藤村に惜敗するも、日本選手権を笑顔で終える

水球女子
TEAM 1P 2P 3P 4P
藤村
早大
▽得点者
齋藤3、百田2、大竹1、土屋1

 現体制で挑む最後の大会となる日本選手権が始まった。関東学生リーグ戦(リーグ戦)と日本学生選手権(インカレ)で納得のいく結果を残せていない早大がこの大会にかける思いは並大抵のものではない。「インカレでの敗戦が全員をプラスの思考に変えました。絶対に勝つという気持ちで臨んで、チーム全体のやる気が本当に高まっていたと思います」と徳用万里奈(社4=埼玉・秀明英光)は試合前の意気込みを語った。内なる闘志を燃やしながらも笑顔で入場した選手たちは、これまでの練習が形になってきたことの期待に加え、早大というチームで戦えることの幸せを感じていたという。試合開始の合図が会場に鳴り響き、選手たちは一斉に泳ぎだす。早大は経験豊富な相手に序盤はリードを許すも、第2ピリオドにテンポよく3連続得点を決めて逆転。前半を4-3で折り返した。点差を広げていきたい後半だったが、得点を思うように伸ばすことができなかった。試合終了間際、相手選手の退水(※)から攻撃の流れを呼び込んだ早大。1点差まで追いついたものの、反撃及ばず、藤村に7―8で惜しくも敗れた。

 早大ボールで始まった試合。序盤は動きが少なく、相手の出方を伺って少し消極的になっている印象を受けた。均衡を先に破ったのは藤村の選手が放ったシュート。経験豊富な相手チームのペースに飲まれて失点を重ねた早大だったが、徐々に普段通りの動きが見られるように。第2ピリオドで百田恵梨花(社2=埼玉・秀明英光)がカウンターを決めると、一気に流れは早大側へ。土屋セナ(創理1=千葉・芝浦工大柏)のゴールで同点に追いつくと、続けて大竹いこい(スポ4=東京・藤村女)が得点を決めて逆転。1点をリードして前半を折り返した。

得点した大竹はガッツポーズをみせる

 後半も勢いに乗りたい早大だったが、集中力が切れて守備が手薄になってしまった。「隙を狙われてシュートを打たれてしまったので、競っている中でのディフェンスをもっと強化するべきだった」と大竹は敗因を分析。しかし、早大のゴールを守る松岡美有(スポ3=埼玉・秀明英光)の動きが冴えていたことに加えて、相手にしっかりと当たって守備ができており、失点を最小限で抑えたのではないだろうか。悔やむべくは得点のチャンスでシュートが決まらなかったことだろう。これに対して齋藤有寿主将(スポ4=山形工)は「シューターの得点に対する貪欲さが欠けたことが、シュートに迷いを生んでしまった。」と反省点を述べた。試合終了間際、小泉まお(教3=東京・中大付)から逆サイドでパスをうけた齋藤がゴールすると、再び流れは早大に。相手選手の退水から攻撃のチャンスを得るも、早大が放ったボールは相手キーパーに弾かれてしまう。あと一歩、早大の反撃は届かなかった。試合終了の音が会場に鳴り響く――。藤村に7-8で惜敗し、早大の日本選手権への挑戦は終わった。

力強い齋藤のシュート

 「最高のチームでした」と選手たちは口をそろえる。大久保映見(人4=大阪・茨木)は「早大は相手を思いやることのできる優しいチームで、それが最後はプレーにも結び付いてきた」と感じていたという。この大会で4年生は引退となり、早大水球部は次の代へと受け継がれる。新たな主将も発表され、役目を終えた齋藤は「早大という伝統もあり、誉れ高い大学で水球ができたことは本当に幸せだった」と早大での水球生活を振り返ると同時に、後輩に向けて「過程も大切にしつつ、結果も出せるような心身ともに強いチームになってほしい」と思いを託した。引退する4年生にとって、そして来季からの早大水球部を担う世代にとって、この1年間の水球生活は今後の支えとなるに違いない。

男子選手も交えた笑顔の集合写真

※重大なファウルを犯した選手は、20秒間ディフェンスに参加できない。

 

(記事 上野真望、写真 井嶋梨砂子)

コメント

  

齋藤有寿主将(スポ4=山形工)

――今季最後の大会となりましたが、どのようなお気持ちで臨まれましたか

優勝を目指していたのですが、インカレで初戦敗退した悔しい思いがあったので、その試合で発揮できなかった力をしっかりと出すことを考えていました。

――今回の試合を振り返って、いかがですか

いつも通りプレーすることの難しさを感じました。まだまだ発揮できていなかった部分も多いのですが、相手チームがベテランなので、経験の差が出てしまったと考えています。

――これで引退となりますが、いまのお気持ちは

代替わりをして、新キャプテンが発表されて、水球生活が終わったのだなとじんわりと実感しています。

――主将として、ことしのチーム作りで心がけていたことは何でしょうか

歴代のチームと比べて、スタートの時点では未知数の能力を秘めた選手が集まっていて、チームの大枠ができていない状態での代替わりでした。のびしろがすごくあるチームだったので、下級生を伸ばして、どこまでチームが成長できるかを考えていました。技術面でも色々あったのですが、水球をチーム全員で楽しむことを一番に心がけていました。

――どのようなチームでしょうか

全員が楽しく水球をすることができて、このチームが大好きだと胸を張って言うことができます。結果は伴わなかったですが、チーム愛はどこにも負けません。実力も、大会で強豪と接戦を演じることができるまでに成長しました。自分たちが取り組んできたことは間違ってなかったとチームを振り返って思います。

――4年間を振り返って、早大での水球生活はいかがでしたか

技術力のすごい、本当にレベルの高い先輩方の背中をずっと追い続けてきて、優勝はできなかったものの、毎年2位、3位と結果は残してきたので、そういった面では自分たちの代でも集大成として結果を残したかったという思いもあります。早大という伝統もあり、誉れ高い大学で水球ができたことは本当に幸せでした。周りの人に感謝しています。いろんな部活の方から刺激を受けてきたので、すごく視野を広げることもできました。この4年間を今後の人生につなげていきたいと思っています。

――後輩に向けてメッセージをお願いします

この1年で、選手たちはある程度成長したとは思うのですが、まだまだ伸びしろがあると思っています。スポーツは結果が求められてしまいます。ことしは結果が伴わなかったのですが、過程も大切にしつつ、結果も出せるような、心身ともに強いチームになってほしいと思います。

大久保映見(人4=大阪・茨木)

――きょうは今季最後の試合となりましたが、どのようなお気持ちで臨まれましたか

私はこの試合をすごく楽しみにしていました。というのも、これまで積み重ねてきたことがどんどん形になってきているチームの状態だったので、その成果がいかに発揮されるか楽しみでした。皆が良い心持で臨むことができた試合だったと思います。

――接戦となりましたが、試合を振り返っていかがですか

最初は相手のペースに飲み込まれてしまった、早大らしい水球ができていませんでした。相手の動きの様子見をしてしまったのが良くありませんでした、最初からカウンターをもっと狙っていくべきだったと思います。後半は自分たちがペースをつかむことができたのですが、チャンスで得点を決めきることができていませんでした。そういったことが敗戦につながってしまったのだと思います。

――最上級生として後輩の活躍などを見てこられましたが、早大はどのようなチームでしたか

上が引っ張っていくのはもちろんなのですが、後輩がすごく支えてくれたチームだったと思います。早大は人数が少ないからこそ、一人一人の関係がすごく深くて、お互いのことをすごく知ることができました。相手を思いやることのできる優しいチームでした。それが最後はプレーにも結び付いてきたと感じていて、精神的にも技術的にも後輩の存在は大きかったです。

――これで引退となりますが、今のお気持ちをお聞かせください

毎日のように会ってきたメンバーと会えなくなるのはすごく寂しいです。自分はあまりプレーで貢献できなかったことが悔しいのですが、チームとしても目標を達成できなかったことが悔しいです。それでも、水球を早大でやってきて、すごくたくさんのことを学ばせていただけたし、充実した4年間でした。最高のチームだったと思いますし、チーム全員がそう言って終わることができたので、すごく良かったと思っています。

――最後となりますが、後輩に向けてメッセージをお願いします

すごく多くの人に支えられて水球ができていることを忘れずに、これからも頑張っていってほしいと思います。

大竹いこい(教4=東京・藤村女)

――インカレからの1カ月は、どのような調整を行いましたか

インカレではディフェンスが上手くいかず永久退水になってしまったので、脚の強化をして、退水をとられないようにすることを意識して自分は練習に取り組んでいました。

――チームの雰囲気はいかがでしたか

インカレでは初戦敗退というのがあったので、日本選手権では初戦を突破しようということで、チーム一丸となって雰囲気を盛り上げていくことができました。

――今回の試合は競る展開となりましたが、振り返っていかがですか

競っていたのですが、私自身はわりと冷静で焦りはなく、どこかで勝てるのではないかという気持ちはありました。でも、後半で隙を狙われてシュートを打たれてしまったので、競っている中でのディフェンスというのを、もっと強化しておくべきだったと思います。

――きょうで引退となりますが、早大での水球生活を終えてお気持ちはいかがですか

辛いこともたくさんあったのですが、それを上回る楽しさがあったので、早大で水球をやれて良かったと思いました。

――4年間の中ではケガも経験されましたが

ケガで手術をして、実際に水球をできたのは4年間の中で2年間ぐらいだったので、寂しいとは思います。でも、手術してからのリハビリ中も、練習はできないけれどもプールサイドから見て、みんなと一緒にワセダを作っていくことができたので良かったと思います。

――最上級生としての1年間はどのような意識で臨まれましたか

今まではどこかで先輩に甘える気持ちがあったのですが、もう先輩は卒業されて、今まで先輩に引っ張ってもらっていた部分を自分が担わなければならないという自覚がありました。就活などで練習できない日もあったのですが、自分がいる時はチームを盛り上げて、後輩が悩んでいる姿を見たら積極的に声をかけていき、チームを作っていこうと意識していました。

――ことしのチームはどんなチームでしたか

和気あいあいとしていて、良い意味で上下関係の無い、フラットでものを言い合えるチームだったと思います。

――これから後輩にはどのようなことを期待されますか

この悔しさをバネに、来年こそは初戦突破で創部初のベスト4までいってほしいなと思います。

徳用万里奈(社4=埼玉・秀明英光)

――インカレからの1カ月、チームの雰囲気はいかがでしたか

インカレで負けてしまったのですが、そこから全員がプラスの思考に変わりました。自分のために、そしてチームのために絶対に勝とうという気持ちと、このチームでやりたいという気持ちを強く持って、楽しく練習に取り組んでいました。負けてしまったからこそ、思いが強くなった部分もありますし、このチームであと1カ月プレーできるという喜びと、チームのために勝ちたいという気持ちがありました。チーム全体のやる気が本当に高まっていたと思います。

――今回の試合は競る展開となりましたが、振り返っていかがですか

相手はOGの方がたくさんいるチームなので、経験の差が出てしまったとは思います。水球の競技の面では、負けてしまった以上敗因が必ずあると思いますが、みんな一人一人がよくやってくれていたと思いますね。挙げるとすると後半、ディフェンスの方で集中力が少し切れてしまったことです。疲れも相まって、周りが見えなくなっていたと思います。

――このメンバーで戦うのは最後となりましたが、今のお気持ちはいかがですか

寂しいです。私は競技を続けるので、稲泳会に残って後輩のサポートをこれからしたいと考えています。後輩の成長を見ることができるのはひとつの喜びなのですが、ずっと一緒だったメンバーと、今までは毎日顔を合わせていたのにそれが無くなると思うと悲しいですね。

――ことしは世界大会が続き、チームを離れることも多かったかと思いますが、最上級生としての1年間はいかがでしたか

あっという間でした。もちろん、自分自身のスキルアップになるシーズンではあったのですが、チームを度々離れて、チームに戻るとしても短期間だけという生活が続きました。チームでの練習時間が足りなかったので、噛み合わない部分もありました。このチームには迷惑をかけてしまったのが申し訳なかったです。それでも、温かく迎えてくれるチームが大好きです。インカレが終わってからの1カ月間しかみっちりとできる期間が無かったので、もっとやりたかったというのが率直な感想です。

――ことしのチームはどんなチームでしたか

最高でした!本当に、相手を思いやる力があるチームだと思います。自分のためだけでなく、チームメイトのために頑張りたいと全員が思えている素晴らしいチームでした。

――主将を務められた齋藤選手への思いはありますか

本当に頑張ってくれたと思います。最初はチームがまとまらず、困難にぶつかることもあったのですが、そういった中でチームの大黒柱として頑張っていました。有寿の姿を見て後輩も強くなれたと思います。

――後輩の活躍はどうご覧になりますか

一番力が出せるのは、4年生のインカレや日本選手権の時だと思います。そう考えると、まだまだ伸びしろがたくさんあります。今もすごくチームに貢献してくれていて、後輩がいたから私たちも成長することができたのですが、後輩にとっては4年生として出る大会が一番輝ける舞台だと思うので、それに向かって頑張ってほしいです。のびしろが本当にあると思うので、大いに期待しています。

――最後に、後輩へのメッセージをお願いします

目標はこれから後輩たちが考えていってくれるので、口出しするようなことでは無いのですが、インカレや日本選手権での優勝を最大の目標にしてほしいと思いながらも、まずは各々が人間的に成長できる、素晴らしいチームをつくっていってほしいと思います。