【特集】河合純一パラ事後対談後編

競泳

「可能性を広げるも狭めるも自分次第なんだ」

東京大会でパラ団長に就任した際の河合氏

――鈴木孝幸選手のIPC委員選出など、国際組織からのアプローチも視野に入ってきていると思いますが、日本を出て国際的な部分での活動についてはどのように感じていますか

 日本は今回の大会の成功も含め、世界からの信頼度やポテンシャルというのは非常に高いものがあると僕自身は思っていて、十分Languageバリアとか埋めていけば、行けると思っています。何か新しい能力をさらに磨いて、優秀な子たちが世界に羽ばたいていきながら、活躍できるよう支援するのも、我々JPCとしてはやらなきゃいけないことだなと思います。

――パラリンピックを入り口に、パラスポーツの魅力をしってもらうには何が必要だと思いますか

 結局次に来てもらった時に、がっかりさせないパフォーマンスであったり、あるいはそういう人たちをしっかり継続的に情報を提供し続ける仕組みだったり、そういうことが大切なのかなとは思いますね。

――先ほどのお話にもありましたが、行動に移しやすい環境づくりというのが大事になってくるのでしょうか

 一つの方法に縛られる必要はないと思っていて、SNSで何かやるというのは簡単にできそうな気もするし、でも別に友達との会話の話題にするとか家族の話題にするとかいうのでも良いと思います。自分は見た、あるいは感じた「へぇ、そうだったんだ」をそこで終わるんじゃなくて、例えばその気持ちを書き留めておく。これも当然アクションですよね。だから、そういうものを繰り返していた先にしかないのかな、とは思います。

――今後パラスポーツっていうのをどのようにしていきたいとご自身では考えていらっしゃいますか

 もちろんパラリンピックというのは北京もありますし案としてこっちは練っています。3年後にはパリがあるわけですから、やっぱりそういった目標に向かってちゃんと、競技団体とかと連携して環境を再構築していくというのは一つ、やらなきゃいけない仕事ですね。
あと、今回の大会では東京に住んでいる選手にばかりフォーカスが当たったし、サポートの環境が整ったと思っていて、まだまだ障害のある子どもたちに体育の見学をさせられているとか、スポーツ施設の利用を拒否されている現状があるのも事実だと思っています。日本パラリンピアンズ協会というところがあって、こちらでアンケート調査をやったんですけれども、今回パラリンピックに出場した、回答してくれた選手のうち、何らかの条件付きで施設の利用拒否というのを45年の間に受けているんですよね。つまりパラリンピックに出るほどのパフォーマンスが高い選手でもそう言われているということは、一般の障害になる方がもっと見ているんじゃないかと思うんです。法律上差別解消法というのはできていたり、国連の障害者権利条約の中で障害者差別禁止条約というのを批准したりしている国としてあってはならないと思います。その後どのようにしていくかというのも課題になると思いますね。

――今課題のお話がありましたが、今後ご自身でチャレンジしていきたいこと、新しく行動していきたいことは明確に何かありますか

 もちろん今は終わったばかりなので、次も北京やパリに向けてっていう準備をしっかりやっていくってこと、今年の3月にちょうど2030年に向けたビジョンと戦略計画っていうのを取りまとめたので、これの着実な実施ですね。実効性を担保しながら、しっかり進めていくというのが僕の今やらなきゃいけない役割だと思っています。あとは、やはり若い選手の育成ですね。僕は教師だったので、若い子が好きなんです。何らか中の形で力になれるように進めていきたいなとは思っています。

――これからパラスポーツを始めるかもしれないが若い世代に今メッセージを届けるとしたら何を伝えたいですか

 何かやりたいものを見つけて見つからないのなら、それも含め、コンタクトを取るとかメールを送る、メッセージを送るとか、そういうところから始めてほしいなと思いますよね。誰かが手を差し伸べてくれるからやるというのはたぶん続かないと思うんですよ。それは別に障害のあるなし関係ない。自分の可能性というのをもう一度見つめて、その可能性を広げるも狭めるも自分次第なんだということに気づいてもらいたいなと思いますよね。

――早稲田スポーツ新聞の読者に向けてもメッセージをお願いします

 ぼくも含めて、やっぱり早稲田に入った方々の大半は早稲田が好きだと思うんです。だから早稲田って、総じていい大学だと僕も思うんです。だからこそ、いい大学で得られる仲間とか先生方とか、恵まれた環境に感謝して、最大限生かしていくということが大切なのかなと思います。仲間はいい意味でライバルなんです。だから、いい意味で競い合うことはあってもいいだろうと思います。多少自分の中で悔しいなら、もっと私が次こそはっていう気持ちになるから成長するんじゃないですか。でも、そういう環境ってなかなかあるものではないから、すごいありがたい環境にいるということで、早稲田の学生だということでいろいろな人からかわいがってもらうことも含めて、先輩からしてもらえることはたくさんあるし、卒業した後の方がたぶん早稲田は楽しい大学なんだと思うんです。人生というのが長いから当然だと思うんですけど。昔早稲田の学生にそういう話をしたことがあるのですが、早稲田だからすごいよねって言われるんじゃなくて、あなたはすごいね、だから早稲田っていい大学だねって言ってもらえるようになってほしいと思います。早稲田の看板にすがって生きる生き方はやめてほしいし、そうならずに逆に皆さんが輝くことが、結局早稲田をより良いものと証明することになると思うんです。卒業してから特にそう思っていて、今でもだから早稲田は好きだし、ちょこちょこ顔を出しています。そういう意味で、とてもいい大学だと思っていますし、その反面まだまだ早稲田にもできることはあるのに、なんて大学に対して思うこともあります。学生としてはもう自分の最大限やれることをやった上で、自分たちのやったことから徐々に早稲田がいい学校だねって言われるぐらいになれたらと思います。

ここまでの回は以下をご覧ください

【前編】本質的な障害者理解を目指して 

【中編】東京パラリンピックを振り返って 

(取材・編集 小山亜美、写真 共同通信社提供)