初戦敗退となったが「悔いなし」

水球女子
TEAM 1P 2P 3P 4P
稲泳会
東女体大 14
▽得点者
塗師2、徳用、百田、渋谷

 シーズンのラストを飾るのは、水球日本一を決める大会・日本選手権だ。社会人チームも参加し、ハイレベルな戦いが繰り広げられるこの大会。稲泳会は8月の関東予選会、そして約2週間前に行われた最終予選会を激闘の末勝ち抜き、最後の一枠・8位で通過した。初戦の相手は関東学生リーグ戦などでも何度も対戦経験があり、予選2位通過の東女体大だ。日本代表に選出されている相手エース・有馬優美を警戒していたが、「何点もやられてしまい、守りきれませんでした。わかってはいたのですがやっぱり強かったです。」(百田恵梨花主将、社4=埼玉・秀明英光)と思うようなディフェンスができず、前半を3ー9で折り返す。後半に入ると守りから得点のチャンスをつくる場面も多く見られたが、シュートを決めきれず5ー14で敗戦。目標に掲げていた「初戦突破」は達成できなかった。

 試合開始約4分。ここまで積極的に相手選手に当たりにいくなど、懸命な守備を見せていた稲泳会だったが、1対1のディフェンスをかわされ東女体大に先制点を奪われてしまう。その1点で勢いに乗った相手チームは、立て続けに3点を決める。稲泳会はなかなかシュートまで持っていけない展開が続いたが、残り時間1分。塗師葵(社2=東京・藤村女)が右サイドから相手キーパーの手の届かないところにナイスシュート。待望の1点が生まれた。いい流れを第2ピリオドまで継続させたかったが、開始早々2点を奪われ、1-6と離されてしまう。この状況を打破したのは、OGの徳用万里奈(平30社卒=埼玉・秀明英光)。ゴール前で数人の相手ディフェンダーに囲まれながらもボールを押し込み、見事1点を決めた。その後も得点の機会をつくり、粘り強くシュートを放つもゴールネットを揺らすことはできず、逆に相手に2点を追加されてしまう。しかし、ここで塗師がこの日2点目を決める。「1人で決めにいったというよりみんなで取れた感じがした」(塗師)。他のメンバーが相手を引きつけたところで、離れた位置からゴール角に力強いシュートを決め、前半を3-9で折り返す。

力強いシュートを繰り出す塗師

 第3ピリオド、稲泳会は無得点に終わってしまう。GKの松岡美有(平31スポ卒=埼玉・秀明英光)が相手のカウンター攻撃からのシュートを阻止するなど、いいプレーも見られたが勝負どころで点数が決まらない。稲泳会の退水(※)による1失点など計3点を献上し、3-12と大きく離されたまま最終ピリオドを迎える。序盤から積極的にシュートを狙っていく稲泳会だったが、相手キーパーに止められるなど1点が遠い。さらにここで相手にカウンターを決められもう1点追加を許してしまう。悪い流れが漂う中、それを払拭するシュートが残り3分で決まった。今大会をもって早大水球部を引退する百田が決めた1点だ。徳用からパスを受けるとゴール右上に豪快なシュートを放った。得点直後、いつも以上の笑顔でガッツポーズ。「『決めてくる』と言ったので良かったです。」と自身の得点を振り返った。ここからできるだけ点差を縮めたい稲泳会は大量得点とはならなかったが、残り時間約1分のところで、百田がパスカットしたボールを1年の渋谷紗代(スポ1=埼玉・秀明英光)がゴール前まで瞬時に運び、華麗なシュートを繰り出し5得点目を飾った。さらに残り17秒で東女体大からペナルティーシュートを奪った稲泳会。百田が打つも、ここはキーパーに阻止されてしまう。試合終了の合図が鳴り、5―14で稲泳会の初戦敗退が決まった。

得点後に笑顔でガッツポーズする百田

 「悔いなく楽しく試合ができました」――。最後の試合を終え、百田はこのように語った。今シーズンを振り返り『日本学生選手権(インカレ)でのメダル獲得』、そして『日本選手権初戦突破』という目標はくしくも達成できなかった。しかし『全員が楽しく水球をする』というもう1つの目標は達成されたであろう。試合中、真剣に取り組みながらかつ学年関係なく声を掛け合い笑顔でプレーしている姿が印象的であった今シーズンのチームは、百田が目指してきたチーム像だ。後輩に向けては「課題を修正して、いいところは強化して勝てるチームになってほしい」とメッセージを残した。それに応えるように「(楽しんで試合をすること)プラスで勝っていけるように細かい練習をしていきたい」と塗師も来シーズンへの意気込みを語ってくれた。今シーズン達成できなかった目標は、後輩たちに託された。

  

試合後の集合写真で笑顔を見せた稲泳会

(記事 飯塚茜、写真 佐鳥萌美)

※重大なファウルを犯した選手は、20秒間ディフェンスに参加できない

  

コメント

 
百田恵梨花主将(社4=埼玉・秀明英光)

――試合を終えていかがですか

できれば勝ってあすも最終日も試合をやりたかったんですけど、負けてしまって。でもきょうはすごく楽しく試合ができたのでよかったです。引退することは少し寂しいんですけど、悔いはなく楽しくできました。

――最後の大会となりましたが、試合前に緊張などはありましたか

インカレ(日本学生選手権)の時はすごい緊張したんですけど、今回はOGさんもいて心強かったのか全然緊張しませんでした(笑)。

――きょうの試合を振り返っていかがですか

いいシュートもあったんですけど、決まりきらなかった部分が多かったです。あとはやっぱり2番の優美ちゃん(有馬)に何点もやられてしまってそこを守りきれませんでした。わかってはいたんですけど、やっぱり強かったです。

――第1ピリオドで退水を2回取られてしまいましたが、その時の心境は

早々に2個取られてしまって少し不安だったんですけど、そんなに焦りはなかったです。

――今シーズンを振り返っていかがですか

全員が思ったことを話し合える環境づくりが絶対とは言えないですけど、できたのかなと思います。最後の試合の雰囲気とかを見ても楽しそうにやってくれたので自分ではいいチームになったと思います。

――主将としてどのようなチームづくりを心がけましたか

学年関係なく、全員が楽しく気持ちよく水球ができることを心がけてやりました。

――四年間を振り返っていかがですか

この四年間で水球の面でも人間性の面でもいろいろ成長できたと思います。でも最後のペナルティーシュートを外してしまったり2つ退水を取られてしまったり(笑)。「やっぱり自分変わってないな」と思うところもあります。それをみんなが「恵梨花らしい」って言ってくれるので、そういう風に言ってくれるチームのみんなと一緒にここまでやってこれて良かったです。

――最後に後輩へメッセージを

チームづくりとしての目標は達成できたんですけど成績としての、インカレではメダルを取る、日本選手権では初戦を勝ちきることという目標は達成できなかったので、後輩たちにはこれから課題を修正しつつみんなのいいところを強化してこれから勝てるチームになってほしいです。

塗師葵(社2=東京・藤村女)

――きょうはどのような対策をして試合に臨まれましたか

きょうは何回も今シーズン当たっている東女体大との試合だったんですけど、キャプテンである有馬さんにいつもボールを取られてしまうので、何としてでも抑えたいというのをまず第一に考えてやっていました。

――実際にやってみていかがでしたか

やっぱり有馬さんには何点も決められてしまったり、個人的にも1対1で決められてしまうことが多かったので、悔しいです。

――自身としては2得点されましたが、それについてはいかがですか

1点目も2点目も1人で決めにいったというよりは、先輩がディフェンスを引き寄せてくれたり、パスも欲しいときに投げてくれたりみんなで取れたという感じがしたので嬉しかったです。

――ディフェンス面はどうでしたか

下がりがうまくいかなかっただけじゃなくて1対1で決められてしまったことが結構大きかったかなと思います。

――今シーズンを振り返っていかがですか

今シーズンは、悔しい思いはたくさんしたんですけど、試合に勝つだけじゃなくて楽しんでやろうというのを目標にしていて、それは結構達成できたと思います。来シーズンはプラスで勝っていけるように、もっと細かいところを仕上げていきたいです。

――引退される百田恵梨花選手に向けてのメッセ―ジをお願いします

卒業後に水球を続けるか、まだ迷い中ということなんですけど私たちは待っているのでぜひ、稲泳会で続けてほしいです。

――来シーズンに向けた意気込みを

今年はそれぞれいいプレーもたくさん見れたので、来シーズンはそこを生かしつつ、もっと連携プレーをうまくしていければいいと思っているので、細かいところを練習していきたいです。