善戦するも強豪の壁を破れず インカレは準優勝で閉幕

水球女子

第100回日本学生選手権水泳競技大会水球競技 8月31日 東京アクアティクスセンター

TEAM 1P 2P 3P 4P
早大
秀明大 31
得点者 奥田2、杉本2、鈴木2、阿部

 水球女子が、7年ぶりに日本学生選手権(インカレ)決勝の舞台に立った。30日の準決勝で、東女体大を相手に劇的な逆転勝利を果たした早大。前半にはリードを許しながらも、第4ピリオド(P)で一挙5得点の猛攻に成功し、決勝進出を決めた。そんな悲願の先で早大を迎え撃ったのは、昨年度王者・秀明大だ。関東学生リーグ戦では7連覇中と圧倒的な強さを見せる強豪校を前に、第1Pから3点を奪う。だがその後は秀明大のカウンターアタックについていききれず、大量失点。早大も要所をモノにして追加点を挙げるが、仕留めることはできない。強豪相手に7得点と善戦し、3日間の幕を閉じた。

表彰式にて、銀メダルを手に笑顔を見せる選手一同

 試合開始を知らせるホイッスルが鳴ると、秀明大がセンターボールを取り攻撃をスタート。早速強みであるカウンターアタックを展開され、開始3分で3連続得点と攻め込まれる。その相手ペースを打破すべく、まずは3分半。鈴木杏梨(スポ2=東京・白鵬)が左サイドからゴール前の井上舞(スポ3=京都・鴨沂)にパスを出すと、右サイド深くを陣取っていた奥田麗主将(スポ4=東京・藤村)に相手の不意をついて展開。余裕を持ってループシュートをコントロールし、ゴールの角を突いた。続いて5分、杉本華音(スポ3=千葉・秀明八千代)が左サイドから右へと大きくパスを出した先には、またも奥田。力強く遠距離弾を決めてみせ、チーム内連続ゴールで歓声を呼んだ。さらに6分には、杉本がミドルシュートを放つと、枠に当たりながらもネットに吸い込まれ、3点目を生む。秀明大の的確なディフェンスに苦しみながらも、少ない得点機をモノにし、3ー8で第1Pを終えた。

連続得点でチームを鼓舞した奥田主将

 第2、3PにはGKに木口京子(スポ3=京都女)が投入された。今季の試合では甘庶乃亜(スポ1=神奈川・桐光学園)と2Pずつを分担するパターンが多かったが、昨日の準決勝での出場機会はナシ。『悔しい思いをしたので、実力を出しきりたかった(木口)』という言葉通り、早大退水のピンチで打たれたループシュートを見事に阻止。その後も2分半までを無失点で切り抜けた。こうして守備で作った良い空気の中、オフェンスでも佐野陽(スポ1=山口・西京)が果敢にミドルシュートを狙うなど、食らいついていく。そこで2分、奥田がゴールに迫っていた鈴木にボールを入れると、相手DFにピッタリと付かれながらも、ゆるやかなループシュートを巧みに投げこみ得点した。一方秀明大は、カウンターからの速攻を自在に展開し、ゴールを量産。また早大のオフェンスに対しても、後方からパスをカットするなどして瞬く間にターンオーバー。早大はなかなかスピードについていくことができない。それでも7分には木口がペナルティースロー(PS)を止めるなど力を尽くしたが、4ー13と差を開かれて前半を終えた。

懸命な声出しも印象的だったGK木口

 反撃の契機を見つけたい後半。第3P最初の秀明大の攻撃は、GK木口が阻止。だが縦横無尽にボールを動かすスピードについていけず、その後は30秒間隔で得点を許す時間が続く。早大は、手坂心乃(スポ4=千葉・秀明八千代)や鈴木を中心として円形にパスを回し、ゴール前へと入れる形は作れているものの、高さのあるDFを前にコントロールが叶わない。ようやく得点をつかめたのは6分半。杉本がミドルシュートを打とうとした際に、相手ファウルが取られ退水(※)に。その数的有利を活かし、右サイドから阿部紗也香(スポ4=千葉・芝浦工大柏)がゆっくりとゴールに接近。ゴールラインすれすれのループシュートを決めた。勢いに乗って7分には、杉本がセットプレーに持ち込みミドルシュート。これがゴールポストに弾かれると、めげずに2度目のシュートを狙う。そのプレーが相手の退水につながり、DFが空いた右サイドの鈴木へパスをあげると、水面を滑らせるシュートを放ちゴールを突いた。こうして終盤に意地を見せるも、6ー22と大幅リードを許すPとなった。

柔軟にパスを出す鈴木

 全力を出しきれるか、最終第4P。開始早々にPSを与えると、インターセプトからのターンオーバーやカウンターアタックを食らい、失点を重ねた。攻めるしかない早大は、積極的にミドルシュートを狙うもののゴールからは外れてしまう。そこで4分、杉本がコート6mライン付近の遠めの位置からバウンドシュートを決めてみせた。4分半にも秀明大退水のチャンスでタイムアウトを取り、敵陣で形を整えて攻撃をスタートしたが、シュートには至らない。1Pから戻ってGKに入った甘庶にも好セーブが見られたが、反撃の糸口は見つからないままに試合は終了。ブザーと共に、秀明大サイドの喝采(かっさい)が沸き起こった。

あらゆる角度からシュートを狙った杉本

 大差をつけられての敗戦となったが、『自分達が楽しむことを一番にした(鈴木)』という言葉そのものの晴れやかな表情でプールを去った選手達。それもそのはず。8年ぶりのインカレ決勝進出という新たな部の歴史を作り、さらには第100回準優勝校として大会の歴史にも名を刻んだ3日間となった。またGK甘庶は1年生ながら、大会を通してのベストゴールキーパー賞にも選出。来季以降にもつながる、ポジティブな要素を得ることができた。そして、選手達の目はすでに先を見据えている。次戦は今月21日から始まる、日本選手権本戦進出をかけた最終予選会だ。今大会での飛躍をさらなる大舞台にぶつけられるか。「4年生の引退を最終予選にしないように」(木口)ーー。奥田主将体制での残り少ない時間を、噛みしめて戦っていく。

(記事 中村凜々子 写真 河邨未羽)

※重大なファウルを犯した選手は、20秒間ディフェンスに参加できない。

コメント

GK木口京子(スポ3=京都女)

ーー2Pからの出場でした。1Pを見て、ご自身としては何を意識して試合に入られましたか

 昨日の試合に出られなくて悔しい思いをしたので、インカレという大きな大会で自分の実力を出しきりたいというのが大きかったです。2Pから行くとは思っていなかったので、準備はできていなくて、考える間もなく入ってから頑張るという感じでした。

ーーミドルシュートに対しての好セーブを連発、さらに3Pではペナルティースローも止められました。ご自身のプレーを振り返っていかがですか

 シュートの練習はキーパーが考えているのですが、ミドルが苦手だったこともあってフィールダーのみんなに沢山打ってもらっていたので、その成果が出たことが嬉しかったです。

ーー3日間のインカレ全体を振り返って、今のお気持ちを教えてください

 3年なのでどうしても来年のことを見据えてしまうのですが、来年はより大学同士の実力が拮抗(きっこう)したインカレになると思うので、今年よりも良い色のメダルを取れたらいいなと今は思っています。

ーー来年のインカレに向けた想いが既に芽生えているんですね

 そうですね。あまり試合に出ることができなかったので、実力を認めてもらってより多くの試合に出ることで、自分の中で納得した上で良い色のメダルを取れたら良いなと思います。

ーー最後に、来月の日本選手権最終予選に向けた意気込みをお願いします

 最終予選はより多くの戦術を使ったチームが出てくるので、対応力が重要になると思います。対応力は自分の強みだとも思っているので、必ずそれを活かすことで、みんなで勝ちきって、4年生の引退を最終予選にしないように、日本選手権に出られるように、頑張ります。

 

 鈴木杏梨(スポ2=東京・白鵬)

ーー昨日の劇的な勝利を経て、試合前はチームでどんなお話を共有しましたか

 今シーズンを通して、自分達が練習してきたオフェンスとディフェンスのパターンを全てやろうという話をしました。自分達が楽しむことを一番に頑張りました。

ーー相手のディフェンスがかなり厳しい中で、何を意識しながら攻撃されていましたか

 攻撃では、向こうの強みがカウンターなので、それを誘わないようオフェンスの終わり方に気をつけました。あとはパスミスをしないことです。私は右サイドなので左サイドが作ってくれたチャンスに対して、丁寧にパスを投げるようにしていました。

ーー2Pでは見事な得点シーンもありました。あの場面の振り返りをお願いします

 自分の強みである泳ぎを活かして、相手と同じラインに並んだ時からスピードを上げて、得点につなげられました。練習してきたことを、決勝という舞台で出せてすごくよかったなと思います。

ーー今年のインカレ全体を振り返っていかがでしたか

 4年生がとても強かったなという風に思っています。昨年も自分が1年生だったので、「やりたいことをやっていいよ」と自由にプレーさせてもらうことは多かったのですが、今年はさらに4年生が主体的に戦術を決めてくれたり、自分達に声をかけてくれたりして、本当に4年生がかっこよかったなと思います。

ーー来年のインカレはご自身が上級生になられますが、4年生の姿を見てそこに対する気持ちも生まれましたか

 はい。まだ確定していないですが、何人か受験を考えてくれている子がいるんですね。私の代は1人だけですが、その子達が思いきりプレーできるように、これまでの先輩方が私たちに用意して下さった環境を私も作りたいなと思います。

ーー最後に、来月に迫っている日本選手権最終予選に向けた意気込みをお願いします

 OGさんもいたりだとか、学生だけとはまた違う色々なチームと対戦します。相手は一段と強くなるので、その中でも自分の強みを活かして、目標である日本選手権1回戦突破を達成したいなと思います。