去年、女子部は創部史上初の全日本大学総合選手権団体の部(インカレ)優勝を果たした。その決勝戦でコートに立った、阿部愛莉(スポ3=大阪・四天王寺)、徳永美子(スポ3=福岡・希望が丘)、鎌田那美(スポ2=北海道・駒大苫小牧)。歴史的瞬間の立役者になったこの3名に、『グランドスラム』達成の必要条件である春季関東学生リーグ戦(春季リーグ戦)優勝に向けての意気込みを伺った。
※この取材は4月26日に行われたものです。
「もっと自分で考えていかなければ」(鎌田)
談笑を交えながら取材を受けてくれた三人
――新学年になりましたが、心境の変化はありますか
阿部 高学年になったので、1、2年生のときよりも団体戦での責任感を強く感じるようになりました。
徳永 ことしから上級生になったので、自分の卓球のことだけではなくてチームのことも見たいと思っています。それによって自分にも何かプラスになるのではないかと思います。
鎌田 先輩になったので、1年生のときは分からないこととかを先輩に聞いていたんですけど、これからは卓球のこととかももっと自分で考えていかなければいけないと思います。
――昨年はどのような一年間でしたか
阿部 個人的には試合のたびに自分の調子の波があって、つらいときもありました。団体戦ではインカレで優勝できたので、良かったと思います。
徳永 1年生のときは団体戦など慣れていないことが多く、試合の結果もなかなかついてきませんでした。去年は団体戦もシングルスもダブルスも思い切って試合ができて、1年生のときよりは良かったかなと思う1年間でした。
鎌田 いろいろな経験をさせていただいた年になりました。一番印象に残ったのはインカレで、初めてそういう舞台に立たせていただいて、貴重な経験をできたと思います。
――春休みにトレーニング中心の合宿をしたそうですが、どのようなものだったのですか
徳永 今まで女子はなかったのですが、遠くに行って卓球から離れたところでトレーニングだけをする1泊2日の合宿をしました。トレーニングを教えてもらっている先生に、ウォーミングアップやストレッチの見直しから教わりました。試合前の準備とかの意識は、みんな上がったかなと思います。
鎌田 私も、トレーニングに対する意識は前と比べて変わったと思います。
阿部 私はトレーニング合宿には参加できなかったのですが、みんなは筋肉がついたなと思います(笑)。
――特に鍛えた部分はありますか
徳永 手とか脚とか…全身ですね。筋肉痛になりました(笑)。陸上のトラックみたいなところで、長距離よりもダッシュを中心にたくさん走りました。いろいろとメニューを組んでくれていてそれをやったのですが、かなりきつかったです(笑)。
――2017年に入ってからのご自身の結果を振り返っていかがですか
阿部 どの試合も自分のいけるところまではいけたかなと思うんですけど、もう一つ上のレベルの選手には競り負けてしまうことが多かったです。目指しているのは、全日本選手権(全日本)だったらスーパーシードの選手に勝つことです。
徳永 シングルスでは全日本も東京選手権もランク入りを目指していたのですが、阿部さんと同じで実業団の選手とかに勝てませんでした。ユニバーシアードの選考会もあまり良くなくてたくさん負けてしまったので、2017年に入ってからは課題が多くあると思います。
――鎌田選手は春休みサフィール国際オープンに参加していましたが、国内大会との違いは感じましたか
鎌田 違う国なので雰囲気は少し違ったんですけど、卓球とかに関しては大きな差は感じなかったです。
――ご自身の結果についてはどのように受け止めていますか
鎌田 2種目日本選手に負けて、1種目外国の選手に負けたんですけど、取り切れず負けてしまった試合が多かったので、初めて対戦する相手に対して自分のプレーができなかったところが課題だと感じました。
――阿部選手・徳永選手のダブルスについて伺います。全日本の試合を振り返っていかがですか
阿部 全日学(全日本学生選手権個人の部)でランク入りできずに終わってしまったので、次の全日本で結果を残さないと解散の危機だったかもしれなくて。全日本は全日学よりもレベルが高いんですけど、ダブルスだからこそ実業団の選手にも勝つチャンスがあると思っていました。第2シードの中にいたんですけど、頑張ってその中の実業団選手にも勝って、その次の大学生ペアに勝つことが目標でした。
徳永 全日本の前の練習ではあまり状態が良くなくて、動きも合いませんでした。全日学が終わってからダブルスの試合があまりなかったので、試合の感覚も分からず不安な気持ちで臨みました。スーパーシードのペアに勝って一つずつ頑張ろう、挑戦しようという気持ちでした。
――優勝ペア相手に第1ゲームを取りましたが、手応えはありましたか
阿部 もう少しこれができれば勝てたかもしれないというのは感じました。試合中も試合後も思ったので、あの試合に関しては悔しかったです。
徳永 試合をしてみて、実業団の選手は普段なかなか対戦しないので、阿部さんのバックとか異質をすごく嫌がっていたし、サーブも効いているように感じました。でも最後自分たちのミスとかで得点されてしまったので、もうちょっとどうにかしたら勝てたかもしれないと思いました。そこが実業団の選手の上手いところだとは思うんですけど、すごく悔しいです。
阿部 相手の選手は二人とも入れるのが上手いというか。嫌がってるのは伝わってくるんですけど、最後それでも入れてくるという感じでした。シングルスだと二人とも攻撃的な卓球なので、もうちょっと打たれるかなと思っていました。でも逆につなげる卓球だったので、こっちがあたふたしてそこから崩れていってしまいました。自分たちにもっと攻撃力があれば、良かったかなと思います。
――ペアを組んで3年目になりますが結成当初と比べて変化はありますか
徳永 阿部さんは異質で私とは全然卓球が違うので、1年生のときはまだここでどうするのかというのが分からないことがけっこうたくさんありました。でも組み続けてきて、最近は分かるようになってきました。自分たちの長所も短所もはっきり分かっているので、前よりは良くなっていると思います。
阿部 組めば組むほど自分たちの弱点とかが見えてきて、そこを徹底的に練習できるので、そういった面では伸びしろあります(笑)。先ほどの解散の危機というのは別に誰かに言われたわけではないのですが、年が変われば1年生も入ってくるし、強い子もくるのでペアを組み替えるのではないかと思っていました。ランクに入れば次の年に推薦をもらえるので解散はないだろうと思っていて、全日本でランクに入れたので良かったです。
「一人一人が責任感をもてるチーム」(阿部)
インカレでは獅子奮迅の活躍で優勝に導いた阿部
――主将が田中選手になりましたが、何かチームの変化は感じますか
鎌田 田中さんはチームのことを一生懸命考えてくれていて、トレーニング合宿のような新しい取り組みもしています。去年とは違う、田中さんらしいチームづくりだなと思います。
徳永 田中さんは、いろんなことに挑戦というかできることは全部しようという感じです。ことしは4年生が6人いて前よりも多いので、みんなで試行錯誤しながらチームとして取り組んでいる印象があります。
阿部 レギュラーの人もサポートの人も一人一人が意識を高くもっているという感じです。去年までは、ベンチの人とかが戦っている選手のアドバイスを考えるとき、全部上級生がやっていました。けれどことしは団体戦の練習をするとき、入ってきた1年生も一緒に考えてみんなでアドバイスできるようにしています。リーグ戦のときも、選手が話しやすく下級生同士でもアドバイスできるように、座る順番も変える予定でいます。一人一人が責任感をもてるチームになっていると思います。
――神奈川選手権では、昨年の秋季リーグ戦で敗れた東京富士大Aを破って優勝しました。新しいチームになって調子が上がってきているということでしょうか
鎌田 リーグ戦とはまた違った雰囲気だったんですけど、自分は決勝に一番手で出させていただいて、責任感をもって試合ができたと思います。
阿部 神奈川選手権は最後試合の進行上4台同時進行だったので団体戦らしくはなかったんですけど、結果的に相手のエース2人を倒して勝てたことは、リーグ戦につながったのではないかと思います。
徳永 私は新入生にてこずってしまっていたんですけど、隣で3人が戦っていてみんな強気で攻めて勝てていたので、いい雰囲気だったと思います。
――早稲田のBも東京富士大Aに2-3で惜敗するなど、ワセダは選手層が厚い印象です。どのように感じますか
阿部 団体戦はワセダ結構強いかなと思います。けどチームカップも神奈川選手権も中大が出ていなくて、中大は層が厚いので。結果優勝したのは自信になったんですけど、中大も出場していたらどうなっていたかなとは思います。
徳永 ワセダは普段の練習からあまりレベル関係なく全員で一緒に練習しています。それが全体としてレベルアップできてる一つの要因だと思います。中大とかもっと層が厚いので、もっとみんなで底上げできたらいいなと思います。例えば私だったら、ことし入ってきた荒井さん(咲季、教1=東京・早実)とかみんなからしたらちょっとレベルの差があると思います。ブロックをするとき同じレベルの人だったら速いのが返ってくると思うんですけど、荒井さんとのときは浅かったり緩かったりして、かえって自分がミスしてしまうことがあります。私は打ち合ったあと質問とかコミュニケーションは取る方で、いろんな人とやることで学ぶことがあります。
――鎌田選手にとって同期はどのような存在ですか
鎌田 同期に限らないですがみんなしっかり卓球のことを考えていて、卓球のこともよく話します。私は金子さん(碧衣=スポ2=愛知みずほ大瑞穂)とダブルスのペアを組んでいるんですけど、そのなかで教えてもらうこともたくさんあります。
――他の部員に刺激を受けたエピソードはありますか
阿部 私は他にはあまりいない戦型なので、いろいろな人のプレーを参考にしています。フォアは私も裏なので先輩の打つボールとか、鎌田さんのフォアドライブとか速くていいなと思うことがあります。
――新入生とはいつごろから一緒に練習しているのですか
鎌田 3月くらいです。
――一緒に練習してみて、印象はいかがですか
鎌田 自分は去年新しいことがたくさんあってよく分からなかったんですけど、ことしの1年生は落ち着いていて、しっかりしているなと思います。
――去年の鎌田選手と比べていかがですか
徳永 鎌ちゃん面白かった(笑)。天然というか。
鎌田 天然じゃないです(笑)。
阿部 新入生のことはまだこれからっていう感じですかね(笑)。
「みんなで優勝に向かって頑張りたい」(徳永)
周囲からエース級の活躍を期待されている徳永
――去年創部史上初のインカレ優勝を果たしたことで、ことしは今まで以上に結果を期待されていると思うのですが、どのように感じていますか
阿部 卓球部の先輩方からの期待は感じています。でも選手自体はそんなに、ことしも絶対に優勝できるという感じではないです。多分みんな自分たちが挑戦する気持ちでいると思うので、必ずしも絶対勝てるとは思っていないです。なのでそんなにプレッシャーを感じているというわけではないと思います。
徳永 阿部さんと同じで、選手はインカレはインカレで優勝したという結果で終わって、もうだいぶ前から切り替えています。それに優勝したことで、今回も思い切っていこうというかもう一回挑戦しようというプラスないい方向にインカレ優勝をつなげられていると思います。選手みんな卓球に一生懸命なので、自分にできることを精いっぱい頑張っていると思います。
鎌田 先輩方とだいたい同じで、一戦一戦を大事に戦っていくだけだと思います。
――みなさんは他校のエース級と対戦するなどチームの重要な場面で出場することが多いですが、ご自身はチームにおいてどのような立場だと思いますか
阿部 去年の春季リーグ戦とかは最初からエースの人と対戦することが多くて、負けてしまうこともありました。でもインカレでは決勝一番手で相手のエースと対戦して、自分が勝てばチームも有利になると初めて思うことができました。エースが相手でもこれからは絶対に勝ちにいくという思いに変わったと思います。
徳永 私は結構緊張したり焦ったりしたら精神的にはあまり強くないです。なのでどこの場面で出ても、思い切って試合をしようといつも思ってやっています。阿部さんみたいにエース級の選手にも次々と勝てるまではいっていないと自分で思っているんですけど、阿部さんと私も一緒にどんどんエースを倒していける選手になりたいとずっと思っています。
鎌田 私はすごく波があるというか、元気がなくなるとかちょっと相手に押され始めるとどんどん雰囲気が悪くなってしまいます。なので試合に出させていただいたときは勝つこともそうだし、チームの雰囲気も良くなるような明るい試合ができたらと思っています。
――部のHPを見たところ、皆さん抱負に『グランドスラム』を挙げていました。その達成には何が必要だと思いますか
徳永 『グランドスラム』っていう目標をみんなで言っているんですけど、相当難しいということをこの二年間で痛感しました。インカレで勝っても春季、秋季リーグ戦は負けてしまっていて、相当な力がないと『グランドスラム』は達成できないと思っています。みんなどこの大学も実力は拮抗(きっこう)しているので、今までも課題として言ってきたのですが、最後の一本や競った場面で勝ち切ることが必要だと思います。
阿部 私が入ってきてからまだ一度も春季リーグ戦で勝てていません。いつも春季リーグ戦は三つ巴とか僅差で負けてしまうことが多いので、そこからの立て直しは結構ワセダはいいと思うんですけど、最初の春季リーグ戦で優勝できた方が勢いも付くと思います。なので、まず春季リーグ戦で優勝することが一番大事かなと思います。
鎌田 私はリーグ戦の優勝を経験していなくて、その難しさを実感しています。『グランドスラム』は全部勝たなきゃ達成できないと守りの姿勢になるよりも、一つ一つ優勝を目指してやっていくのが大切かなと思います。
――今のお話にもあったように、『グランドスラム』の達成にはまず春季リーグ戦での優勝が第一歩になります。警戒している大学や選手について教えてください
阿部 多分、みんな中大を警戒していると思います。他の大学は結構誰が出てくるか予想がつくんですけど、中大は本当にみんな強くて、1年生も強い人が入ってきているし誰が出てくるか分からなくて対策がしづらいと思います。
鎌田 東京富士大で去年の3年生二人がエース級で、勢いがあると思います。その勢いに他の選手ものってくると思うので、東京富士大を警戒しています。
徳永 日体大は温馨選手が抜けたんですけど、最近東京選手権とかオープン大会とかで同じ学年の選手が勝ち上がっているのを見て、レベルアップしていると感じています。そういう選手が何人も出てきているので、日体大戦がもつれるかなと思います。
阿部 大学関係なく、新しく入った1年生に結構強い人ややりにくい人がいると思います。まだ対戦したことがないので、1年生だから思い切ってこられるというのもあるんですけど、そのときに自分が対応できるか不安があります。
――ワセダのキーパーソンは誰だと思いますか
徳永 何人も言ってもいいですか(笑)。田中さん、阿部さん、鎌田さんです。シングルスも結構みんな良くて、秋季リーグ戦が終わってからここまで結果を残してきているので、その3人かなと思います。
鎌田 最近はチームとしてダブルスを強化しているので、ダブルスに出る人がチームに流れをつくれるかどうかが大事かなと思います。
阿部 新入生でレギュラーの加藤さん(結有子、スポ1=東京・エリートアカデミー/帝京)です。まだ団体戦もあまり出たことがないと思うのですが、そこで思い切った1年生らしいプレーをしてくれたら上級生たちもその勢いに乗れて、いい試合運びができると思います。
――ダブルスを強化している理由を教えてください
阿部 リーグ戦だとダブルスが2つあって、シングルスで4つ取るのはきついというか。ダブルスで2つ、最低でも1つ取らないとチームが不利になってしまうので。他の大学も同じだと思うんですけど、ダブルスには結構力を入れていると思います。
――春季リーグ戦が目前に迫っていますが、今強化しているプレーはありますか
鎌田 リーグ戦とかで緊張して力が入ると台上のプレーが難しくなってしまうので、そういうときにちゃんと対応できるように練習しています。
徳永 私はレシーブから崩されることが多いので、レシーブからの展開を強化しています。
阿部 ダブルスだったらシングルスと違ってサーブのコースが決まっているので、レシーブのときはなるべく積極的に仕掛けられるように二人で練習しています。
――春季リーグ戦に向けて意気込みをお願いします
鎌田 チームの目標である『グランドスラム』のためにも、まず初戦を大事に一試合一試合頑張りたいと思います。
徳永 みんなで力を合わせて出る選手は自分の全力を出し切って試合をして、みんなで優勝に向かって頑張りたいです。
阿部 一人一人が全部出し切ったと最後満足できるように、全員で相手に向かっていきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 橋本望)
※春季リーグ戦、インカレ、秋季リーグ戦の三冠を達成することを『グランドスラム』と呼ぶ。
春季リーグ戦の抱負を色紙に書いていただきました!
◆阿部愛莉(あべ・あいり)(※写真中央)
1996年(平8)12月6日生まれ。148センチ。B型。大阪・四天王寺高出身。スポーツ科学部3年。右シェーク裏・粒高。マイブームは録画したドラマを観ることだという阿部選手。今季のドラマにも注目しているそうです。
◆徳永美子(とくなが・みこ)(※写真左)
1996年(平8)12月12日生まれ。158センチ。O型。福岡・希望が丘高出身。スポーツ科学部3年。左シェーク裏・裏。一人暮らしで、日々料理に取り組んでる徳永選手。得意料理は照り焼きチキンだそうです。
◆鎌田那美(かまだ・なみ)(※写真右)
1997(平9)年11月27日生まれ。156センチ。O型。北海道・駒大苫小牧高出身。スポーツ科学部2年。右シェーク裏・裏。クリームたっぷりのピーナッツパンにはまっているという鎌田選手。ピーナッツパンで英気を養い、リーグ戦でも活躍してくれることでしょう!