国内トップレベルの選手たちがしのぎを削るジャパンオープン2014(50メートル)。ことしも4日間にわたる熱い戦いが幕を開けた。大会1日目、ワセダからは10選手が出場し、注目の男子400メートル個人メドレーでは瀬戸大也(スポ2=埼玉栄)が見事優勝。男子100メートル自由形に出場した中村克(スポ3=東京・武蔵野)も3位入賞を果たした。
この種目は昨年に続く大会連覇となった瀬戸(中央)
「絶対に勝つ」(瀬戸)。勝利への強い執念を胸に挑んだ男子400メートル個人メドレー決勝、瀬戸は序盤から積極的な泳ぎを見せた。「気持ちよく入れた」という最初のバタフライでトップに立つと、続く背泳ぎでもライバル萩野公介(東洋大)の追い上げをかわす。リードを保ったまま、自己ベストに迫るラップタイムで前半を折り返した。さらに「勝てると思い、落ち着いていけた」という後半も粘りの泳ぎでリードを広げると、追う萩野を突き放し、2秒31の差をつけてのフィニッシュ。一度も首位を渡さない完勝で、大会2連覇を達成した。4分10秒21というタイムに不満を残しながらも、「勝負に勝てたことがよかった」と笑顔を見せた。ライバル萩野への昨季の世界選手権以来となる勝利に、得た自信は大きいようだ。パンパシフィック選手権、アジア大会と重要な国際大会が控える夏に、「良いイメージを持って臨める」と語った瀬戸。世界が待ち受ける大舞台へ向け、その勢いを止めるつもりはない。
一方、男子100メートル自由形に出場した中村は、3位入賞を果たすも苦い表情を浮かべた。予選を2位で通過し、迎えた決勝。前半を7位で折り返すと、得意の後半に入っても思い通りの追い上げを見せられない。49秒79と、予選を下回るタイムでレースを終えた。直前に体調を崩し、1週間ほど泳げないまま大会を迎えたという中村。この日は本種目の日本選手権覇者・塩浦慎理選手(イトマン東進)不在のレースとなり、優勝も十分に狙えただけに、「もったいないことをしてしまった」と調整不足を悔やんだ。それでも、コンディション不良の中で表彰台に食い込む健闘。確かな実力を示した。「どんな状態でも勝てるようにもっと努力したい」(中村)。この悔しさを糧に、更なる飛躍を誓う。
レース後笑顔を見せる中村(左)
瀬戸は大会2日目以降のレースについて「一本一本集中して泳ぎたい」と、自己ベスト更新に意欲を見せた。大会3日目に出場予定の男子200メートルバタフライとの2冠にも期待がかかっている。「夏に向け、どれも大事なレース」(瀬戸)。無駄にできない実戦の舞台で、まずは最高の結果を出した瀬戸。この活躍にあす以降のワセダ勢も続けるか。連日の熱戦に注目だ。
(記事 平岡櫻子、写真 建部沙紀)
★真価問われる次レース
前半から積極性を見せた林主将
大会初日のこの日、B決勝に進出したのは林和希主将(スポ4=愛知・豊川)と杉山沙侑南(スポ4=静岡・日大三島)。ワセダを引っ張る男女主将の二人は、ともに100メートル平泳ぎに登場し4位となった。「意味があるレースをしよう」と臨んだ林は前半から積極性を見せる『攻めの泳ぎ』で勝負をかけた。持ち味である後半の強さをさらに生かすため、そして一つ上のレベルを目指しての挑戦。反省も口にしたが、残りのレースや最大目標となる日本学生選手権へ向けてギアが上がってきた様子だ。一方の杉山はその積極性を欠いてしまい、「不本意な結果」と一言。それでもあすは得意の50メートル平泳ぎ。日本選手権では表彰台にあと一歩と迫りながら4位と涙をのんだ種目だが、「50メートルを泳ぐのは競技人生で最後」と思いは人一倍。自己ベスト更新に意欲十分で臨む。今後もキーマンとなりうる4年生、意地がさく裂するか――。
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結果
決勝
▽男子400メートル個人メドレー
瀬戸 4分10秒21【1位】
▽男子100メートル自由形
中村 49秒79【3位】
B決勝
▽女子100メートル平泳ぎ
杉山 1分10秒11【4位】
▽男子100メートル平泳ぎ
林 1分01秒69【4位】
予選
▽女子50メートルバタフライ
田村美紅(スポ2=埼玉栄) 27秒92【21位】
▽男子400メートル個人メドレー
瀬戸 4分16秒15【2位】
▽男子100メートル自由形
中村 49秒77【2位】
▽女子100メートル平泳ぎ
杉山 1分09秒97【15位】
久保まりな(スポ4=東京・帝京大高) 1分13秒13【57位】
▽男子100メートル平泳ぎ
林 1分01秒42【12位】
上野聖人(社2=神奈川・法政二) 1分02秒65【28位】
加納雅也(スポ3=県岐阜商) 1分02秒65【31位】
三島英彰(スポ4=千葉・市船橋) 1分03秒17【46位】
▽男子1500メートル自由形
寺崎拓海(スポ1=茨木・並木中教校) 15分54秒16【23位】
コメント
◇決勝進出者
中村克(スポ3=東京・武蔵野)
――レースを終えての感想は
もう少し上がるかなと思ったんですけど…。優勝タイムも思ったより速くなかったので、体調不良を言い訳にはしたくないですけど、もったいないことをしてしまったなと思います。
――予選後に監督とお話しされたことはありましたか
(体調を崩し、)ほぼ一週間泳いでいなくて泳ぎがバタついていたので、一緒に映像を見ながらストロークやスタートやターンなどの面を意識してウォーミングアップを行いました。でも決勝でもちょっとバタついてしまったかなと思います。
――決勝のレースは前半の入りが24秒19(7位)でした
いつもより0.5秒くらい遅いので、やっぱりもったいないですね。
――ポイントに挙げられていたスタートについては予選から修正できましたか
やっぱりあまり良くないので、もっと練習して夏は次がどの試合になるか分かりませんが、ベストなスタートを切ってベストのタイムで結果を残したいと思います。
――100メートル自由形は塩浦慎理選手(イトマン東進)が不在の中のレースでしたが、どんなことを意識して臨まれましたか
慎理さんがいない中でのレースだったので僕が絶対に勝とうと思っていたんですけど、自分の詰の甘さが出てしまって3番という結果になってしまったので、またこれからの慎理さんがいないレースならどんな状態でも勝てるようにもっともっと努力しなければならないと思います。そしていつか慎理さんがいるレースでも、自分が勝てるようなレースをしたいです。
――コンディションが悪い中のレースでも3位に食い込んだことについては
その面では力はついてきているのかなというのはあるんですが、やっぱり体調が悪くても慎理さんがいない中ならば優勝できるような選手にならないと今後しっかりと戦っていけないと思います。なので今後もっと強くなっていきたいです。
――優勝した坂田怜央選手(イトマン近大)を始め、予選から年下の選手の台頭も見えるレースでしたね
自分が高校のときに一緒に泳いできた選手だったので、仲も良いですが、これから一緒に強化していって、もちろん負けることはないようにしていかなければいけないんですけど、一緒に頑張っていきたいですね。
――日本選手権については「力み」を反省点に挙げられましたが、きょうのレースではその点いかがですか
体調を崩していたので変な力みやプレッシャーを感じることはなく、自分がチャレンジャーであるような気持ちでレースは臨めました。やっぱり心に余裕があって、力みとかはなかったのでその点では良かったです。
――体調を崩される前までの調整は順調でしたか
そうですね。調子も良くて、48秒台は間違いないと思っていたので、すごくもったいないですけど、体調を崩してしまったのも自分のせいなので、今後このようなことがないように気をつけていきたいと思います。
――日本選手権ときょうの結果で国際大会への代表選出の可能性がありますが、今夏を見据えてという点ではいかがでしょうか
4月と今回の結果で3番手なので代表に選ばれる可能性もあるので、もしチャンスをいただけるなら、パンパシフィック(パンパシフィック選手権)とアジア大会では慎理さんに続けるようなタイムで泳ぎたいです。
――あすの200メートル自由形についてはいまの時点でどのような予定でいますか
奥野監督(景介、昭63教卒=広島・瀬戸内)と話し合って決めるとは思いますが、体調が悪化しないようにとは思っています。(この種目は)高校の時には全国大会で優勝経験はあるんですが、大学に入ってからはずっと取り組んでいないというのもあるんですけど、800メートルのフリーリレーもあるのでベストタイムならリレーメンバーに入れるということもありますし、レース経験を積むというところでエントリーしています。
――あす出場となればワセダからこの種目4人が出場ということになりますね
そうですね。先輩ということもあるので、1年生の坂井君(聖人、スポ1=福岡・柳川)には負けないように頑張りたいと思います(笑)。
――最終日の50メートル自由形については
それに関してもきょう無理してレースに出ている状態なので、体調が悪化しなければ出ようとは思っています。出るとなったらしっかり優勝できるように頑張りたいと思います。
瀬戸大也(スポ2=埼玉栄)
――優勝おめでとうございます。いまの率直な感想をお願いします
勝負に勝てたということがすごく良かったと思います。選考会(=4月の日本選手権)で負けていますし、タイムはそんなに良くなかったですが、勝てたことがよかったです。夏に向けて良い弾みがついたと思うので、残りあと3日間、一つ一つのレースに集中して、自己ベストを出すつもりでやっていきたいなと思います。
――レース展開を振り返っていかがですか
前半はベストラップタイムに近く、最初のバタフライから気持ちよく入れて、その後も積極的にいけました。一度も萩野選手にリードを許さず泳ぎ切れて、よかったです。強いて言えば平泳ぎがもう少し(良い)タイムがほしかったです。それは夏に向けての課題ですね。
――目標としていたタイムは
4分10秒台を切りたかったですね。でも勝てたことがプラスですし、これで良いイメージを持つことができました。
――今大会で得た課題と収穫は
各種目のフィーリングを研ぎ澄ましていきたいのと、平泳ぎにもう少し引っかかりがほしいかなと思います。夏に向けて各泳法見つめなおすことと、またこのあと高地でトレーニングをするので、最後の自由形で競った時にも負けないような体力を強化していきたいと思います。
――今大会の位置づけというのは
欧州クランプリも終わって、ヨーロッパで良い感じで泳げていたので、今大会でもハイパフォーマンス、ハイレベルな記録を出して、自信をつけていきたいなという大会でした。夏に向けてどれも大事なレースになってくるので、一本一本集中してやっていきたいと思います。
――2日前に帰国したばかりということで、移動やここまでの連戦の疲れはありましたか
疲れは気にせず自信を持って行きました。時差ボケもあまりなかったですし、連戦の分、レース感覚は日本に残っていた他選手たちよりもあったと思います。
――ライバルである萩野選手に、昨年の世界選手権以来の勝利です
普段結構負けているのですが、勝ち癖をつけるというか、勝てば自信にもなるので、この大会で勝っておきたい、「絶対に勝つ」と思っていました。
――予選から萩野選手への意識というのはあったのでしょうか
予選では疲れもあったので、あまり気にせず気持ちよく泳いだという感じでした。
――決勝では隣のレーンで、終始視界に入っていたと思うのですが
背泳ぎで逃げ切れていたので、勝てるかなと思って、後半は落ち着いていけました。ベストまでは届かなかったですが、タイムはぼちぼちだったのでよかったかなと思います。
――タイムでは日本選手権や、直近の欧州グランプリを上回っています
(国際大会を控える)夏も近づいてきていて、気持ちも高まっているので、そういったことからタイムも上がっているのかなと思います。夏はひと暴れも二暴れもしたいですね。
――今大会個人メドレー種目への出場は以上となりますが、4泳法の調子はいかがですか
悪くないと思います。平泳ぎがもう少しうまく泳げればベストにも近づいてくると思うので、頑張って最高のパフォーマンスをしたいです。
――あす以降も多くレースが控えます。目標と意気込みをお願いします
あと3日間、このジャパンオープンは欧州グランプリからの4戦目だと思っているので、一戦一戦集中して泳ぎたいと思います。
◇B決勝進出者
林和希主将(スポ4=愛知・豊川)
――レースを終えての感想は
意味があるレースをしようと思って、前半から突っ込んだんですけど、あんまり意味なかったですね。前半は何秒でしたか?
――前半は28秒79です
うーん。あわよくば28秒台をわって(前半を)入りたかったので、微妙でしたね。もったいなかったです。
――予選も前半から積極性を見せて終始組一番をキープするレース展開でした
調子は段々上がってきていて、予選でベストを出せばだいたい残れると思っていたので、ベストを出そうと思っていました。(予選のレース自体は)悪くはなかったですし、ここ最近では一番良かったんですけど、スタートとターンとタッチの部分でいまも失敗してしまって。そこで0.4秒分くらいロスしてるので、惜しいレースをしてしまいましたね。B決勝ではそこを直して今後に生きるレースをしたいと思って、前半から攻めることと予選からの修正を目標にしました。スタートはだいぶ良かったですが、ターン浮き上がったところとタッチを失敗してしまったのでもったいないというか修正しきれていなかったので良くないですね。
――もともとは後半が持ち味な印象がありますが、きょう前半から積極的にいこうと思われたのはどういった思いからですか
後半勝負でもやっぱり限界があるので、何か意味があることをしようと思って攻めました。
――実際にB決勝のレースでも前半は1位で折り返しました
200メートルが得意な選手が多かったので、(前半は)一番では入れると思っていました。ただそこからターンして浮き上がって一掻き目のときに水中じゃなくて、水上にやってしまって…(笑)。予選でも同じことをやっていましたし、一掻き一蹴りがちゃんとしきれていなかったので上がってくるときに角度が急すぎてそうなってしまったかなと思います。そこを直したつもりだったんですけどね…。ダメでした。
――満足度は
ゼロですね(笑)。前半から積極的にいけていたということに関しては良いかなと思うんですけど、ベストのときは28秒6で入ってるので28秒7だったらまあという感じです。レース展開としては予想していた通りですが、後半も生かせず、予選から直しきれなかったので点数としては赤点です。20点くらいです(笑)。
――これから50メートルと200メートルも出場されると思いますが、1つ目泳いでの感覚はいかがですか
完全に集中しきれなかった部分もありますが、調子としては悪くないと思います。いまは練習量もかなり多いですし、200メートルの方が勝負できると思うので、あしたの50メートルは100メートルの前半という意味合いからもしっかりとやらなければならないですけど、200メートルでは順位を狙っていかなければならないですね。
――日本選手権では3種目とも予選どまりでしたが、今回はもう1レースできたという点では大きいのではないでしょうか
そうですね。でも決勝で泳がないと面白くないなと思いますし、本気で予選に懸けていたので、予選泳いだ感じではモチベーションが下がってしまったのですが、何かできることと思った結果、積極的にということになりました。きょうは2本泳げましたが、(決勝ラインについては)いけた記録でもあったなと感じています。
――男子100メートル平泳ぎにはワセダから4人が出場し、唯一午後のレースにも進出しましたが
これでインカレ(日本学生選手権)のレギュラーが一回決まるんです。そこから第2次選考という風にはなっていきますが、平泳ぎは選手数も多くて今回は3番手の選手との勝負なので。練習の時も張り合ってたりしていて、段々みんなも記録が上がっている感じがありますね。ここでレギュラーが決まりますが、ここでめげずにしっかりと練習を積んでインカレでも頑張りたいです。
――200メートル平泳ぎにもワセダから多くの選手がエントリーされていますね
2ブレは僕もすごく得意というわけではないので、他のみんなにも負けないようにという気持ちです。組が最初の方なので他のみんなに刺激を与えられるような泳ぎをして、平泳ぎだけではなくワセダに良い流れを持ってこれたらなと思っています。
――最後に残りのレースに向けて意気込みを
まだ始まったばかりですし、ここからどんどん調子を上げていって、まずあした50メートルでベストを出して、200メートルでインターCの2分11秒5を目指してやっていきたいです。
杉山沙侑南(スポ4=静岡・日大三島)
――レースを振り返っていかがですか
あんまり良いところがなく終わってしまったなと思います。
――決勝でのレースプランはどのようなものでしたか
コーチからは前半から積極的に行けと言われていたのですが、私自身のなかに恐怖心があって、あまりそのレースはできなかったと思います。
――恐怖心とは、体力がもつかというところについてでしょうか
そうですね。後半苦手なので、それが今まで以上に体が動かなくなるのが怖くて。あまり得るものがないレースでした。
――予選での手応えはいかがでしたか
決勝と同じく、予選もタイムとしては納得のいくものではなかったです。ぎりぎりで(B決勝進出を決め)二度泳ぐチャンスをもらえたのに、それを生かせなかったので、不本意な結果です。
――具体的に今回見つかった
予選の後、泳ぎにキレがないなと感じていました。私は短い距離の方が得意としていて、泳ぎのキレは大事だと思うので、これを反省して、夏につなげられたらと思います。
――日本選手権から何か変えて臨んだ部分はあったのでしょうか
細かい部分では意識する点はありましたが、大きく変えた点はないですね。
――今大会の位置づけというのは
私の中では、最後のジャパンオープンだったので、結果を出したい気持ちはあったのですが、夏に向けての通過点として、これから強化していきたいと思います。
――直前まで教育実習に行かれていたという話を伺いました。練習にもブランクがあったかと思うのですが
そうですね、教育実習中はいつも通りの練習回数や時間は確保できなかったのですが、私は練習をいっぱいやると疲れてしまうので(笑)。あまりマイナスにはとらえていません。自分の人生の面で大きく考えたら(教育実習は)すごく良い経験になったので、それを言い訳にはしたくないですね。
――あすは得意の50メートルが控えます。目標は
50メートルを泳ぐのは競技人生で最後なので、自己ベストの31秒78を更新できるように頑張りたいと思います。
――意気込みをお願いします
自分自身も、早稲田大学というチームとしても、これから勢いづいていけるように、主将という立場として結果で引っ張れるように頑張りたいと思います。