今季、自己ベストを複数回更新する活躍を見せ、国内トップレベルの大会でも表彰台に上っている竹内智哉(スポ2=神奈川・湘南工大附)。決して簡単ではない個人メドレーでの日本代表権獲得に向け、一歩一歩着実に進んでいる。そんな竹内に、春シーズンの振り返りや早慶戦に向けての意気込みを語っていただいた。
※この取材は6月23日に行われたものです。
「トップレベルの選手と練習できるのは強み」
今シーズンは背泳ぎに力を入れている竹内
――まずは春シーズンについて伺います。3月のアメリカ高地合宿ではどんなことをメインに取り組みましたか
僕は去年から個人メドレーで背泳ぎがうまくいかず、後ろにつながらないことが多かったので、高地合宿では監督(奥野景介総監督、昭63教卒=広島・瀬戸内)と話した上で背泳ぎを特に意識しました。
――合宿では特別なメニューなどがあったのでしょうか
違ったメニューはそんなになかったですね。ただ最初の1週は高地の酸素が薄い状態になれる意味もあって、練習も普段より軽めのものをして2、3週目でしっかり平地と変わらない練習をするというのはありました。
――食事や生活面はいかがでしたか
ピザやパスタなどカロリーが高いメニューが多かったですね。僕は食べ過ぎないように気をつけました。あとはお米を現地でも食べられるように準備していたので、食に関して特に困ったことはなかったです。昼は学食を食べることが多かったのですが、飽きることもあったので夜は日本食を食べることはありました。海外と聞くと食で大変というイメージがあるんですけど、今回は充実していました。
――4月の日本選手権は、合宿の成果が出ているなと手応えはあったのでしょうか
日本選手権の最初の種目が400メートル自由形だったんですけど、そこで監督とも話して、この種目で大会の感覚などをつかむようにしました。自己ベストも更新することができましたし、気持ち良く泳げたのでそこで手応えは感じました。
――日本選手権での具体的な目標は何でしたか
とりあえず自己ベストを出すことは目標にしていて、大学1年生の時よりも順位を上げたいという気持ちはありました。でも個人メドレーとなると、萩野選手(萩野公介、ブリヂストン)や瀬戸選手(瀬戸大也、平成29スポ卒=現ANA)など飛び抜けて速い選手がいるので、そこを退けて代表になるというイメージが今まで湧かなかったのですが、400メートル個人メドレーではベストタイムを更新して3番に入れたということで、代表にも近づいてきたのかなという自信にもなった大会になりました。
――5月のジャパンオープンでは萩野選手に競り勝つ場面もありましたが、あのレースを振り返ってください
ジャパンオープンでは、特に日本代表に決まっているメンバーはここで頑張るのではなくて、夏に向けて頑張るので、あくまでも通過点の試合です。ここで勝ったからといって自分の方が速いとかそういうのはなかったです。ただ多少自信にはなったかなと思います。
――しっかりと調整して臨む夏の大会で勝ったのとは別ということでしょうか
そうですね。やはり僕が勝ったと思えるとしたら、彼らの自己ベストに近いタイムで泳ぐのが必要で、そうなったら勝負ができるぐらいになったなと実感が湧いてくるんじゃないかと思います。
――そもそも水泳という競技を始めたきっかけは何でしょうか
たぶんベビースイミングで0歳くらいからスイミングに通い始めたと思います。水泳をしていると体が丈夫になるというのもあったので、両親の影響を受けてです。
――大学にワセダを選んだ理由はどこにありましたか
大学を決める年がリオオリンピックで、4月の日本選手権の時点で坂井聖人選手(平成30スポ卒=現セイコー)や渡辺一平選手(スポ4=大分・佐伯鶴城)などが代表に選ばれていました。高校生の頃から顔見知りくらいの仲だった一平さんや、2015年のパンパシくらいからテレビで観ていた聖人さんや中村克さん(平成28スポ卒=現イトマン東進)という方々が選ばれていて、ワセダが乗りに乗っている感じが伝わってきたので、それを感じて返事を出したというのはあります。夏のオリンピックの結果を見て、改めてここで頑張ろうと思いましたね。
――実際に入学して、環境はいかがですか
他大学と比べて1番違いを感じるのが、代表クラスの選手と同じ在学中に一緒に練習できて、しかも寮で過ごせているというところです。代表を身近に感じられるという面ではとても刺激があります。同年代の幌村(幌村尚、スポ2=兵庫・西脇工)も世界ジュニアで優勝したりしていて、種目は違いますがトップレベルの選手と練習できるのは強みだと思います。
――練習面で、高校時代とギャップを感じたのはどんなところですか
大学では朝練があって、6時半に体操開始とかです。僕のクラブは平日の朝練がなかったので、そこはいまだにしんどいですね(笑)。
――いつも何時くらいに起きていますか
僕は5時50分くらいに起きて、朝ご飯を食べて練習に行っています。
――これまでの水泳人生で、印象深いレースはありますか
印象に残っているのは、2番で負けてしまった中学3年生の時の全中(全国中学校水泳競技大会)ですね。もともとその年の春のジュニアオリンピックカップでは自由形で優勝して自信もついていたんですけど、夏前にフォーム改善を試みたところ全然はまらなくて。タイムも伸びないし泳いでいても気持ちよくないし、嫌な時期でした。タイムが伸び盛りの中学生なのに0.1秒くらいしか(タイムが)上がらなかったので苦い思い出です。今まで水泳をやってきた中で、どんな勝ちよりもそこの負けが1番頭の中に残っています。
――その時期は挫折でもあったのでしょうか
当時は自由形の選手だったんですけど、その後個人メドレーを泳いだらタイムが良かったので、高校1年生からは個人メドレーに転向しました。ある意味挫折でもありますし、僕の転機でもあったのかなと思います。
「前半からいくレース展開をしたい」
早慶戦でも自己ベスト更新に期待がかかる
――いまのチームについても伺います。2年生同士の仲はいかがですか
だいぶ仲がいいと思います。1年生の時だと仕事で一緒にいる場面が多かったですけど、2年生になると一緒にご飯を食べに行ったり、遊びに行ったりしているので。
――オフの日は何をしていますか
今までは寮からあまり出ずに寝て過ごすことも多かったんですけど、最近は外に出ようと心がけています。
――井上奨真主将(スポ4=県岐阜商)はどんな先輩ですか
クールな感じが強いと思うんですけど、盛り上げるところは盛り上げてくれて、面白い先輩です。
――最後に早慶戦について伺います。今の練習で重点においていることは何ですか
基本は背泳ぎを重点的にやっていますね。春の日本選手権とジャパンオープンのラップタイムを見ても、平泳ぎと自由形は強くなっていて、トップでも戦えるくらいになってきています。ただ前半のバタフライと背泳ぎでは置いていかれているので、今まで以上に前半から上げていくのをしばらく強化していきたいなと思っています。早慶戦には400メートルの個人メドレーはないんですけど、前半からいくレース展開をしたいなと思っています。
――団体戦で戦うという意味ではどうですか
僕は神奈川県出身なので、慶応には結構友達がいます。対抗戦ですけど、顔見知り同士で面白いレースができると思っています。会場にも早慶2校しかいないので、雰囲気もガラッと変わるかなと。
――最後に意気込みをお願いします。
レースに絶対負けないというのもありますが、己に勝つという意味でも頑張りたいなと思います。個人メドレーでは前半からしっかりといって、魅せるレースをしたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 大島悠輔)
早慶戦では『覚醒』に期待しましょう!
◆竹内智哉(たけうち・ともや)
1998(平10)年7月31日生まれ。177センチ、73キロ。A型。神奈川・湘南工大附属高出身。スポーツ科学部2年。萩野公介選手に競り勝ったジャパンオープン後には「持ちタイムは向こうの方が速いので、勝った気はしていない」と話した竹内選手。その高い向上心が好調の秘訣(ひけつ)なのかもしれません!