昨年の日本学生選手権(インカレ)では表彰台を期待されながらも悔しい思いをした浅羽栞(スポ2=東京・八王子学園八王子)。2回目の出場となった今年のインカレでは出場した100・200メートル平泳ぎで表彰台に上がり雪辱を果たしました。久しぶりの出場だったという200メートル平泳ぎをはじめレースについて振り返っていただきます。
※この取材は10月13日にリモートで行われたものです。
「最低限のことはできたんじゃないかな」
平泳ぎを専門としている浅羽
――今年のインカレは振り返ってどんな大会になりましたか
やっぱり試合が少なかったり開催できなかった中で、もちろん開催できたということにも意義があったなと思いますし、私自身10月か2月に出た試合から200メートル平泳ぎには出場できていなかったので、試合ってこういう感じだったなとか、そういうことを思い出せた試合だったなという風に思います。
――昨年は個人種目で悔しい思いをしましたが、その気持ちは晴らせたなという感じがしますか
そうですね、去年はランキングなんかにも上位に入ってたのに、全然表彰台にも上れなくて点数も稼げていなかったんですけど、今回はランキングより100メートルは順位を上げられたり、チームにも点数を持ち帰れたのはすごく良かったかなという風には感じています。
――女子はチームの全員がやれること、求められていることをやって総合6位という結果につながってすごく良かったのかなという感じがしますが、浅羽さんは女子の雰囲気はどうだったと感じていますか
私としても正直シード取れるか取れないかの瀬戸際だと大会2日目くらいまで本当に思っていたので。それを余裕で達成できたのは、みんながちゃんと確実に点数を取ったり、もちろんランキング的には点数に絡んでいなかった選手も点数を取ったりっていう、一人ひとりがやるべきことをやって、みんなが良かった試合だったんじゃないかなという風に思いますね。
――女子部では今年かなり頻繁にミーティングを行ったということでしたが、どんな良い影響がありましたか
やっぱりこういう状況だというのもあって、みんなでチームでできることというのも限られてきますし、そういうのを乗り越えて盛り上げていこうという気持ちは以前より強かったんじゃないかなというのを感じています。なので一人ひとりがZOOMのミーティングにも積極的に参加して、会う機会も勿論すごく限られていたんですけど、その中でもチーム意識というのは高かったんじゃないかな思います。
――レースについて伺っていきたいと思います。100メートル平泳ぎのレースに関しては振り返っていかがですか
結構周りの選手とも同じような持ちタイムでもあったので、自分が何番に入るのかとかは実際全然よく分かってなくて。早慶戦(早慶対抗大会)もあんまり100メートルは速くなかったので不安とかもあったんですけど、それにしては予選からそこそこのタイムを出せたんじゃないかと思います。予選は3番で上の2人は結構速かったので、決勝でも絶対に3番を持って帰りたいなという風に思って泳いでいました。
――どちらかというと200メートル平泳ぎの方が得意という中で、先に100メートルで表彰台に上がれたのは気持ちとして楽になれたんじゃないでしょうか
去年は200でも表彰台に絡めていなかったのが、あまり得意でない100メートルの方でも最低限のことはできたんじゃないかなというのは、すごく自分の中でホッとした点ではあります。
――翌日のメドレーリレーは決勝に進めませんでした
他の男子の種目とかもA決勝に残っていて残れなかったのがメドレーリレーだけだったので、そういう点でやっぱり自分のタイムももう少し上げて、惜しかったというところにでもいくことが必要だったんじゃないかなという風には若干思います。でもそれがリレーというものでもあるので、来年恐らくメンバーも同じだと思いますし、そういうところは次は確実にという風に生かしていきたいという風に感じました。
――3日連続でのレースで、翌日にも個人種目が控えるという状況で真剣に泳ぎ切るというのは難しいという見方もあるのかなと思います
やっぱり決勝には残りたいって思いましたし、リレーは得点が大きいのでそういうのを蔑ろにしないで、個人よりも点数が稼げるのでチームのために出来ることをと。リレーに出させていただいているので、9番だったんですけどみんなが最低限やれることはやったのかなというのは私も思います。
「予想していなかった結果だったのですごく嬉しいです」
――最終日の200メートル平泳ぎは予選1位で決勝に進みました。決勝は最初の50メートルをかなり速く入りましたが、自分としてはどういうプランで泳ごうというつもりだったんでしょうか
自分としてもコンディションだったりそれまでの練習だったりで、スピードは出ているなという風に感じていたんですけど、余力がある泳ぎというのをまだ作りきれていなくて。その中でやっていかなくてはいけないと考えたときに、やっぱり後半で巻き上げるというよりかは、前半でいってそのまま耐えるしかないんじゃないかなと覚悟してレースに臨んでいたんです。
100メートルは自分の予想していたよりも速く入れて、結構150までは良いタイムで来れてたかなという風には思うんです。でもそこからやっぱりすごくキツくて、泳ぎにまだ余裕がある泳ぎじゃなかったというのも実際すごく感じていて。残り50は本当にキツくて、試合感がすごく強かったんですけど、試合って本当に最後動かなくなる感じとかが練習とは違う点で、ちょっとそこは課題が明確に出たなというのと、もう少し200に対応できる泳ぎを作っていかなきゃなという。うまく練習などで得意な泳ぎができなくても前半からそうやって攻めた泳ぎができたり、良かったり悪かったりっていうのが多かったレースだったのかなと振り返ってみて思います。
――150メートルでのタイムが1分47秒72で最後の50のラップが39秒28だったんですけど、150はこのくらいで良いかなという感じでしょうか
47秒とか46秒とかできて余力があって最後あげられるっていうレースが1番理想だなという風には思っていて。スピード感は実際にはあるのかなというのと、押し切るんだったら後半やっぱりしんどいというところをふまえて練習とかも必要なのかなというのが分かったかなという感じです。
――最後にスタミナがという部分は、コロナで練習できなかったからかなという気持ちはあったりしますか
練習もできてなかったりとかもありましたけど、でもやっぱりきちんと良い泳ぎができていたら最後まで保ったりもするのでまだ技術的にも甘い部分があるかなと。そこに体力をもう少し上乗せできたら良かったのかなという形なので、そこは努力次第で変わることで、泳げなかった期間もありましたけど実際にコロナは言い訳にはならないかなという風に思います。
――平泳ぎは結構周りが見える種目だと思いますが、見ていましたが
結構見えると思います。見るときと見ないときとありますけど、今回は結構100とかで意外と同じくらいで回ってる、そんな遅くないなというのは若干見て感じたり、まあラスト50は結構自分がしんどかったので周りとかはあまり気にしてなかったんですけど、ああもう抜かされちゃうなっていうのは結構泳いでいて感じました。
――そういうところで焦りが生まれてピッチなど泳ぎが乱れるということはありますか
ラスト競っていてピッチを上がるとか結構ありますし、そういうのをわざと狙って練習はしていたりするので、今回は純粋にキツくてピッチをあげるというよりは維持する方に意識がいってたのでそういうのはなかったんですけど、普段は最後の競り合いとかでそこはどうしたらスピードが上がるかという点で空回らないように力まないようにというのは大前提なんですけど、そういうピッチのあげ方をするときもありますね。
――具体的にはどういう練習をしていますか
例えば200メートルを泳ぐためのラップを刻むときは、ラスト1本はピッチをあげて今まで反復していたのよりも速く来られたら、やっぱりレースとかでもここであげようと思った時に速く泳げるのかなという風には考えています。どういうレースになるかというのは、そのレースをやってみないと分からない部分もあるので状況に応じてそういうことができるように、自分で考えて練習に組み込むようにはしています。
――ラップを見ていると最初の50は速いと思うんですが、その後は1秒落ちくらいずつで刻みたいのかなという感じがします。ご自身ではどう考えていますか
結構200が得意なんですけど、やっぱり前半からいくほうが自分としては合ってるなと考えてます。後半同じラップで刻むというよりは前半から積極的にいって、後半どれくらい我慢できるかという風にする方が得意なので。今までの良かったレースもやっぱりそういうレースプランが多いので、後半いかに前半のレースペースから落とさないかというのが自分の泳ぎ方になっています。
――そういうレースの立て方というのは性格も関係してくると思いますか
実際はあると思いますね。私としては追うのよりも逃げ切っちゃう方が気は楽なんですよね。でも200は後半も同じくらいのペースで最後さすっていう方が良いというのを結構言われますし、そういう方の方が多いと思うんですけど、不安になりがちなので追いつけるかなと思うよりかは逃げ切る方が結構安心して泳げるので、そういう方が合っているのかなという感じです。
――一般的には200メートルの速い選手は100メートルで後半伸びてくるという風な言われ方をすることが多く、浅羽さんも今回解説でそのように言われていましたが、ご自身ではどう思いますか
自分と同じくらいの持ちタイムの人からしたらそんなに後半強くないと思われるかもしれないんですけど、一般的には後半の方が、100メートルは特に前半のスピードが速いわけではないので、速いように見えるんですけど、自分の気持ちとしては後半がすごい速いっていうタイプではないのかなというのは実際あります。
――そうなんですね、どうしても200メートルが得意だと後半に強いという見方をされることが多いですよね
でも他にもいらっしゃると思います。別に200メートルが得意だから後半速いというわけではなくそこそこのタイムを刻めるから200が得意だ、とか。
昨年の悔しさを晴らす表彰台に(右)
「メンタル面が1番変わったのかな」
――インカレで良かったところ、うまくいったことは何かありますか
去年はこの大会でうまくいかなくて、それまでは結構うまくいっていたのでそれが自分のメンタル面としてもすごく、不安要素とかもインカレで生まれてしまって。そこをどうしても今年は変えたいという強い思いがあったので、どんなことがあっても動じずに、冷静に自分のことを見られるようにいたいなということも思っていたので、そういうことができたのはすごく良かったなと思いますし、結構周りの方にも「去年は結構気持ちがバタバタしていて焦っていたけど、今年は結構落ち着いてレースができているね」と声をかけていただくことが多かったので、そういう点ですごく気持ちの面で余裕ができたり、点数を稼いだりっていう、タイムだけじゃなくて別のことにも目を配れるようになったんじゃないかと思います。
――大学でスポーツに取り組むというのは、そういう精神面での成長がすごく大きいのかなと思います
自分のことをすごい分かってあげたいじゃないですか、客観的に見て気持ちを整理できるようになったなっていうのが大学生になって、結果に一喜一憂したりじゃなくて冷静に物事を判断できるようになったのはすごく変わったなって大学生で1番、メンタル面が1番変わったのかなというのは私も思いますね。
――今後に向けて見つかった課題は何かありますか
後半もたなかったというのが明確に分かったレースだったので体力作りもそうですけど、自分の持ち味である楽に速く200メートルにつなげられるかというのを、もっとやっていかなきゃいけないんじゃないかなと。もっと技術面を詰めてから体力をあげていけば、もっとうまくいくようになるんじゃないかなと思います。
――ちなみに今季はオフはとりましたか
一応インカレが終わってから2日半くらいだけ休みましたね。久々の3日間のレースでちょっときつかったので気持ち的に1回休めないと、もう1回頑張ろうと気持ちを切り替えるのが難しいのかなと思ったので、気晴らしに水泳からちょっと離れてみました。
――少し先になりますが、12月の日本選手権で最低限の目標としているタイムなどがあれば教えてください
自己ベストが25秒1なのでそれくらいのタイムを出して4月の日本選手権にはつなげたいなと思っているので、そこで良い泳ぎをもう1回作りたいです。100メートルでは8秒前半とかのタイムやスピード感を持って、200メートルでは自己ベストや自己ベストに近いタイムを出せたらと考えています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 青柳香穂)
◆浅羽栞(あさば・しおり)
東京・八王子学園八王子高出身。スポーツ科学部2年。2020年日本学生選手権では100メートル平泳ぎで1分9秒02、200メートル平泳ぎで2分27秒00でともに3位表彰台に上がった。
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