今回は須田悠介(スポ2=神奈川・湘工大附)と田中大寛(スポ2=大分・別府翔青)へのインタビューだ。田中は昨年に引き続き200メートル自由形での優勝を狙う。一方の須田は今年に入りベストを大幅に更新。インカレでのさらなる飛躍が期待される。
※この取材は9月21日に行われたものです。
「頑張ればなんとかなるという気持ちで」(須田)
――まず、お二人で他己紹介をお願いします
須田 大寛は真面目に見えたりとか、すごい選手と思われたりすると思うんですけど、実際はただの大学生というか面白いところもあるんです。基本は頭の悪いただの大学生です。
――何か面白いエピソードはありますか
須田 いつも毎日の練習メニューというのが英語で記載されているんです。その時に結構珍回答を連発していて、きつい練習の前に大寛のアホなところが見られてチームが和んでいます。そういうことが何回かとかじゃなくてしょっちゅうあるので、チームが硬くなりすぎずにリラックスした感じで練習に取り組めています。
――田中選手はその点についていかがですか
田中 ちょっとポンコツなのはその通りかなと。よくメニューは英語で記載されているんですけど、結構よく間違えますね。昨日もメニューを間違えたばっかりなので仰る通りかなと(笑)。
――田中選手から見た須田選手のエピソードも教えていただいていいですか
田中 僕が今すごくアホ呼ばわりをされていたんですけど、悠介もそれ以上にアホだと思います。悠介と知り合ったのが中3ぐらいで、全国の舞台で一緒に泳ぎ始めました。最初悠介は全国のトップでずっと日本一を争っていたので、雲の上の存在という印象がありました。僕は話しやすいタイプの人なのかなって思っていたんですが、最初に話した時、悠介にかけられた一言が「よろしくね」とかじゃなくて、「全国弱いね」と。僕は最初全国大会緊張しすぎて全然力を発揮できなくて、例えば普段は決勝に残れるのにいつも予選落ちだったりしていたんですよ。それを悠介は知っていて、「あ、こいつ結構言うやつだな」という印象があります(笑)。今は親しくなって、練習も一緒に普段から切磋琢磨しながらやれているので、いい関係じゃないのかなと思います。
――須田選手は初対面のエピソードを覚えていらっしゃいますか
須田 はい、覚えています。なんとなくですけど、本当に早いタイムベストタイムを持っているのに全国で毎回落ちていたので、「こいつこんなもんなのかな」と。僕はなんとなく言ったのですが、本人は根に持っているみたいですね(笑)。
――同世代でその前からと面識があったというお話でしたが、お二人でオフに何か話したりしますか
田中 寮は一緒なので、普段から一緒にご飯食べてお風呂入ったりとかしています。ゲームを他の同期と一緒に遊んだりとかをしています。
須田 練習以外はただの友達っていうかただの大学生の2人みたいな感じです。水泳の話をするのが練習以外ではあまり好きではないので、普段は仲良くしてればいいかなという感じです。
――オフにハマっていることなどはありますか
田中 ゲームしかしないです。
――先ほど田丸敬也(スポ2=大阪・太成学院)選手からスマッシュブラザーズをしているというお話を伺いましたが、一緒にされていますか
須田 同じです!
田中 それしかやっていないです(笑)。
――夏休みに入ってもグループに分かれて練習されていると伺いました。お二人はどのように練習をされていましたか
田中 僕と悠介は基本グループが一緒なので、同じインターチームとして一緒に練習をしています。
――そのグループ内には須田選手と田中選手以外にはどういった方がいらっしゃるんですか
田中 今話に出た田丸だったり、平泳ぎの三人がいたりしています。レベルの高い選手がそろっているグループです。
須田 早稲田の中でもインカレで得点を一番取るであろうメンバーが揃っているので、4年生の大﨑(威久馬、スポ4=神奈川・桐光学園)さんからは中心となるグループになるから。その自覚を持って練習は毎日取り組もうという話はしています。
――大﨑選手が中心となってチームを盛り上げてくださっていると以前伺いました。ハイレベルな環境の中で特に何か刺激になっていますか
田中 威久馬さんみたいに声を出してくれる人がいると、きつい雰囲気の中でもみんな声を出したりとか。雰囲気が盛り上がって、もう一段階頑張れるっていう雰囲気になっているので、チームとして一番大きい存在なんじゃないかなっていう風に思います。
須田 僕はあまり練習が得意ではないので、周りの選手に引っ張ってもらっている立場なんですけど、もともと作られている練習メニューがきつくて、そのきつい練習の中でも僕らのグループはいつも高めあったり、同じ練習をして隣で泳いでいる人に負けないというのがあるので、ただでさえきついメニューをさらに自分を追い込んでやるっていうのがみんなのすごいところだと思います。僕が引っ張ってもらっているところだと思います。
笑顔の須田
――お二人が特に力を入れて練習されていたことはありますか
須田 僕は飛び込みからその浮き上がりまでの部分が強みなのですが、腰の痛みがずっと続いていてその部分の練習ができていないので、自分の強みを伸ばすというよりか、弱みである泳ぎの局面や泳ぎの技術を伸ばすようなトレーニングを意識しています。
――けがの調子というのは今どういう状況なのですか
須田 今は結構痛みも引いていて、飛び込みもできるようにはなってきています。インカレまでには間に合うだろうという感じです。
――田中選手はいかがですか
田中 僕は水中動作とか、得意なキックの維持や向上と、そのレースで出た明確な課題例えばセカンドラップがちょっと落としてしまうのでそのようなところに向けた練習を意識しながら夏休みはずっと過ごしていました。
――水中動作やフォームの部分での課題は何かあるのですか
田中 僕はキャッチがちょっと悪いというのがあるので、そこを改善しつつ、その泳ぎが変わらないようにというところですね。僕の泳ぎ他の選手と違う部分があるので、そこを崩さずに、夏休みは泳ぎを強化して見直す期間にできたと思います。
「有言実行を現実のものにしたい」(田中)
――ここまでのシーズンを振り返っていかがでしょうか
田中 ジャパンオープンに関しては腰の痛みでレースを棄権してしまって、あとはオリンピック選考会があったんですけど、そこで代表に入れなかったというのが一番振り返ると大きいことだと思います。去年はインカレ優勝できていい感じにいけるのかなと思っていたんですが、なかなかうまくいきませんでした。オリンピックの代表に入れないっていうのがあったので、ちょっとうまくいかなかったなという思いが少しあります。
――腰の痛みっていうのはずっとあったものなのですか
田中 僕の場合は反り腰とかがあるので、疲れてくると腰がちょっと痛くなってしまうのは今でも変わりません。最近はあまり泳ぎに影響していないので、ジャパンオープンでは泳いでも痛いというのがあったのですが、トレーナーさんとかにその改善法を聞いてずっとやっている状態です。今はまだいい方なんじゃないかなと思います。
――須田選手はいかがですか
須田 僕はうまくいっているんじゃないかなと思います。理由としては、去年と比較したときに、去年はインカレもレギュラーを取ることができず、ベストも出すことができていませんでした。それに比べて今年は毎試合ベスト更新ができていますし、インカレのレギュラーについても個人とリレー共に選ばれているので、シーズンが始まる前に立てた目標を、しっかりと段階を踏んでできています。次はインカレどこまで行けるかっていうところまで来ているので、今まではオープンジャパンオープンや地方の大会では現時点では結構うまくいっているので、これからどんどんどんどん伸ばしていかなきゃなと思っています。
――シーズン前に立てられた目標はどのような目標なのですか
須田 具体的には目標タイムをいろいろな試合ごとに決めているのですが、その目標もちょっとずつタイムを上げたりとか、もしそのタイムを超えられたら次はどれぐらいまで上げるようにするというのを決めています。僕が見てもらっている監督の奥野さんと相談しながら目標を立てています。
――ジャパンオープンなどでもかなり自己ベストを更新されたと思うんですが、昨年と違う部分はどこなのでしょうか
須田 去年のインカレが終わった後にグループを変えてもらいました。早稲田大学のチーム編成というのが、短距離中心のチーム、長距離後中距離、そして僕が今いる二つ目の中距離チームがあります。僕はもともと短距離チームで50メートルに特化した練習をしていました。自分のためにできる練習がもっとあるという考えで、少しきついメニューのある中距離チームに移動しました。そこにだんだん順応していって、ベストタイムにつながったのではないかと考えています。
200メートル自由形連覇を目指す田中大
――改めてインカレの出場種目とその具体的な目標を教えていただいてもいいですか
田中 僕は去年と変わらず縁の100メートル、200メートルの自由形に出ます。200は去年優勝して今年も2連覇がかかる種目になるので、絶対に優勝したいなという思いがあります。あと100に関して、去年8番というぎりぎりのレースになってしまったので、今年はもっと上の順位、メダルに絡んで行けるようなレースをしたいと思います。あとリレーがあるので、リレーでは去年悔しい思いをたくさんしたので、今年はメダルを取って笑ってレースが終われたらいいなと思われます。
須田 僕は50メートルと100メートル自由形とリレーに出場することが決まっています。目標としては50メートルについてはメダルを取ること、100メートルについてもメダルまで狙いたいですが現状ちょっと難しいところもあると思うので、確実に決勝に残ることです。リレーについては大寛も一緒に出るんですが、「絶対に優勝」というところしか見ていないので、そこについては頑張りたいなと思います。
――お二人にとってインカレはどのような大会ですか
田中 コロナの影響で無観客試合なので、コロナ前の特別な雰囲気というのは味わえていないのですが、去年は無観客でもとても盛り上がった試合だったので、そこの印象は大きいです。
須田 去年はその応援する側に立ったんですけど、僕にとってインカレは憧れを抱いている部分があります。出られない立場に立ったこともあるので、その人達の分まで頑張らなきゃいけないというのも身に染みてわかります。頑張らなきゃいけない責任というか、どんなことがあっても結果にこだわらなきゃいけないというのがわかっているので、より一層頑張りたいと思います。
――昨年出場できなかったことが原動力になっているところがありますか
須田 そうですね。きついことでも全部去年悔しいことを思い出したら出来ることが多いので、自分の行動につながっているとは思います。
――特にお世話になった4年生選手はいらっしゃいますか
田中 4年生は皆さんにお世話になった部分はあります。今でもご飯とか何回も奢っていただいたりとか、練習面以外でのことでもいろいろお世話になったりとかしました。
――特に仲のいい選手はいらっしゃいますか
田中 そうですね。あの田中航希(スポ4=埼玉・春日部共栄)さんという方が、今回はサポートでいらっしゃるんですけど、何回もご飯をおごって頂いたりとか。
須田 それしか言ってないじゃん(笑)。
田中 他にもいろいろ声をかけてくださったりとか、今一番僕の中では印象的に一番お世話になったなと思います。
――須田選手はどなたかいらっしゃいますか
須田 そうですね。水泳についてお世話になったっていうか関わりのある選手は、4年生の短距離50メートルをやっている伊藤新盛(スポ4=岐阜・中京学院大中京)さんだと思っています。50メートルを専門としている選手は多くいて、早稲田の中でもレベルが非常に高くて、選ばれればもう確実に決勝残れるんじゃないかっていうぐらいです。インカレのレギュラーを争っていたのが毎年新盛さんだったので、結局僕が選ばれたというのがあるので、その人の分まで頑張らなきゃいけないと思います。一番僕のレースを見てもらいたい先輩ではあります。
――新盛さんとは特にインカレのお話をされましたか
須田 チームがインカレ後からは短距離の方から違う方に移ったので、練習を一緒にする機会は少なくなってしまいましたが、プールは一緒なので喋ったりとかします。今年に入って最初に出したベストのレースの時は隣で一緒に泳いだので、新盛さんはタッチした瞬間にまた僕のタイムを見てくれて、レースが終わってすぐプールに入っている状態で僕の方まで駆け寄って「おめでとう」と言ってくれました。自分のことのように喜んでくれているように見えたので、ぼくも同じように喜べるような先輩になりたいと思いました。
――インカレに向けて現時点で自身の課題や詰めていきたい点はありますか
田中 僕の課題はずっと変わっていなくて。200メートルは考え方でいうと50メートルを4回というように考えているので、セカンドラップ、サードラップのタイムをうまく泳ぐっていうのがもう課題なので、そこが大事だと思います。あとはいかにインカレというその舞台を楽しめるかというのが大事になってくるんじゃないかなと思います。
――先ほど全国大会前にかなり緊張されてしまって話しがありましたが、緊張をほぐす工夫はありますか
田中 僕が全国に弱かったのは経験が浅い部分があったと思います。中学生から全国大会に出て積み重ねていって、緊張しても少しずつ自分の力を出していけるようになったという感じです。もちろん今回のインカレも緊張すると思いますが、その緊張を上手くを楽しめたらいいかなと思います。自分の中で和らげる方法は特にないので、絶対に緊張してしまうので、この緊張を上手く楽しんで大会に挑めるようには心がけています。
――須田選手の課題や詰めていきたい点はどこでしょうか
須田 僕は技術の面が一番あると思っていて、先ほども言いましたが泳ぎの部分に課題がいっぱい残っているので、泳ぎの部分で周りの選手に離されず、逆に泳ぎで周りの選手を離せたらかなり記録も伸びると思うので、自分の弱みをさらに強くしていきたいなって思います。
――現在の調子はいかがですか
田中 はい。まあいろいろコロナで試合がなくなったので、インカレまで本当に1カ月ちょっと、まるまる強化期間になっていたので、充実した強化ができたのかなっていう風には思います。なので、あとはインカレに向けてうまく調整ができればいい感じになると思います。
――試合がなくなることも多い中でモチベーションの管理は難しかったのでしょうか
田中 でもインカレがあるという時点で、僕的にはモチベーションがあまり下がらずにいけました。ポジティブにいこうと捉えて、1カ月も強化できるというように思考を変えていったので、この1カ月はうまく使えたんじゃないかなと思います。
――須田選手はいかがですか
須田 今の調子としては悪くはなくて、ただ、インカレに向けてまだ調子を上げている段階です。今は絶好調とかではないのですが、インカレに向けて徐々に調子を上げていくという段階を踏めていると思います。
――早大チーム内で注目選手はいらっしゃいますか
田中 僕は4年生の長距離をやられている古畑海生(スポ4=兵庫・市川)さんという方です。海生さんがやっぱり練習からタイムをあげているなと思います。やっぱりラストへの思いが強くて、インカレではすごい結果を出してくれそうだなっていう風に僕には感じています。
須田 僕が注目している選手は、4年生の伊東隼汰(社4=東京・早大学院)さんです。出場種目は大寛と一緒で100と200なんですが、この間行われた関東学生選手権で100メートルで3年ぶりくらいのベストを出したようで、あの段階でかなり速いタイムで泳いでいます。なので、インカレではかなりのタイムで泳いで、メダルにも絡んでくるんじゃないかなと思います。
――同期同士ではインカレに向けて何か話されていますか
田中 同期も背泳ぎの米山毅(スポ2=東京・早実)という選手がいますが、毅も優勝争いに加わったりとか、それこそ田丸も決勝で戦えるレベルです。悠介はリレーで一緒に組むので、隼汰さんも一緒に絶対に優勝したいねという話はしています。
須田 早稲田の中でも僕らの代は結構得点に絡むことができる選手が多いと思います。特には何か話しているわけじゃないですが、僕としては4学年で一番点数を取りたいと考えています。
――ご自身の泳ぎで注目してほしいポイントを教えていただいてもいいですか
須田 僕は飛び込みからドルフィンキック、そして浮き上がりという動作が一番得意なので、そこで必ずトップの中でも前には出ると思うので、そこで僕の強みも見てもらいたいです。そういったところで周りとの選手の違いっていうのを見せられたらなって思います。
――田中選手はいかがですか
田中 そうですね。まあでも。他の選手に比べて(体が)小さいので、それでもいろいろ今まで磨いてきた技術とかで大きい選手に勝つところを見てほしいかなと思います。
――いま色紙を渡されたらどのような言葉を書きますか
田中 ありきたりですが、「有言実行」と書くと思います。去年もインカレ優勝するって言って有言実行できて、それからはオリンピックに出るという有言実行は果たせていないので、僕の座右の銘として有言実行というのを現実のものにしたいなと思います。
須田 「なんだかんだ頑張る」って書くと思います。とりあえず頑張っておけばなんとかなるかなって感じのスタイルでいきたいと思います。
――改めて最後にインカレに向けて意気込みをお願いいたします
田中 もちろん個人では200メートル平泳ぎで優勝、100(メートル平泳ぎ)はメダルに絡めるような泳ぎをしてチームに貢献することもあります。あとは去年インカレを経験した者として、やっぱりリレーでメダルを取れなくて悔しさを味わっています。今年はやっぱり優勝を狙って、優勝してリレーでも個人でもいい結果で終われたらいいなと思います。
須田 今年は大学に入って初めてのインカレということなので、ビビらず、自分らしい泳ぎでいけたらなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 小山亜美)