4日間にわたる日本選手権が閉幕した。1月に男子200メートル平泳ぎの世界新記録を樹立し、この大会での記録更新を目標に掲げていた渡辺一平(スポ3=大分・佐伯鶴城)は、決勝で小関也朱篤(ミキハウス)に惜しくも敗れ、2位に終わった。また、男子100メートルバタフライでは幌村尚(スポ1=兵庫・西脇工)が男子200メートルバタフライで優勝した坂井聖人(スポ4=福岡・柳川)らを破り、2位につけるも世界選手権への派遣標準記録には及ばなかった。また、坂井も3位に終わった。悔しい結果となった最終日だったが、それぞれに課題の見つかる1日となった。
★ラスト50で逆転され・・・無念の2位
惜しくも2位に終わった渡辺
「精一杯やれることはやった」。そう話す顔には悔しさがにじみ出ていた。男子200メートル平泳ぎに世界記録保持者としてのプレッシャーを感じながら挑んだ渡辺一平(スポ3=大分・佐伯鶴城)。予選を1位で通過すると、決勝で渡辺の隣を泳ぐのは、今大会男子50メートル、100メートル平泳ぎの覇者・小関也朱篤(ミキハウス)。「小関さんとのレースを楽しみたい」と、何度も口にした渡辺は、いつものレース展開とは真逆の、前半から思い切って飛ばす展開を繰り広げる。前半を1分01秒22と、自身の世界記録を0秒11上回るタイムで折り返し、このペースを維持したいところだったが、後半になると、隣のレーンを泳ぐ小関との距離が縮まっていく。「ラスト50はもう浮いてしまっているのは分かっていました」。追い上げる余力もなく、2位でフィニッシュ。悔しい結果となってしまった。今回のレースを振り返って、渡辺は「後半バテてしまうという課題が明確になった」と話す。世界選手権に向けて課題克服を試み、世界の舞台で世界最速を目指す。
(記事 大谷望桜、写真 杉野利恵)
★地元で念願の自己ベスト更新
大舞台での自己ベスト更新、それはきっと大きな自信に繋がるだろう。男子50メートル自由形に出場したのは、古川慎一郎(スポ3=長野・佐久長聖)。予選で22秒94と、自己ベストを0秒37上回る記録をたたき出すと、見事B決勝にコマを進めた。「念願だった22秒台がようやく出て、本当に嬉しい」と、話す古川は、実は愛知出身。地元での好記録に、思わず笑みがこぼれた。全国大会で1日に2度泳ぐのは初めてというB決勝では、自己ベストをふたたび更新することはできなかったが、「日本選手権という大きな舞台でB決勝残れたということ自体はすごくありがたい機会だ」と、満足げな表情を見せた。そんな古川のことしの目標は、日本学生選手権(インカレ)で自ら得点を稼ぐこと。古川や井上奨真(スポ3=県岐阜商)などの男子自由形勢のレベルアップが見られる大会となった。春季六大学対抗戦(春六)やインカレではチームの総合的な力が必須なだけに古川や井上の成長は、チームにとっては大きな収穫となっただろう。日本選手権での貴重な経験を糧に、さらなる成長に期待したい。
(記事 大谷望桜)
★幌村準Vも代表権には届かず
幌村のこれからの成長に期待だ
前日の男子200メートルバタフライで3位に終わり、惜しくも男子200メートルバタフライでの世界選手権への代表権獲得とはならなかった幌村。前日の雪辱を果たすべく男子100メートルバタフライに臨んだ。「100メートルよりは200メートルの方が得意だと思っていたので、びっくりしている」と予選後に語っていた幌村だったが、予選を2位で通過し、勢いそのままに決勝へ。50メートルを4位で折り返すも、残り50メートルで一気に追い上げ、2着でゴールイン。しかし、タイムは世界選手権への派遣標準記録には届かなかった。男子200メートルバタフライの覇者坂井や瀬戸大也(平29スポ卒=現ANA)を破っての2位。目標としていた存在を上回り、自己ベストも更新した。世界選手権へあと一歩のところまでいっていただけに人一倍悔しい結果になった。スタートの技術やターンなどまだまだ伸びしろがある。切磋琢磨(せっさたくま)できる存在、コーチやマネージャー、施設など幌村をレベルアップさせる要素がワセダにはそろっている。来月のジャパンオープンや9月の全日本学生選手権では、一回り大きくなった幌村が表彰台の頂点を独占している。そんな予兆を感じさせられる。
(記事 石田耕大、写真 杉野利恵)
結果
◇決勝
男子100メートルバタフライ
幌村 52秒15【2位】
坂井 52秒44【3位】
男子200メートル平泳ぎ
渡辺 2分07秒60【2位】
◇B決勝
男子50メートル自由形
古川慎一郎(スポ3=長野・佐久長聖) 22秒【位】
◇予選
男子50メートル自由形
古川 22秒94【11位】
男子200メートル背泳ぎ
丸山優稀(法1=埼玉・大宮) 2分04秒59【27位】
大芦知央(スポ2=大阪・関大北陽) 2分06秒10【34位】
男子100メートルバタフライ
幌村 52秒44【2位】
坂井 52秒83【6位】
男子200メートル平泳ぎ
渡辺 2分09秒41【1位】
今井流星(スポ1=愛知・豊川) 2分19秒49【48位】
コメント
決勝進出者
坂井聖人(スポ4=福岡・柳川)*囲み取材から抜粋
――悔しいですか
もう悔しいですね。ちょっと納得はいっていないです。
――どのような点が納得いってないのですか
もちろん51秒台を狙っていましたし、正直決勝前のアップからあまり感覚良くなくて、どうなるかと思ったんですけど、結果52秒4かって、リレー枠にも入れず、後輩の幌村(尚、スポ1=兵庫・西脇工)にも負けて、ちょっと情けないっていうのが今の正直な気持ちです。
――体の疲れなどは気になりましたか
身体的にもやっぱりダメージありましたし、朝からちょっと重かったので、それもあると思うんですけど、きのう2バタ(男子200メートルバタフライ)泳いだ人たちは一緒の立場で(男子)100メートル(バタフライ)に臨んでいるので、後輩の幌村とかも、同じ状態で52秒1でいっているので、僕のただの力不足で終わりました。
――感覚が良くなかったとのことですが
決勝前のアップから正直全然感じが良くなくて、いつも決勝のアップってなるとスピード乗って順調にいけるんですけど、今回まったく体が動かない状態で、決勝に臨んで、とりあえずアドレナリン出してどうにかしようというのがあったので。確かに泳ぐ前から51秒は難しいなというのが自分の中であって、最低ラインの52秒前半くらいは出そうかなと思って、52秒4だったので、悪い感じはしないんですけど、代表枠を狙っていたので、悔しい気持ちもありつつ、情けないっていうのが一番強かったですね。
――世界選手権への課題というのはどういったところですか
今回のレースは、100のスピードの課題をもって結構やっていたんですけど、そのタイムが実際についてきてなくて、もちろん51秒狙っていたので、52秒4っていうので課題克服というのがまったくなっていないので、世界水泳までまだあるので、しっかりそこを意識して、スピードトレーニングを立て直してやりつつ、2バタが一番の得意種目なので、あくまでもその2バタを考えながら上手い具合に調整していけたらいいなと思います。
――レース前に51秒は難しいかなと思ったことに関して
もうそこが情けないですね。僕の中で目標が51秒8だったので、それを狙っていたのに、レース前にそうやって無理だなと思った時点で負けだと思っていたので、そこがちょっと悔いの残るレースになりました。
渡辺一平(スポ3=大分・佐伯鶴城)*囲み取材から抜粋
――感想をお聞かせください
悔しさしかないです。
――勝負を楽しみたいとレース前におっしゃっていました。いかがでしたか
僕自身前半から思い切っていくレースはあまりないので、思い切っていくことができましたし、それで後半ちょっとバテてはしまったんですけど、それも課題を明確にできたかなというふうに思うので、世界水泳代表も内定できましたし、これからまた頑張りたいと思います。
――どのような部分が課題だと
ラップを見ると最初の50は28秒7でいい泳ぎができていたと思うんですけど、世界記録を出したときと比べて、そのあとの3つのラップがすべて遅くなってしまっているので、前半思い切ったレースをすると、後半きついなと思いましたし、またもっと追い込みをしていきたいなと思いますし、負けはしましたけど、小関さんとすごいいいレースができたと思っているので、世界水泳ではワンツー取れるように頑張ります。
――後半はどのあたりからバテを感じましたか
150メートルのターンもあまりバテはなかったんですけど、最初の50いっているからこそ、分からないところで疲れが溜まっていたのかなと思いますし、小関さんが隣にいて、僕の方が前に出ていくというレースはあまりなかったので、僕自身いいレースだったかなというふうには思います。
――ラストの50メートル泳いでいて、自分の伸び具合や進み具合はどうだったんでしょうか
ラスト50はもう浮いてしまっているのは分かっていましたし、きついなと思いながら泳いでいたんですけど、小関さんとのレースを楽しみたいという気持ちもあったので、精一杯できることはやったかなと思います。
――世界記録保持者として出場した日本選手権を振り返って
世界記録保持者ということでプレッシャーもあったんですけど、まあそういうのは考えずに、まだ若手ということもあったので、思い切ったレースをしようと思っていましたし、1月に出した世界記録を、自分の記録を超えるだけなので、自己ベストは絶対更新しようと思っていたんですけど、世界水泳につながる課題を見つけられるレースにしようと思っていたので、そういう面では前半から思い切ったレースができましたし、後半バテたというのも課題が明確になったと思うので、いいレースだったと思います。
幌村尚(スポ1=兵庫・西脇工)
――きょうのレースを振り返って
きのう世界選手権の出場権を勝ち取れなかったんですけど、ここ最近調子がよくて予選の感じもよかったので、自分にとってはチャンスのある決勝だったんですけど、あと少しで代表権勝ち取れなくて悔しいです。
――今回の日本選手権は大躍進だったと思うんですが、ご自身としては納得いってない部分の方が多いですか
タイム的に納得いってたりいってなかったりな部分もあるんですが、大学デビュー戦で自己ベストをどちらも更新できたことはいいことだし嬉しいんですが、結果として世界選手権への代表権を勝ち取れなかったという部分では悔しいなと思ってます。
――坂井選手(聖人、スポ4=福岡・柳川)が幌村選手を怖い存在だと言っていましたが、幌村選手から見た坂井選手はどんな存在ですか
普段の練習から隣で泳がせてもらったりしてるんですけど、その練習の時から聖人さんには負けないように食らいついていけるようにという気持ちがあって、すごく自分のモチベーションが上がるきっかけにはなっていて、普段からそういう世界レベルの選手と競い合えることはすごくいいことで、普段の練習から勝って実際の試合でも勝てるようになりたいと思います。
B決勝進出者
古川慎一郎(スポ3=長野・佐久長聖)
ーーいまのレースを振り返って
タイム的にも予選より落としてしまったので悔しい部分もありますけど、日本選手権という大きな舞台でB決勝残れたということ自体はすごくありがたい機会だと思うので、これを今後に生かしたいと思います。
――全国大会で1日2度のレースは初めてとおっしゃっていましたが、いかがでしたか
最初なので上手くいくとかじゃなくて、自分がやるべきことをしっかりやって、精一杯取り組もうっていう努力は出来たので、良かったと思います。
――B決勝にはどのような気持ちで臨みましたか
予選より(タイムを)上げるのとともに、自己ベストをまた更新するっていうのを狙っていました
――次への課題などは得られましたか
まだ泳ぎがしっかりしていないというのもあって、不安定というか、23秒近くは出るんですけど、22秒台が安定して出ないので、そこを重点に置いて、しっかり次出せるように頑張りたいと思います。
――今後に向けて目標などがあれば
ことしの目標が、インカレで活躍というか、自分も自ら得点を取って、優位に立つというのが目標なので、それに向けて今後も頑張っていきたいと思います。
予選後
坂井聖人(スポ4=福岡・柳川)*囲み取材から抜粋
――最終日になりましたが、予選のレースを泳いでみていかがでしたか
朝のアップの時点で、結構体が重い状態で臨んだんですけど、まあそれにしては結構タイムが出ていて、52秒8でいけているので、まあ大丈夫かなと思います。
――意気込みをお願いします
ちょっと波乱が起きた状態での、1バタ(男子100メートルバタフライ)になるんですけど、僕は僕で、何も考えずに、これもチャンスだと思うので、世界水泳のメリレー(男子400メートルメドレーリレー)の代表権を獲得できるように、精一杯決勝に向けて調整して、優勝して、気持ちよく世界水泳に行きたいと思います。
――決勝はどういうレースを
そうですね、武史くん(川本、TOYOTA)が落ちて、正直びっくりしているんですけど、まあ僕はあまり考えすぎずに、自分は51秒8という目標を立てているので、それを出して、欲を言えば、メドレーリレーの代表権を獲得できるように精一杯決勝頑張りたいなと思っています。
――合宿の成果みたいなものを感じていますか
合宿の成果はすごい感じています。予選から52秒8でいくことが、あまりないので、結構いい調子でいけていると思うので、決勝は確実にタイムが上がっていくんじゃないかなと思います。
――決勝はまた後輩との対決になりました
そうですね。予選から52秒4でいっているので(笑)。100得意と言っていても、ちょっと負けられないですね。大也さん(瀬戸、平29スポ卒、現ANA)と一緒に勝ってきたいと思います。
渡辺一平(スポ3=大分・佐伯鶴城)*囲み取材から抜粋
――予選を泳いでいかがだったでしょうか
200メートル個人メドレーの疲れもある中、朝はいつもより体が重たかったんですけど、決勝は楽しいレースができるというふうにモチベーションを持って、予選はしっかり泳ぎました。
――前半飛ばして、最後はいけるところまでいくというレースプランはそのままですか
そうですね。前半を思い切ったレースをするという方が、課題を明確にできると思うので、そういうレースをしたいとは思っていますけど、今はそれ以上に小関さん(也朱篤、ミキハウス)とのレースを楽しみたいなと思っています。
――予選のレースの前半はいかがでしたか
いい泳ぎだったと思います。それ以上に落ち着いてレースをすることができたので、周りはあまりいないレースだったんですけど、僕自身の泳ぎができたので、そこは評価するべきかなと思います。
――男子100メートル平泳ぎでは1分切れなかったのですが、どのように切り替えをしていくつもりですか
100メートル(平泳ぎ)は自己ベストも更新できなかったんですけど、レース展開的には、前半からオーバーペースな展開になってしまって、僕自身の力を過信していたというか、前半27秒で入っても後半持つかなと思っていたんですけど、ちょっとやっぱり100メートルはきついなというのがあったので、もう少しレース展開をどうにかしたら、自己ベストを更新できたんじゃないかなと思っています。200メートル個人メドレーでは予選も決勝も自己ベストを更新できていて、いい練習は積めているのかなと思っているので、200メートル平泳ぎでも自己ベスト更新を目標に頑張りたいと思います。
古川慎一郎(スポ3=長野・佐久長聖)
――いまのレースを振り返って
念願だった22秒がようやく出て、嬉しいとともに、僕の地元なんですよ、愛知が。なので、ここでいい記録を出せたことが本当に嬉しいです。
――早い時間のレースでしたが、体は動きましたか
朝早くから起きて、体動かして、アップも何回もして、自分が体動かないっていうのがあるので、ちゃんと動くように努力して練習しました。
――ベスト更新の心境は
今まで23秒3(がベスト)だったんですけど、22秒台に一気に上がったということは、日頃の練習だったりとか、みんなの応援とかもあると思うので、それが大きかったかなと思います。
――B決勝に向けて意気込みをお願いします
全国大会で2回泳ぐという経験がないので、これを糧に次も頑張りたいと思います。
大芦知央(スポ2=大阪・関大北陽)
――いまのレースを振り返って
論外ですかね。
――レース展開はどのように考えていたのですか
先週ちょっと体調を崩して、調子もあまり良くなくて、スピードも出せてなく、この試合を迎えてしまって、監督(奥野景介監督、平10教卒)とそれはしょうがないので、技術の面と、まあスピードが出せない分、後半耐えるというレースをしようということで、50メートルターンしてからが踏ん張りどころというか、そこからまとめる感じでいこうかと話をしました。
――このレースで得た課題などはありますか
まだ力がないので、もっとちゃんと水泳を一から見つめ直して、もっとこの舞台で戦えるようにしないと、インカレでも勝負にならないというか話にならないので、水泳と向き合って練習しないといけないかなと。
――今後の大会に向けて目標などがあれば
まず、春六(東京六大学春季対抗戦)はチームとして総合優勝という目標があるので、そこで新戦力の1年生がいっぱい入ってきたので、まあ冬は優勝したんですけど、気を抜かずに、僕も上級生になったので、1点でも多く点を取れるように頑張りたいです。ジャパンオープンは、あと1カ月以上あるので、そこでこんなタイムじゃ全然ダメなので、もっと早く練習しないといけないかなと思います。
幌村尚(スポ1=兵庫・西脇工)※囲み取材より抜粋
――今のレースを振り返って
しっかりベストに近いタイムで泳げたんで、優勝を目指したい。きのう世界選手権の代表権が取れなかったんで、代表権を取れるように頑張りたいです。
――きのうは悔しい思いがどれくらいありましたか
世界選手権を目指していたので、悔しいんですけど、久しぶりのベスト更新ができた。きのうの悔しさをきょうにぶつけたい。
丸山優稀(法1=埼玉・大宮)
――このレースを振り返って
大学最初のレースだったんですけど、思ったように記録出なくて残念です。
――ワセダに来てみてどうですか
授業や練習を楽しくやらせてもらってます。
――練習で高校と比べて変わった点はありますか
マネージャーさんがついてくれていて練習がやりやすいです。
――自分の持ち味
ストロークを長くできるのが自分の武器だと思ってます。
――ワセダでの4年間をどうしていきたいですか
坂井さんだったり、渡辺さんだったり素晴らしい先輩がいっぱいいるので、そういう先輩についていけるように頑張りたいです。
――今後への意気込み
日本学生選手権で決勝に残れるように頑張りたいです。
今井流星(スポ1=愛知・豊川)
――今のレースを振り返って
話にならないです。どうすれば速くなるのかわからない状態で頭で考えることは出来てるんですけど、それが泳ぎとかに生かせないので、また一か月後頑張ります。
――ワセダの環境はどうですか
いい環境で泳がせてもらっているので結果を出せるよう頑張ります。
――ジャパンオープンなども控えていますが
今自信がなくて、何泳いでも自信もってやれるようにしっかり練習します。