年に一度の伝統の一戦である早慶対抗戦(早慶戦)がことしもやってきた。リオ五輪出場選手を欠く中臨んだ今大会。最初の種目である400メートルメドレーリレーで男女共に慶大に大差をつけ勢いづいた早大は、そのまま圧倒的な力の差を見せつけ昨年に引き続き、男女共に優勝で飾った。
自由形短距離勢をけん引する荒木副将
男子400メートルメドレーリレーは安田純輝(スポ4=千葉商大付)、上野聖人主将(社4=神奈川・法政二)、池江毅隼(スポ1=東京・日大豊山)、荒木優介副将(人4=三重・暁)が出場。序盤からトップを譲ることのない力泳を見せ、慶大に完勝する。井上奨真(スポ2=県岐阜商)は昨年に引き続き活躍を見せた。男子400メートル自由形では、好スタートを切ると後続との差をどんどん広げていく。力強い圧巻の泳ぎでリードを保ち続け、今大会新記録の3分55秒57で1位フィニッシュした。男子200メートル自由形でも優勝。層の厚い自由形勢をけん引している。そして目立ったのは、4年生の活躍だ。荒木副将は男子100メートル自由形と男子50メートル自由形で共に熱い戦いとなったが、見事に接戦をものにした。安田は男子100メートル背泳ぎで、上野主将は男子100メートル平泳ぎでそれぞれ優勝。最後の早慶戦で、4年生の働きを見せた。今大会最後の種目となった男子800メートルフリーリレーでは野田飛雄馬(スポ2=茨城・古河第一)、井上、阿久津直希(スポ3=埼玉栄)、荒木の組がトップでフィニッシュ。序盤は1位の前を泳ぐ慶大に何とか食らいつき、500メートル折り返すと慶大をとらえ先頭に立ちそのまま見事ゴールした。
男子400メートルメドレーリレーでバタフライを泳いだルーキー・池江
一方、女子も大きな活躍を見せる。女子400メートルメドレーリレーでは山口真旺(スポ3=兵庫・須磨学園)、田村美紅女子主将(スポ4=埼玉栄)、志賀珠理奈(スポ2=埼玉・武南)、伊藤愛実(社2=東京・早実)が出場し4分11秒84という記録で優勝を飾った。そして田村女子主将は女子100メートルバタフライ、女子50メートル自由形でそれぞれ59秒99、26秒62をマークし、それぞれ大会新記録を樹立。女子800メートルフリーリレーでは最初レース序盤は苦戦したものの伊藤、川畑志保(教1=東京・早実)の追い上げで1位を飾った。今大会では多くのワセダの選手が好成績を挙げ、ことしもまた優勝を勝ち取ったのであった。
リオ五輪に出場する4人の選手が不在の中、ことしも早大の快勝で幕を閉じた早慶戦。チーム全員で優勝を勝ち取ったことは、9月の日本選手権(インカレ)に弾みをつけた。「いかに集中して残り2か月インカレの準備ができるか」(安田)。これがカギとなるだろう。また、上野主将は「インカレのレギュラーを増やすためにも、個人個人が良いタイムを出したい」と語った。今大会で見つかった課題を、今夏に選手それぞれが克服し、インカレではさらに成長した姿を見せてくれるにちがいない。
(記事 網代祐希、写真 平川さつき、佐藤慎太郎、大島悠輔)
集合写真
コメント
梶川悟監督(平17人卒)
――今大会の総括をお願いします
点数で言うと70点くらいですかね。ちょっと満足するまではいくことができなかったと思います。
――30点はどのようなところからくるのでしょうか
インカレ(全日本学生選手権)で得点を取るB決勝以上のタイムが出ている人が正直半分くらいでして、半分はまだ足りていないので、30点分はそこですかね。
――その中で期待が高まる選手というのはいましたか
きょうまずまずのタイムを出したのは、(男子)50メートルと(男子)100メートル自由形の選手ですね。よく伸びてきているなと思うのは、3年の高木遼司(スポ3=大阪・生田)です。ギリギリ50メートルはB決勝のラインに入ってきたのかなと思います。
――これからレギュラー選考となると思いますがまだ試合は残っていますか
はい。来週の千葉の大会と、国体の予選がそれぞれであるので、それで最後としています。
――インカレに向けて強化をしていきたいポイントを教えてください
特別何かというのは考えていなくて、いつも通りやっていきたいと思っています。ですが、予選からタイムをしっかりと出せるようにということで朝に高い強度の練習をやることがあると思います。あとは、一人が何回も泳がなければいけないのがインカレなので、一日何回でも泳げるようにタフな練習はやっていかなければいけないなと思っています。
上野聖人主将(社4=神奈川・法政二)
――午前のレース、2つを振り返ってみていかがですか
対抗戦なので勝つというのが最大の目標であるので、それが達成できたのは良かったかなとは思います。ですが、200メートル平泳ぎでは求めていたタイムと大きくかけ離れていたので、そこはすごく残念に感じました。
――午前中を終えたチームの得点状況はいかがでしょうか
全く問題なしですね。
――主力である五輪代表組が不在の中ですが、チームとしてはどのような意識で臨んでいますか
早慶戦で勝つことは当たり前くらいに考えていて、その主力選手が抜けたとしても変わることはないです。僕たちの一番の目標であるインカレ(日本学生選手権)を考えたときに、まだまだレギュラーが少ないという現状があるので、そのレギュラーを増やすためにも、個人個人がいいタイムを出してワセダの基準の目標でやっています。
――最後の早慶戦ということで何か特別な意識はありますか
いままで優勝したことがなくて、あと1レース残っているのでそれが早慶戦の引退レースになりますけど、優勝したいなと思います。
――インカレに向けて、課題としている体力不足にいま、どのように向き合っていますか
今回の200メートル平泳ぎでもだいぶ体力がなくなっているのをすごく感じました。タイム的に見ても100メートルの後半で落ちていたりして、まだ課題克服の手ごたえは感じていません。いまは地道に基礎的なことからもう一度取り組んでいて、長い距離を泳いだりして、心肺機能の強化に重点を置いてやっています。
田村美紅女子主将(スポ4=埼玉栄)
――午前中のレースを振り返ってみていかがですか
個人としてはメドレーリレーを4年連続出場しました。きょうは専門種目のバタフライではなく平泳ぎでの出場でしたが、リレーの引き継ぎのベストで泳げました。レース一発目のメドレーリレーでしっかり流れを持ってくることができたので良かったです。チームとしては、惜しかった人やタイムを突破している人などさまざまな人がいました。評価としては良い方だと思います。午後のレースまで時間があるので、午前のレースのビデオを見直し、次の競技にいかせるようにしたいと思っています。
――五輪選手がいなかった中でのチームの雰囲気はどうですか
主戦力は五輪選手ですが、チームの底上げにおいてはそれだけではないと思います。きょうみたいに強い人たちがいなくても、グループごとに上級生が中心に引っ張っているので、タイムを出せるようにしっかり雰囲気づくりをしています。強い人たちが抜けている部分をちゃんと補えるように工夫しています。
――午後のレースはどのように泳ぎますか
個人種目は女子100メートルバタフライと女子50メートル自由形に出場します。バタフライは本命の種目なので今回のワセダの目標であるベスト率50パーセント以上を達成したいです。ベストは59秒台なので、1分のカベを越えたいです。また、50メートル自由形に関してはバタフライのすぐ後ですが、27秒の壁を超えて26秒台で早稲田基準を突破したいです。最後にリレーがあるので、前の泳者を応援しつつ自分はアンカーでしっかりまとめていきたいです。
――インカレまでの2か月間はどんな強化をしていますか
千葉選手権に出場するので現段階では試合に向けての調整とチームの向上をしています。レギュラーが決定した後の2か月は強化をし直して、この一年で1番いい結果を出せるように準備を隅々までするつもりです。これから神経質になる人が多いと思うので、そういうところも含めて皆で乗り越えていきたいと思っています。
――早慶戦に向けての調整はどのようにしましたか
インカレ前にチームで出場するのは早慶戦が最後でした。他の大会や選手権もありますが、全員が出場し、チームの雰囲気を味わえる思い入れの強い大会でもありました。
――インカレの意気込みを教えてください
インカレは最大限の力を出すつもりです。1年生の頃からインカレに出場してきたので、1日に何回もレースをこなす仕上げ方はしてきました。自信を持ち、出場種目すべて決勝で泳げるようにしたいと思っています。
荒木優介副将(人4=三重・暁)
――午前のレースを振り返って、調子としてはいかがでしたか
悪くはないかなという感じですかね。タイムだけ見ると悪くはないのですが、レースの中で泳ぎを模索している感じがあったので、調子がいいとは言えないですけども、結果は悪くないという感じです。
――最後の早慶戦ですが、どのような意気込みで臨んでいますか
伝統のある大会の名に恥じぬレースをしたいと思っています。
――五輪組のいない大会ですが、チームの雰囲気はいかがですか
五輪組がいないといっても、早慶戦での目標というのがきちんとあるので、そこに個人が向かってやっていけているのではないかなと思います。
――インカレに向けて、今どのようなことを強化していますか
男子100メートル自由形や、さっきのレースもそうなのですが、後半がベストの時よりも遅いので、全体的な体力強化、あとは泳ぎを模索していたという部分があるので、泳ぎをきちんと固めるという部分ですね。
――午後の男子50メートル自由形と、インカレに向けての抱負を教えてください
50(メートル)は優勝して、僕だけの目標ではないのですが早稲田のオープン参加ではない3人全員で1位、2位、3位をとって、慶應さんを0点に抑えたいです。インカレでは、僕は表彰台に上って、他の後ろの後輩たちもそれに続いて決勝とかに残ってくれたらいいなと思います。
安田純輝(スポ4=千葉商大付)
――午前のレースを振り返っていかがですか
最初はメドレーリレーの1泳をやらせていただいたのですが、自分が想定していた以上に良いタイムで泳ぐことができたので、午後にもう1回男子100メートル背泳ぎがあるので、それにつなげていけるようなレースができたのではないかなと思います。ちょっと200(メートル背泳ぎ)のところは休憩時間が少なかったというのもあってタイムがあまり伸びてこなかったので、そこを反省点として生かして今後の練習に取り組みたいです。
――教育実習をされていたそうですが、練習はどうされていたのですか
地元クラブにお願いをして、3週間チームで泳げない間、そのクラブにお世話になるというかたちで、教育実習で先生をやりつつ、練習もなんとかしようという感じで取り組んでいました。
――最後の早慶戦はどんな思いで臨んでいますか
絶対に勝つとか、ベストを出すとかそういうのよりも誰よりも楽しんでいこうという感じでやっていけたらなと思います。それでメドレーリレーの時も1番最初のレースでみんなを盛り上げられたというのは、結構成果としては出たのではないかなと思っています。
――午後はどんなレース展開にしていきたいですか
午後は得意の100メートルの背泳ぎがあるので、そこでもう少しタイムを上げて、ベストタイムを狙っていけるようなところにいると思うので、しっかりタイムを狙って出せていけたらなと思います。
――インカレまであと2か月ですが、いまどんな練習をしているのかと目標を教えてください
個人の目標としてはやはり表彰台というのがあるので、100メートルの背泳ぎでは表彰台に登り、200(メートル)の背泳ぎでもしっかりA決勝に進出して、得点を稼きたいです。4年生なのでチームにきちんと貢献できるようにしていきたいなと考えています。また残り2か月の練習についてですが、やはりこの後レギュラーも確定して練習の流れもしっかり決まってくると思うので、そこでいかに集中して残り2か月インカレの準備をできるかだと思います。その練習の質や、量も一旦超過期があってそこから調整に入ってくると思うので、そこでしっかり質を高めていけるようにという感じで練習に取り組んでいきたいと思っています。