主力選手の多くが卒業し、大幅な戦力ダウンを余儀なくされた早大。チームをまとめる高田直騎主将(スポ4=福岡・希望が丘)は、春季関東学生リーグ戦(春季リーグ戦)の開幕を直前に控えたいま何を思うのか。周囲からの期待と、結果への不安。『意志』を受け継ぐ孤高のリーダーが、その胸中を明かした。
※この取材は4月13日に行われたものです。
「本当に良いチームだった」
――まずは昨季の個人戦を振り返っていかがでしょうか
昨年は個人戦に関してはもう少し自分の中でいけたかなというのがあって、ことしが最後の年なので大学4年間で培ってきたものを試合で出せるようにプレーしたいと思っています。
――一方、団体戦の結果を振り返ってはいかがですか
正直なところ、団体戦は去年の4年生が大きく関与していて、その結果がインカレ(全日本大学総合選手権団体の部)2位というかたちだったので、ことしから絶対的エースがいない中でチームが4点取れるかというところが勝負の分かれ目だと思います。出る選手一人一人がどういうことをしなければいけないかを主将として見ていかないといけないと思います。
――特に秋季関東学生リーグ戦(秋季リーグ戦)は優勝決定戦に持ち込みながら3位に終わるという悔しい結果となりました
自分も試合に出たのですが、いつもなら明大とそういった優勝争いをしている中で、優勝決定戦の相手が専大になったことがチーム全体に何かしらの緩みをもたらしてしまいました。明大ではないから勝てるといった安易な考えが負けにつながったのかなという思いが自分の中であったので、ことしはそういう試合もないので選手一丸となって頑張るしかないです。
――3年生であった昨季はチームの中でどんな役割を担っていましたか
上の学年は半分くらいは練習にいたので、自分は卓球に打ち込めていました。逆にいまの自分の代は就職活動で多くの選手が抜けているのですが、ことしの3年生は自分たちが来年最終学年になることを想定してやっていると思うのでそこはいいのかなと思います。
――実力者が揃っていた昨季のチームはどんなチームでしたか
4年生エース、主将、という二人がいて雰囲気もよかったですし、下の代もついてくるようなかたちが言わなくてもできていたので、そこは本当に良いチームだったと思います。
――昨年の一年間で個人として成長した部分はどのような部分でしょうか
去年の9月に山本元主将(勝也、平28スポ卒=現リコー)から主将を引き継いで、中高とキャプテンを務めていたのですが大学の主将というものはいままでと違った重みを感じました。自分の中では周りに何かを言うということが苦手で、周りの意見を尊重してチームをつくっていたのですが、最初は「これが本当にチームなのか」という指摘を頂くこともありました。自分自身リーダーというものはどのようなものかを少しずつ勉強するようになってから自分の意見をしっかり持って下に伝えるということができるようになったので、そこは成長できているのかなと思います。
――チームとして成長した部分はどのような部分でしょうか
3年生の上村(慶哉、スポ3=福岡・希望が丘)や竹岡(純樹、スポ3=青森山田)、2年生の平野(晃生、スポ2=山口・野田学園)が少しずつ自分たちのポジションを分かってきたのかなと思います。特に上の代の大島さん(祐哉、平28スポ卒=現ファースト)たちが引退するとなった時に次のトップを走るということを上村自身が自覚してきて、それがチームにも良い影響をもたらしているのかなと思います。
――一方で昨年見つかった課題はありますか
戦力的な問題で言うと、ほかの大学の方が選手も多いですしレベルも高くて、ワセダは強い選手と弱い選手がはっきりしているチームだと思います。下の選手が上の選手をおびやかすようになってくると上の選手ももっと練習しなければ、本番の試合で勝たなければという気持ちになるので、試合に出そうな選手、サポートする選手が成長してくれればいいと思います。
――昨季最も印象に残っている試合や場面があれば教えてください
自分の中ではやはりインカレですかね。自分が入ってから明大と戦って競る試合が多かったのですが、その中でも勝つということがなかなかありませんでした。インカレの準決勝で大島さんが2点取ってきてくれて上村に託されて、ベンチや観客含め全員がここでしか明大には勝てないという気持ちで臨んで、結果的に明大に勝てたのでそれは本当にチーム力が出たのではと思います。
「全員でやるべきことをやる」
主将としての意気込みを語る高田主将
――主将に就任した経緯を教えてください
自分が入った当初から、この代には自分以外にスポーツ推薦入試で入った選手がいなくて、3年生の9月過ぎた頃から主将になるという覚悟はできていました。覚悟はできていたのですが、正直なところ一番上の代に立ってチームをどうしたいかというところまでは具体的にイメージできていなかったので、そこは失敗でした。
――中高で主将をされていたということですが、主将という立場に慣れはありますか
自分の中では周りのオン、オフの切り替えを重視してきていて、下の学年ともコミュニケーションを取って楽しくやって練習や試合の時は真面目に取り組むということを中高ではやっていました。
――昨季の山本元主将はどんな主将でしたか
あんまり喋らないイメージで、実力は持っているので背中で見せるというか、プレーとかで後輩をやる気にさせるというところはうまかったなと思います。
――山本元主将を参考にしたい部分はどこですか
みんなと話す時は話すのですがあんまり話さない雰囲気で、でも自分の意志はしっかり持っていてその意志を下にうまく伝えて、自分の意志を伝えられない時は同じ学年の坂口さん(紳悟、平28社卒=東京・早実)や藤原さん(康明、平28社卒=埼玉・狭山ケ丘)、大島さんが帰ってきている時は大島さんにも伝えていて、そこは4年生のうまくできているところだなと思いました。
――理想の主将像はありますか
理想はやはり自主性を求めてやっていくチームなのですが、戦力も戦力なので全員でやるべきことをやるということも取り入れなければいけないのかなと思います。
――理想のチームを目指す上で、現在取り組んでいることはありますか
主将でもありますし、自分が率先して最後まで練習に残ることでほかのメンバーが自分もやらなければという意識を少しでも持ってくれればいいと思うので、自分がまずそういった姿を見せるのは大事だと思います。
――同期に期待することはどのようなことですか
正直いま自分以外は就職活動をしているので練習場に来られない人がほとんどです。本音を言ってしまうと早く内定決めて練習の方に参加していただけたらなとは思いますね(笑)。
――同期の中で特に仲のいい選手はどなたですか
自分はスポーツ科学部なのですが、ほかの人たちは頭で入ってきているので、自分より頭の回転が速いのでそういった人たちとはあんまりうまくいかないのかなと思って(笑)。それでも川田(雄太郎、人4=東京・日大豊山)、岩渕(幸洋、教4=東京・早実)、岩波(暁、教4=長崎・鎮西学院)とかは話がまだできるかなと思います。逆に白石副将(賢史、政経4=東京・学習院)、工藤(佑哉、スポ4=群馬・前橋育英)、本橋(侑己、社4=埼玉・西武文理)はすごく真面目で、そういうところは自分ができないのでカバーしてもらえたらと思います。
――岩渕選手がリオパラ五輪の出場を決めましたが、そのことについてはいかがですか
あいつ自身、大学に入ってきた時からそこを目指していたと思うのですが、自分にも岩渕の試合のビデオを見てどこが弱いとか課題はどこだとか、どんな練習をした方がいいかということを聞いてくるようになってから成績も少しずつ伸びてきたので、それを続けることによって今回のパラ五輪で上を目指してほしいなと思います。
――新エースの上村選手をはじめ、後輩たちはどのように映っていますか
まず上村はことしからナショナルチームの候補にも選ばれて自分の実力が上がってきているということを実感していると思うので、これからますます上にいってもらいたいと思います。ほかの選手に関してもワセダに入学して強くなる要素はたくさんあるので、そこを磨き上げていってもらえたら上村や大島さんのような選手も出ると思っているので頑張ってもらいたいです。
――先輩、後輩は普段どのように接していますか
正直なところ自分と後輩は友達みたいな関係です。特に上村とは高校から一緒なので、監督とかの前以外では君づけで呼んだり、楽しくやっています。
――上下関係が厳しかったりいうことはないのですか
高校の時からそんなに上下関係が厳しくなかったので、大学もその感じでやっています。大島さんや山本さんもある程度の上下関係はありましたが話しやすくて、きょうも練習にいたのですが普通の話ばかりしていて、普段から会話が弾みますね。
――チームのムードメーカーになりそうな選手はどなたですか
やはり上村がまず一人目に挙がりますね。エースとして最初の春リーグでどれだけやれるのかということは監督、コーチ、主将含め全員が期待しているところですが、プレッシャーになるので本人には言わず、上村自身が自覚しているのでそこは頑張ってもらいたいと思います。もう一人は新入生の硴塚(将人、スポ1=東京・エリートアカデミー/帝京)で、期待はありますね。エリートアカデミーからワセダに入ってきてインターハイなどの大きい団体戦を経験したことがないので、春リーグで初めての団体戦というのがあいつ自身どう映っているのかということが不安材料にもなりますし、逆にそれをポジティブに考えたら伸び伸びやってくれるかどうかが楽しみなところですね。
――チームの雰囲気づくりをしてくれる選手はやはり重要ですか
そうですね。特にレギュラーメンバーに関してはみんなうるさいくらい話していて、雰囲気として盛り上げてくれているのは上村、竹岡、硴塚あたりですかね。あの3人はうるさいくらい練習場で騒いだりしています(笑)。
――硴塚選手をはじめ、今季の新入生は主将から見ていかがですか
自分の学年と比較してみるとレベルも持っていますし、硴塚を筆頭にいまの1年生は練習も夜遅くまで残ってやっている光景が見られます。中窪(康喜、教1=静岡学園)、村上(奨記、社1=岩手・高田)、伊志嶺(鷹啓、政経1=沖縄・コザ)といった硴塚の下の選手3人がこれから伸びるかどうかがキーポイントになるところですかね。
「どこの大学もライバル」
リーグ戦に向けて決意を口にする高田主将
――春リーグが間もなく開幕しますが、いまの心境は
不安だらけですね。周りからは2部落ちという厳しい言葉ももらいますし、そこでほかのレギュラー選手にはそういった言葉は自分からはかけませんが、緊張感を持った練習をしておかないとそういう場面も訪れるのではないかなと思います。
――現在のチームの状態や雰囲気はいかがですか
3月に合宿があったのですが、それまではチームの状態があまりよくなくて、合宿を終えてから少しずつみんながまとまりだしてくれたと思います。上村や竹岡にも、もっと自信を持って言ってくれていいというようなアドバイスをしてもらってから自分も言えるようになったので、それが大きいですね。自分も言いたいことを言えるようになったことは成長ですし、チームもまとまってきているのではないかなと思います。
――3月の合宿ではどのようなことに取り組みましたか
いままでなかった分析という時間を設けて、他大学の選手のビデオを見て弱点や強み、いろいろな戦術を全員で知るということを取り入れました。その中でそれを一つのデータとして持って、この前の東京選手権でもビデオを撮ってそれをすべてみんなで分析するということをしました。いままでだったら大島選手や山本選手が勝って、残り何点取ったらチームが勝つという予想をしてしまうチームだったのですが、そうではなく上村でも負ける可能性はありますし誰もが勝つか負けるか分からない状況なので、弱い選手が相手の1番の選手に勝てるように、いまは考えています。
――そういった分析をした上で、ライバル校はどこになるとお考えですか
今回だとどこの大学もライバルですかね。どこというよりも、去年であれば明大、専大、中大の3校が厳しい戦いになると見ていたのですが、ことしは日大も法大も筑波大も国学院大も強いチームなので、どの試合でも全員で戦うということがチームにとって大事なのかなと思います。
――ずばり、春リーグの目標は
一戦一戦全力でやっていくということですかね。その中で高い目標を持つという意味でことしのチーム目標を優勝にしているので、チーム状況がどんなかたちであれ、上を目指すということが必要になってくると思います。
――主力が多く抜け戦力ダウンしましたが、どう補っていこうと考えていますか
ダブルスは団体戦にとってすごく大きなポイントになるので、そこを取れるように毎日練習しています。
――昨季に比べて若い選手が主体のチームとなりますが、その上で気をつけることはありますか
大島さんや山本さんのように安定感を持った選手がいまの段階で未知の領域なので分からないのですが、どんな状況でも自分のプレーができるかどうかが重要になってくると思います。
――春リーグのキーマンはどなたでしょうか
やはり自分がどういう試合をするかによって変わると思うし、主将でもありますしレギュラーでもあるので、そこで勝つことはチームにとっても大きいのではないかなと思います。
――大学生活最後の一年の抱負をお願いします
全力でやり切るということですかね。
――ありがとうございました!
(取材・編集 川浪康太郎)
春季リーグ戦の抱負を色紙に書いていただきました!
◆高田直騎(たかだ・なおき)
1995(平7)3月16日生まれ。168センチ。O型。福岡・希望が丘高出身。スポーツ科学部4年。右シェーク裏・裏。同期である岩渕選手にはプレーのアドバイスをすることもあるそうで、リオパラ五輪代表選出を自分のことのように喜んでいました。