以心伝心のプレー
「自分の中で満足しきっている試合」。自身の引退試合を振り返り、女子部主将を務めた小西晃代(社=埼玉・秀明英光)はそう語った。昨年の日本学生選手権(インカレ)での3位決定戦。ワセダは第3ピリオドが終了した時点で5点のビハインドという苦しい状況にあった。普段の試合ならそうそうひっくり返すことのできない点差だ。しかし、そこから試合の空気は大きく変わる。点差にひるむことなく攻めの姿勢を貫き、意地のプレーで得点を重ねて同点へ。そしてペナルティーシュート戦に持ち込み、プレッシャーをはねのけて見事な勝利を手にした。その歓喜の輪の中心には、努力を重ねチームをけん引した小西と田中寧葉(スポ=埼玉・秀明英光)の姿があった。盟友である二人が一緒に戦い続けた4年間とは――。
歴史も浅く部員も少ない女子部であったが、『自主的に自分たちがやりたい水球』をするワセダのチームは、二人の目に魅力的に映った。人数が少ないことでできない練習もある。しかし、それを言い訳にしていては試合に勝てるチームになれないということはよく分かっていた。試合につながる練習とは何か。二人は競技と向き合っていく中で水球における『発想力』を磨いた。
チームの大黒柱として尽力した小西
そして迎えた最終学年。「アイコンタクトで意思疎通ができるし、思っていることも十分に理解できる」(田中)。7年目の付き合いとなった二人は、二人三脚で勝てるチーム作りに励んだ。小西が主将としてチームを率い、田中が全体を客観的に見る役割を担う。就職活動で小西がチームから離れる時期もあったが、田中がメンバーをまとめあげた。小西にとって、互いを必要とし助け合うチームは『家族』と言えるまでの存在になっていった。4年生の気持ちに応えるように後輩たちは各々が強い責任感を持ち、学年を越えて意見を言い合えるようになった。その成果はインカレでの『全員水球』にも現れていたことだろう。二人の間にある絶対的な信頼が学生主体の水球を可能にし、チームを強くしたのだった。
小西と共にチームの士気を鼓舞した田中
「結果がものを言う世界だけれども、何よりも水球を楽しんでほしい」(小西)。後輩たちの着実な力の伸びを感じながら、二人は次のシーズンへの期待を語った。インカレでは劇的な勝利を収めたものの、かなわなかった学生日本一の夢。その目標は後輩たちに託された。大学水球を通じて様々な価値観に触れた経験を糧に、小西と田中は新たな一歩を踏み出す。
(記事 井嶋梨砂子、写真 井口裕太)