11月9日、FINAワールドカップ東京2013が東京辰巳国際水泳場で開幕した。世界各国から実力のあるスイマーが集い、短水路で争う今大会。観客席は多くの水泳ファンで埋め尽くされ、選手たちに熱い声援が送られた。大会初日は中村克(スポ2=東京・武蔵野)が100メートル自由形で6位入賞。自己ベストを更新する力強い泳ぎを見せた。400メートル個人メドレーに出場した瀬戸大也(スポ1=埼玉栄)は金メダルの期待が懸かるも、実力を発揮できず3位に終わった。
100メートル自由形決勝、中村は序盤から積極的なレースを展開した。並み居る強豪相手にワセダ屈指のスプリンターが意地をみせ、25メートルを3着で折り返す。しかし、終盤にすさまじい追い上げを見せる外国勢に力及ばず、最終順位を6位まで落とした。それでも、47秒50と自己ベストを更新。「いい経験になった。(世界レベルでの対決に)すごく刺激をうけたので、収穫のあるレースだったと思います」とレースを振り返った。また、中村は50メートルバタフライにも出場。予選17位と決勝に進むことはできなかったが、「バタフライの強化も自由形の泳力強化につながっている」と、新たな挑戦に手ごたえをつかんだ。
勝負を前に気合を入れる中村
400メートル個人メドレー決勝のレースは、最後まで息をのむ展開となった。注目の的は、今夏バルセロナで行われた第15回世界選手権金メダリストの瀬戸。瀬戸は、世界記録ペースの泳ぎを見せるチャド・レクロー(南アフリカ)の後ろに着けて前半を折り返す。得意の平泳ぎで巻き返しを図り、ようやく首位に立った。そのまま逃げ切るかと思われたが、残り25メートルでスタミナのあるチャドら、外国勢に追いつかれゴール手前で横一線に。タッチの差で3位。「積極的なレースができなかった。本当に不完全燃焼のレースだった」と、不本意な結果に悔しさをにじませた。また、その後の100メートル個人メドレーでも「気持ちが切れていた」と泳ぎに精彩を欠き、8位に終わった。
瀬戸、得意の平泳ぎで巻き返す
新チームが始動して初めての国際大会をむかえたワセダ。世界で活躍するトップクラスの選手たちを前に、中村、瀬戸が先陣を切り躍動した。今年度の水泳部チームスローガンは「結束」。各々が結果を残し、チーム全体に勢いを与えることが目標だ。今大会の主力メンバーの活躍は、今後の動向を占うためにも重要なものとなるだろう。
(記事 深谷早紀、写真 荒巻美奈)
主な結果
決勝
▽男子100メートル自由形
中村克(スポ2) 47秒50 【6位】
▽男子400メートル個人メドレー
瀬戸大也(スポ1) 4分00秒72 【3位】
▽男子100メートル個人メドレー
瀬戸大也(スポ1) 54秒27 【8位】
コメント
中村克(スポ2=東京・武蔵野)
――外国勢とのレースはいかがでしたか
日本と比べて外国人の方がレベルが高いので、いい経験になりました。すごく刺激うけたので、収穫のあるレースだったと思います。
――50メートルバタフライのレースを振り返っていかがですか
そうですね。バタフライは気分転換な感じで出たので特に意識はしていないです。けど、バタフライの強化も自由形の泳力強化につながっていると思ってます。今後も気分転換という感じと泳力強化という感じで両方頑張っていこうかなと思いますね。
――自己ベストの更新となった100メートル自由形の予選のレースを振り返っていかがですか
特にすごい工夫をしていたという訳ではないんですけど、落ち着いて自分のレースができたかなと思います。
――新チームの状況はいかがですか
きょねんのチームに比べるとまた違った雰囲気です。今年のチームスローガンは「結束」なので、みんなひとりひとりが結束してもっともっと強い良いチームになると思います。
――あすの50メートル自由形に向けて意気込みをお願いします
50メートル自由形は昔は得意だったんですけど、最近は100メートル自由形の方が得意になってしまって、ちょっとおろそかになってしまっている部分があります。最低でも自己ベストを更新して、決勝に残れるように頑張ります。
瀬戸大也(スポ1=埼玉栄)
――きょうの調子いかがだったでしょうか
400メートル個人メドレーを終えて、4分切れなかったのは今の自分の実力ですし、調整していない中でも4分はしっかり切ってこれるかなと思っていたんですけど。いまいち、前半から積極的なレースもできなかったですし、100メートル個人メドレーもちょっと気持ちが切れていたので、まだまだ甘いなと思います。でも、ウエイトを始めて、感覚的には悪くないのでしっかり試合に合わせたらもっといいタイムが出ると自分では信じています。まだまだこれから泳ぎ込んで、4月の選考会(国際大会代表選手選考会)でしっかり代表入りして、また夏にひと暴れしたいなと思います。
――ウエイトの方をつけているということですが、それで変わってきたことは
今回は本当に不完全燃焼のレースだったので…。ですけど、予選はすごくパワーのある泳ぎができました。ウエイトをすることによってパワーの発揮がさらにできるようになってきています。きょうは400メートルで競り負けてしまったんですけど、泳ぎに関しても強化しないといけないなっていうところもあると思います。今回のワールドカップ(FINAワールドカップ東京2013)は自分的には納得できていません。東京で活躍したかったんですけど、イマイチに終わってしまって少し残念です。
――世界の有名選手が数多く出場しているFINAワールドカップ東京2013ですが
ヨーロッパラウンドが終わって、国体も終わり、また一からトレーニングしている中で、この大会がポツンとあったので。昨年はずっとワールドカップを回っていて、試合の調子の流れでやってこれて、いいタイムとかもでていました。連戦を通して、 レース感覚を研ぎ澄まして強くなっていくのが自分のスタイルかなとも思っています。来年はもし出場できたらしっかりとラウンドを回って、スキルアップしていきたいなと思います。
――隣のチャド・レクロー選手(南アフリカ)はいかがでしたか
チャド選手にはドイツのベルリン大会(FINAワールドカップドイツ)で200メートル個人メドレーでも負けていて。今回は、400メートル個人メドレーでチャドに負けたのが悔しくて、次一緒にレースをするときは借りを返せればいいなと思います。自分の得意種目で負けてちゃまだまだ甘いなって思いますね。
――この種目世界チャンピオンとして、世界の誰にも負けたくないという思いは強いと思うのですが、3位という結果はいかがですか
この種目はだれにも負けたくない。それで負けてしまったことは本当に悔しいです。ましてや3位だったので、まだまだ甘いですし、調子が悪くても勝てる選手になっていかなくちゃいけないと思いました。チャド選手は400メートル個人メドレーを4分ジャスト近くで泳いでいて、疲れている状態でも競り勝ってくる。また、勉強させてもらったので、しっかり練習して、もっともっと自信をつけて臨みたいです。
――具体的にどのあたりが狂ってしまったのか
最後の100メートル個人メドレーも、400メートル個人メドレー終わった後に動く気がなくなっちゃって。多分悔しかったんだと思いますけど。でも、そこは甘いですね。まだ種目あるんで、気持ち切らしていたらまだ甘いですし。悔しかったですね400メートル個人メドレー負けて。得意でやってる選手とかじゃないチャド選手に、フレーザーホームズ(トーマス・フレーザーホームズ、オーストラリア)にも世界水泳(第15回世界選手権)で勝ってて、今回負けてしまって。世界短水路も、長水路も勝っていたのに負けてしまったというのは恥ずかしいレースをしてしまったなと思いますけど、4分は最低でも切って、得意種目なんで調子が悪い時でも競り勝てる選手にならないといけないなと。ホッスー(カティンカ・ホッスー、ハンガリー)とか見てても、しっかり200メートルは獲ってくるので。そういう選手にならないといけないなと思いました。
――筋力強化に取り組んでいるということですが、泳いでいる感覚は夏と比べていかがですか
前半のキレというか、前半のスピード、身体の軽さっていうのがやっぱりこの試合に合わせて来てないので重たい部分はあるのですけれど、400メートル個人メドレー泳いでいても後半きつかったわけでもなく。ちょっとフリー(自由形)で落ちたようにも見えたと思うんですけど、タイムはそこまで自分のラップ的にはそこまで遅くないので。もう少し自由形強化と、前半のスピードですね。今は筋力トレーニングをやっているので前半から飛び出るようなスピードを身につけて、後半も今まで通り自分の持ち味である平泳ぎでしっかり泳いで、つなげられるようにしてかなきゃいけないなと思いました。
――年内の今後の試合出場というのは
たぶん試合はないと思いますね。年内はもう試合ないんで、火曜日から普通の練習に戻って、本当に今週とかも月、火、水とメインレースで先週も月、火、水とメインレースで。先週ちょっと肩の方を壊したんですよ。オーバーランしすぎて。でも、400メートル個人メドレーはきょねんも4分切れなくて、最後の東京大会で3分台を日本人の人たちに見せたかったんですけれど。見せられなかったのがすごい悔しくて。2月の日本短水路(日本短水路選手権)ではもし400メートル個人メドレーに出るとしたらしっかり4分切って、自分の自己ベストを更新して、今回の自分への心残りを2月の日本選手権で越えられたらいいなと思います。
――ことしの夏を経て冬場の強化はどういったところを
苦手克服で背泳ぎの強化もあるんですけど、自由形の基礎持久力や楽に速く泳げるような力をつけたいので。自由形の練習のときにペースだときょねんより100メートルにつき2秒ぐらいずつ速いタイムを設定して今取り組んでいて。少しずつそれに近づいていっているので、自由形も。そーですね、やっぱり競り勝ちたかったですね。まだまだ甘いと思います。
――新チームになりましたが、練習の雰囲気はいかがですか
4年生が抜けて人数は減っちゃいましたけれど、その中でもまだ残っている先輩方をはじめ自分たちで頑張って練習できているので、楽しいです。
――ブログの更新なども部員の皆さんで毎日やっているということですが結束という部分ではいかがですか
一人一人仲はいいと思います。みんな仲良くやっていると思うので。自分も同期大好きですし、先輩方も大好きですし。みんなチーム一丸となってインターカレッジ(日本学生選手権)が大学の中では一番大きな試合で、そこにみんな向かって頑張っているので。楽しいですし、自分はインカレ(日本学生選手権)もそうですけど個人的には代表の試合もメインとしてやっているので。ことしは世界水泳で金メダルを獲って、ちょっと気持ちが切れてしまった部分もあってインカレではあまり活躍できなかったので。らいねんはやっぱり後輩も入ってくるのでしっかり活躍して、もっともっと盛り上げていかないといけない存在なので。自分が下から上げていくような気持ちでチームに入っていけたらと思います。
――得意の短水路で悔しい結果となりましたが、きょうのレースで1番悔しかった部分はどこでしょう
負けてしまったことが悔しくて。個人メドレーが専門ではない選手に1番を取られて。自分が違う種目出たときに勝ったりするとこういう気持ちになるんだなとわかったので。でも、自分の得意種目は絶対負けたくないですし、これを機にもう一回気持ちを入れ直して、もう世界水泳の金メダルのこと忘れて、チャレンジャーの気持ちをまた。忘れてないですけど、もう一回気持ちを切り替えて来季またチャレンジしていけるようにしっかりやっていきたいです。