TEAM | 1P | 2P | 3P | 4P | 計 | |||||
慶大 | 1 | 0 | 1 | 4 | 6 | |||||
早大 | 2 | 4 | 4 | 3 | 13 | |||||
▽得点者 田中4、樋爪4、土橋(玄)2、土橋(奏)、岡田、都田 |
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第92回早慶対抗水上競技大会(早慶戦)が、今年も東京辰巳国際水泳場で開催された。新型コロナウイルス感染拡大防止のために無観客で行われ、独特な雰囲気の中での試合となった。早大は2017年以来優勝から遠ざかっており、『奪還』のスローガンの下、年に一度の戦いに挑んだ。第1ピリオドから2点を先制すると、第2、3ピリオドでも主導権を握り、得点を重ねる。第4ピリオドでは相手の反撃に遭うものの、落ち着いた試合運びでリードを守り切った。最終スコアを13-6とし、3年ぶりの早慶戦優勝を果たした。そしてこれが早慶戦通算50勝のメモリアル勝利となった。
先制したのは早大だった。開始2分、カウンターから数的優位を作ると、左サイドでパスを受けた都田楓我(スポ1=鹿児島南)が、自ら中央に切り込みシュート。ボールはゴール右下に突き刺さり、貴重な先制点となった。1年生が得点を挙げ勢いづいた早大は、開始4分、フリーでボールを受けた土橋奏太(教2=長崎西)が1対1で落ち着いてシュートを放ち、見事追加点を挙げた。田中要主将(スポ4=埼玉・秀明英光)も「高いレベルのパフォーマンス」と評価した下級生の活躍もあり、2-1で第1ピリオドを終えた。続く第2ピリオドは、早大が流れをつかむ。第2ピリオド3分、前線でボールを拾った樋爪吾朗(スポ3=埼玉栄)。ディフェンスをものともしない力強いドライブで一気にゴール前へ抜け出すと、相手キーパーとの駆け引きからシュートを放ち、チームに3点目をもたらした。早大は続けざまに田中などのゴールで3連続得点を奪い、大きくリードを広げた。攻撃で相手を圧倒する一方で、守備も昨年序盤に大量得点を許した反省を生かし、中央の守りを固める。1人に対して2人で対応し、ゴールから離れた選手にシュートを打たせるという作戦で、慶大・田中博也を中心としたFW陣に仕事をさせなかった。このピリオドを無失点に抑え、6-1で試合を折り返した。
入部後初の公式戦で先制点を決めた都田
第3ピリオドに入っても早大の勢いは止まらない。第3ピリオド2分、相手の退水(※)を生かし一気に攻め上がると、パス回しでディフェンスを翻弄(ほんろう)。樋爪の冷静に狙い澄ましたシュートは、この日2点目のゴールとなった。1点を追加して迎えた3分、早大は退水からピンチを招き、遠目からシュートを放たれるが、シュートはバーを直撃し、失点には至らず。早大の流れを感じさせる場面もあり、10-2と8点リードで第3ピリオドは終了。そして迎えた第4ピリオド。早慶戦2連覇中の慶大が最後に意地を見せる。第4ピリオド1分、慶大にペナルティスローを与えると、これを確実に決められ7点差に。その後も、タイムアウト直後のサインプレーを止められず、じりじりと追い上げられる。しかし早大は焦ることなく、樋爪のゴールなどで再度慶大を突き放した。終盤、慶大に2連続得点を許すが、反撃もここまで。最終スコア13-6で、3年ぶりの悲願達成となった。
この日チームトップタイの4得点を挙げた田中
早大は今シーズン初の公式戦ながら、「自分たちのペースで試合を進めることができた」(樋爪)との言葉通り、終始安定した試合運びで勝利をつかんだ。早大は6人にゴールが生まれ、特に田中と樋爪はともに4得点を挙げるなど、調子の良さをうかがわせた。しかし、中嶋孝行監督(平13教卒=福岡工)は「守れていた印象はありますが、まだまだ味方のミスもありました」と振り返るなど、選手により一層の奮起を望んだ。9月の日本学生選手権(インカレ)でも、両者の結果次第で慶大との再戦が実現する。短期間で課題を修正し、今日のような全員水球をすることができれば、おのずと勝利は見えてくる。早大の夏は始まったばかりだ。
※重大なファウルを犯した選手は、20秒間ディフェンスに参加できない。
(記事 長村光、写真 日本水泳連盟提供)
コメント
中嶋孝行監督(平13教卒=福岡工)
――今日の試合、どのような戦略で臨まれましたか
まずは大会が開催できたこと、大会関係者、応援してくださった皆様、慶應義塾大学の皆様に深く感謝申し上げます。戦略に関しては、大前提として目の前の敵に1対1で負けないこと、そして周りを大事にするチームワークを大事に丁寧にと考えていました。
――試合を振り返っていかがですか
守れていた印象はありますが、まだまだ味方のミスもありましたし、相手のミスもあり助けられた部分があったと思います。
――第2ピリオドを終えて大きくリードしましたが、プランの変更はありましたか
ありませんでした。強いて言えば全員水球を、と考えました。
――1対1の競り合いに勝つ場面が多くあったと思います。その理由は何でしょうか
そんなことはありません。相手の方が上、良くて互角でした。やはり慶應義塾大学は強いチームです。
――今日の良かった点と課題を教えてください
良かった点は、今シーズン初の試合で、最後まで集中してやれたこと。課題は、個人の能力、チーム連携などたくさんありました。
――自粛期間を経て、チームに変化はありましたか
リーグ戦(関東学生リーグ戦)、練習試合もできずもどかしい気持ちはあったと思います。しかし、早慶戦、インカレと開催見込みになり、はっきりと目標が定まって気持ちを切り替えられたと思います。
――日本学生選手権に向けて意気込みをお願いします
一戦一戦を大事に、皆様の応援に応えられるよう頑張ります。応援のほど、よろしくお願いします。
田中要主将(スポ4=埼玉・秀明英光)
――今日の試合を振り返っていかがですか
昨年の反省(昨年は第1ピリオドで0-5)を踏まえ、前半の失点を減らすための戦術を練り、練習を積み重ねてきました。その戦術がうまく機能し、失点が少なかったことが勝因だと考えています。
――チームトップタイの4得点と、シュートの調子が良かったように思います。ご自身ではどのように捉えていますか
はい。今日はシュートの調子は良かったです。ですが、これは各選手が自分の仕事をしっかりと遂行してくれたおかげで獲得できた得点だと思っています。
――1年生の都田選手が先制点を奪うなど、下級生の活躍もありました。その点はいかがですか
下級生は早慶戦という慣れない試合環境の中、高いレベルのパフォーマンスを発揮してくれて感謝しています。特に1年生は早慶戦が、入学後初の公式戦でしたが、それを感じさせない動きでした。相手チームのデータにない1年生の活躍も勝因の一つだと思います。
――自粛期間中、特に強化されたところはありますか
自粛期間中はスイム強化週間などを設け、基礎練習を重点的に行いました。昨年は慶大に泳ぎ負けしてしまったことが敗因の一つだと思っているので、慶大に泳ぎ負けないよう練習に取り組みました。
――日本学生選手権に向けて意気込みをお願いします
日本学生選手権でも、慶大と対戦する可能性があるので、2連勝して、チームの目標である3位を獲得したいと思います。
樋爪吾朗(スポ3=埼玉栄)
――今日の試合を振り返っていかがですか
昨年の早慶戦の雪辱を果たすことができ、また個人的にも3年目にしてようやく早慶戦で勝利できたことがとても嬉しいです。コロナウイルスの影響で無観客試合の開催となり、例年の早慶戦などの試合とはまた違った感じでしたが、開催できたことに感謝を込めて全力でプレーできたと思います。試合については、序盤は競る試合展開になると予想されたので、ミスをしないようにとチーム全員が集中力を切らさずにプレーでき、自分たちのペースで試合を進めることができたと感じます。
――ご自身の調子はいかがですか
今シーズン初の試合ということもあり、試合の感覚が鈍っているように感じましたが、決めるべきシーンで決めきることができたので、まずまずの出来だと思います。少しオフェンスでのファールが目立つ場面が多かったのでインカレまでに修正したいと思います。
――早大は中の守りを固めていたように思います。何かチームで意識されていたのでしょうか
昨年の早慶戦で序盤に5連続失点、中央の選手に大量得点されてしまったので、守りの意識を持つようにし、中央の選手にシュートを打たれるのではなく、ゴールから離れている選手に最終的にシュートを打たせようとする作戦をとっていました。
――自粛期間中、特に強化されたところはありますか
なかなかプールに入れる機会がなかったので、陸上での筋力トレーニングを欠かさず行っていました。
――日本学生選手権に向けて意気込みをお願いします
1回戦では昨年のリーグ戦で敗北した明大との試合になりますが、今日の試合を通して課題を見つけることができたので、チームで修正して勝利したいと思います。また、1回戦を勝利すると慶大と試合をする確率が高く、今度は対策をしてくると思うので、勝ってシード権を奪取したいです。