより良い状態で大会に臨めているので感謝しています。

4年生のために優勝

団体戦での勝負強さが光る鎌田

――夏休みの期間は毎日どれぐらいの練習量をこなしているのですか

鎌田 2回に分けて、合わせて4,5時間練習しています。授業がある時期よりもチーム全体で長い時間練習に取り組めるのでゲーム練習なども多くできています。

――チームとしての課題はありますか

鎌田 インカレではサーブレシーブで相手に狙われている課題があったので、その部分を改善しようと練習してきました。

――個人的には意識して練習したことはありますか

鎌田 夏休み中の実戦で狙われているなと感じるコースがあったので秋リーグに向けてうまく修正していけたらと思います。

笹尾 詳しくは言えないのですが(笑)、苦手にしているサーブのコースがあるのでそれに対するレシーブを多く練習してきました。あとはバックを重点的に練習しましたね。

――ダブルスではどのような練習をしてきましたか

笹尾 ダブルスではコンビネーションの部分を2人で話し合いながら色々な想定をして動きの確認をしてきました。左・右のペアということで苦手なコースがあるのですが、そこに打たれた時に失点しないように2人で試行錯誤しながら練習してきて、春よりはかなり良くなっていると思います。

鎌田 今年度はあまり調子が良くなくて結果が残せていないのですが、試合の中でやることが決まりすぎているのかなと思うので、いかに相手にやりづらいと思わせるかを考えながら練習しています。また、3年間一緒にやっていることでお互いに分かりきっている分試合中に話さなくなってきてしまっている部分があるので、もう少しお互いで話しながらやっていきたいと思います。

――夏休み中の実戦の機会では練習の成果は出せていますか

鎌田 近々の試合ではあまりいい結果ではなかったのですが、その分やるべきことが明確になったと思うので、いい方向には進んでいると思います。

笹尾 私は全日本選手権の予選でシングルス、ダブルスいずれも通過することができたのですが、特にダブルスでレベルの高い東京都の予選を突破できたことで成長を実感できたかなと思います。中国で遠征した時も全ての試合で勝つことができたのでいい感覚でできているかなと思います。

――秋季リーグ戦間近ですが、チームの雰囲気はいかがですか

鎌田 秋リーグが近づいてきてチームも意識を高く持って練習できていてまとまっていると思います。

笹尾 ワセダは他の大学よりも一体感があると思っているので、オンとオフをうまく切り替えながらいい雰囲気で過ごせています。

――リーグ戦は前半に5試合、後半に2試合が組まれていますが

鎌田 春リーグも同じ日程だったのですが、前半戦で選手に疲れが見えたりサポートの負担が大きくなってしまっていたので、秋リーグでは春の課題を改善していきたいと思います。

笹尾 サポートメンバーの方やトレーナーの方のおかげでなるべく疲労が溜まらないような環境を整えていただいているので大丈夫だと思うのですが、試合なので緊張もすると思いますし、なるべくいい状態で毎試合臨めるようにうまく調整していきたいと思います。

――秋リーグでチームの中で果たしたい役割はありますか

鎌田 3年生は中間の立場となるので、4年生の負担を少しでも軽くできるようにチーム全体を見ながら行動していきたいと思います。また、試合に出ている場面でも出ていない場面でも明るく元気よくいることが役割だと思うので、そこは常に意識していきたいです。

笹尾 卓球の面では、出させていただいた試合で全て勝つことを役割としていきたいです。また、自分はあくまでも1年生なので、サポートメンバーの方々が仕事をやってくださることを当たり前だと思わずに、チームのみなさんが気持ちよくプレーできるように気付いたことは積極的にやっていきたいと思います。

――秋季リーグ戦ではグランドスラムが懸かっていますがチームとしては意識していますか

鎌田 もちろん目標ではあるのですが、あまり意識し過ぎることなく向かっていけたらと思います。

笹尾 ミーティングなどでは暗黙の了解という感じであまり声に出してグランドスラムを狙おうということは話さないですね。

――やはり周囲からの期待、プレッシャーも自然と大きくなると思いますが

鎌田 春リーグ、インカレと優勝していい形で続いてきているので、一戦一戦厳しい試合が続くとは思いますが、守りに入ることなくチーム一丸となって目標に向かっていきたいです。

笹尾 周囲の期待をプレッシャーだとは思わずに励みとして捉えて、あとは向かっていくという気持ちだけを持っていけたら緊張しすぎることもないかなと思います。

――4年生と戦う最後のリーグ戦となりますが

鎌田 4年生は一番近い先輩として背中を見てきましたが、とてもお世話になっていますしここまでチームを引っ張ってくださったので、感謝の気持ちを込めて優勝していい形で学生時代の終わり方をしていただけるように頑張ります。

笹尾 4年生の方々に卒業してほしくないということを4月からずっと言っていて(笑)、秋リーグが最後だと思うとすごく寂しいのですが、前向きに全力で戦って、将来思い返した時に最高の学生時代だったと思っていただける思い出の1ページを作りたいと思います。

――4年生との思い出はありますか

鎌田 ご飯に連れて行ってくださったり、遊びに連れて行ってくださったりと卓球以外の面でもたくさんの思い出がありますね。

笹尾 入ったばかりの頃にアイシング用の氷のうを作ろうとしていたら、阿部さんが「肩痛いの?」って言って氷のうを作ってくださったんです。私からしたら憧れの存在だった阿部さんが自分に氷のうを作ってくれていると思って惚れました(笑)。

鎌田 分かる!惚れることが多いんですよ(笑)。行動だったり仕草だったりが全部可愛くて4年生には惚れてばっかりです(笑)。

――秋季リーグ戦で見てもらいたい部分はありますか

鎌田 これまでは試合で自信がなくなってしまったりとか、弱い部分が表に出てしまっていたので、今回は明るく堂々と自分らしいプレーを心掛けている姿を見てもらいたいです。

笹尾 自分には気迫しかないと思うので、その気迫を見てもらいたいです。

――最後に秋季リーグ戦に向けた意気込みを聞かせてください

鎌田 秋リーグはグランドスラムが懸かっていますがそれ以上に4年生にとって最後のリーグ戦となるので全力を尽くして、チームみんなが良かったと思えるような試合をしていきたいです。

笹尾 このチームで臨む最後のリーグ戦になるので、4年生にとっても他の全員にとっても最高の大会となるように自分の役割をしっかり果たして頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 吉田寛人)

※春季リーグ、インカレ、秋季リーグの三冠を達成することを『グランドスラム』と呼ぶ。

秋季リーグ戦の抱負を色紙に書いていただきました!

◆鎌田那美(かまだ・なみ)(※写真左)

1997年(平9)11月27日生まれ。156センチ。O型。北海道・駒大苫小牧高出身。スポーツ科学部3年。右シェーク裏・裏。夏休みには部員と一緒にリアル潜入ゲームで遊んだという鎌田選手。すぐに負けてしまったということでまたリベンジしたいそうです。

◆笹尾明日香(ささお・あすか)(※写真右)

162センチ。神奈川・横浜隼人高出身。社会科学部1年。右シェーク裏・表。得意のモノマネを披露してくださるなど対談を盛り上げてくださった笹尾選手。夏休みにはボルダリングに初挑戦したということでその難しさを熱弁してくださりました。