第4回は古畑海生(スポ4=兵庫・市川)と武井凜太郎(スポ3=東京・早実)へのインタビューだ。早大の長距離自由形をけん引する二人。特に古畑は日本選手権で初めて決勝に残るなど、エースの風格を見せている。古畑がラストイヤーに懸ける思い、そして武井から古畑に抱く熱き思いを伺った
※この取材は9月14日に行われたものです。
「気迫のこもったレースをしっかり目に焼き付け」(武井)
――他己紹介ということで、お互いについて紹介してください
古畑 凛太郎くんは、(武井選手の画面に写る背景を見て)まず部屋の壁紙が面白いのですが、同期の3年生とすごく仲が良くて、寮生活をしているのですが毎日楽しそうに生活しているなという印象です。そして、少し天然なところもあり、後輩としてかわいい部分も多くあります。
武井 海生さんとは今まで3年間くらい、2人でLD(長距離)チームで練習をしてきたのですが、今が一番速いというか、練習中も僕が少し引くくらい強くて、集中力もすごいですし、最後の、4年生のインカレに向けた思いもすごく伝わってきて、今年のインカレでは海生さんが優勝すると思っているくらいです。
――古畑選手はそれに対してはいかがですか
古畑 8月に早慶戦が中止となって、気持ちの面で落ち込むこともあったのですが、最後はインカレで有終の美を飾りたいという思いが今はあるので、練習はすごく集中して取り組めているのかなと思います。ですが最近は凛太郎も練習をすごく頑張っていて、お互いに切磋琢磨しながら練習に取り組めているのではないのかなと思います。
――お2人ともロングディスタンス(長距離)ということで、一緒にいる時間が長いと思いますが、どのようなやりとりをしていますか
武井 練習中は泳ぐ距離が長い分、すぐに泳がなければ間に合わなくなってしまうので、練習中に話すことは水泳のことくらいですかね。ですが、個人的には海生さんは親しみがあるというか、お世話になっているお兄さん的存在なので、勝手に慕わせてもらっています。海生さん、ご飯行きましょう。お願いします。
古畑 (武井とは)個人的にLDで一緒にいた時間も長いですし、今では自分は紺碧寮に移って1人部屋で生活しているのですが、前にいた稲泳寮という所では4人部屋の時に(武井と)同じ部屋になったことがあり、そういったこともあって(武井とは)後輩の中でも特に親しく接しているのかなと思います。
――寮で同部屋だった時の印象的なエピソードなどはありますか
武井 海生さんはすごく負けず嫌いなイメージがあります。当時の部屋には1年生だった僕、2年生だった海生さん、3年生と4年生の先輩方の4人がいたのですが、部屋でマリオカートなどのテレビゲームをすると、海生さんは負けたままでは終わらず、海生さんが負けると「もう1回」といったかたちで勝つまでやったので、すごくストイックだなとは感じますね。
古畑 1番よく覚えているのは先ほどのゲームのところで、8人くらいという結構な大人数でトランプをしていたのですが、一番最後に負けるのが大体いつも凛太郎で、それが2回か3回くらい続いたんですね。それで、みんなが笑っていたので、凛太郎はムードメーカーとして『持っている』なと感じました。
――武井選手はそのことを覚えていますか
武井 覚えていますね。8人くらいでババ抜きをして連続で負けるのは相当すごい確率ですし、当時は負けた人が近くのコンビニで全員分おごるということをしていて、自分は1年生だったのでほぼ半泣き状態でお金を払っていたのを今でも覚えています。
喜びの表情を見せる武井
――最近はコロナ禍で外出しづらいとは思いますが、最近ハマっていることはありますか
古畑 自分は五輪の関係で寮を一時的に退寮して一人暮らしをする機関が2か月ほど続いて、最近は外出してどこかへ行ったりすることができないので、部屋でできることは何かを考えたときに、アマゾンプライムなどで映画を観たり漫画を読んだりするなど家でできることをしていました。
武井 僕も夜遅くまで漫画を読み返したりしています。本当にそれくらいしかやることがないです。
――大崎威久馬(スポ4=神奈川・桐光学園)選手から4年生のなかでラジオをやっていると伺ったのですが、古畑選手はそこでどのようなことをしましたか
古畑 大体、4年生3,4人くらいでラジオを定期的に開いているのですが、特に決まったテーマではなくて、匿名でグループを作って、そのグループの中で質問を募集したり、自分たちで1年生だった頃の楽しかったことやきつかったことといった今までの思い出話などを話してみんなに聞いてもらうというようなことをしています。
――武井選手はそのラジオを聴いたりしましたか
武井 実は最近英語や就活に向けた勉強に1人の時間を使っていて、そのラジオは聴けていません。そのラジオはたいてい夜にやっているのですが、そこまで手が回っていない状況です。どこかで聴こうと思います。
――今夏の東京オリンピック・パラリンピックで印象に残ったシーンを教えてください
古畑 水泳競技でいえば、自分は専門が1500メートルなので1500メートルの競技は楽しみに観ていました。そのレースでは最終的に3人の選手がラスト50メートルで競っていて、すごく見ごたえがありました。
――武井選手はそのレースはご覧になりましたか
武井 実はそのレースも見れませんでした。ただ、個人的にすごく印象に残っているのは瀬戸大也(平29スポ卒=現TEAM DAIYA)さんと萩野公介(ブリヂストン)さんが200メートル個人メドレーで一緒に決勝まで残って2人で泣いている場面で、そのシーンは「やはりこの2人だな」と思って印象深かったというか、すごくよかったです。
――夏休みに入ってからグループに分かれて練習
していると伺ったのですが、グループ分けはどのような形になっていますか
古畑 前半と後半の2部制になっていて、前半組が6時半くらいから始めて、その2時間後にもう一つのグループが始めるという形にしているのですが、そのグループはコーチで分かれています。
――お2人はどのような種目の方と一緒に練習をしていますか
古畑 短距離グループとSTグループという、個人メドレーであったりバタフライといった種目の選手たちと練習メニューは違いますが同じ時間帯に練習をしています。
――夏休み中に力を入れていた練習だったり修正していた課題にはどういったものがありますか
古畑 早慶戦の前に部内でコロナが発生してしまい、何日か練習が休みになって体力が少し落ちてしまったので、今はその体力を戻すための練習と、試合に向けたスピード感を出すための練習に取り組んでいます。
――早慶戦がイレギュラーな状況になってしまいましたが、モチベーションや練習への影響はありましたか
古畑 僕は比較的早く立ち直ることができたほうではあるのですが、水泳部全体で見るとへこんでいる選手も何人かいたので、そういったダメージは少しありました。
――武井選手は夏休み中はどういった練習や課題に取り組みましたか
武井 僕は、先ほど古畑さんが話してくださった水泳部のコロナ騒動で濃厚接触者になってしまい、元気であるにも関わらず2週間以上泳げないという状況になってしまって、他の人よりも復帰が遅い状態で、2週間の間ただ寝て、漫画を読んで、ご飯を食べるだけというような生活をしたら太ってしまいました。そして、いざ復帰してみたらその日から12000メートルくらい泳ぐことになって、(自分は太ったのに)海生さんは本当に速いという状況で、自分の中で危機感を強く感じて、ただただ海生さんにおいていかれないように練習についていくことができるようにしようという意識で練習に臨んでいます。
――体力面の回復の具合はいかがですか
武井 復帰当初は精神的にも身体的にも死にそうだなと思うほどきつかったのですが、今は復帰して2週間目に入って、泳ぎという面ではダメですが体力は少しずつ戻ってきているので、インカレには何とか間に合わせたいと思います。
「最後は感謝の気持ちを持って終わりたい」(古畑)
――ここまでの今シーズンを振り返っていかがですか
古畑 4月に日本選手権があったのですが、その日本選手権は選考会を兼ねた、今まで経験したことがないような雰囲気の中での競技だったので、緊張もしたのですが、この大会に向けて冬場はトレーニングもやって、自己ベストを出すことができましたし、初めて選考会で決勝に残ることができたので、タイムはもう少し出したかったのですが、非常に良い経験ができたかなと思います。
武井 自分はオーバートレーニング症候群になってしまって、昨年12月から4か月ほど部から離れて練習をしない状況があったのですが、4月に復帰しまして、「6月のジャパンオープンまでにいい感じのタイムを出さなきゃだめだぞ」ということを4年生やスタッフから言われて、4か月水泳から離れた後に2か月後の大会に照準を合わせることへの焦りはあったのですが、その2か月間すごく集中して練習に取り組めたお陰で、6月のジャパンオープンでは自分が思っていた以上の成果を出せたので、復帰できた喜びと安堵も相まってすごく印象に残った試合になりました。
――インカレでの出場種目と目標を教えてください
古畑 出場種目は400メートル自由形と1500メートル自由形です。400メートルは今シーズン、約3年ぶりに自己ベストを出せて、非常に調子も良いので、まずは自己ベストを更新して、決勝を狙えるくらいの勢いで行きたいと思います。そして1500メートルは特に力を入れている種目なので、優勝を目指して頑張りたいと思います。
武井 自分は1500メートルにしか出ないので、今の自己ベストが15分31秒なのですが、15分25秒くらいを目指して、8番以内に入って、海生さんが優勝で、僕がどうにかいい順位をとって一緒にいい写真を撮ったりいい思い出を作ったりできたらいいなと思います。
――古畑選手は複数の種目に出場されるとのことですが、それぞれの種目の調子はいかがですか
古畑 今は強化練習をやって2週間ほどになるのですが、体も非常に引き締まりましたし、心身共に充実しているので、結構自身はあります。
――2人ともインカレ出場経験をお持ちですが、これまでのインカレを振り返っていかがですか
古畑 インカレはチームで戦うという意識がすごく強くて、他の大会にはない雰囲気があるので、毎回緊張しながら出場しているのですが、ここまでの3年間は自分の思うような結果を残せてこなかったので、最後のインカレでは有終の美を飾れるようにしたいなという思いはあります。
武井 これまでインカレには3回出場することができたのですが、自分もどれも自分の思うような結果が残せませんでした。それ以上に、チームで戦うインカレが個人的にはすごく好きで、毎年4年生の熱いレースを目に焼き付けるというのを意識して、他の部員のレースにすごく注目して、見比べている大会ですね。
――4年生の古畑選手にとっては最後のインカレになると思うのですが、特別な思いはありますか
古畑 やはり特別な思いはあります。今まで、4年生の皆さんがインカレで最後にすごくいい結果を出してきて、これまではその背中を見て、僕自身も頑張ろうと思えていたので、今回のインカレでは最後、自分の結果で下級生に向けていい姿を見せたいなという思いはあります。
――引退する4年生に対する武井選手の思いを教えてください
武井 本当に、今の4年生には3年間お世話になってきたので、他の2年生や1年生よりも関わった時間が多くて、思い入れのある、お世話になった先輩方なので、そういった4年生の最後のレース絶対に見なければいけない、見届けなければいけないという思いがすごく強いので、4年生全員の最後のレースは最後まで見届けたいというのが今回の一番の目標です。
――意識している選手はいますか
古畑 同じ種目の同学年の選手に同じくらいのタイムの選手が4~5人いるので、そのような選手には勝ちたいなと思っています。
――具体的にはどなたを挙げますか
古畑 ランキングで一番早いのが、日大の尾﨑健太(3年)選手で、タイムでいうと尾﨑選手が一歩抜けているので、その選手を目標に、ライバルとして、一緒に出れるようにしたいなとは思っています。
武井 本当に、興味がある選手といえば海生さんくらいです。インカレでは僕は午前にレースがあって、午後に海生さんの決勝があるということで、レースが別々になってしまったので、最後に海生さんのレースが午後に見られればそれだけで満足です。
――泳ぎについて互いにアドバイスしあっていると伺いましたが、どういったアドバイスをしていますか
古畑 フォームについてのアドバイスはあまりしないのですが、練習メニューなどについては結構話をするかなと思います。
武井 先ほど海生さんが言った通り、お互いに泳ぎについてはあまり言わないのですが、僕としては今まで3年間ずっと横で海生さんの泳ぎを見てきたので、「今日はすごく進んでいるな」といったことは上から見ているコーチの方や他のコースから見ている人よりもわかっていると思うので、そういったときは素直に「今日は海生さんすごく速いですね」のような声をかけるといった、抽象的な話しかしないのですが、こうしたコミュニケーションによって練習を頑張れるというか、練習を頑張った後にクールダウンの時にその日の練習について話をするのですが、そういった時間がすごく好きですし、あと少ししか海生さんと一緒に泳ぐことができないと思うと僕も一緒に引退したいと思うくらいです。
笑顔の古畑
――インカレに向けて課題はありますか
古畑 すごく抽象的なのですが、まだ自分の中で納得して、自信をもって試合に臨めるような感覚に達していないので、ここから残り日数も少ないのですが、自信を生み出せるような練習をさらにして、自信をもってレース台に登れるような気持ちづくりをここからまたしていきたいと思っています。
武井 僕もついこの間まで2週間休んでいたりして、体力面や技術面がまだまだなのですが、残り限られた数週間のインカレまでの時間で少しでもそういったことを向上させて、良いものにして、インカレに臨みたいと思います。
――チームの調子はどのように感じていますか
古畑 今は2グループに分かれて練習をしているので、チーム全体の細かいところというのは分かりにくいのですが、メイン練習であったりすると、メインのデータが水泳部のLINEグループ等に送られてきて、記録を見たりすることもできますし、前半と後半とで練習が入れ替わる際に、前半組がまだ練習をしているような姿を見ることがあって、そのような時に、結構いい雰囲気で練習しているのを見ると、みんないい状態なのではないかなと思います。
武井 早慶戦がなくなったときやコロナが出てしまった時にはチームが少しは落ち込んだと思うのですが、今は4年生の最後のインカレに向けて4年生が頑張っている姿を見て、他の1年、2年、3年が鼓舞され、引っ張られてチームが良い方向に、盛り上がっていっているなとは感じています。
――古畑さんにお伺いします。4年生の間ではインカレに向けてどういった話をされていますか
古畑 今回のインカレはコロナの影響もあってどのような形になるかわからないので、目標はやはり総合優勝なのですが、そこに向けた具体的な点数、「1人何点取るのか」という点数を定めるなど、いろいろな話をしながらインカレに向けてコミュニケーションをとっています。
――チームの中で「この選手に注目してほしい」という選手はどなたですか
古畑 じゃあ、僕は凛太郎を挙げます。
武井 (ガッツポーズをとる)
――武井選手のどういったところに注目してほしいですか
古畑 凛太郎はコロナの濃厚接触者となってしまって練習を再開するのが遅れてしまったのですが、今はその分を取り戻すためにすごく必死に練習を頑張っているのを一緒に練習している中で見ているので、インカレでは少しでもいい結果を出してほしいなという思いを強く感じるので、一番応援しています。
――古畑選手の激励を聞いてどう感じますか
武井 本当に嬉しい限りといいますか、個人的に今年のインカレは自分のレースももちろん大切にはしていますが、それ以上に3年間毎日一緒に泳いできた4年生のレースを目に焼き付けたいという思いの方が強いので、4年生や同期みんなに頑張ってほしいという思いがすごく強いです。
――ご自身の注目ポイントを挙げてください
古畑 僕自身の泳ぎの強みとして、極端にラップタイムが落ちないという所に自信があるので、後半に他の選手がバテて疲れてきたところでも自分はペースを維持して順位を上げていきたいなと思うので、そこに注目して見てもらえたらと思います。
武井 注目してほしいポイントはあまりないといいますか、インカレまで泣きそうになりながらも練習に励んでいるので、とにかくやさしい目で応援してくだされば嬉しいです。
――もしこの場で色紙を渡されたらどういった言葉を書きますか
古畑 ここまで色々な大会が中止になり、パフォーマンスを発揮する機会があまりありませんでしたが、インカレは開催に向けて色々な方が尽力してくれていて、最終的にどうなるかはまだわかりませんが何も起こらなければ開催されると思いますし、最後は感謝の気持ちを持って終わりたいと思うので、色紙には『感謝』と書きたいと思います。
武井 海生さんの話の出だしを聞いていて、僕も『感謝』にしようかなと思っていました。そうしたら僕は『目に焼き付ける』です。とにかく、4年生の最後の泳ぎ、他大の選手でも4年生の方で知っている方はいるので、そういった方たちは最後に気迫のこもったレースをすると思うので、そういった方々のレースをしっかりと目に焼き付けて、自分も最後の1年間でそういったすごいレースができるようにしたいので、『目に焼き付ける』でお願いします。
――最後にインカレへの意気込みをお願いします
古畑 インカレ出場は今回で最後になるので、全力でやり切るというのはもちろんですが、僕以外にも4年生の同期はすごく気合いが入っていて、インカレに向けてすごく努力しているので、最後は4年生全員で後輩に『4年生の背中』を見せて、士気が高まるようなレースをして有終の美を飾りたいと思います。
繰り返しにはなってしまうのですが、今年のインカレでは4年生がいい形で終われればいいと思っているので、チーム一丸で4年生を盛り上げて、結果としてチームが総合優勝に届けばいいなと思っているので、頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 渡邊悠太、小山亜美)