相撲どころ金沢の地で全日本大学選抜相撲金沢大会が行われた。直近の東日本学生選手権(東日本)で10位に沈んで以降、チームの立て直しを図った早大。今大会はその努力が結実し、団体戦で堂々のベスト8入りを果たした。「力があることを証明できた」と室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)は確かな手応えを口にした。また、個人戦では長谷川聖記(スポ3=愛知・愛工大名電)がベスト16入り。前大会に引き続き好成績を収めることで、安定した強さを見せつけた。
団体戦予選1回戦の相手は九州情報大。5月の全国大学選抜相撲宇佐大会(宇佐大会)では1勝4敗と苦杯をなめた相手だ。決勝トーナメント進出のためには確実に勝ち点を奪取したい早大だったが、中堅を終えた時点では1勝2敗と黒星先行。もう一つも星を落とせない状況になってしまう。その中で土俵に上がったのは佐藤太一(社4=大分・楊志館)。宇佐大会、東日本で悔しい思いをして以降、『3点目が取れる選手になりたい』という気持ちをより一層強め、稽古に励んできた選手だ。立ち合いから相手の突きを下からあてがうとノド輪で前へ。最後は一気に押し出した。勝利後には思わずガッツポーズ。うれしさをにじませた。そんな同期の奮闘に応えるかのように続く橋本侑京主将(スポ4=東京・足立新田)が逆転勝利。見事勝ち点を獲得し、好スタートを切った。
団体戦で活躍し、ベスト8入りの原動力となった佐藤
2回戦では立命大と対戦。ここでも、橋本、佐藤、長谷川の上級生三人がしっかりと白星を重ね、勝ち点をもぎ取ることに成功。3回戦では強豪・日体大相手に全敗となってしまったが、1回戦と2回戦で勝ち点を獲得したことが決めてとなり、見事予選突破を果たした。
決勝トーナメントでは抽選の結果、再び日体大と激突。しかし、先鋒から副将があっけなく4連敗を喫し、準決勝進出はかなわず。強豪校との地力の差を感じさせられた。そんな中、存在感を示したのは橋本。1年生ながら規格外の強さを見せている実力者相手に一度は土俵際まで攻められたが、左を差してこらえると逆襲の攻め。頭をつけて寄り切った。「宇佐大会の2位がたまたまだと思われないように気合を入れて臨んだ」(橋本)。その言葉通りの気持ちのこもった相撲で意地の白星を挙げた。
団体戦準々決勝で白星を挙げた橋本
また、個人戦では長谷川がベスト16入り。東日本でベスト8入りを果たした実力は全国の舞台でも健在だった。3回戦では志賀秀登(東農大)と対戦。東日本の団体戦で、立ち合いに迷いが生じ敗れた苦い記憶のある相手だ。「東日本の反省を踏まえて、自分の相撲を取り切ろうと思った」と長谷川。立ち合いで突き起こされたが、上体を起こさずうまく中に入って押し倒した。
今大会、団体戦でベスト8入りを果たした最大の要因は佐藤の躍進だろう。5人制の団体戦で上位に食い込むには3勝以上を挙げることが絶対条件。しかし、これまでは橋本、長谷川の二本柱の後が続かず、負けてしまうことが多かった。『あと一点』に何度泣いてきたことだろう。だが、今大会は違った。佐藤が3点目を取ることでチームに貢献。また、白星にはつながらなかったものの鳥居邦隆(社1=愛知・愛工大名電)と田太隆靖(スポ1=スポ1・東京・足立新田)の二人の相撲にも成長ぶりがうかがえた。今年度、監督や選手が口々にする言葉。『チームの底上げ』。一人一人が自らの課題を再確認し、チームが一丸となって汗を流したその先には必ずや歓喜の瞬間が待っているだろう。全ては集大成の舞台・全国学生選手権(インカレ)でうれし涙を流すため——。早大相撲部の熱い夏が始まった。
(記事、写真 望月清香)
結果
団体戦予選
1回戦 対九州情報大 3勝2敗
先鋒 ●田太初段(上手投げ)ムンクサイハン初段
二陣 ◯長谷川参段(叩き込み)末大初段
中堅 ●浅田参段(寄り倒し)山中参段
副将 ◯佐藤弐段(押し出し)末陸弐段
大将 ◯橋本参段(突き出し)宮崎参段
2回戦 対立命大 3勝2敗
先鋒 ●田太初段(叩き込み)丹羽参段
二陣 ◯長谷川参段(寄り切り)岩倉参段
中堅 ●鳥居弐段(小手投げ)櫻井弐段
副将 ◯佐藤弐段(突き出し)大久保弐段
大将 ◯橋本参段(引き落とし)山下弐段
3回戦 対日体大 0勝5敗
先鋒 ●田太初段(押し出し)松園参段
二陣 ●長谷川参段(すくい投げ)高橋参段
中堅 ●鳥居弐段(引き落とし)デルゲルバヤル参段
副将 ●佐藤弐段(送り倒し)石崎参段
大将 ●橋本参段(寄り切り)中村弐段
※予選8位で決勝トーナメント進出
団体戦決勝トーナメント
準々決勝 対日体大 1勝4敗
先鋒 ●田太初段(押し出し)松園参段
二陣 ●長谷川参段(上手投げ)高橋参段
中堅 ●鳥居弐段(突き出し)デルゲルバヤル参段
副将 ●佐藤弐段(叩き込み)石崎参段
大将 ◯橋本参段(寄り切り)中村弐段
※早大は準々決勝敗退
個人戦
橋本侑京参段(スポ4=東京・足立新田)
一回戦 ●対山内参段(東農大)上手投げ
佐藤太一弐段(社4=大分・楊志館)
一回戦 ●対井田参段(拓大)小手投げ
長谷川聖記参段(スポ3=愛知・愛工大名電)
一回戦 ◯対丹羽参段(立命大)寄り倒し
二回戦 ◯対山科初段(拓大)押し出し
三回戦 ◯対志賀参段(東農大)押し倒し
四回戦 ●対ダライバートル弐段(日体大)足取り
浅田大介参段(社3=石川・金沢学院)
一回戦 ●対長谷川弐段(慶大)押し倒し
二見颯騎弐段(スポ2=東京・足立新田)
一回戦 ◯対篠田弐段(金沢学院大)寄り切り
二回戦 ●対羽出山参段(東洋大)押し出し
鳥居邦隆弐(社1=愛知・愛工大名電)
一回戦 ●対神﨑参段(近大)押し倒し
田太隆靖初段(スポ1=東京・足立新田)
一回戦 ●対大塔弐段(東洋大)押し出し
コメント
室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)
――団体戦ベスト8入りおめでとうございます。この結果を振り返っていかがですか
東日本(大学選手権)で負けてから立ち直しを図ったので、ベスト8に入る力があるということを証明できて良かったなと思います。
――東日本大学選手権が悔しい結果に終わってから、今大会に向けてどのようなに稽古に取り組みましたか
みんなで自分たちがすることがどういうことなのかということを改めて考えました。(東日本大学選手権は)たまたま橋本がけがをしていて、ベストメンバーではなかったんですけど、それは相手に失礼なことだし、やはりベストメンバーを組めなかった僕らが悪いと思います。橋本だけに頼るのではなくて、もっとみんなで力を合わせないと駄目だよね、チームの底上げをしていこうと。今日は佐藤がすごく頑張ってくれていたのでやはりああいうところでしょうか。1年生2人も使っていて、1年生は負けましたけど、少しずつ良い相撲になってきたかなという感じです。
――浅田大介選手(社3=石川・金沢学院)は団体メンバーを外れました
まだ本人の気持ちと体が付いていっていないというのがあったので、最初の相撲であまり向いていないなと思って変えました。できれば本当は最後まで使いたいなという気持ちだったのですけど、それができなかったので(団体戦予選1回戦の)相撲内容を見て変えました。
――きょうの団体戦は佐藤選手が素晴らしい相撲だったのでは
本当に最高の相撲だったと思います。1回戦の九州情報大戦の相撲が久しぶりに良い相撲だったので、やはりああいう相撲が取れるんだなと思って非常に嬉しかったです。
――個人戦でベスト16入りを果たした、長谷川選手の相撲を振り返っていかがですか
橋本がけがをしたことによって橋本と稽古ができなかったので、ちゃんとした力強さが戻ってきていないのではないかなというのが正直なところありました。(大会中に調子が)徐々に上がっていったというのは慣れていったのだと思います。最初は受け身になる相撲があったのですが、後半になるにつれてだんだん良くなってきたなと思いました。ただ、まだまだ改善の余地はあるかなと思っています。
――最後に、東日本学生リーグ戦に向けての目標をお願いします
(東日本学生)リーグ戦はあくまで一部残留を目標としています。部員が7人なのでまた助っ人を頼むことになるのですが、3年間守ってきた一部残留を守れるようにやりたいと思っています。
橋本侑京主将(スポ4=東京・足立新田)
――足の回復具合はどうですか
東日本(大学選手権)が終わって少しだけ悪化したのですが、医者からもほとんどくっついていると言われたので、(全日本大学選抜相撲)金沢大会の1週間前に相撲を取れました。結構急ピッチになってはしまったのですが、(今回の)試合後に足の痛みはなかったので大丈夫かなとは思っています。
――団体ベスト8の成績を振り返ってもらえますか
東日本(学生選手権)が駄目で、最後のインカレ(全国学生選手権)に向けては(5人制の団体戦は)これが最後だったので、それについては自信にもなりました。今まで3点が取れていなかったし、僕と長谷川で2点取れて、佐藤が(今回は)ずっと1点を取ってくれました。本当は3点以上欲しかったのですが、実際3点で(決勝トーナメントに)上がることができたので、チームの底上げができてきたのかなと思います。(今後のチームの)プラスにしていきたいです。
――団体戦予選1回戦では気持ちが前面に出た相撲となりましたが
(全国大学選抜相撲)宇佐大会で調子が良くて、個人戦で準優勝した大会でも負けていた相手だったので意識している部分はありました。しっかりと取らないといけないところだったので、気合いは入りました。
――団体戦では日体大相手に二戦連続でチームは負ける結果とはなりましたが、個人としては二戦目に白星を挙げました。ご自身の相撲を振り返っていがですか
相手は1年生だったのですが、他の選抜大会でも個人優勝しているし、今回も3位に入っています。1年生ですが本当に全国トップクラスの選手で、最初に戦ってみた時に相手がすごくデカくて、チャンスはつくれたのですが負けてしまいました。2回目のベスト8の時では、実際は自分の出番の時には(チームは)負けていたのですが、個人的にはやはり(全国大学選抜相撲)宇佐大会で2位に入ってから久々に出た個人戦が駄目だったので、たまたまだと思われたくないためにも、気合いを入れて臨みました。
――団体としての今後について
5人制は(全国学生選手権前は)これが最後で、この後は体重別の個人戦が2つあり、団体だと(東日本学生)リーグ戦があります。(東日本学生)リーグ戦は9人制(の大会)ではあるのですが、毎年6人か7人かで臨んで一部に残留し、インカレ(全国学生選手権)に向けていい流れができているので、その流れを途絶えさせないという意味でも、なんとか一部に残留したいです。僕が入学してからはずっと一部でやってきました。僕が入部する前に一部に上がって、僕の代からずっと一部だったのですが、4年間を一部でやり遂げられるように、次の代につなげていけるように頑張っていきたいと思います。
――個人戦を振り返ってもらえますか
やらかしてしまったなというのが正直なところです。相手をなめていた訳ではないですが、練習ができていなくて、最初の予選でもバタバタとしているところが多かったので、そこは練習ができていないところだと思います。最後のインカレ(全国学生選手権)、さらに体重別もあるので、練習ができるようにしっかりと回復したので、しっかりと詰めて、活躍できるように頑張りたいと思います。
――最後に個人戦の目標は
すぐ体重別(東日本学生個人体重別選手権)があるのですが、去年までは135キロ未満で出ていたのですが、今年は無差別級で出ます。1番上の階級で何とか戦って、頑張って優勝を目指して最後はインカレ(全国学生選手権)とアマチュア(全日本選手権)があるので一個でも多く上を目指せるように頑張りたいと思います。
佐藤太一(社4=大分・楊志館)
――団体戦ベスト8入りおめでとうございます!この結果を振り返っていかがですか
去年の(全日本大学選抜相撲)金沢大会もベスト8に入れたので、(組み合わせの)当たり自体も悪くなかったので今年もベスト8に入りたいなと思っていて、入れたので良かったです。
――団体戦予選の1回戦、2回戦の相撲は素晴らしい相撲でした。ご自身で振り返っていかがですか
チームとしても星勘定的に3点取ろうとなったら、侑京(橋本)と聖記(長谷川)とあと1点という感じだったので自分が点を取れて良かったです。
――全国大学選抜相撲宇佐大会、東日本学生選手権では残念ながらあまり結果が残せませんでしたがそこから意識したことはありますか
東日本で負けてしまったので、ずっとそうなんですけどそこから特に『3点目が取れる選手になりたい』と思っていました。今回は結果が振るったので良かったです。
――負けた相撲を振り返って何か課題などは見つかりましたか
個人戦も相撲自体は悪くなかったので、やっている方向性は間違っていないと思います。引退まで短期間ではあるんですけど、今まで通りそれ以上に頑張っていけたらいいなと思っています。
――夏には個人体重別の大会がありますが、個人としての目標を教えてください
個人はあまり考えていないのですが、個人戦の体重別の大会でしっかり全国に行くことと、こういう地方も含めた全国大会でベスト16とかに入れたらいいなと思っています。
――最後に、団体戦での今後の目標を教えてください
やはり自分が3本目の柱になるということとしっかり3点目が取れるチームになっていくことです。それプラス4点目5点目が取れるようにチーム全体で底上げをして、短期間ではあるのですが頑張っていきたいと思います。
長谷川聖記(スポ3=愛知・愛工大名電)
――まず団体ベスト8の結果を振り返っていかがですか
予選の当たりが良かったので、そこでしっかりと勝てたのは良かったと思うのですが、日体大と対戦して、上位の相手に勝ちきれなかったというのは、まだまだ力が足りなかったと思います。
――団体戦ではどのような意気込みで臨みましたか
東日本(学生選手権)では自分はあまり良くなかったので、勝ちを意識しないように、逆に楽しんでいくようにしました。
――東日本学生選手権では立ち合いについての反省点を口にしていましたが、きょうの立ち合いはいかがでしたか
東日本(学生選手権)の反省を踏まえて、やはり自分の相撲をしっかりと取り切ろうかなと分かり、そこから自分の相撲を取り切ろうかなと思ったので、その部分はできていたのではないかなと思います。
――個人戦は最後に足を取られて負けてしまいましたが
自分の中でも非常に悔いがあったのですが、相手の方が自分のペースで相撲を取っていて、相手の方がうまかったので、自分もそれを先にやらないといけないなと思いました。
――団体としてのこれからの目標は
これは(全国学生選手権前)最後の(5人制の)団体戦になったのですが、インカレ(全国学生選手権)に向けてまだ少しあるので、そこでいい結果を出せるようにしっかりと練習していきたいと思います。
――今後は個人戦の戦いが控えていますが、そこの部分についての意気込みは
上級生になるので、そろそろ上位に上がっていかないといけないと思っています。自覚を持って上位にいけるように練習していきたいと思います。