今年度、女子部には頼もしいルーキーが入部した。牧野紘子(教1=東京・東大附中教校)と佐藤千夏(スポ1=埼玉栄)。世界水泳出場、日本選手権優勝などの華々しい経歴を持ち、これまで国内外を舞台に活躍してきた実力者だ。今年の女子部の目標でもある、日本学生選手権(インカレ)でのシード権には、この2人の存在が欠かせないだろう。今回は、そんな期待の新人お二人にお話を伺った。
※この取材は8月20日に行われたものです。
「いま持っている力をきちんと出す」(牧野)
同世代の選手の活躍が刺激になっているという牧野
――大学に入学してだいぶ経ちましたが、学校は慣れてきましたか
佐藤、牧野 はい、だいぶ慣れました。
――初めてのテストがあったと思いますが、手応えはいかがですか
佐藤 私は高校と変わらず勉強して、たぶん大丈夫だと思います(笑)。
牧野 まだ(結果が)出てないからわからないよね。
佐藤 でもインカレ前でよかったよね、実際。
牧野 それ。でもどっちも嫌じゃない?(笑)。
佐藤 でも安心できるじゃん、落ちてたら嫌だけど(笑)。
――お二人は普段、クラブで練習されていますが、平日はだいたいどんな流れですか
佐藤 1限がない日以外で朝練をやって、大学から帰ってきた後に午後練をしていますね。
――移動時間は結構かかりますよね
佐藤 そうですね。埼玉なんですけど2時間ぐらいかかるので、大変ですね。
――牧野さんはいかがですか
牧野 朝練もありますが、本キャンとクラブと家が近いので、その辺りをぐるぐるしている感じです。
――早大に入学した経緯を教えてください
牧野 一つは、ワセダはトップ選手がたくさんいるので入りたいなと思っていたのと、あと家が近かったのもあったので、交通の便でもいいかなと思いました。
佐藤 水泳部のレベルが高いのと、場所は遠いんですけど、学びたい学部があったので、ここにしました。もともと興味のある学問で、将来はトレーナー系の職に就きたいと思っているので、ちょうどいいかなと思いました。
――お二人は入学前から知り合いでしたか
牧野、佐藤 小学生からだよね(笑)。
――というと、ワセダに行くことはお互いに知っていたのでしょうか
佐藤 うち、(牧野)紘子の知ったのは、、、
牧野 けっこうギリギリでしょ?
佐藤 けっこうギリギリだよ。インハイ(インターハイ)終わった後かな、、国体前だったかも。9月の頭くらいじゃない?でもうちのは知ってたでしょ?
牧野 でも、4月とか5月とかかな。
「個人では優勝を狙う」(佐藤)
最近調子を上げているという佐藤
――ここからは春シーズンを振り返りたいと思います。牧野さんは、今年は惜しくも代表を逃してしまいましたが、春シーズンはいかがでしたか
牧野 日本選手権で代表を決めるというのを目標でやっていたんですけど、練習もあんまりうまくいってなくて、落ちてしまいました。え、待ってすごく暗くなっちゃう(笑)。
――ケガをされていたそうですが、その影響もありましたか
牧野 腰を故障して、冬にちゃんと泳げていなくて、それが春に響いてという感じです。
――先日のパンパシフィック選手権では、持田早智選手(日大)が銀メダルを獲得しましたが、そういう結果は刺激になりますか
牧野 そうですね。種目にかかわらず、私たちの世代は(日本)代表になっている人が多くて、パンパシでも、今のアジア(大会)でも、活躍している人がたくさんいるので、刺激にはなってます。
――佐藤さんは自由形長距離が専門ですが、4月5月を振り返ってみていかがでしたか
佐藤 私も代表を狙っていました。今年が一番チャンスだと思っていたので、去年くらいのタイムだと選ばれていたんですけど、いざって時に限って自分の力を発揮できないことが多くて、今年もそれをやってしまって、反省点がいっぱいです。
――春シーズンを経て、具体的な改善点は見つかりましたか
佐藤 私は昔からメンタルの部分が他の選手に比べてすごく弱いので、そこをどうやって強化していくかですね。
――では春シーズン後に重点的に取り組んだことはありますか
佐藤 泳ぎの改善です。私は4月5月の大会で泳ぎがかなり崩れていたので、もとの泳ぎに戻すのではなくて新しいことを取り入れることになって、見えない部分ではあるんですけど、ちょっとずつ変えて、今のところうまくいってるのかなと思います。
――7月には初めての早慶戦がありましたが、いかがでしたか
佐藤 私あれだ、競泳以外の水泳種目を見たことがなかったので、観戦が楽しかったです。
牧野 確かに、楽しかったよね。
――1日に複数レースをこなしたと思いますが、体力的にはいかがでしたか
牧野 けっこうきつかったですね。でも最後が8継(800メートルフリーリレー)で、きつかったですけど、応援などプールサイドで盛り上げてくれて、踏ん張れました(笑)。
――そもそもお二人は、どのような経緯で水泳を始めたのでしょうか
牧野 私は兄がいて、兄が水泳を始めようとしていたか何かで、一緒に(スクールに)入れられました。
――何才くらいでしたか
牧野 曖昧なんですけど、2歳くらいだと思います。
佐藤 私は、今とは違うスイミングなんですけど、幼稚園とスイミングスクールが一緒になっていて、幼稚園の授業の中でスイミングの授業があって、そこで始めたと思います。4歳くらいだったと思います。
――それぞれ専門種目があると思いますが、その種目に特化したのはいつ頃からでしょうか
牧野 私は、個人メドレーは本当に昔から、小学校1年生で選手になって以来ずっと泳いでいます。バッタ(バタフライ)はまた最近、高校2年生になって速いんじゃないかということで泳いだら(タイムが)良かったという感じです。
――コーチから勧められたというのはありますか
牧野 クラブが長谷川(涼香、日大)と一緒なんですけど、一緒に隣で泳いでいて、「紘子もタイムがいいんじゃないか」と言われて(大会に)出てみたらよかったです(笑)。
――佐藤さんはいつ頃から長距離を泳いでいますか
佐藤 私は、中1の秋か冬くらいかなと思います。小学生までは個人メドレーとかやってて、中1の時に腰を痛めて個メ(個人メドレー)が難しくなって、中1の秋の大会は長距離の練習は特にしてなかったんですけど、じゃあ800メートル出てみるかって言われて長水路で初めて泳いだら、思いのほか速くて、じゃあ来年から長距離でいこうと言われて。トントン拍子でこのまま来ちゃいました(笑)。でも全国デビューしたのは中2からですね。800メートルと400メートルに出ました。
――これまでの競技人生で、印象に残っているレースはありますか
佐藤 過去最高に楽しかったのは高1の時ですね。調子がすごく良くて、(800メートル自由形で優勝した)日本選手権が一番楽しかったかなー。
牧野 私もメンタル弱くて、ここって時にタイムや順位が出ないことが多いんですけど、一つは中3の全中(全国中学校水泳競技大会)の2個メ(200メートル個人メドレー)です。2日目にあったんですけど、1日目に今井月(豊川高)、持田早智(日大)、長谷川涼香(日大)、璃花子(池江、ルネサンス亀戸)もかな、わからないですけど、中学新をみんな出したんですよ。で私だけ大会新しか出せなくて、自分の中学新を更新できなくて、すごいそれが悔しくて。そんな中、2日目に2個メがあって、中学新を出すことができて、その「絶対出す」という気持ちが結果となって表れたのがすごい印象に残っています。もう一つは、(去年の)世界水泳の選考会ですね。初めて(日本)選手権でちゃんとした自分の満足できる泳ぎができたのが、その時かなと思ってます。
――誰かが新記録を出すと、私も出したいというような気持ちになりますか
佐藤 1人だけ出したらすごいで終わるけど、みんな連続で出されちゃうと、私も出さなきゃみたいな(笑)。
牧野 確かにみんな出すとね(笑)。オリンピックの時もそうです、リオのオリンピックの時にも中高生がみんな行ったんで、その時はけっこう悔しかったです。
――自分の泳ぎで、他人に負けないポイントはありますか
牧野 最近自信をなくしているからなんとも(笑)。
佐藤 同じ同じ。絶頂の時はいくらでも言えるよね(笑)。
牧野 でも私のバッタ(バタフライ)は、プルはちょっと弱いんですけど、キックはまあまあ速い方だと思っていて、バテて後半きつい時にでも、キックで前に進むことはできているかなと思います。でも腰を痛めてからそんなにやらなくなって、今やっとできるようになったんですけど、1番よかった時に比べると劣っていますね。
佐藤 えー、私なんだろ(笑)。私はどれも特別速いのがなくて、キックもプルも周りと比べると特別速くなくて、でもそんな遅くもなくてみたいな感じです。きっとバランスの良さです。
――高校と大学で、練習量や練習内容に変化はありましたか
牧野 私は、今までは朝練を合宿の時しかやっていなかったんですけど、大学になって1限がない時とかは、朝練も入るようになりました。なんで泳ぐ距離のトータルは増えたのかなと思います。
――慣れるまで大変ではなかったですか
牧野 最初の4月5月は慣れていなくて、練習回数が多くなってメイン練習に力がうまく入らなかったりしていました。でもそこが変わったかなと思います。
――佐藤さんはいかがですか
佐藤 朝練も中学生からやっていたので、私は特に変わってないですかね。でも高校生の時より1時間くらい朝練が遅いので、睡眠時間を確保できて嬉しいというのはあります。朝練の時間は30分くらい増えているので、トータル距離は少し増えていると思います。
――ワセダの水泳部には渡辺一平さん(スポ4=大分・佐伯鶴城)や渡部香生子さん(スポ4=東京・武蔵野)といった先輩がいらっしゃいますが、大学に入学して印象は変わりましたか
佐藤 学外の人も一緒に練習する合同練習で、(渡部)香生子さんが隣を泳いだりすると、負けたくないなと思ったりしますね。ちょっと前まで一緒に泳ぐとは思わなかったので、ちょっと幸せというか。
牧野 リレーとか一緒のチームとして出るので、その時は不思議な感じになることはあります(笑)。
――女子部は人数が少ないですが、女子同士の仲はいいですか
牧野 私は学外練習に行ってないので、あんまりわからないですけど、マネージャー含め、同期の仲はいいと思います
日本代表も見据えて
普段から仲がいいというルーキーコンビ
――普段気分転換したい時には何をしますか
牧野 何してる?
佐藤 なんか体に悪いもの食べてそう(笑)。
牧野 時期にもよりますけど、シーズンオフとかの時は、マックとか食べたりします(笑)。普通の強化期間のリフレッシュとかは、テレビとか観てめっちゃ笑ったりとか、一人で歌を歌ったりとか発散してます(笑)。
――オフの時期だとジャンキーなものを食べる機会も増えますか
牧野 そうですね、あとは必ずコーラとポテトチップスを食べるっていう(笑)。
佐藤 そう、私そのイメージしかないわ(笑)。
牧野 でも、それは年に1回しか食べないんですよ私。コーラはたまに飲みますけど、シーズンオフの1日目に絶対ポテトチップスを買って、食べるっていうのはあります。
佐藤 わからない私には(笑)。
――恒例行事になっているんですね
牧野 はい。あとアイスとか買って、すごい体に悪いものを食べるっていう(笑)。でも年1だから。
佐藤 私は日によるんですけど、、、
牧野 寝てそう。
佐藤 寝るか、アニメと漫画見るか、散歩するかって感じですね。最近はアニメ漫画ゲームが多いかな(笑)。
牧野 なんかうちら何もしてなくない?(笑)
佐藤 引きこもってるよね(笑)。
――最近はどんな漫画やアニメを見ますか
牧野 うち知らない、初めて聞くかも。
佐藤 アニメは、、、
牧野 やばい、オタクが出てきちゃう(笑)。
佐藤 たぶん知らないもんみんな。マニアックなものです(笑)。ゲームはちょっと前までポケモンやってて、最近はPSPで無双系をやってます。人をバタバタ倒してます(笑)。
一同 (笑)。
――最後にインカレに向けてお話を伺います。現在のコンディション、仕上がり具合はいかがですか
佐藤 私は、徐々に上がってきている感じで、うまく合わせられればベストが出るかなと思います。
牧野 私は正直そんなに自信はないんですけど、この前の関カレ(関東学生選手権)でもそんなにコンディションが良くなくても自分が思っていたよりはいいタイムが出たので、自分を信じれば速く泳げるのかなと思います(笑)。
――初めてのインカレですが、率直にどんな気持ちですか
佐藤 覚悟を決めてるところです(笑)。去年のインハイと比べると日程が厳しくて、トータル距離もすごく多くなるので、覚悟していかないと途中で心が折れてしまうと思うので。心の準備は今からしています。
牧野 私は、高校の時インハイとか学校で1人しか出ていなかったんですよ。水泳において強豪校じゃない高校に行っていたので。インカレの盛り上がりは去年とかテレビで観ていて、そういったのはすごい楽しみです。でもその分リレーとかもあるので、覚悟もしなきゃなとも思っています。
――ちなみに個人種目は何に出場する予定ですか
佐藤 400メートル自由形と800メートル自由形です。
牧野 私は200メートルと400メートルの個人メドレーです。
――レース直前はどのようにして気持ちを高めていますか
佐藤 音楽とかは絶対聞かないです。大会の1週間くらい前から聞かないですね。
牧野 (頭の中に)流れちゃうんでしょ?
佐藤 そう、流れちゃう。集中力が切れちゃいますね。
牧野 去年誰かから聞いたことなんですけど、最近心が折れそうになった時は、「できる」っていうのを連呼してます。そしたら意外とできるかもと思えるんですよ。けっこう人間て単純です(笑)。私マイナスなことも考えちゃうんで、そういう不安なことを考えないようにするために、ポジティブなことを声に出したら変わっていくかなという感じでやっています。
――招集所では、音楽を聴く人もいれば会話をする人もいると思いますが、どう過ごされていますか
佐藤 私、話したい人です。
牧野 私も話したいかも。でも、招集所に話せる人がいるかっていう。
佐藤 そこだね。
牧野 すごい仲がいい人がいれば話すんですけど、いなかった時は静かに集中してます。
佐藤 招集所の雰囲気もあるよね。すごいピリッとする時もあるんですよ。そういう時は大人しく静かにしています。(日本)選手権とかそれが嫌なんだよね。話せないから
牧野 わかる。でも長距離はうるさいよね(笑)。
佐藤 長距離はうるさめですね。オリンピックイヤーでなければ。
――インカレにおいて、他大学の選手で意識している選手がいれば教えてください
牧野 200メートル個人メドレーは、中央大学の大本里佳さんていう選手がいて、今年の日本選手権が3番で、私よりベストタイムも速いので、200メートルは大本選手を意識しながらという感じになるかなと思ってます。400メートルはけっこう速い時と遅い時の差が選手によってバラバラなので、わからないんですけど、自分との戦いをしつつ、少し周りも意識しながら。
佐藤 800メートルは日体大の森山幸美選手で、去年からずっと負けてるので勝ちたいです。400メートルは、明治大学の石井茉宏選手かなと思います。でも400メートルでいえば、自分で出したいタイムがあるのでそれに集中したいと思います。
――4年間の大学生活で成し遂げたい目標はありますか
牧野 出たい大会なら東京オリンピックになるよね(笑)。
佐藤 ちょうど3年生だもんね(笑)。来年あたりでも1回代表になりたい。
牧野 ずっと代表になってたいです。その時だけじゃなくて、安定してトップに立てるような選手になりたいです。
――最後にインカレへの意気込みをお願いします
佐藤 初めての大学での大きな大会になるので、楽しみつつ、リレーでは足を引っ張らずに、、、ネガティブかな(笑)。個人では優勝を狙って頑張ります。
牧野 今持っている力をきちんと出して、女子はシード校奪還を目標にやっているので、それに少しでも貢献できたらいいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 大島悠輔)
『勝つ』泳ぎで優勝を狙う2人に注目です!
◆牧野紘子(まきの・ひろこ)(※写真左)
1999(平11)年8月20日生まれ。163センチ。東京・東大附中教校出身。教育学部1年。終始笑顔で対談に応じてくれた牧野選手。なんとこの日は偶然にも19歳の誕生日でした。素敵な1年になることを願っています!
◆佐藤千夏(さとう・ちなつ)(※写真右)
1999(平11)年6月10日生まれ。165センチ。埼玉栄高出身。スポーツ科学部1年。練習場所が違うこともあり、今まで牧野選手と遊ぶ機会がなかったという佐藤選手。現在は一緒に映画を観に行けるよう、予定を調整中だそうです!