【連載】『第90回早慶戦直前特集』【第4回】井上奨真

競泳

 創部から110年以上にもなる伝統ある早大水泳部。その部員たちを引っ張るのが井上奨真主将(スポ4=県岐阜商)だ。部が一年の集大成とするのは日本学生選手権(インカレ)。そこへのステップとして臨む早慶戦に向けて、主将の意気込みを伺った。

※この取材は6月23日に行われたものです。

「チームの雰囲気はいいです」

主将としてチームをまとめている井上

――まずチームとして早慶戦はどのような位置づけで臨んでいますか

 早慶戦は男女とも優勝を最低限の目標として取り組んでいます。チームの今年の目標は男子はインカレでの総合優勝、女子はインカレでシード権を獲得するというものなので、それに向けて一つのステップというかたちで捉えています。

――今のチームの調子や状態はいかがでしょうか

 今年に入ってみんな自己ベストが出たりとか、日本代表に入ったりとかして、チームの雰囲気はいいです。結果もですし、普段の練習もとてもいい雰囲気でできているので、早慶戦での結果も期待できるんじゃないかなと思っています

――きょうも朝練後に取材させていただいていますが、普段は朝練が中心なのですか

 いえ、曜日によって違います。月曜に朝練と午後練、火曜は午後練だけ、水曜は朝練と午後にウエイトなど陸上トレーニング、木曜は午後練、金曜は朝と午後、土曜は朝練と陸上トレーニングっていう感じで(笑)。授業もあるので、それに合わせて時間も変えています。

――練習は男女で分かれてやっていらっしゃるのですよね

 そうですね。男子は寮があってプールも近いのでみんな学内で練習しているんですけど、女子は各自クラブとかでやっている人が多いです。

――水泳は個人競技ではありますが、対抗戦独特の雰囲気はありますか

 やっぱり普段は個人でやっているので自分のレースと思って取り組んでいる選手が多いんですけど、対抗戦になると一人一人の得点がすごく関わってくるので、責任感があります。やっぱり自分のレースというよりもみんなのためにっていう気持ちが強くなっていますね。

――責任感という意味では早大は選手が少ないだけに一人一人の出場種目も多くなりますが、その部分での厳しさはありますか

 結構きついですね。僕も割と多くの種目に出ている方なんですけど、多い選手だと一日に何レースもというかたちなので、監督(奥野景介総監督、昭63教卒=広島・瀬戸内)もよく言っているんですけど、一人一人がタフな選手にならなきゃいけないっていうのはチームの中でも課題、目標としてトレーニングしています。

――井上選手自身は次の早慶戦ではどの種目に出場する予定ですか

 今のところ、個人では200メートルと400メートルの自由形に出場する予定です。多分800メートルのリレーにも出場すると思います。

――自由形2種目は3年連続で優勝していますが、今年も2冠というのは意識しますか

 今のところ1年生から優勝し続けているので、最後まで2冠、4連覇は最低限の目標です。よければ大会新記録とか記録としても残るように頑張りたいですね。

――大会新記録だとどのくらいのタイムになってきますか

 400メートル(の大会記録)は自分が持っているので、自分の記録を更新できるようにというところです。多分200メートルは瀬戸大也選手(平29スポ卒=現ANA)が持っているので、大也さんの記録を超えられるように頑張ります。

――そのタイムを狙うにあたって今のご自身の競技の調子はいかがですか

 今年に入っていい結果が残せていなくて、競技の方には不安があるんですけど、この早慶戦で一つレベルアップというか、今シーズンの嫌な流れっていうのを断ち切って、インカレに向けていきたいなと思っています。

――日本選手権やジャパンオープンでは苦しい結果だったとは思いますが、あの二つの試合は今振り返ってみていかがでしたか

 気持ち的に集中できていなかった、体調不良とかもあったりしたっていうのがあります。自分自身の力不足ではあるんですけど、そこが原因だったのかなと思います。

――今はその部分はいかがですか

 今はもうだいぶ吹っ切れてこれから夏に向けてっていう気持ちで頑張れていますし、早慶戦も最後なのでちゃんと頑張りたいなと思っています。

――ここから主将としての面を伺いたいのですが、主将に決まったのはいつ頃でしたか

 ちょうど去年の早慶戦頃かな。一年前くらいですね。

――主将というのは元々考えていらっしゃったのですか

 水泳部の主将の決め方って後輩からの投票なんです。でももちろんそうやって選んでもらってやるからには責任を持ってちゃんとやりたいなという気持ちはあったので、主将として頑張ろうという気持ちではありました。

――主将としてチームをまとめる上で意識していることはありますか

 やっぱり競技力で引っ張っていくっていうのは、後輩たちにも競技力がとても高い選手たちがいるのでそれは難しい面もあるのかなっていうのは一つ思っていて。なのでコミュニケーションだとか、チームの雰囲気っていうのを大切にして取り組んできたつもりです。

――今まで3年間それぞれに水泳部の姿があったと思うのですが、今年の水泳部の特徴はありますか

 やっぱり仲が良いですね。上下関係もちゃんとある中でコミュニケーションをちゃんととっているので、みんなが楽しめているなっていうのはあります。

――特に仲の良い後輩はいらっしゃいますか

 今井流星(スポ2=愛知・豊川)、1年の大﨑(威久馬、スポ1=神奈川・桐光学園)は寮で同じ部屋なので毎日楽しく過ごしていますね。

――オフの日はどう過ごしていらっしゃいますか

 この間とかは同じ部屋のメンバーと森本(健太、スポ3=東京・早実)と日帰りで軽井沢に遊びに行ったりしましたね。仲良しです(笑)。

――ご自身が主将になられてから対抗戦は冬と春に六大学戦をやっていますが、その2試合はいかがでしたか

 冬の方は総合優勝を目指していたんですけど惜しくも2位というかたちで、チームの中でもみんな悔しいという気持ちを持ったと思います。その結果を受けて春に向けてもっと頑張ろうという気持ちで取り組んだ結果、春には同点だったんですけど1位という結果をとれたこと、また同着の相手もインカレで優勝している明治大だったので、全員が自信を持てる結果だったのかなと思います。

――インカレを意識する中で、早慶戦では優勝という結果以外でこだわりたい部分はありますか

 ワセダってインカレに出場するためにワセダ基準というものがあって、それを突破する選手はこの早慶戦で多く出したいなっていうのはもう一つの目標です。自己ベストとかももちろんなんですけど、まずはインカレに出場する権利を多くの選手がとってほしいなっていうのは思います。

――ワセダ基準はかなり厳しいタイムに設定されているのですか

 前年のインカレの24位のタイムをワセダ基準として設定しています。出場するからには得点圏内の選手がという気持ちで組んでいるので、それなりのタイムが必要にはなってきますね。

――井上選手が考える今年の早慶戦の見どころや注目選手はいらっしゃいますか

 とても頼もしい1年生たちが入ってきたので、1年生には結構注目しています。1年生のこの時期は環境が変わってタイムが出なかったりっていうのがあるんですけど、練習にも毎日集中して取り組んでいるので、ルーキーたちの活躍っていうのは期待している部分が大きいです。

――1年生たちはもうチームにすっかり馴染んでいる様子ですか

 そうですね。みんな楽しそうにやっているので大丈夫かなと思います。

――そこは主将としても意識して声掛けなどしているのですか

 元々僕が勧誘して入ってくれているんですよね。3年生の時に僕が勧誘担当で、彼らが高校生のときからずっと試合を見ているので、そういうのも生かしてコミュニケーションをとるようにしています。

――勧誘も選手がされるのですか

 毎年2、3年生が担当しています。今の1年生は高校2年生くらいのときから知っているので、弟みたいな感じですね。僕も1年生の頃の4年生って憧れの存在というか、近寄りがたいところもあったし、自分から声を掛けたりっていうのは緊張してできなかったところもあって。そういうのを自分も経験していたので、なるべくこっちから「最近の調子はどう?」みたいなかたちでコミュニケーションをとるようにしています。

――同期の方とは練習する上での役割分担みたいなのはありますか

 それは3年生のときに結構やっていました。3年生に委員会っていうのがあって、そこでチームをどう運営していくかみたいなのを考えて。なので4年生は結構引っ張っていくだけという感じです。目標をちゃんと後輩たちに示して、手本となるように、ついてきてもらえるようにチームをつくっていくっていうのを、同期の中では心掛けています。

「目標は大会新記録で2種目とも優勝することです」

最後の早慶戦ではどんなレースを見せてくれるのか

――改めて早慶戦のことについて伺います。早慶戦は普段ない種目が行われたり、お祭り要素もある試合だと思いますが、そこは選手の皆さんも楽しみにしていますか

 普段は水球の試合とかもあまり見れないですし、普段関わる機会のない人たちと関わる機会でもあるので、そういうところはすごく楽しみではありますね。

――普段は水球部門とは全く別で活動していらっしゃるのですか

 一緒の寮では暮らしています。でも試合を見る機会はあまりないので、(早慶戦では)普段一緒に暮らしている選手が頑張っているのを見ると、僕も頑張ろうっていう気持ちになってレースにいけたりします。お互い刺激し合えるっていうのが早慶戦のいいところかなって思います。

――今年はインターネットでの配信もあるそうですが

 そうなんです。すごいいい機会を与えてもらってありがたいなって思います。やっぱりそれっていろんな方が協力してくださってできているので、選手たちの方も一生懸命盛り上げられるように頑張りたいなと思います。

――では最後に個人としてもチームとしても、早慶戦やその先の目標を改めてお願いします

 早慶戦の個人の目標は大会新記録で2種目とも優勝することです。チームとしてはケイオーに勝って優勝っていうのと、一人でも多くの選手がワセダ基準を突破することが目標です。早慶戦後はやはり早慶戦の結果を踏まえて、インカレの総合優勝に向けてもう一回力をつけていけるように頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 吉田優)

◆井上奨真(いのうえ・しょうま)

1996(平8)年7月25日生まれ。176センチ、70キロ。O型。県岐阜商高出身。スポーツ科学部4年。色紙に書いてくださった言葉は『凛』。今年の水泳部のスローガンなのですが、そのスローガンに決めた理由を伺うと「去年のインカレ後のオフに、富士山に登った先にこれが見えました」とのこと。近くにいた森本主務は「絶対嘘じゃん!」とおっしゃっていましたが、真相はいかに・・・?