第100回日本学生選手権水泳競技大会水球競技 8月30日 東京アクアティクスセンター
TEAM | 1P | 2P | 3P | 4P | 計 |
早大 | 4 | 2 | 4 | 5 | 15 |
東女体大 | 5 | 4 | 3 | 1 | 13 |
得点者 | 杉本7、奥田4、阿部2、井上2 |
「まだ夢なんじゃないかと(奥田麗主将、スポ4=東京・藤村)」ーー。水球女子が8年ぶりとなる日本学生選手権(インカレ)決勝進出を果たした。
29日に1回戦を制した早大は今日、東女体大との準決勝に挑んだ。東女体大はメダル常連校であり、早大も長年その壁に苦しめられてきた。だが今年6月の関東学生リーグ戦(リーグ戦)において接戦を制し、実に10年ぶりの勝利をもぎ取った。こうして迎えた因縁の対決は、第1ピリオド(P)からシーソーゲームに。ところが第2Pで3連続ゴールを許し、一時4点を離される。それでも着実に従来のプレースタイルを保ち続けると、最終P残り4分から勢いが爆発。一挙5連続得点の大逆転劇を演じ、シーズン目標の1つであるメダル獲得を確定させた。
円陣を組む選手一同
早大がセンターボールを取って攻撃権を得ると、早速阿部が相手の退水(※)を誘ってチャンスメイク。得点には結びつかなかったが、ここから両者カウンターオフェンスを仕掛け合い、ハイペースに試合が展開される。2分に先制を許したが、すかさず2分半、相手の退水から数的有利を得ると、奥田がループシュート。これはGKに弾かれるも、阿部紗也香(スポ4=千葉・芝浦工大柏)がこぼれ球を拾いきり、チーム初得点を生んだ。3分にはペナルティースロー(PS)を許すも、15秒後には井上舞(スポ3=京都・鴨沂)が積極的にドライブを仕掛けて1点を返す。さらに4分半の失点に対しても、5分の阿部のPS、5分半の井上のゴールで反撃。まさに一進一退の攻防を繰り広げ、4ー5で第1ピリオド(P)を終えた。
ゴール前で多くのチャンスを演出した阿部
続く第2P。東女体大にセンターボールを取られシュートを許したが、GK甘庶乃亜(スポ1=神奈川・桐光学園)の好セーブで切り抜けた。しかしオフェンスでは相手の鋭いDFを前にパスを通せず、シュートに至らない時間が続く。さらに、守備においてもファウルや退水を取られる場面が増え、相手を思い通りに動かせてしまい6分までに3連続失点。厳しい状況の中で6分半、阿部が大きく左に展開したボールを、杉本華音(スポ3=千葉・秀明八千代)が鋭いバウンドシュートでゴールに突き刺す。さらに残り7秒には、奥田が放った遠距離弾が見事にネットを揺らした。こうして粘り強く食らいついたものの、6ー9とリードを広げられて前半を折り返した。
フル出場ながら見事な集中力を見せたGK甘庶
なんとか得点を返していきたい第3P。まずは開始1分、奥田がミドルシュートでゴールを割った。2分に失点するも、その直後の攻撃でカウンターを狙った阿部が相手のファウルを誘い、ペナルティースローの権利を得る。これはゴールの枠に弾かれてしまったが、諦めずボールを追いかけプレーを再開。再びペナルティースローに持ち込み、杉本が決め直した。その後は、圧のあるプレスディフェンスとGK甘庶のスーパーセーブで失点を最小に抑える一方で、ボールをゴール前に運べない時間が続く。そんな中5分半、阿部が得意のスタイルで右サイドから強くドライブをかけ、杉本がペナルティースローの形で得点に結びつけた。さらにラスト15秒には、手坂心乃(スポ4=千葉・秀明八千代)が中へと入れたボールを、杉本が瞬く間にゴールに滑らせた。こうしてこのPは勝ち越し、トータルスコアは10ー12。最終Pに逆転の望みをかけた。
チーム内4連続得点で逆転勝利の立役者となった杉本
2点を追う早大は、第4P開始直後に痛恨のPSを与えてしまう。さらに敵陣ゴールになかなか踏み込めず、もどかしい時間が続く。だがここから、『(3Pのシュートが)自分の中で大きかった』と振り返る杉本が、反撃への光をともした。まずは4分に得点。直後の攻撃では、DFに付かれながらもゴールの隅を突く巧妙なミドルシュートを決め、点差を1に詰める。そして3Pまでの交互に得点し合う展開を封じるべく、『ここしっかり守っていこう!』と声を掛け合い、気迫のDFで追加点を許さない。守りで勢いをつける中、5分、相手退水のタイミングで早大がタイムアウトを取り、敵陣で陣形を整えゲームを再開。奥田と鈴木でパスを送り合いながら、最後は奥田がミドルシュート。これが値千金の同点弾となった。押せ押せムードの中、直後の攻撃でカウンターオフェンスを繰り広げたのはまたしても奥田。自らループシュートを決めきり、ついに連続得点での逆転に成功した。この時点で残り時間は1分。相手の最後の攻撃時間では、残り7秒で杉本がパスをカットして勝利を確信させた。試合終了のブザーに合わせ杉本が高々と相手ゴールに放ったボールが、見事ネットを揺らした驚きも相まって、プールは歓喜の渦に包まれた。
遠距離でのミドルシュートを決めきる奥田
試合後には、多くの選手が安堵がこみ上げたような表情で涙を浮かべていた。リーグ戦では1年生の積極起用を意識するなど、組織力強化に力を注いできた早大。シーズン序盤から『今年のチームは強いです』と話す姿が印象的だったが、そうした選手一人ひとりのチームへの信頼が体現され、歴史的勝利という結果につながったのだろう。いよいよ明日は決勝。相手は絶対女王・秀明大だが、『ジャイアントキリングを起こしたい(杉本)』とチャレンジャーとしての気合は十分だ。やっとつかんだ夢舞台へ、果敢に挑む勇姿に期待したい。
試合終了直後。主将・奥田の元に駆け寄る選手達
(記事、写真 中村凜々子)
※重大なファウルを犯した選手は、20秒間ディフェンスに参加できない。
コメント
奥田麗主将(スポ4=東京・藤村)
ーー激闘を終えての率直なお気持ちを教えてください
まだ夢なんじゃないかと思ってしまいます。
ーー試合終了後は涙も見えました。勝利が決まった瞬間はどんな想いでしたか
もちろん負けてしまう想定もしていましたが、それ以上に、勝ったらどんな気持ちになるのだろうという想像をしていたので、何度も何度も脳裏に浮かべていた映像が目の前に広がって、感極まってしまいました。自分達でつかんだ結果に対して嬉しい気持ちと、みんなに「ありがとう」という気持ちです。
ーー2Pでは一時4点を離される場面もありましたが、それでも全員で粘り強くプレーされていました。主将として何かお声がけもあったのでしょうか
情けない話なのですが、私は前半調子が悪かったので、個人的にテンションが下がってしまっていました。その分同期の(阿部)紗也香が、ずっとずっとみんなに声をかけてくれたおかげです。
ーー個人のプレーとしては、後半の方がより攻撃的にシフトされていた印象でした。どんな動き方や立ち回りを意識されていましたか
いつも通りのプレーをするという意味では、アシストしつつチャンスがあったらシュートを打つという役回りでした。ただ前半はチャンスで決めきれない場面がいくつかあったりなど、自分の調子が上がらなかったことが反省でした。後半はもう、気合いでしたね。
ーー同点、さらに逆転を決めた連続シュートについて伺います。改めてあの場面を振り返るといかがですか
正直あまり覚えていなくて(笑)。どちらのシュートも打った瞬間は入っていないと思ってしまったのですが、気がついたらみんなが「わー!」となっていて、それを見てよかったと思うという感じでした。話してみても全然思い出せないですね。
ーー最後に、明日の決勝に向けたチームとしての意気込みと、そしてご自身の最後のインカレの試合にかける思いを教えてください
チーム面では、この1年間通してやってきたことを最後まで出しきりたいです。やってきたことというのは、一人一人の個性や長所を100%出しきる、そしてそれを周りが手伝うというチームづくりをしてきたので、明日もそれを徹底したいです。個人としては、今日の試合は円陣の時に『楽しくなくてもいいから絶対に勝ちに行きたい』と話していました。なので明日は最後、全力で楽しみたいなと思います。
杉本華音(スポ3=千葉・秀明八千代)
ーー試合前はどのような話をチームで共有されましたか
学生リーグでも2点差で勝っていたことでいい雰囲気ではあったので、いつも通り頑張ろうと話していました。あとは勝つ夢を見たという選手も何人かいて(笑)、そのような形になってよかったです。
ーーご自身の攻撃面について伺います。チーム最多の7得点となりましたが、全体を通して強くマークされている印象でした。その中で何を意識しながらプレーされていましたか
私がダブルマークに付かれた時などは、なるべく上の選手がシュートを打てるように、邪魔にならない位置に移動するようにしていました。あとはスペースをうまく使うことも意識していました。
ーー4Pでの同点を勢いづけたのが杉本選手だったと思います。改めて後半の追う展開の振り返りをお願いします
左サイドからの点数が多かったと思います。1回目の、中に入ってのシュートから流れを作ることができた気がしていて、その次の1対1でもシュートを打てたことが自分の中で大きかったです。
ーー最後に明日の決勝に向けて、意気込みをお願いします
普段通り着飾らずにやって、できればジャイアントキリングを起こして勝ちたいです。