2月9日、7月に行われる第19回FINA世界選手権(世界水泳)オープンウオータースイミング(OWS)日本代表に古畑海生(スポ4=兵庫・市川)が選出された。今回はこれを記念し、古畑選手に代表決定の気持ちやOWSという競技、そして早大での4年間について話を伺った。
※この取材は3月23日に行われたものです。
競泳はトラック競技、OWSはマラソン
真剣に取材に応じる古畑
――まずは世界水泳日本代表選出おめでとうございます。率直な今の気持ちをお聞かせください。
代表に選ばれたのは初めてでしたし、元々選考基準がこの大会一発で決まるというわけではなくて、何度か大会を踏んで決まるという予定で発表されていたので、まさか代表に決まると思っていなかったので、非常に嬉しく思っています。
――周囲の反応はいかがでしたか
代表になるとは全然思っていなくて。自分の中でもそういう大会があるとは知っていたのですが、絶対に選ばれたいという強い思いはなくて、運が良かったというか、まさか選ばれるとは思っていなかったので、喜びの声と驚きの声が両方ありました。
――部員も喜んでくれましたか
4年生は日本学生選手権(インカレ)で引退していて、僕も引退を考えていたのですが、代表に選ばれたことで現役を続けるということが決まって、部員の皆さんは喜んでくれました。
――過去のインタビューでは世界水泳や五輪などの世界大会も積極的にご覧になっているようにも思えるのですが、今回自身がその世界大会に出られるということについてはどう思いますか。
世界水泳などの結果はネットでリザルトなども見ていたので、自分がその大会に出場するというのはある意味驚きですし、逆にすごくワクワクしているので、不思議な気持ちです。
――これまで世界の舞台に立ったことはあったのでしょうか
一度高校2年生の時にOWSで、世界ジュニアに出場していて、その時に世界の速い選手を間近で見たのですが、体格もそうですし、泳力も速かった印象があるので、そういう舞台にシニアでも立ちたいと思っていました。
――ここからはOWSという競技自体について伺おうと思います。OWSは通常の競泳とは異なり、どのような競技なのでしょうか
OWSはプールで行わずに、海や川などの自然の場所で行う競技で、基本的に5キロや10キロと長い距離でレースが行われます。世界選手権では、5キロ、10キロ、今回は25キロもあるのですが、五輪では10キロのみとなっています。イメージとしては陸上のトラックレースが競泳というイメージで、陸上のマラソンがOWSとすると分かりやすいと思います。
――古畑選手とOWSの関わりはどのようなものだったのでしょうか
実際にやり始めたのは高校2年生の時なのですが、大学に入ってOWS部門がなかったのと、OWSの日本選手権が大学のインカレと時期が被ってしまうということもあって、国体が年に1度開催されるのでそれには出場していたのですが、大学生活ではあまり関わってきませんでした。
――どうしてOWSをやるようになったのでしょうか
きっかけは、OWSの世界ジュニアに選ばれたのがきっかけで、自ら進んでやりたいというわけではなくて、大会の結果選ばれてやるようになった感じですね。
――OWSにどのような印象を抱いていますか
OWSは距離が長くて、自然を相手にする競技なので、天候にも左右されますし、波の強さや、水温の低さも泳ぎに影響を受けるので、競泳のように安定したレースをするのが難しいなと思います。
――どのようにして練習を行ったのですか
1500メートルの長距離のレースをやってきた経験がOWSでも生かされているなと思っていて、今回代表に決まったきっかけであった日本選手権でも5キロに出場したのですが、5キロなら1500メートルのレベルの高いスピードを持っていれば、国内では非常に戦えると分かったので、1500の速さを武器にやってきたのがいい経験になっているのかなと思います。
――OWSはどのあたりが面白いですか
OWSを10月の大会で始めてから何度か合宿や遠征に3月まで参加させていただいて、練習でも長い距離を泳ぐので、精神的にもハードな競技なのですが、環境が自然となるので、きれいな海で泳ぐと気持ちがいいですし、泳力だけでなく、自然を読む力や、時間が長い分相手との駆け引きが重要になってくるので、その点に関しては非常に面白いと思います。
周囲のために
インカレ男子1500メートルに臨む古畑(撮影 小山亜美)
――ここからは早大での4年間について伺おうと思います。まず、どうして壮大に進学されたのですか
勉強をしっかりしたいなということもあったのですが、水泳を頑張りたかったので、水泳を頑張る上で一番いい環境がどこかと考えた時に早大だと思ったので、早大に進学しました。
――早大に入学して驚いた出来事はあったのでしょうか
僕が1年生だった時に、ちょうど4年生にリオ五輪に出場された渡辺一平(平31スポ卒=現トヨタ自動車)さんがいましたので、五輪に出場された選手と練習はもちろん、同じ部屋になったので、それはすごくいい経験になったと思います。
――4年生を簡潔に振り返っていただけますか
3年生の頃からコロナが流行り始めて、4年生も引き続きコロナ禍での活動となったので、本当に色々大変な面もあったのですが、結果としては完璧に去年の水泳部として活動していた面を考えると、後悔というか、最後しっかり結果を残して終えられたかというと心残りの部分もあります。一方で、OWSに再挑戦したこともあるので、一言で言うと「転機」ですかね。
――早大に入ってよかった思い出はありますか
4年間を振り返ると早大に入って良かったという思い出はたくさんありますね。
――例えば
寮生活や、水泳部の練習でもそうなのですが、3年生の途中まであった水泳部の稲泳寮で、全学年が4人ずつ、同じ部屋の中で共同生活する寮でして、ここでの生活は学生生活の思い出となった部屋でした。
――一方で苦しかったことなどはありましたか
1年生の時のこともあるのですが、それ以上に目標としていた結果に4年間たどり着けなかったのが悔しかったかなと思います。
――印象に残ったレースはありますか
大学4年生の時に開催された東京五輪の選考会ですね。その大会に向けて非常に調子を上げてきた大会なのですが、この時期は4月だったので、4年生で就活もあって、精神的にも不安があったのですが、予選をベストではありませんでしたが8番に残ることができて、決勝でおそらく大学に入って初めて決勝で自己ベストを出すことができたので、非常に印象に残っています。
――特に思い出のある方はいますか
色々な方と思い出はあるのですが、特にこ2年生の後半から担当コーチになった小島コーチ(毅、福岡大卒=香川・高松工芸)にはお世話になりました。
――どのような思い出がありますか
小島コーチとは、担当の長距離を見ていただいて、長距離のメンバーは当時からメンバーが少なくて、しかも一人が長期間抜けてしまったことがあって、一人で練習することが多く、一人で長距離の練習をすることは精神的にもきつくて、選考会前は一人でやっていたので苦しかったのですが、小島コーチの支えもあって、なんとか冬場の厳しいトレーニングを耐え切ることができたので、そう言う意味でもお世話になったなと感じています。
――現在の調子はどうでしょうか
先週から大学での活動は終了して、社会人で新しく環境を探したところでやっているのですが、違う刺激をもらいながら、心機一転新しい環境で頑張れているかなと思います。
――今はどのような練習をされているのでしょうか
3月の大会を終えて少しの期間休みをいただけて、先週から復帰したての状態だったので、立ち上げ期間として基礎的な練習や、アドリルフォームの技術的な練習をしています。
――緊張はあるのでしょうか
緊張はないのですが、大会が行われる場所がハンガリーというところで、戦争が起きているウクライナとは隣の国なので、開催が無事にできるかが心配です。
――同じ5キロの日本代表では東京五輪にも出場された南出大伸(木下グループ)もおられますが
少し前に言った冬場の代表合宿に何度か参加させてもらって、南出選手とも知り合いになりましたし、練習を見ていても長い練習でも精神的に折れずに強くずっと泳ぎ続けているので、非常に見習うべき点も多いと思います。
――目標はありますか
やっぱり世界水泳で結果を残したいのですが、それ以上にパリ五輪を見据えた経験のあるレースをしたいなと持っていて、そこに繋がるレースをしたいなと思います。
――最後に意気込みをお願いします
初めての世界水泳とはなるのですが、新社会人として初めての国際大会となるので、もちろん自分のために、会社のためにも、人のためにも、色々な方の応援を糧に頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 芦沢拓海)
◆古畑海生(ふるはた・かいき)
1999(平11)年7月12日生まれ。171センチ、63キロ。兵庫・市川高出身。スポーツ学部4年。一般就活で内定を得ていた古畑選手でしたが、世界水泳が決定したことで内定先でも現役を続けることができたそうです!
(学年表記は2021年度のものを使用しています。)