最終回では村上雅弥主将(スポ4=香川・坂出)と牧野紘子女子主将(教4=東京・東大付中教校)を迎える。今年、男子部は総合優勝、女子部は総合4位という高い目標を掲げたWUST。コロナ禍で普段通りの練習が難しかった中でどのようにチームを率いてきたのか。そしてラストイヤーへ懸ける思いに迫った。
※この取材は9月21日に行われたものです。
「少人数の強みを生かして挑戦していきたい」(牧野)
――まず、他己紹介ということで、お互いの紹介をしていただいてもよろしいでしょうか
村上 紘子は小さい頃から、競泳界では有名な選手で、大学まで日本代表であったり、今年のオリンピックはすごく惜しかったんですけれども、本当にレベルの高い選手です。かつ主将としても今女子チームは今年総合4位以上を目指すということで、そこを達成できるようにチームを率いている、すごい選手です。
牧野 良い言葉が出てこない(笑)。今は昔から私が有名みたいな話をしていますけど、村上雅弥も結構昔からそれなりに全中とかでもインハイとかでも表彰台に乗っていて、きちんと実力ある、そして何よりも水泳が大好きなですね。今回主将として、彼は結構真面目なのでいろいろ考え込んだりとか、相談とかもしてくれるんですけど、雅弥なりにチームを引っ張って、いいチームができているなと思います。
――かなり前からお互いに知っていたと思いますが、プライベートの思い出はありますか
牧野 お互いに顔と名前は知っているんですけど、実際にちゃんと話したのは大学入ってからなので、友達という歴は短いんです(笑)。でも何回かご飯とかは食べに行っています。
村上 大学入ってからお互い話し始めたという感じです。最初牧野選手は本当にすごい選手なので、僕の方が緊張していたのですが、今は主将として相談にのってもらったりとか、ご飯を食べに行ったりとか、だいぶ普通に話せるようになったと思います。
女子部員とのコミュニケーションを大切にしていると話す牧野
――最近はまっていることなどはありますか
村上 おじいちゃんとかとよくボードゲームやっていたんですけど、この歳になってから将棋が自分のマイブームで、アプリ入れて将棋をよくやっています。完全に暇つぶしですが、楽しくやっています。
牧野 この夏始めたというわけではないですが、もともとバラエティー番組とかお笑い芸人さんとかのネタを見るのが好きなので、YouTubeとか動画配信サービスとかTVerで無料で配信されているのを見たり、あとラジオ放送とか聞いたりして、楽しく過ごしています。
――特に好きなお笑い芸人さんはいらっしゃいますか
牧野 選べないんですけど(笑)。コント芸人だとシソンヌとかチョコプラ、ハナコ、かが屋とか、漫才ですとジャルジャルとかかまいたちとか、いろいろありますね。今年のキングオブコントはチョコプラとシソンヌのチョコンヌを応援していたのですが決勝へ行けなかったので、誰が勝つのかを楽しみながら見たいと思います。
――学内の練習方法は現在どなたが中心となって管理されていますか
村上 それに関しては監督が取りまとめてやっている状況です。
――牧野選手は学外を中心に練習されている状態ですか
牧野 はい、そうです。
――今学内ではどういったグループやスケジュールで練習されていますか
村上 いま二グループに分かれて練習をしていて、インターチームという日本代表を目指すようなチーム、もう一つはスプリント、ロングなどを泳ぐ特殊なチームに分かれています。僕自身はスプリントを泳ぐチームに所属しているので、後半組ということで、遅い時間に練習をしています。
――牧野選手は緊急事態宣言や夏休み期間などで、練習が変わることはありましたか
牧野 大きくは変わらないのですが、本来であれば合宿などで長水路のプールで練習をするんですけど、今はそこまで遠くに行けないので、そこの部分は少し難しい部分があります。あと、所沢の合同練習する回数も少なかったので、そこは緊急事態宣言の影響かなって思います。
――この夏休み期間中で力を入れた練習や修正した課題を教えてください
村上 僕自身はスプリント種目なので、最後までパワーというのは大事にしたいと思っています。なので、ウエイトトレーニングの重量をしっかり上げていこうっていうことで、目標を決めてやるようにしました。そうですね。ウエイトトレーニング重視して、ベンチプレスで100キロを4回上げるとか、そのようなハードなところまで行けるようにやりました。
――実際パワー面は改善されましたか
村上 今は泳ぎにうまくパワーの方がつながってきて、後半までしっかりと強い力で腕を回し切ることができるようになったと思います。
――牧野選手はいかがですか
牧野 夏早い段階でインカレでは2個メ(200メートル個人メドレー)と2バタ(200メートルバタフライ)に出場するというのが自分の中で決まっていて、とりあえずインカレにつながる練習をしようと思っていました。2バタは今シーズン、後半の100メートルが思うように伸びずに失速することが多かったので、200メートルを50メートル4本と考えて、後半の50メートル3本をきちんと同じペースでそろえられるように、短い休みの中で高いレベル、速いタイムでそろえられるような練習をしてきました。個メに関しては同じチームに1年の松本(信歩、スポ1=東京・東学大学付)がいるので、一緒に隣で泳いだりしています。
バックとブレストがこの2年ぐらい、なかなか思うように泳げていなかったんですけど、そこから少しずつスピードが出てきたので、全体的に練習やウエイトのレベルを上げられていると思います。
――平泳ぎに関しては、早慶戦でかなり手ごたえを感じられましたか
牧野 正直早慶戦であそこまで、9秒3だったんですけど、ベストが8秒9で10秒切れればいいかなと思って泳いでいたのでました。なので、9秒前半が出るとは思っていませんでした。今まで2個メのベストの時には、ブレストが36秒9でラップを泳いでいるんですけど、この2年間は39秒でしか泳げていなくて、それが早慶戦の時には38秒2か3前半まで持っていけたので、そこは自信につながったかなと思います。
「困難な目標に、チャレンジャーとして臨んでいく」(村上)
――ここまで今シーズンを振り返っていかがですか
牧野 最初は日本選手権なんですが、目標としていたオリンピック代表だったり、タイムの面では達成することはできなかったので、落ち込んだりはあったんですけど、結構自分の中で切り替えができました。ジャパンオープンの前とかも練習にきちんと打ち込めていたのですが、ジャパンオープンでは疲労が抜けなかったり、けががあったりと、思うように結果が出なかったです。そこからはレースがなくて、8月の関東学生選手権までは練習自体はいい内容で入れていました。ですが、試合になるといまひとつ納得ができないレースで、インカレに向けて少し不安がありました。ですが、早慶戦でそれなりにいいレースができたので、練習してきたことは無駄じゃなかったというか、きちんと自分の力になっているというのを早慶戦で確認できたので、インカレに向けていい状態だと思います。
――けがのお話がありましたが、状態としてはいかがですか
牧野 今は大丈夫です。
――村上選手はいかがですか
村上 最初の日本選手権は自分が目標としていたタイムと結果がうまく出せなくて、そこで少し悩んだりとか、ちょっとメンタルの部分で落ちた部分がありましたが、思い切って泳ぎのフォームを変えることにしました。コーチとお話をして、約2カ月間フォームを改善するということだけを意識して、ジャパンオープンに臨みました。そのジャパンオープンで2年ぶりにベスト近くで泳ぐことができて、7月の和歌山の大会でもベスト近くで泳ぐことができました。今は最後インカレに向けて調整している状況です。
――具体的にフォームは何を変えたのですか
村上 日本選手権までは入水するときに、(手を)伸ばしてストロークが1かきで滑るような泳ぎで50メートル泳ぐことを考えていたのですが、それでは推進力が全然足りないと、コーチと話をしました。なので、今度は逆に滑らす動作を一切なくして、手を入れたところからすぐにキャッチができるような、深くまで手を入れてすぐにキャッチ動作に入るというような泳ぎに変えました。結構今のトップ選手には主流な泳ぎだったのですが、僕としては初めて大きく泳ぎを変えることだったので少し怖かったですが、今はそれが上手く自分の泳ぎにハマっていい感じになっていると思います。
――改めて、チームとしての目標を教えてください
村上 男子は総合優勝を目標にしています。それにプラスして、全員がベストを尽くすことを目標に掲げている状態です。
牧野 女子部は総合4位以上を目指しています。
――女子部は定期的にミーティングをされていると伺ったのですが、どのようなことをお話されていますか
牧野 試合前とかの目標やまじめなミーティングもしているのですが、いまコミュニケーションの場が少ないと思っていたので、学内と学外の選手の関わりや、定期的にブレイクアウトルームを作って他愛もない話をしたり、関わりのない人と一対一で話したり、ゲームとかを考えて楽しんだりしています。
――学外、学内選手がいる中で、主将として特に意識されていることはありますか
牧野 LINEやSNSで自分からコミュニケーションをとったり、更衣室で声をかけたり、ちょっとしたことですがやっています。学外選手はチームの所属感やチームの一員という感覚が生まれにくいと思うので、一丸となるように、目標を一人一人紙に書いてもらって共有したり、今自分がこういう状況で、こういう目標を持って頑張っているというのを共有できるように工夫をしたつもりです。
――男子部も交流が難しい状況ではあったと思いますが、村上選手が意識されたことはありますか
村上 今こういう状況なのでチームが分かれて練習をしていますが、男子に関しては寮が一緒なので、お風呂や食事の場で集まって話ができる状況を作れるように工夫をしています。
――昨年今井流星選手に取材させていただいた時は4年生同士のコミュニケーションの中でだんだん士気が高まったと伺いました。現時点ではどのような空気感がありますか
村上 僕たちは今井さんの時のような感じではなくて、個々を強くしていこうっていうようなことでやっています。なので、4年生がミーティングを繰り返していくのではなくて、個人が良さを生かして頑張ろうよということだけを意識してやっています。今は4年生一人一人が後輩に声をかけながら、というような雰囲気で練習ができているという感じです。
――個々人をまとめていく中で、目指しているところはありますか
村上 個性が強い部員が多いので、認めることはすごく難しいと最初に考えたので、できるだけその個性を発揮できるようなチームにしたいと思っていました。言い方が良くないかもしれませんが、基本的なルールや環境を緩和して、のびのび水泳ができるような状況にしてきました。今は最終的に、インカレに向けて総合優勝を狙うということだけは僕の方からしっかりと伝えて、今から2週間、インカレに向けてやるぞという空気で、最後にまとまることができたらと思っています。
――今年で最後の出場となりますが、インカレにはどのような思いがありますか
村上 大学1年生の頃からずっと思っていたのですが、インカレは日本の競泳でやっているいろいろな全国大会の中で、たぶん唯一チームで戦うという意識が強い大会だという印象があります。これまで3回のインカレの中で思ったのは、先輩のレースを見て涙が出たりとか、逆に後輩のレースに鼓舞されたりとか、人のレースを見て感じられる試合だなと思っています。
牧野 村上さんが言ったことがそのままですね(笑)。私自身はチームというか、一つの目標に向かってやり遂げるような経験があまりなくて、国体で少しあったくらいの感じで、インカレでしか味わえないものだと思っています。大学1年生の時はどちらかというと自分のためのような部分が多かったのですが、少しずつチーム力みたいなものを感じるようになりました。先輩の泳ぎに感化されたり、自分が泳ぎ終わった後に、先輩や同期、後輩が自分のことのように喜んでくれたり、自分一人じゃないんだなと。ありきたりな言葉ですが。それが良くも悪くもプレッシャーになることもありますが、終わった後に寄り添ってくれる人がたくさんいるので、このチームの力になりたいなって心の底から思える大会です。すいません、まとまらなくて。
――現時点でインカレに向けて詰めていきたい点はありますか
村上 個人のその泳ぎに関しては、僕自身インカレで引退になってしまうので、自分がやりたい泳ぎ、自分が一番いいというような泳ぎに向けて、最後の2週間少しやっていきたいと思っています。チームに関しては、今まで1年ぐらい、個を強くするというところをやってきたので、最後にインカレ優勝に向かってみんなの矢印をまとめられるように、チームのベクトルをうまく調整できたらと思っています。
牧野 私は引退するわけではないんですが、インカレがひとつの区切りになります。インカレまであと2週間ちょっと、すごく限られた時間なので今から泳ぎを変えることはないです。強いて言うならスプリント力が足りなくて、インカレで出場するリレーとかで必要になってくるので、そういったスピードの部分を最後仕上げていきたいというのはあります。
あとは、メンタル面が弱いので、不安定になることもあるかと思いますが、この2週間、チーム全体としてうまくこう目標に向かえるように支えになれたらいいなと思っています。
笑顔の村上
――今年のチームの雰囲気については現在どのように感じていますか
村上 コロナの影響で試合がなくなったりとか部活が出来なかったりした期間があったので、今チームの状況が上下するようなことが多くありましたが、その都度みんながインカレ優勝に向けてしっかりとモチベーションを持ち直して、何回でも立ち上がって最後インカレに向けて頑張るぞというチームになったと思っています。正直最後の早慶戦に出られなかったことで相当ショックを受けていた選手も多かったんですけれども、すぐに持ち直して最後インカレで早慶戦に出られなかったことや、一年間の悔しさを晴らしてやろうという選手が多くいるような状況だと思っています。
牧野 ミーティングとかも重ねてきたので、横のつながりや縦のつながりはできてきているかなと思っています。ミーティングの中でも一人一人の目標を話す機会を作ったんですけど、結構みんな熱い言葉を話してくれたので、すごく嬉しかったというか、一人一人チームのためにという気持ちが伝わってきました。インカレへ向けて良くなってきていると思います。
――個人としての調子はいかがでしょうか
村上 調子という部分は良い泳ぎをつくれています。
牧野 私も、調子はそれなりに上がってきているかなと思っています。
――チーム内で期待している選手や注目している選手を教えてください
村上 男子は長距離の古畑海生(スポ4=兵庫・市川)に期待しています。彼は最後の試合になりますが、練習の取り組みや私生活というのが本当に尊敬できる部分が多くあるので、最後しっかり結果を出して、いいインカレにしてほしいと思っているので、彼には注目してほしいです。
牧野 インクルのパンフレットには浅羽栞(スポ3=東京・八王子学園八王子)を挙げたのですが、栞は今年度から学内に参加して、もともと何度も合宿を共にしたことがある選手です。常に前向きだし、練習も手を抜かない、本当にチームを明るくする存在だと思っていて、もちろん実力もありますし、本当に表彰台や優勝を狙える位置にいると思います。1,2年生の時のインカレでは満足のいく結果では無かったと思いますが、3年目で活躍してくれると期待しています。
あとは一緒に練習している松本信歩(スポ1=東京・東学大学付)も期待しています。去年は受験もあって、大会に出ていない期間があったのですが、これまでの練習で本当に練習タイムとかも上がってきて、徐々に調子が戻ってきていると思います。もともと世界ジュニア代表とか実績があるので、1年目ですが、おそらくいいレースをしてくれるんじゃないかなと。2個メでも一緒に表彰台に上りたいと思っています。
――ご自身の注目ポイントを伺ってもいいでしょうか
村上 僕の泳ぎの長所は他の選手よりも腕を回すテンポがすごく速いところだと思っています。なので、その中でもしっかりと水をつかんで、最後までかき切るという泳ぎがインカレでもできれば、良いレースになると思うので、そこは頑張りたいと思っています。ただ、一点短所もありまして、追い込みがとてつもなく下手なので、そこだけは目をつむっていただきたいなと思っています。
牧野 2~4日目はレースにたくさん出ているので、アベレージ高く泳いでるところを見てもらえたらなと思っています。
――いま色紙を渡されたらどのような言葉を書きますか
村上 主将ということもあるので、今年の競泳部門のスローガンである「DARE」にしたいと思います。思い切ってやるとか、挑戦するという意味があるのですが、これを一つ挙げたいと思っています。
――スローガンはどのような経緯で決まったのですか
村上 主務の高野選手(大祐、教4=東京・立教池袋)から提案をいただいて、最後はこれでいこうとなりました。意味合いとしては、今年男子は総合優勝という少し困難な目標を立てた部分もあるので、そこに向かって早稲田の水泳部が昔から強豪と呼ばれていますが、チャレンジャーとして臨んでいくというところを意識しようということで、このスローガンに決めました。
――牧野選手はいかがですか
牧野 「挑戦」ですね。「DARE」にも重なりますが、ありきたりかな(笑)。でも、女子も総合4位以内、4位以上というのは結構厳しい部分もあると思っていて、人数も少ないんですが、少人数だからこそのまとまりとか強みを生かして、マネージャーも選手も隔たりなく、一丸となって挑みたいと思っています。私自身も4年生という立場ですけれど、2個メも2バタも速い選手やチームはありますが、その中で挑戦している姿を見せられたらなと思います。
――最後に、インカレへの意気込みをお願い致します
村上 個人としては、チームに勢いをつけるために初日の50メートル自由形で僕がしっかりといいタイムで泳いで、表彰台に残れるように頑張りたいと思っています。チームとしては目標である総合優勝に、本当に困難な目標ではあるんですけれども、全員で最後まで挑戦して達成できたらいいなと思っています。
牧野 女子は総合4位以上というのを目標に掲げてこれまで取り組んできました。私自身もベストタイムを大学生で一度も出していないので、ベストを出してチームに少しでも貢献できたらなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 小山亜美)